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宝塚歌劇団の一件について [┣生徒・演出家・劇団論]

ご無沙汰しています。


ご無沙汰だったのは、夜野側の事情によるもので、エンタメ好きが高じてとうとう舞台の制作のお仕事を始めたのが原因でしたが、宝塚がこのような状況の中、一言二言書き散らかして仕事に行くことはできないな…と思い、しばらくブログを書けずにいました。


宝塚のことを愛して、その感想をブログに書いたり、Xやインスタグラムに書いているファンの方は数多くいらっしゃると思います。そのすべての方が、多かれ少なかれ今回のことに影響を受け、これまで通りの発信をできなくなっているのを感じています。


発信するのがすべてだとは思いませんし、これを機に、宝塚や観劇から少し距離を置くのもまた、ひとつの方法だという気もします。
そんな中、今日は少し時間ができたので、私自身のことを少し書いてみようと思います。


ブログという発信手段が全盛期だった頃に、宙組トップスターだった大空祐飛(現・ゆうひ)さんのファンとして、たくさんのアクセスを稼いでいた自分の過去を振り返ると、このまま、何も言わずに、感想を書き連ねていくのも違うのかな、と思いました。


初めて宝塚に触れたのは、初演の「ベルサイユのばら」です。当時小学生だった私は、「将来、宝塚に入る!」と無邪気に言っていたそうです。
しかし、いつの間にかそんなことも忘れ、普通の人生を送っていた私は、「ベルサイユのばら」再演のニュースに再び目を覚ましました。既に社会人になっていた私は、「宝塚に入る」ことはなくても「宝塚を愛する」ことはできるのだな、と知り、1990年2月月組公演「大いなる遺産/ザ・モダーン」以来、一公演も欠かさず、東京宝塚劇場の公演を観劇し続けてきました。33年半ですね。こんな長い趣味、あるでしょうか。
そんな中で、大空祐飛さんの存在に出会い、それがこんにちまで続いているわけで、ご縁だなーと思います。
私の人生と宝塚は、今更、切っても切れない関係なのだろうと。


今回、宙組東京公演が12月14日まで上演中止となり、私の33年続いた記録も途切れることになりそうです。
長いファン生活の中では、現役生の死去という悲しみも何度か経験してきました。
卒業生の中には、自ら命を絶たれたスターの方もいらっしゃいます。
しかしながら、現役生が「自殺と見られる」形で亡くなられたのは、初めての経験で、さらに遺族から「パワハラ」「過剰労働」についての責任を問われる状況は、長年、無批判に宝塚を愛してきた自分自身の責任までも問われているようで、言葉に詰まるとは、このことか、と思いました。
さらに連日繰り広げられているワイドショーでの宝塚批判の厳しさには、こちらが病んでしまいそうで、コメンテーターの方々が、いちいち「あり得ない」と言っている事柄は、実は、私たちファンならよく知っていることで、「厳しいんだな、大変だな」くらいしか思っていなかった自分の想像力のなさが恐ろしくなりました。


そうなんですよ、知ってましたよね、ファンなら。
娘役が初日前夜、完徹でアクセサリーを仕上げること。そもそもそれが「自前」なこと。
新人公演の香盤が発表されたら、本役さんにご挨拶に行かなければならないこと。(これなんか、NHKの番組でそのシーンを放映されてましたもんね。)
新人公演長の期への負荷がものすごいこと。
音楽学校の上下関係の理不尽とも思えるあれこれ。(これもテレビ番組で紹介されることが多かったですよね。ただ、これに関しては、95期から下は、下級生指導をほぼしていないそうですので、以前のテレビで見たあのイメージは、だいぶ違うということで。)
秘密でもなんでもなくて、グラフや歌劇で生徒さん自身が、ごく普通の話として語っていましたよね。
だから、少なくとも、グラフや歌劇で発言されている生徒さんも、それが、「パワハラ」とか「過剰労働」とかいう認識がなかったわけです。めちゃくちゃ根が深いなーと思います。


