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宝塚宙組東京特別公演「FLYING SAPA」観劇 [┣宝塚観劇]

「FLYING SAPA」


作・演出:上田久美子
作曲・編曲:青木朝子、三宅純
振付:前田清実、AYAKO
擬闘:栗原直樹
装置:二村周作
衣装:有村淳
照明:勝柴次朗
音響:実吉英一
小道具:西川昌希
歌唱指導:KIKO
映像:上田大樹
演出助手:町田菜花
舞台進行:中島瑞紀
舞台美術製作:株式会社宝塚舞台
録音演奏:宝塚ニューサウンズ
制作:阿部望
制作補:小坂裕二
制作・著作:宝塚歌劇団
主催:阪急電鉄株式会社、株式会社梅田芸術劇場


2階席だったが、幸運にも日生劇場で観劇することができた。


本当なら、赤坂ACTシアターで観劇するはずだった「FLYING SAPA」を観劇するはずだった日から5ヶ月以上経ってようやく観ることができた。
事前に情報を一切入れず、まっさらな状態で観劇。
(このような状況下で、勇気あるな、オレ…[あせあせ(飛び散る汗)]


上田先生が「月雲の皇子」で衝撃デビューしてから、もう7年になるのか…
贔屓と呼べる存在を作らずに6年ヅカファンやってきて、それでもどうにかファンを続けている大きな理由のひとつに、「上田先生の新作を観たい!」というのがある。これまで、1作も「はぁ[exclamation&question]」と思う作品がなくて、安定感抜群なのに、ひとつのテーマに拘ることなく、あらゆる時代のあらゆる物語を紡いでいる。
そんな上田先生の今回のテーマは、水星[あせあせ(飛び散る汗)]


遠い未来、太陽の活動が弱まり、地上は、終末戦争に突入した。その後、より太陽に近い水星へと脱出することにした一部の人類は、水星ーポルンカーに降り立つ前に、生命維持装置「へその緒」を利用して、装着した人々の思考を含むすべてのデータを管理することで、平和な世界を築こうとする。彼らは、総統01の指導の下、ポルンカ語を共通語に、平和で文化的な生活を送り、15年の歳月が流れた。
こうして、ポルンカでは、攻撃的な思考をするだけで、拘束され、更生プログラムを施される。更生不可能な者については、記憶を消され、兵士として、攻撃的な思考を見つけて捕まえる側に回される。
主人公のオバク(真風涼帆)は、そんな風に記憶を消され、兵士として4年の歳月を過ごしていた。ある日、「へその緒」を壊して自殺しようとしている女の思考をキャッチしたオバクは、彼女を助けようとしたが、02という管理番号を持つ女(星風まどか)は、オバクに、自分を「SAPA」へ連れていけと言う。
SAPAとは、水星最大のクレーターで、ここでは、磁気の影響により、「へその緒」は作動するが、個人データはキャッチされないらしい。
訪れてみると、SAPAには、そこに到達すれば、夢が叶うという聖地があるらしく、聖地を訪れようとする巡礼者や、02(名はミレナ)のように、何かから逃れようとする人々(基本は犯罪者)などがたむろしている違法のホテルがあったー


2幕が始まったくらいで、ふと、気づく。
なんか、ここまで誰も歌ってない…[exclamation&question]
そして、思った。ああ、別に歌わなくてもいいな…と。
ダンスも大仰なものはなかったが、作品を途切れさせないダンスと殺陣にタカラヅカを感じたので、別箱公演なら、この程度の冒険はあってもよいのかもしれない…と、上田先生の新しい挑戦を好ましく感じた。
(宝塚にストレートプレイがなかったのか…というと、これまでも別箱で、「花供養」とか「武蔵野の露と消ゆとも」など、あることはある。)
宝塚歌劇の本公演は、基本スタイルが、芝居1時間半+ショー1時間で、芝居はミュージカルプレイとなっている。なので、それほど複雑なドラマを作ることはできない。せいぜいテレビドラマ1回分の内容と考えていいだろう。そこで完結させるんだから、そもそも宝塚の脚本家は神だと思う。
別箱公演は、芝居+後付ミニショーで2時間が基本。休憩含めて2時間半が多いが、3時間の公演もある。
この公演は、芝居のみ(まさかのミニショーもなし[爆弾])で2時間20分…タカラヅカ史上最長じゃないか、これ[あせあせ(飛び散る汗)]
それでいて面白かったのが、壮大な話ではなくて、少ない出演者で物語を丁寧に紡いで、主筋だけでなく脇筋も丁寧に描くことに時間を使っていること。「別箱しかできないこと」をすごく分かってるんだな、と感じた。


