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「笑わせんな」観劇 [┣演劇]

「笑わせんな」


脚本:福谷圭祐
演出:オクイシュージ


音楽:遠藤浩二
美術:仁平祐也
照明:高野由美絵
音響:藤本純子
衣裳:高田菜々子
ヘアメイク:武井優子
演出助手:山田翠
舞台監督:宇佐美雅人


<出演>
藤原宙介…浜中文一
比嘉有希…山下リオ
山田遊太…鳥越裕貴
郷田宏…松島庄汰
鯉川愁平…岐洲匠
田中みゆ…佐藤日向
三池史帆…松原由希子
香坂麻尋…福井夏
佐藤真由…辻本耕志
吉岡美…久ヶ沢徹
松本正義…入江雅人


本多劇場で「笑わせんな」を観劇した。


面白いだけでなく、考えさせられるところもあり、充実した演劇空間だった。
やっぱ、鳥越裕貴が、出る舞台は、ハズレがない。


美容室の地下行われている秘密の会合。
参加者は、くすぐりたい「ぐり」と、くすぐられたい「ぐら」に分かれ、基本、ペアで参戦する。
※初参加者には「ぐりですか?ぐらですか?」という質問がなされる。これはもちろん、ロングセラーの絵本「ぐりとぐら」を意識している。
彼らは、スタート前にくすぐりをストップするための合言葉を設定する。というのは、「やめて」「やだ」という言葉は、くすぐられている間、ついつい口をついて出てしまうので、本当に「ぐら」がこれ以上はイヤだと思った時に、終了宣言として口に出す言葉が必要なのだ。
※実は主人公たちペアの終了ワードが「笑わせんな」だったということが途中でわかり…タイトルまで、くすぐりが効いているのだった。


オーナーに内緒で美容院の地下室を秘密会合に使っている主人公もひどいが、その他の登場人物たちも、めちゃくちゃ。誰一人、まともな人がいないと言っていい。
お仕事でSMクラブの女王様をやっている女性をのストーカーするドMの男性客が出てきたり、ハサミが握れない主人公を指名し続ける客が出てきたり。
そんなキャラクターの面白さで話をひっぱりつつ、「人のいやがることはしない」っていう当たり前のことが、どんなに守りづらいことなのか、考えさせられる。自分の欲望の成就や満足感が、他人の犠牲の上に成り立っているかもしれない、という意識を持ち続けることは、難しいけど本当に大切なことだと思う。
「くすぐり合う」という現実にはあり得ない趣味で繋がる人々のファンタジーな物語かと思わせておいて、実は、サスペンスを通り越してホラーになっていく展開に震え、あっという間に終演。


演劇を観る楽しみって、つまり、こういう作品に出合うことなんだよ、と思える舞台だった。


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「かわりのない」観劇 [┣演劇]

「かわりのない」


作・演出:タカイアキフミ
美術・衣裳:山本貴愛
音楽:高位妃楊子
音響:谷井貞仁
照明:加藤直子
舞台監督:谷澤拓巳
演出助手:菅原紗貴子
ステージング:浅野康之
制作補佐:茉瑶
制作:笠原希
主催:合同会社TAAC


<出演>
春日井陽平(警察官)…荒井敦史
田代由希子(難病の息子を亡くした母)…異儀田夏葉
田代建太(由希子の夫)…清水優
根本岳(田代家の近所に住む事故死した大河の父)…納谷健
春日井里実(陽平の妻)…北村まりこ
橋爪史朗(内科医)…廣川三憲


シアタートップスで上演されていた「かわりのない」を観劇しました。


この芝居は、以前同じ作・演出家によって上演された舞台のリブート作品とのこと。上演後、前作に出演していた「悪い芝居」の山崎彬さんが登壇して演出家とのアフトクが行われ、さらに興味が増した。


そもそもは、拡張型心筋症の子供をアメリカで治療するために3億円を集めていた夫婦(本作の田代夫妻)だけの物語だった。あと20万弱で目標額に到達するというところで息子が急死、夫婦の関係性までおかしくなってしまう。夫は、妻との関係を修復しようと、募金を再開することを提案、いけないことだと知りながら、夫婦は、もう居ない息子のために募金活動を再開し、それが生きがいになっていく。


今回の舞台は、その夫婦のところに、シングルファーザーからネグレクトされている少年が訪ねてくるところから始まる「新たな物語」が追加されている。熱を出した少年を医者に連れて行った夫婦。自分たちの子ではないから保険証はない。しかし、3億円の募金を手にしている夫婦はお金に困っていない。一方、夫婦が駆け込んだ医者は、認知症の母親を抱え、コロナ禍以降の患者減少に悩んでいた。子供の具合が悪くなるたびに、良くなった時の喜びが大きく、夫婦は次第に薬を過剰投与することでわざと少年を体調不良にさせるようになっていく。医者も、薬の量が多いことを知りながら処方箋を書き続ける。そしてある日、投与された薬の影響で、ふらふらになった少年は階段から転げ落ちてー
そんな物語の進行役(語り部)であり、事件の取り調べを担当している警察官にもまた、「ものがたり」があってーという多重構造の物語。
舞台が進行するにつれて、事件の全容が明らかになっていくサスペンス的要素もあり、飽きさせずに見せる演出の手腕が見事だった。とはいえ、たしかに、山崎さんがアフトクで指摘しているように、この内容だと、抽象的な演出の手法を使うことが果たして正解だったか…というとなかなか難しい。
(シアタートップスという「袖のない劇場」を使ったために、このような演出にする必要が生まれたのかなと思うが、装置を増やす、という意味でなく、椅子を重ねたりばらけたりみたいな抽象表現を排して、シンプルに台詞劇として見せた方がよい内容の芝居だったとも思う。)


