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KAKUTA「ひとよ」配信 [┣演劇]

KAKUTA
「ひとよ」


作・演出:桑原裕子


音楽:オレノグラフィティ
舞台監督:安田美知子、網倉直樹
舞台美術:田中敏恵
照明:宮野和夫
音響:島貫聡
衣裳:石川俊一
ヘアメイクプラン:新井寛子
演出助手:和田佐緒理、朝倉エリ
演出部:村西恵、野澤爽子、置田浩紳、森崎健康、細村雄志
照明操作:山浦恵美
アクション指導:森貞文則
音楽協力:絢屋順矢
衣裳進行:四浦麻希
アンダースタディ:吉田紗也美、矢田未来


大道具製作:泉真
小道具:高津映画装飾
衣裳協力:佐藤千香アトリエ、東宝舞台衣装
トランスポート:マイド
稽古場:ゴコクジスタジオ、アトリエ・リフレ
制作:津吹由美子、堀口剛、前川裕作
制作助手:三國谷花、白井千晶
制作協力:J-Stage Navi、SUI
プロデューサー:成清正紀


「ひとよ」というタイトル、実は、「人よ」だと思っていた。
タイトルの横に、「One Nigut」と書いてあったので、「一夜」だと分かった。そして、この作品、去年、映画化されていたのね。映画は見ていないが、予告編を見た記憶がある。映画は、めちゃくちゃ悲惨な予感があったが、この舞台は、そんな感じはしなかった。
母親役の違い[exclamation&question]


今から15年前のある一夜、自らタクシーを運転し、タクシー会社を経営する母・稲村こはる(渡辺えり)は、仕事から戻ってきて、子供たちに告げる。「今、お父さんを殺した」と。
母が父を殺した家庭の三人の子供…昨年観たJr.5の舞台を思い出す。(その「明けない夜明け」の感想はこちら。)
原因は、夫のDV。子供たちは、いつも傷だらけだった。
こはるは、長男・大樹(若狭勝也)の就職が決まり、長女・園子(異儀田夏葉)の進学が決まったところで、将来の算段ができたと見通して、ことに及ぶ。商売道具のタクシーを車庫に入れる際、誤って轢いてしまった…と事故死を装う予定だった。それがうまくいっても、いかなくても、ほとぼりが冷めるのを待って、15年後のこの日に帰ってくるから、と、母は三人の子供たちに伝える。
そして、15年後の父の命日ー
タクシー会社は、こはるの甥・丸井進(久保貫太郎)が経営に加わり、業務を拡大していた。(名前も、稲村タクシーから稲丸タクシーに変わっていた。)
ドライバーも雇っていた。
大樹は、結婚していたが、奥さんの二三子(桑原裕子)はなかなかユニーク。ただ、大樹は、妻に、両親は死んだと伝えており、妻は、事件のことは知らない。
園子は、スナックに勤めていて、酒に飲まれる日々。次男の雄二(荒木健太朗)は、東京でライターのようなことをしているが、父の命日のために戻ってきていた。十三回忌でも、十七回忌でもないが、15年目の命日は、特別な日だったから。
母の言葉に嘘がなければ、今日は、母が帰ってくるー


アラケンが出る舞台、最近、選んで観るようになったなぁ~、私。
劇団にいる時は、同期でWキャストをされていたマツシン(松本慎也)に比べて、明らかに拙かったので、それほど好きな劇団員というわけではなかったのだが、外の世界に揉まれて、だいぶ味が出てきたせいかな[exclamation&question]このヒト、私の好きな劇団の卒業生なんですよ、みたいな気持ちで推している。
(Jr.7の半分が、こういう省略されてるな、そういえば…あと一人は、もちろんミカシュン(三上俊)。そして、全員“ン”で終わる[わーい(嬉しい顔)]
今回の舞台には、「グッドバイ」でゆうひさんと共演した異儀田さんも出演していて、元気で頑張っている姿に、嬉しかったり、安心したり…[わーい(嬉しい顔)]


母が父を殺すー
「明けない夜明け」の時も思ったが、子供たちは、加害者家族にもなり、被害者家族にもなる。ある意味、自己完結しているので、子供たちが「父を殺した母」を許せるのであれば、あとは家族の問題じゃないか…[ひらめき]
なんて思ったりもするのだが、実際には、そうもいかない。
そこに「世間」が存在するからだ。
大樹の就職も、園子の進学も、こはるの犯行によって白紙になった。相手が誰であれ、理由が何であれ、稲村家の子供たちは、「殺人犯の子供」として、「世間」から拒絶されてしまった。
こはるの構想には、最初から、そして、今でも「世間」が存在していない。
こはるの周囲の人々は、「世間」を見ながら生きている。
ただ、そこに、それゆえの軋轢は存在せず、なんだかんだで、人々はこはるを受け入れている。その不思議な世界観が面白いが、渡辺えりが演じることで、違和感なく受け止められた。作品には、こはるの家族だけでなく、タクシー会社の無線係をしている、こはるの友人、柴田弓(小林美江)だったり、タクシー運転手の堂下(まいど豊)だったり、人生を踏み外しかけた人々も登場する。
犯罪者になるかならないか、なんて、ほんのちょっとした違いなのかもしれない。
刑期を終えて、ほとぼりを冷まして15年…それは、全然ほとぼりが冷める時間ではなかったし、そもそも、父を殺したところで、15年経っても、大樹の吃音も、曲がった指も元には戻っていない。
それでも、人生は続くー
こはるの15年前の行動の是非を断罪することなく、ただ、人生は続き、喜怒哀楽を繰り返すーそんなことを感じる公演だった。


アラケン、よかったよ~[揺れるハート]


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