上田先生の作品を観ると、タカラヅカには、まだまだ、やれることがある[exclamation]と、希望が湧く。
物語は、未来の話=SFだけに、実は歴史ものより、固定観念が邪魔をする。歴史ものだと、正史にはこう描かれているが、こうだった可能性も[exclamation&question]みたいな想像は無限に広がる。それは、正史というものが固定しているから、とも言える。
しかし、未来については、完全フリーだ。この場合、既存作品(つまりSF)がひとつのベースになったりする。それと、科学的なベーシックの知識
太陽は、核融合反応が突然弱まったりするものなのか…通常、恒星は、核融合反応の熱によって徐々に膨張し(太陽系の場合、この段階で地球は飲み込まれてしまう)、赤色巨星になっていくわけで、核融合反応が弱まって冷えていくから水星に移住なんて考えられないし、だいたい水星に大地なんてあるの[exclamation&question](高温のため)とか、思ってしまうけれど、多くの星(恒星)の一生を我が太陽が辿るとは、誰にも言えないし、いろいろ、固定観念を捨てた方が、SFも可能性が広がるんだろうな…と、舞台を観ながら考えた。


さて、この作品、太陽の熱が弱くなってきた⇒地上の生活がままならなくなる⇒残された資源を奪い合って最終戦争が起きる⇒無秩序状態⇒一部の人々が新天地を求めて水星へ移住…という設定になっている。水星へ移住できるのは、(細かく描かれていないが)この宇宙船に乗れるだけの富裕層と、彼らの生命維持に必要な知識・技術を持った人々(科学者・技術者)だったようだ。
ブコビッチ(穂稀せり)は、科学者として、船に乗り込む。彼の家族は死んでしまった。そして同じようにひとりぼっちだった少女、ミレナを娘と偽り、船に乗った。同じ船に乗っていた科学者ロパートキン(星月梨旺)は、ジャーナリストの妻・タマラ(瀬戸花まり)と息子のサーシャと一緒に船に乗っていた。ブコビッチは「へその緒」を発明し、水星の地上での生活に目途がついたのだが、彼はさらに「へその緒」とロパートキンの開発した思考のデータ化機能を一体化して情報を一箇所に集め、危険思想を排除することを提案する。それが決裂して、ブコビッチがロパートキン夫妻を殺害、独裁者として水星=ポルンカの総統01に就任したことが、サーシャだったオバクの記憶とともに、舞台上に提示される。
ブコビッチとロパートキンは、それぞれ姓であろうと思うが、その語感から、ロパートキンはロシア、ブコビッチは東欧(旧ユーゴとかその辺?)の姓に聞こえた。
私のような昔の人間には、旧ソ連時代の支配する側と抵抗する側に感じられて、さらに、肉親を失った疑似家族のブコビッチ&ミレナと完全な家族であるロパートキンという対比も感じた。主な登場人物の名前から考えるに、この水星に逃れた人々は、旧ソ連+東ヨーロッパ辺りの人々なのかな。その周辺の国々が最終戦争に勝ったのか、たまたま使える宇宙船がそこにあったのか、あるいは、アメリカ辺りでは、恒星間移動も可能な宇宙船でどこかに飛び立ったのか、詳しいことはわからない。でも、登場人物の名前ひとつとっても、敢えてそっちを選ぶか[exclamation×2]みたいな気概を感じる。タカラヅカ的には、英米語系、フランス語系、ドイツ語系の名前が普通だから。
そう考えると、「イエレナ」という名前は、「イェレナ」の方が正しいのかもしれない。ELENAのロシア語的な発音がそうだから。