観劇後、それぞれの登場人物について、深く考え続けてしまった。
田代家のだんなさん、すごくやさしい人なのかなと思わせておいて、実はひどい人なんだなーとか。もし、倒れたのが自分の息子だったら、彼は、放置して逃げるような人ではない。キャッチボールするほど、大河くんを可愛がっておきながら、結局のところ、1ミリも愛してはいなかったんだな…と思うと切ない。
大河くんの父親は、大河くんを愛していたのに、「自分を捨てた嫁に似ている」からネグレクトしてしまう。葬儀のあとに刑事が訪ねて行った時、比較的冷静だったのは、悲しみの中に少しだけ、息子の顔を見なくていい…というホッとした思いがあったからかもしれない。
その命が、理不尽に奪われたと知った時、彼が感じた怒り=息子への愛を思い出したと思いたいけれど、あのまま大河くんが生きていたら、彼自身が息子を死なせてしまったかもしれない。
そして、子供が欲しい春日井の妻に対して協力的でない春日井は、突然蒸発した父親というトラウマを抱えていた。事件が解決した後、冒頭の春日井夫婦の物語に収束するが、ラストの春日井の台詞「里実と話したい、これからのこと」、実は私も、離婚切り出し[exclamation&question]って思ったんです。同じ感想を山崎さんが話してて、あれ、そういうこともあり[exclamation&question]となった。
里実さん、夫にべた惚れなのに…[あせあせ(飛び散る汗)]


ちょっとやばいお父さん役の納谷くん、今回も心に残るお芝居を見せてくれた。ブチ切れるとこがツボです。
異儀田さんの芝居もほんと好き。ゆうひさんと共演した方々、その後ファンになってしまうことが多いので、年々、観劇数が増えてしまいますね。


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「ある閉ざされた雪の山荘で」観劇 [┣演劇]

舞台
「ある閉ざされた雪の山荘で」


原作:東野圭吾
構成・演出:野坂実
脚本:米山和仁


脚本協力:小原ゆか
美術:仁平祐也
照明:阿部将之(LICHT・ER)
音響:竹下好幸、島村幸宏
衣裳:清水喜代美
ヘアメイク:黒田はるな
アクション指導:藤田けん
演出助手:高島大輝
舞台監督:住知三郎


主催:ハピネット・メディアマーケティング、ノサカラボ


<出演>
久我和幸…室龍太
中西貴子…大野いと
田所義雄…加藤良輔
元村由梨江…本西彩希帆
麻倉雅美…入来茉里
笠原温子…綾凰華
雨宮京介…小南光司
本多雄一…今江大地


東郷陳平…山寺宏一(声の出演)


映画と舞台が同時に上映/上演されるということで、両方見た人キャンペーンというのをやっているのを知り、直前に映画も鑑賞し、内容を頭に入れた上で観劇。この時点で、あやなちゃんが一番最初に消える人物ということがわかっていたので、ちょっと気分は下降気味。でも、本作、ほぼ原作通りの内容にもかかわらず、唯一と言っていい原作にない設定が、探偵役の久我が、第一の被害者を脳内でパートナーにして推理していくタイプの探偵だったこと。あやなちゃんの登場シーン、大幅アップ[グッド(上向き矢印)][グッド(上向き矢印)][グッド(上向き矢印)]


犯人は俳優たちの誰か、という設定は、つまり、彼らの証言が演技かもしれないわけで、見ている方は楽しいが、演じている方は、役を演じるだけでなく、嘘の部分をそこに上乗せして演じなければならないので、演技プランがより大変になる。
多重構造(演劇のオーディションという空間を利用した殺人劇と見せかけて…みたいな)になっているので、観客に理解させるのも大変だろうし、さらに役者は舞台転換までやるので、相当頑張っただろうな…。


あやなちゃんは、ちょっと勝気なリーダー格の笠原温子(赤温子)と、推理の相棒(白温子)の実質2役。どちらも魅力的で、ファンとして楽しかった。
コナンくん(小南)は、普通にイケメンが嫌味なく、さすが。
大野いとちゃんがすごいスレンダーの美女になっていて、ああ、あれから時は流れたんだな~と実感した。
(2016年にゆうひさんと共演した頃は、はちきれんばかりにぷにぷにしていたのに…)


ちなみに映画版は、間宮祥太朗くんが圧巻でした[黒ハート]


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「シラの恋人」観劇 [┣演劇]

シス・カンパニー公演
「シラの恋文」


作:北村想
演出:寺十吾


美術:松井るみ
照明:服部基
衣装:前田文子
音楽:坂本弘道
映像:ムーチョ村松
音響:岩野直人
ヘアメイク:宮内宏明
ステージング:小野寺修二
舞台監督:芳谷研
プロデューサー:北村明子


剣術指導:楠見彰太郎(座☆風流堂)、田村令


<出演>
草彅剛、大原櫻子、工藤阿須加、鈴木浩介、西尾まり、明星真由美、中井千聖、宮下雄也、田山涼成、段田安則


「シラノ・ド・ベルジュラック」の翻案だと思って観に行ったら、「シラノ…」に「着想を得た」オリジナル戯曲だった。
物語は、近未来の日本を舞台にしている。たぶん、十年ほど先の。コロナ禍などを経て、既存の抗生剤の効かない結核が「新たな死病」となった日本。各地に、患者を受け入れて療養させ、最期は看取るためのサナトリウムが出来た。鐘谷志羅(草彅剛)は、患者としてここを訪れる。
山と海が見える美しい場所にあるサナトリウム。そこには、クセのある院長(段田安則)や、色々抱えていそうな看護師(西尾まり)がいて、個性的な患者もたくさん療養している。
そんな中に、まだ若い女性の入院患者・野浦小夜(大原櫻子)がいる。
志羅は、小夜の姿に、子供の頃好きだったテレビ番組の中の少女剣士の姿を見ていた。(志羅が小学校に上がったくらいの頃に10代の若手女優だったその役の女性は、20歳前に交通事故で亡くなっていた。)