舞台上のことではありますが、昨今、再演ものなどで、「男性が女性をビンタする」「黒塗り」「ジプシー」「差別的な歌詞」など、過去の公演では「ステキ」だったものが、世界的に許容されないものになってきていて、宝塚も変革を迫られているな~と感じる部分はありました。
それは舞台上に留まらないんだなという、当たり前のことが、自分の中で欠落していたことは、反省しなければ…と強く自戒しています。


今後、宝塚では第三者委員会により、他の組の生徒や音楽学校生からも聞き取り調査をして、宝塚歌劇団全体の問題点を洗い出し、是正していくことになるそうです。
最初からそうすればよかったのに…とワイドショーでは言っていましたが、丁寧な外部弁護士による宙組生徒への聞き取り調査の報告書自体は、公平でしっかりとしたものだったと思います。(黒塗りについては、亡くなられた生徒さんのプライバシーに関する部分で、公表しないのは当然だと思いました。)
しかし、ご遺族の主張と相反する部分も多く、納得を得られなかった、というプロセスを経て、両者の意見交換の中で、「やはり第三者委員会」ということになったのは、仕方がないことなんだろうと、思っています。
(夢を売る宝塚なので、すべてを白日の下に晒すというのは、躊躇があったとしても、それは、隠蔽や改ざん目的ではなかったと思います。秘すればこその花なのですから。)


ある意味「知っていた」ことは多くても、もちろん「知らない」ことの方が多い外部のファン。
今は、憶測でものを語る時ではないーと思いながらも、ひとつだけ、宙組のいびつさを感じることがあります。


宙組ができて25年。
現在のトップスターは、全員、初舞台の時から「宙組あり」の状態で育ってきています。
なのに、なぜ、宙組では「生え抜き」のトップスターが一人もいないのでしょうか?
トップスターどころか、「生え抜き」2番手すら、今回の桜木みなとさんが「初」です。トップ娘役も、星風まどかさんがなっただけで、その彼女も、途中で異動しました。
(もちろん、各組トップスターも生え抜きだけではありませんが。)
そして、組替え。宙組から出て行ったスター達は、その後、異動先でさらにステップアップすることなく退団する例が多く見られます。
(もちろん、退団は、本人の意思です。)
ここに居ても、使い捨てられる…そんな意識が現役生の中に育っていないか、ちょっと気になるところです。


あと、週刊誌のネタになった時に、生徒をどうして異動させなかったのか、ということが気になっています。
それは、宝塚において組替えの機会が少なく、たいていは、スター生徒が半年から一年先に組替えする発表が、年に一度あるかないか、というところだからでしょう。
そんな中、突然、急な異動があったら、ファンが動揺するのは間違いありません。
もっと、普通に人事異動の機会を作る。スターじゃなくても、その他大勢でも、本人の適性を見て、どんどん異動させる、ということが活発になれば、組の中で息苦しく感じている生徒も、「逃げ場がない」ということにはならないと思います。


宝塚が、新しい時代を生き抜いていけるように、改革すべきところは改革して、生徒さんたちの心と体をしっかりと守ってあげてほしいと切に願います。


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コメント 2

なの

ありがとうございます。読みながら泣けてきました。
私も「発信ができなくなった」ひとりです。
夜野さんのお考えに非常に共感いたしました。私もあの調査報告書を読んで
「根が深い」と感じ、自分も同罪ではないかと、いたたまれなくなり・・・。
ぜんぶ知っていて、一般社会ではアウトだとわかってもいて。
それでもタカラヅカは特別だというバイアスが働いていた。関係者にも我々ファンにも。
企業ガバナンスなど働きようもない「慣習」であること。手段が目的化した慣習。
これは根が深いですよね。私が中の人なら途方に暮れます。
宙組のいびつさについても仰るとおりかと。
改革できるのか、このまま無くなってしまうのか。正念場ですよね。
厳しい目を持って冷静に、これからも応援していきたいと思います。
by なの (2023-11-25 15:21) 

夜野愉美

なの様
コメントありがとうございます。
今はただ、今後の発表を待つばかりです。
それにしても、生徒の皆さんの心と体が心配です。
by 夜野愉美 (2023-11-27 23:39) 

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