それでは、簡単に出演者感想を。
真風涼帆(オバク)…記憶を失くした兵士という虚無な存在が、ミレナによって感情を呼び覚まされ、記憶を取り戻して、強い憎悪や、激しい恋慕を少しずつ取り戻していく…という役柄が似合いすぎて。最初の方は、「オーシャンズ11」の時みたいな、語尾の変なアクセントが気になったが。(あの「〇〇だぁ~」っていう話し方、クセが強すぎて、やめた方がいい。)記憶を取り戻し、過去を清算したら若返った感じで、最後は、希望そのものになっていて、素敵だった。そういえば、ラストシーン、マサツカかと思った(笑)宝塚のSFものを開拓してくれた正塚先生へのオマージュなのかな。
星風まどか(ミレナ)…総統の娘で後継者。でも本当の娘ではない。地球を脱出する際、あまりにも酷い目にあったため、過去の記憶を失くしてしまった。総統の後継者になるくらいなら死にたいと思い詰めていたが、事件解決後は、新しいポルンカのために生き生きと働いていて、オバクあらためサーシャを自分からは選ばない…というのも一風変わっていて面白かった。トップ娘役になってだいぶ経ったが、あいかわらず少女役がうまいな[揺れるハート]
芹香斗亜(ノア)…精神科医。サーシャを中心とする反政府活動に身を投じ、その戦士となったイエレナを見守るうちに愛情を感じ始めている。無償の愛を捧げる姿が、決して卑屈にならなくて、毅然としているのが、芹香というスターの矜持のようで、「金色の砂漠」に続いて、今回も、こういう役どころ。上田先生の絶大な信頼を感じる。
汝鳥伶(総統01)…汝鳥さん、どこで出てくるんだろう[exclamation&question]と、楽しみにしていたが、なかなか出てこない。じらしにじらして、後半、一気に投入してくる上田先生…たしかに、ラスボスだもんね。今回も、サイコーでした[exclamation×2]SF的作品のウソっぽさをリアルにしてしまう説得力は、先生方の強い味方[ひらめき]今回もさすがでした。
京三紗(キュリー夫人)…SAPAの違法ホテルのマダム。年配者だが、めちゃくちゃ元気。最後は、ポルンカを飛び出して、サーシャと星間の旅に出発する。作品世界の枠を飛び出しそうで飛び出さない、ギリギリのところまで弾けて、客席を元気にしてくれるセンス、大好き[黒ハート]
寿つかさ(タルコフ)…記憶を消された兵士を監督する仕事をしている。オバクがミレナとともにSAPAに向かったため、SAPAに行き、SAPAに死ぬことになってしまう…[バッド(下向き矢印)]でも、かっこいい[黒ハート]上田先生、すっしーさんに、いちばん素敵な役、当てに来てたよね[るんるん]
松風輝(テウダ)…息子の足を治すために、SAPAのへそに向かおうとする愛情あふれる母親。手堅い[exclamation]
紫藤りゅう(スポークスパーソン101)…宙組でのしどりゅー、どんなもんだろう[exclamation&question]と思ったが、爪痕をしっかり残していて安心した。白が似合っていた[黒ハート]
瑠風輝(ペレルマン)…ミレナの婚約者。ミレナを追ってSAPAに向かう。キャラが立った人が多い中、ちょっと埋もれてしまったように感じた。脇筋が多すぎて、脇役が動きすぎて、しどころがなかったかもしれない。
夢白あや(イエレナ)…黒のパンツスーツがめちゃかっこいい。芝居はうまいとは言えないけれど、普通の娘役として出てくるよりは、自然でよかった。雪組でも頑張ってほしい。
穂稀せり(15年前のブコビッチ)…15年後に汝鳥伶になる人物を演じるだけでもプレッシャーなのに、汝鳥さんにかぶせてセリフを言う場面まであって、どんだけ厳しい役なんだ…と思ったが、納得させられてしまった。素晴らしい[exclamation×2]15年後に専科で活躍していてほしい人だと思う。←この夢はなかなか叶わない[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]


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