サナトリウムの学芸会(?)みたいなシーンが長々あって、その辺りで集中力が切れてしまった残念な私…
「シラノ・ド・ベルジュラック」が脳内にあると、そこから飛び越えた部分を受け入れるのが、困難になる。たとえば、志羅が剣の達人である部分などはしっくりする。院長の代わりに、小夜への手紙を代筆するのも。
それ以外の物語がなかなか入り込まないのは、思い込みのせいなのか、原典シラノの強烈なストーリー力のせいなのか…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
サナトリウムという閉鎖された世界の中の、閉ざされた物語かと思っていたら、話は急展開。お隣の国を「中国」と呼ばず、仮名にしているのが変だな~と思っていたら、突然の戦争勃発[どんっ(衝撃)]
愛する小夜を守るために、命の期限を知った志羅は、戦争に行き、そして戦死する。志羅は45歳、小夜は24歳なので、院長の老いらくの恋までは行かないものの、ある程度年の差がある。年齢差を超えるほどの熱愛が存在するわけでもない。でも、志羅は、日本を…ではなく、小夜を守るために戦争に行ったんだよね。彼の愛は、そういう形でしか表現されなかった。
ああ…そういう純粋な、ただ一方的に見返りなく捧げられる愛…というのが、「シラノ…」なのかもしれない。


中国らしき国と交戦状態になった時、かの国が日本海側にある原発を一斉に攻撃したという。
その中に、「志賀原発」の名が出てきた。あまりにリアルで言葉を失った。
(この作品は東京公演の前に、京都・福岡で公演されており、北陸の地震でクローズアップされた原発の名前が出てくるのは、偶然。だからこそ、ぞーっとした。)


大原の歌声の美しさ、力強さが印象に残った。ミュージカルではないが。
段田が院長の複雑な胸の内を、見事に表現していた。
そして、鈴木浩介の存在感がたまらない…[ぴかぴか(新しい)]宮下雄也もいい味を出してたなぁ[黒ハート]


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少年社中「テンペスト」 [┣演劇]

少年社中25周年記念ファイナル 第42回公演
「テンペスト」


原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚色・演出:毛利亘宏


照明:斎藤真一郎
音楽:YODA Kenichi
衣裳:村瀬夏夜
舞台美術:秋山光洋(n10design)
舞台監督:横尾友広
音響:井上直裕(atSound)
振付:本山新之助
アクション指導:栗田政明(倉田プロモーション)
映像:森すみれ
ヘアメイク:林美由紀
演出助手:本藤起久子


原作者・シェイクスピアは、劇団の座付作家だった。新作の公演は、おそらく、上演時の劇団員に当てて配役されている。
不自然に劇中で登場しなくなるキャラクターは、初演当時一人二役で配役されていたのでは[exclamation&question]と言われているし、後年、演技経験の浅い少年が演じているはずのヒロイン役が複雑なキャラクターになったり、独白したり、エピローグを担ったりするのは、天才俳優が現れたか、大人になってもヒロインを演じられるような、日本で言うところの女形役者が育ったのか、それともこっそり禁断の女優が登場したか、研究者でなくても想像は止まらない。
シェイクスピア劇には、主人公やその相手役のようなメイン配役だけでなく、トリックスター、道化、脇筋の主役など、様々な役が配置され、劇団員のあっちにもこっちにも配慮しているな〜と感じることが多い。まさに、本作の作・演出の毛利さん[exclamation×2]
他の舞台では普通にダントツで主演している鈴木拡樹、矢崎広、鈴木勝吾の三枚を煌びやかに揃えて、劇団員の井俣太良主演の一作を作ってしまうのだから。 私が観た回は、そんな毛利さんが、日替わり配役の亡くなった劇作家の役を演じていたので、その「演劇への想い」を直に感じることもできた。
そして、「芝居」でも「劇」でも「舞台」でもなく「演劇」という言葉を使うから、どうしたって、「エンゲキ」というシリーズを作り続けていた【彼】を思い出してしまう。追い出された元主宰の演出家を再度受け入れて、その謝罪を信じよう、というのは、【彼】が戻ってきた時に、演劇界が【彼】にどう向き合うか、のひとつの答えのようにも思えた。
でも、ぶっちゃけ、私は、こんなパワハラ演出家(ギン=井俣太良)を受け入れることはできないし、どんな理由があったにせよ、現実社会で人を騙すために演技を使った【彼】を赦すのは、なかなかにハードルが高い。


にもかかわらず、ギンを受け入れるかどうかを、観客の(半ば強制的な)拍手に委ねた本公演は大きな問題がある。
鈴木拡樹に拍手を求められて、断れる演劇ファンがいるだろうか[exclamation&question]でもそれは、観客が鈴木拡樹を愛しているから、であって、パワハラ演出家を赦せたからではない。虎煌遊戯(ここうゆうぎ・作中の劇団名)がギンを受け入れ、彼と演劇をやっていこうとするのは勝手だし、その結果、よい芝居をやってくれるなら、私は観に行くかもしれない。でも、それは、話が閉ざされた世界の中で完結している場合だ。 現実にパワハラを見せつけられ、いまだに鉄拳制裁で役者を育てている演出家を「拍手で受け入れてください」と言われれば、私は拒否したい。
「テンペスト」の上演と現実の劇団の物語を結びつけ、綺羅星のようなスター俳優に見どころを与え、迫力の舞台を作り上げたことは素晴らしいけれど、赦せない思いを胸に、仕方なく拍手してしまったことは、長くトラウマになりそうな気がする。


