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「憂国のモリアーティ」配信 [┣ミュージカル・音楽劇]

ミュージカル
「憂国のモリアーティ」Op.2‐大英帝国の醜聞‐


原作:構成=竹内良輔、漫画=三好輝『憂国のモリアーティ』(集英社「ジャンプSQ.」連載)
脚本・演出:西森英行

音楽:ただすけ


振付:MAMORU
殺陣:六本木康弘
舞台監督:野口岳大
美術:松本わかこ
照明:大波多秀起
音響:ヨシモトシンヤ
映像:ワタナベカズキ
衣装:三浦志穂
ヘアメイク:中原雅子
小道具:羽鳥健一
歌唱指導:水野里香
演出助手:佐藤優次
制作進行:麻田幹太
主催:マーベラス、TCエンタテインメント


「憂国のモリアーティ」という舞台作品があることには少し前から気づいていて、“モリアーティっていうと、シャーロック・ホームズ最大の敵、ジェームズ・モリアーティ教授が浮かぶよな~”と思っていた。原作マンガのことは全然知らなかった。
今回のミュージカルには、アイリーン・アドラーが登場し、大湖せしるが演じる。アイリーン・アドラーは、シャーロック・ホームズ短編シリーズ「ボヘミアの醜聞」に登場する女性で、女嫌いのホームズが、唯一「あの人」という呼び方で口にする女性だ。



コミカル・ミステリー・ツアー コミック 1-4巻セット (創元推理文庫)

コミカル・ミステリー・ツアー コミック 1-4巻セット (創元推理文庫)

  • 作者: いしい ひさいち
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2006/07/11
  • メディア: 文庫



こちらでは、かなりひどいパロディになっているが、ホームズシリーズを知っている方は、4コマで描かれる各作品にあらゆる感情が呼び覚まされること請け合いです。
私は、子供のころに、ホームズやルパンのジュブナイル版を読んでいて、実は、ホンモノをちゃんと読んでいなかったりするのですが、このマンガシリーズで、かなり思い出しました[るんるん]
それと、シャーロック・ホームズについて…という講座を受けたことがあって、その中で、19世紀末のロンドンに貧困層が溢れていたことを知ってたのも、作品世界を知るうえで役に立ったかな…と感じた。
蒸気機関の発明に端を発した産業革命は、そこで働く貧しい人々と、そこから莫大な利益を得る金持ちに、市民を二分した。というよりは、そもそもロンドンに住めないような田舎の貧困層が、産業革命によって、大量に都会に出てきたというのが正しいかもしれない。貧困層にとって、田舎と都会の違いは、住処だ。田舎なら、家がなくても広々として空気のよい、雨露をしのぐ場所が色々ある。が、都会には、ねぐらがない。
労働者たちはタコ部屋にぎゅうぎゅうに押し込まれて働かされていた。彼らが抱える闇の深さを思うと、胸が痛む。それが、ビクトリア朝末期の英国だった。
(この頃、夏目漱石が留学していて、ちょうどビクトリア女王の葬儀を留学中に体験している。彼女は1901年に亡くなったので、20世紀のイギリスは、偉大な女王の死から始まったことになる。)


ミュージカルは、「ボヘミアの醜聞」をベースに、物語世界をさらに広げ、フランス革命の真実に関わる大英帝国の醜聞の流布を阻止するというストーリーになっている。みんな大好きロベスピエールのまさかの正体など、宝塚ファンも大喜びする内容じゃないかと思う。
美人の誉れ高い大湖せしるを起用、元男役だったせしこに男装でボヘミア王に扮するアドラーをやらせるなど、使い方を心得てるな~と思った。娘役に転向して8年たってもこれだけやれるんだな~[黒ハート]


さて、ジェームズ・モリアーティは、本作では、モリアーティ家の養子2人を含む3人を指す。主人公は、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ(鈴木勝吾)。歌声がめちゃくちゃ魅力的だ。彼の琴線に触れる高音をふんだんに使った楽曲が、どれも美しくて、感動[黒ハート]
モリアーティ家の本物の息子であるアルバート・ジェームズ・モリアーティ(久保田秀敏)。退役軍人で、MI6の影の司令官。その上司的な立場になるのが、マイクロフト・ホームズ(根本正勝)、つまり、シャーロックの兄…というのが、面白い設定。
ウィリアムの実弟で孤児から引き取られた、ルイス・ジェームズ・モリアーティ(山本一慶)。メガネのクールビューティ。ウィリアムとルイスは見事な金髪。
対するシャーロック・ホームズ(平野良)は、黒髪のワイルドな青年。歌声も、魂をぶつけるような感じ。名探偵と言いながら、けっこう失敗もあって茶目っ気がある。
そんなシャーロックに翻弄されるのが、もちろん、ジョン・H・ワトソン(穂苅健太)。ホームズとワトソンの関係は、他のホームズものとちょっと違っている。ホームズが憂愁の貴公子風ではないからかな。でも、好敵手に飢えて、現実に倦んでいる雰囲気はあった。犯罪卿(モリアーティ)への渇望は、恋のようだった。
あと、貴族階級を強く憎むモリアーティと、犯罪を憎むホームズは、同じ相手を敵として共闘できる関係にも見えるが、犯罪によって敵を追い詰めるモリアーティとは、根柢のところで分かり合えないのだろうな。


ちょこっと見ただけでは、物語の奥底にある複雑さを理解するのは難しいが、「大英帝国の醜聞」というテーマについては面白く見ることができた。


ミュージカルらしく、歌がふんだんに出てくるし、どれも名曲。せしこの歌には、少々手に汗を握ったが、あとは皆さん、ほんとに素晴らしくて。伴奏は、ピアノとバイオリンの生演奏。これがまた素晴らしかった。それだけの伴奏でこれだけの表現ができるのか…と、うれしい驚き。
また公演があったら、ぜひ、生で観てみたい[exclamation×2]と思う配信だった。


そういえば、このミュージカル「憂国のモリアーティ」は“モリミュ”と呼ばれていて、ほかに、“モリステ”というのがあるらしい…と聞いて調べてみる。ウィリアムは、アラマッキー(荒牧慶彦)か[exclamation×2]
ということは、「法廷の王様」は、W犯罪卿の共演だったの[exclamation&question]…皆さん、善から悪まで、役者ですね[exclamation]


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