鈴木拡樹は、堂々とした座長感を持っているのに、今回はトリックスターのエアリエル(本編では、ギンの送り込んだ俳優・ラン)。トリックスターらしい身の軽さと、口八丁手八丁の自由闊達さに加え、殺陣の迫力はお見事。
矢崎広は、「テンペスト」主役のプロスペロー(本編では、劇団2枚看板の一人、カグラ)。堂々としたプロスペロー役と生真面目で責任感が強く冒険できないカグラを見事に融合させてくる。少年社中でのぴろしは、彼のナイーブな面が透けて見えて好きだなぁ。
鈴木勝吾は、プロスペローに飼われている怪物・キャリバン(本編では、劇団2枚看板の一人、シュン)。いくらなんでも、二枚看板の一人をキャリバンにするだろうか[exclamation&question]と思うが、これが似合ってるから、毛利さんすごい。カグラのライバルは自分しかいないと自他ともに認めつつ、どこかで無理しているカグラを助けたいと願うシュンの優しさが沁みる。
萩谷慧悟は、かつてこの劇団のトップスターで、ギンが追われた頃に事故死した、伝説の天才俳優。冒頭から、劇場に住む幽霊のような存在として、観客の前に現れる。美しい。さすが伝説のトップスター。さらにダンスシーンが始まると、彼から目が離せなくなる。これって、以前、桐山照史にも感じたことなんだけど、やっぱ、あの事務所出身者って、目を引くダンスを踊れるよなぁ…(しみじみ)
本田礼生は、プロスペローの娘と恋に落ちる王子・ファーディナンド(本編では、劇団の若手俳優、ヒナタ)。空回りも含めて若さがキラキラしているヒナタ&ファーディナンドが眩しい。

井俣さんはじめ、少年社中の皆様方も適材適所、特に女性陣がみんな素敵[黒ハート]なだぎ武さんも、なぜか劇団員役が違和感なく、素敵でした[exclamation×2]


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明治座「西遊記」 [┣演劇]

日本テレビ開局七十年記念舞台
「西遊記」


脚本:マキノノゾミ
演出:堤 幸彦


音楽:植田能平
美術:松井るみ
照明:高見和義
音響:山本浩一
衣裳:宮本宣子
ヘアメイク:川端富生
映像:髙橋洋人
ステージング:広崎うらん
アクション:諸鍛冶裕太
演出助手:松森望宏
舞台監督:小川 亘
制作統括・プロデューサー:松村英幹


出演
孫悟空…片岡愛之助
三蔵法師…小池徹平
猪八戒…戸次重幸
沙悟浄…加藤和樹
玉竜…村井良大
紅孩児…藤岡真威人
鎮元子…田村心
玉帝・高伯欽…曽田陵介
虎力大仙…小宮璃央
高翠蘭…柳美稀
鹿力大仙…押田岳
羊力大仙…桜庭大翔
銀角…山口馬木也
金角…藤本隆宏
鉄扇公主…中山美穂
牛魔王…松平健


釈迦如来…藤原紀香(映像出演)
ナレーション…神田伯山


さすが、日本テレビ70年記念舞台だけあって、出演者が豪華[exclamation×2]
昨年、字は違うけど(by田村心)「最遊記」の外伝を観劇したので、天上の物語から始まったのも、胸アツ。
猪八戒が天蓬元帥、沙悟浄が捲簾大将として登場するシーンもあって、それがあることで、ブタやカッパに見えないイケメンの彼ら…というのが、納得できちゃうシステムというのはあるものの、私は勝手に「最遊記外伝」を思い出して、盛り上がっていた。
とにかく豪華キャストな上に、さらにお釈迦様=藤原紀香の巨大映像が登場。お釈迦様のてのひらの上で踊らされている孫悟空=片岡愛之助という設定が普通に笑えるのは、たぶん紀香様が本当は愛之助さんに献身的に尽くしているというのが伝わっているせいもあるんだろうと思う。


豪華キャストはさらに歌も歌っちゃう。考えてみれば、Wロナン(「1789」小池徹平加藤和樹)だし。ミュージカル俳優出まくりだし。
あと、村井良大加藤和樹の共演も「乾杯戦士アフター5」を思い出して感慨深かった。私、この作品で戦隊ものにはまっちゃったのよね~[わーい(嬉しい顔)]
妖艶な女子に溺愛される田村心とか、なかなか2.5作品では出てこない(少年漫画的世界なので)シチュエーションが面白かったり、「西遊記」の様々なエピソードが再認識できたりで、実に楽しい観劇でした。紅孩児役の藤岡くんは、20歳になったばかり…とか、すごいな。これがよい経験になりますように。


愛之助さん、カーテンコールでロンダードからのバク宙を決めてくれて、目がはぁとになりました[揺れるハート]


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明治座前の幟。トレジャー5のレッドとブルーが揃い踏み(わかる人にしか刺さらない[あせあせ(飛び散る汗)]


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「演劇ドラフトグランプリ」 [┣演劇]

「演劇ドラフトグランプリ2023」


企画・プロデュース:荒牧慶彦
総合演出:植木豪


演劇ドラフト会議MC:赤平大


構成:堀裕介
音楽:田中マッシュ、HILOMU
映像演出:佐々木章介
照明:大波多秀起
音響:山口剛史
映像操作:荒川ヒロキ
衣裳:伊藤祥子
ヘアメイク:瀬戸口清香
演出助手:杉山恵
舞台監督:堀吉行、久保健一郎


総合司会:山寺宏一
ナビゲーター:鈴木拡樹
楽屋レポーター:高木俊
アシスタントレポーター:田中涼星
特別審査員&国歌独唱:中川晃教
審査員:中野博之(週刊少年ジャンプ編集長)、川窪慎太郎(週刊少年マガジン編集長)、大嶋一範(週刊少年サンデー編集長)、松山英生(週刊少年チャンピオン編集長)、熊井玲(ステージナタリー編集長)


昨年から開催されている「演劇ドラフトグランプリ」、今年はお誘いいただいて、武道館に行ってきました[exclamation×2]
「演劇ドラフト」じたいは、コロナ禍の頃、2.5次元俳優の間で【おあそび】レベルでやっていたのを見たことがあるので、アイデアは目新しいものではない。
この企画のすごいところは、忙しい2.5次元界の俳優たちに、12月5日の本番を頂点とする何日かの稽古期間と本番をあけさせて、ドラフトに臨むというところだ。引き受ける方は、このドラフトグランプリが、やがては紅白レベルの国民的行事になってくれないと、割に合わない。なぜなら、ドラフト時点では、作品も役柄もまったくわかっていない状態だからだ。そんなオファーってなかなかない。
プロデューサーの荒牧慶彦は、2.5次元というコンテンツの市民権のために、常に多大なリスクを背負って、様々な企画を世に出している。12月、実は、一番演劇業界が忙しい時期なので、この企画を通す努力はすごいだろうなと思う。
そんな荒牧に共鳴し、ドラフトに登場した5人の座長。彼らが選択した「俳優」「演出家」「演劇テーマ」、そして登場順のくじ引き結果がどのような影響を与えるのか、ワクワクドキドキ[揺れるハート]しつつ武道館へ入場した。


総合司会:山寺宏一、ナビゲーター:鈴木拡樹、国歌独唱:中川晃教っていうのも、すごくよい人選だったな。
鈴木は、プロデューサーとして多彩に業界を活性化させていく荒牧に対して(まっきーだけじゃなく、ACTORS LEAGUEの黒羽くんとかに対しても…)、自分は俳優+αの仕事しかできないけれど、必要な時は言ってくれれば協力するよ、みたいに必ず登場してくれるのが嬉しい。しかも、本当に素敵なお言葉の数々、人柄が伝わる~[もうやだ~(悲しい顔)]
あと、審査員が演劇雑誌の編集長は1名だけで、残りが少年誌の編集長というのがまた面白い。20分の武道館での演劇対決の判定は、少年漫画の連載会議のようなものなのかもしれない。そして、その編集長たちのご挨拶がすべて揮っていた。
「演劇を観る方ではないが、今年はジャンプ作品が多く舞台化されたので、年間16本観劇した。年内にもう1本残っている。呪いのやつが…」(ジャンプ編集長)
 「自分は「進撃の巨人」の担当をやっていて、舞台化の時も観劇している。今日、その時の出演者も出ているが、誰も挨拶には来なかった。挨拶があれば手心を加えたかもしれないがガチで行く」(マガジン編集長)
「総合司会の山寺さんとは、新入社員の時、コロコロコミック担当で、「おはスタ」に出ていて以来。懐かしいです」(サンデー編集長)
「先週金曜日に編集長の辞令を受けまして、今日が編集長としての初仕事です。よろしくお願いします」(チャンピオン編集長)
さすがすぎる…この編集長たちを納得させる芝居しなきゃならないんだな~[あせあせ(飛び散る汗)]
(かつて、「バクマン。」という作品を観て、少年誌で連載を勝ち取るのって奇跡の上に奇跡が重ならないとダメなのでは…[exclamation&question]と思ったっけ。)


ということで、以下、登場順に感想です。


「劇団びゅー」
座長:高野洸
メンバー:北川尚弥、高木トモユキ、古谷大和、松島勇之介
脚本・演出:松崎史也
演劇テーマ:天気
原案協力:古谷大和、高木トモユキ
脚本協力:上城友幸
音楽:Yu(vague)
演出助手:小林賢祐


衣装とメイクでしっかり、神話的世界観を作る一方、テーマの「天気」については、手元のiPadに映像を映し、それがプロジェクターにアップで映されることを見越して表現する…というのが、ジャンプ編集長さんもおっしゃってたけど、手練れだな~と思った。
アマテラスの天の岩戸隠れ付近のエピソードを描いているのだが、出演者のキャラクターがアニメ並みにハッキリしていたり、「うけい(誓約)」についても説明なく進行するけどちゃんとわかる!など、20分という制約ゆえに通常の演劇とは少し違うものを提供していたが、その中で、こちらの感情に訴えかけるものがしっかりあったのは、素晴らしかったと思う。
高野洸のスサノオを始め、俳優陣が、誰一人欠けても成り立たない、素晴らしい個性を見せてくれたのも良かったし、衣装やメイク、すべて手を抜かずに力を入れていて、20分でも総合芸術であることを見せつけたのも、素晴らしいと思った。高木トモユキは、さらったよね、客席を[黒ハート]


「劇団国士無双」
座長:染谷俊之
メンバー:糸川耀士郎、椎名鯛造、鳥越裕貴、長妻怜央
脚本・演出:中屋敷法仁
演劇テーマ:宝箱


クリスマス、サンタ、トナカイ、紛争中の国の子供…容赦なく勝ちを取りに来たな[爆弾]というのが、スタート直後の印象。子供たちの本当に欲しいものが出てくる宝の箱。そして、1年間本当にいい子でいないと、プレゼントがもらえない設定。そんなサンタの世界に疑問を持ち、紛争地域の少年に肩入れするサンタと、彼の身を案じてわざと厳しい言葉を掛ける仲間のサンタ。(案じてるってのは最後にわかる)
2頭の赤鼻のトナカイは、どちらも愛らしくサンタを補佐する。1年間必死に良い子で居続けた少年が欲したのは、自動小銃だった。サンタは身を挺して(本当は死なないけど)少年に銃を使うことの虚しさを知らせる。
少年が本当にほしいもの、それは「平和」であるべきなのだが、生まれた時から戦時下にある少年には「平和」がどういう状態なのか、正しく理解できはしないだろう。そういうことも考えさせられる作品だった。
ただ、若干、脚本(と脚本家の主張)が前面に出ている気がして、「演劇グランプリ」としては、役者が前面に出ているものを推したかったので、その部分が私的にはマイナスにはたらいた。
糸川耀士郎の芝居が良かったな~[ぴかぴか(新しい)]この少年の人生を長尺で観たいと思った。
椎名鯛造鳥越裕貴がかっつり組んだら、最強の「エンゲキ」が観られると思うのだが、敢えてのトナカイコンビ、敢えての…というのがツボだったし、長妻怜央の異質さをいい感じのスパイスにしているのもうまかった。


「劇団一番星」
座長:荒牧慶彦
メンバー:木津つばさ、高橋怜也、福澤侑、松井勇歩
脚本・演出:川尻恵太
演劇テーマ:アイドル
音楽:あらいふとし、ミヤジマジュン
振付:福澤侑


アイドルのステージ[exclamation&question]と思いきや、そこに踏み込んでくる刑事。
アイドルの影響力の大きさを恐れた国の手によって「アイドル禁止法」が成立、こっそりアイドルになろうとする若者は獄につながれてしまう。刑事の前で、必死にアイドルであることを隠そうとする4人。
しかし、刑事のオタ芸の前にとうとう耐え切れずアイドルであることを自白する4人。が、刑事は、4人の真摯な姿に、自らのアイドル願望に気づいてしまうのだった。
そんなわけで、メンバーが一人増え、伝説のアイドル、スターズと同じ5人組となった彼らの未来は明るい[exclamation&question]
刑事役の荒牧を加えたアイドルステージが、2番まであるフルコーラスで、これは演劇なのだろうか、寸劇+ライブなんじゃないか、みたいな印象を持った。
設定は面白かったので、もう少し、芝居部分でいろいろな展開を観たかった気がする。
あと、「ファンサを見せ」て客席を喜ばせるのはよいことだけど、それにここは武道館だったりもするけど、「演劇グランプリ」って言ってるんだから、それで票を稼ぐのは違うだろうと思った。
着替えNGにはギリギリ抵触しないとは思うものの、他の劇団がガチで着のみ着のまま演じていたこともあり、アイドル衣裳の着脱は気になった。
※伝説のStarS(井上芳雄・浦井健治・山崎育三郎)がいつの間にか5人組になっていて、あと二人は誰なんだろう[exclamation&question]と盛り上がったが、ここは城田優と加藤和樹を加えて5人組というのはいかがでしょうか。


「劇団品行方正」
座長:七海ひろき
メンバー:加藤大悟、唐橋充、後藤大、廣野凌大
脚本・演出:三浦香
演劇テーマ:待ち合わせ
音楽:TAKU
振付:YOU
演出助手:國重直也
振付助手:柳原華奈


一人の男が青年と謎の陣取り合戦を繰り広げている。この場所をキープしなかればならないらしい。
そんな不条理劇風のスタートから、上下日本代表ジャージ姿の唐橋が登場し、どうやら、ここで美女と待ち合わせらしいということが判明してくる。そんな風に少しずつ状況が明かされてくると、かつてシンクロ(現在はアーティスティックスイミング)で金メダルを取ったコンビが分裂し、片方は芸能活動をしている…みたいなことが分かってきて、でも本当は仲違いしたかったわけではなくて…みたいな展開になりつつ、結局二人は同じ女性に騙された国際ロマンス詐欺の被害者同士だったという、もうどこから突っ込んでいいかわからない、ハチャメチャ展開の物語。
結局のところ、三浦香さんは、七海ひろき×唐橋充のシンクロ演技(ダンス)が見たかったってことでFAでしょうか[exclamation&question](しかも歌唱:加藤大悟で)
(AS競技に男性デュエットは存在しないんですけどね)←まあ、こんなことも含めて、ちょっとこの作品はNOT FOR MEだったかも。好きな俳優さんばかりの座組ではありつつ、まとまりが悪いというか、色の違いを揃える(シンクロ)こともなく、違いをキャラ立てて演劇的に楽しめる方向でもなく…。
ただ、「愛のシンクロ」が名曲すぎ、振付が天才すぎて一瞬すべてを忘れそうになった。


「劇団恋のぼり」
座長:玉城裕規
メンバー:石川凌雅、小西詠斗、萩野崇、服部武雄
脚本・演出:私オム
演劇テーマ:初恋


演劇ドラフトにおいて、ベテラン枠俳優をどうポジショニングするかは、かなりキーになっていると思う。5人で演劇を作る…と考えた時、あえてそこにベテラン枠の俳優を突っ込まなくてもいいという考え方もある(国士無双・一番星)し、ベテランと思わせておいてあえて主役に使う(品行方正)考えもある。
「恋のぼり」は、主人公の大人になった姿(回想者)として、萩野を使った。これによって、設定は悲惨な沖縄戦であるものの、少なくとも登場人物全員が死亡するバッドエンドだけはないことが約束されていて、それがけっこうラストまでの私の耐久力につながった。
萩野以外の4人は没個性の衣装・髪形で、軍に奉仕する形で首里城地下に軍司令部を置くためのトンネル掘りをしている。そこで初恋の話をしたり、自分たちの名前に「城」の字がついている共通点を語ったり。没個性に見える4人の個性が、だんだん語らいの中で見えてくる丁寧な作りがいい。
そして、主人公が隣に住んでいる「玉城さん」(女子)に好きと言えない気持ちで悶々と悩んでいるところから、まさかの「降伏の白旗=鯉のぼり」という発想の大転換が大感動を呼ぶ。スローモーション風の演技と、萩野のナレーションが重なり、「この美声、ずるくない[exclamation&question]」と思ってしまった。
そこでまた、現在の萩野が少年時代の彼にリンクして、米軍に包囲された中、玉城さん(ここは布を被って玉城裕規が扮する)を助けに行くという展開が美しく、ほっこりとしてしまった。もちろん、戦争の悲惨さというのは十分に伝えつつ、局地的なほっこり感動展開というのは、ちゃんと作れるし、そこを両立できるのはすごいな…と思った。グランプリは本当に文句なく彼らのものだと思った。


戦争とか重いテーマでも大丈夫なんだ…というのは、先に「国士無双」があの作品をやっていたから思えたのだと思うし、あまりに「品行方正」が荒唐無稽すぎたから、ちゃんと演劇見たいな、と思ったところに出てきたというのも大きくて、登場順というのにも左右されたとは思う。
でも、今回は、「恋のぼり」のグランプリ、大納得でした。


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終演後の盛り上がり、雰囲気だけですが、ご覧ください。


 


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「アメリカの時計」観劇 [┣演劇]

「アメリカの時計」


作:アーサー・ミラー
翻訳:高田曜子
演出:長塚圭史


美術・映像:上田大樹
照明:横原由祐
音響:池田野歩
衣裳:阿部朱美
ヘアメイク:赤松絵利
演出助手:鈴木章友
舞台監督:足立充章


制作:田辺千絵美、西原栄
プロデューサー:笛木園子
チーフプロデューサー:笛木園子、伊藤文一
事業部長:堀内真人
芸術監督:長塚圭史
主催・企画制作:KAAT神奈川芸術劇場
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会


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左に行けばホール公演「ブラッククローバー」、右に行けばスタジオ公演「アメリカの時計」。
振り幅が広いKAAT[exclamation×2](ま、私も両方観るヒトですが。)


1980年に書かれたアーサー・ミラーの戯曲。
1929年のあの大恐慌がアメリカの普通の家族に与えた影響を細かく描いている。演出の長塚圭史は、スタジオに砂を敷きつめ、そこで恐慌で進学を諦め、人生が変わってしまったリー(矢崎広)に自転車を走らせたりしている。また、リーおよび彼と一緒にMCを担当するアーサー・ロバートソン(河内大和)、そしてリーの父母(中村まこと・シルビア・グラブ)のほかは、全員が複数の役を演じ、少ない人数で多様な物語を描き切る力作だった。
その分、少し分かりづらい(この人、誰だっけ?)みたいな部分もあったが、それは、もしかしたら、些末なことなのかもしれない。
リーの一家の物語というよりは、あの当時のアメリカ人の物語という部分を強調したかったのかな[exclamation&question]


アメリカという国全体が歴史上危機に見舞われたのは、二度だけ。それは、南北戦争と大恐慌。
アーサーが語る大恐慌前夜の物語は、決して忘れてはならない教訓のように感じた。株は上がっても下がることはないーそう思って、お金持ちも一般庶民も次々に株式投資に走っている。いつか弾けるバブル…どこかで聞いたことのある響きだ。
アーサーが損をしなかったのは、「物が売れていない」という当たり前の事実に「気づいた」からだ。だから、株から手を引き、現金や金に換えて、身に着けて守った。
株が大暴落して銀行が取り付け騒ぎを起こし、誰もがすべてを失った。アーサーだけが気づいたのではない。しかし、多くの人は、バブルが弾けることから目を逸らしていた。ローリング・トゥエンティ(1920年代)は、転がり続けることでしか、身動きの取れなくなってしまった時代なのかもしれない。フィッツジェラルドは、「ジャズエイジ」と呼んだが、ジャズという言葉の持つ「自由」とは反対に、誰もが同じ方向を向いて突っ走り、そうでないと生きていけなかった窮屈な時代だったのかも…と、思ってしまった。
それって、現代にも通じるのかな。ふるさと納税とか、マイナポイントとか、「やらないと損する」みたいな勢いでみんな手を出しているけど、それって、自分たちの首を絞めてない[exclamation&question]みたいな。


冒頭、毛皮のコートに身を包み、毎週、新作のミュージカルを楽しんでいたゴージャスな母・ローズは、どんどん貧しくなり、借金取りから逃れるために窓も開けられない状態になる。
リーも公共事業促進局で仕事をもらうために、必死になっている。父親と不仲の振りまでして。
フーバーの後に大統領になったフランクリン・ルーズベルトのニューディール政策は、歴史の教科書でも学んだが、当初はなかなか効果が出なかったらしい。肌感覚で知っていたアーサー・ミラーならでは、だと思った。
そして、長い不況の後、ようやくルーズベルトの政策が効いてきた時、彼らがどれだけ安堵したか、幸せを感じたか、そこは物語の終わった後の世界だが、そこまで思いを馳せることができるような、奥行きのあるドラマだった。(そりゃ、4期も大統領やるわな)


この間、46歳のパパを演じていた矢崎が、ここでは高校生からスタートする青年役。どちらも違和感がないのがすごい。いや、すごいのは知っていたけど。時代に翻弄される若者を等身大に演じていて、とても良かった。
河内は、バルカ共和国の外務大臣(@VIVANT)で「見たばかり」の方だったので、内心、盛り上がった。スーツ姿だとスマートな雰囲気。またまた気になる役者を見つけてしまった。
おじいちゃん役の大谷亮介、ドクターなどを演じた天宮良が脇を固め、いぶし銀の輝き。
先日までゆうひさんと共演していた大久保祥太郎くんも活躍していて、楽しく応援した。


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「我ら宇宙の塵」観劇 [┣演劇]

EPOCH MAN
「我ら宇宙の塵」


作・演出・美術:小沢道成
映像:新保瑛加
音楽:オレノグラフィティ
ステージング:下司尚実
舞台監督:藤田有紀彦
照明:奥田賢太
音響:鏑木知宏
パペット製作:清水克晋
衣裳:西川千明
ヘアメイク:Kazuki Fujiwara
演出助手:相田剛志
舞台監督助手:磯田浩一


すごく面白い演劇を観た。
事故で亡くなった少年のお父さん。お父さんは、どこへ行ってしまったんだろう[exclamation&question]
少年は、どんなことも深く知りたがる性格で、母親(池谷のぶえ)はそれで困ってしまうことも多かったが、亡くなった父親が、少年に宇宙のことを教える。少年は夢中になって宇宙について学び、父と話し、日々を過ごした。その父親を失った少年は、母親とはほとんど言葉を話さず、ひたすら絵を描いていた。ある日、少年が姿を消しー


少年が姿を消したところから物語は始まる。
母親は、出会った人々に息子を見ませんでしたか?と聞くが、鷲見昇彦(渡邊りょう)と早乙女真珠(異儀田夏葉)は、なぜか一緒に探すと言い出し、まるで桃太郎と犬猿雉のように、一人ずつ仲間が増えていく可笑しみがある。
三人は、プラネタリウムに到着し、そこに少年(パペット)が来ていることがわかり一安心するのだが、鷲見(ペットロス)や早乙女(亡き母の呪縛)の問題や、「人が死んだらどうなるのか」という大人も本当のところは知らない命題を子供にどう説明するのか、という大命題が登場し、なかなかに哲学的。
舞台の背景に登場する映像はとても印象的(線画アニメみたい?)だし、パペットを作・演出の俳優、小沢道成が操作し、ある場面では、彼こそが亡き父親そのものだったりしていて、どんどん、物語に引き込まれていく。


演劇的な面白さの中に、日常生活の中で感じる悲しみや不安、人はなぜ生まれて死ぬのか、みたいな大きな命題が、普通に同居している。しかも、私たち、煙になって宇宙に昇って行けば、普通に星になるじゃんねー(by星太郎少年)と、変に納得してしまった。大人なのに。
不思議に心地よい空間だった。
すてきなおばあちゃん(ぎたろー)の居るプラネタリウム、行ってみたいな。


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朗読劇「四つの署名」 [┣演劇]

リーディングシアター
「四つの署名」


原作:アーサー・コナン・ドイル
脚本・演出:毛利亘宏(少年社中)
音楽:YODA Kenichi


舞台監督:西川也寸志
演出部:伊藤ほのか
舞台美術:秋山光洋(n10design)
美術助手:秋山えり(n10design)
大道具製作:俳優座劇場
生花装飾:毛利華世
照明:齋藤真一郎
音響:井上尚裕(atSound)
衣装:村瀬夏夜
衣装進行:秋山友海
ヘアメイク:遠田ひとみ
演出助手:廿浦裕介
美術協力:n10design
小道具協力:高津装飾美術
ヘアメイク協力:LaRME、株式会社エノン
照明機材協力:ART CORE
運搬:マイド

制作:一ツ橋美和(シャチュウワークス)、宮本綾子(シャチュウワークス)
プロデューサー:井手響太(文化放送)、中村恒太(東映)
アシスタント・プロデューサー:高橋悠太(文化放送)、川崎紗也子(東映)
制作協力:シャチュウワークス
主催:東映、文化放送


8月4日夜公演観劇
ホームズ:矢崎広
ワトソン:仲村宗悟


様々な俳優が、ホームズ・ワトソンに扮して行われる朗読劇、以前「緋色の研究」を見て、矢崎広のホームズやワトソンにすっかり魅了されたので、今回も矢崎の公演を目指して観に行った。
とはいえ、このシリーズ、毎回、私好みの俳優が入れ代わり立ち代わり出演するので、全部観たい[黒ハート]と、毎回、歯噛みしてしまう。
今回は、有澤樟太郎・細谷佳正・赤澤遼太郎・矢崎広・長妻怜央(7ORDER)・仲村宗悟・濱健人・岡本信彦・鈴村健一・島﨑信長というメンバーが、ホームズとワトソンに扮した。出演陣に声優が加わったことにより、朗読劇としてのレベルも大きく上がり、面白い作品になったと思う。
2012年頃と違い、「憂国のモリアーティ」にハマっている現在、「四つの署名」は基本中の基本なので、ストーリーを追うというよりは、メアリや双子の兄弟など主要人物の演じ分けがどんな感じになるのか、興味津々な感じ。特にメアリは、基本的にワトソン役の俳優が、その他の人物を演じ分けることが多いのだが、ワトソンとの会話も多いため、途中でホームズ役の俳優が、その役割を引き取って演じるような演出があり、そこでホームズ役の俳優の演じる女役も楽しめる。この辺りは、ちょっと笑いをとる演出にもなっているので、見どころのようだ。


矢崎のホームズは、明るめの青いスリーピースを着こなし、ダンディでかっこいい。相手役の仲村宗悟は、今年大ヒットした映画、「THE FIRST SLUM DUNK」で宮城リョータ役を演じていて、公演パンフレットによると、矢崎は映画を見て大感動したそうだ。
案の定、途中で、スラムダンクネタのアドリブを仕掛けてきた。客席も大盛り上がり。矢崎としては、してやったり、だろう。仲村も苦笑い。
ワトソンとメアリ・モースタンとの会話では、メアリ役も演じ、そこでも笑いをとる。
全般的には、都会的で、紳士的、でも女性に厳しくて、犯罪解明に対して偏執的ともいえる執着を見せ、刺激の足りない人生をコカインで紛らわす退廃的な部分も隠さない、実にホームズらしいホームズだったと思うが、公演パンフレットで本人が危惧していた通り「まず朗読劇の最低限のルールとして噛んじゃいけないんですよ。噛むことはお客さんを置いていく行為になるので、何があっても絶対に噛んじゃいけない」の部分が、少し残念だった。
こればっかりは、その日の空気で大きく変化するものなんだろうな…と思う。
一方の仲村は、ワトソンとしてホームズに寄り添い、優しさでメアリを包み、温かくて素敵でした。


よき朗読劇だったので、別のシリーズも観劇したいと思った。


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