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宝塚月組御園座公演「赤と黒」観劇 [┣宝塚観劇]

ミュージカル・ロマン
「赤と黒」-原作 スタンダールー


脚本:柴田侑宏
演出:中村暁
作曲・編曲:吉田優子、寺田瀧雄
編曲:河崎恒夫
振付:羽山紀代美、ANJU、百花沙里
装置:大橋泰弘
衣装:任田幾英、薄井香菜
照明:勝柴次朗
音響:加門清邦
小道具:三好佑磨
歌唱指導:飯田純子
演出助手:指田珠子
舞台進行:阪谷諒子


舞台美術製作:株式会社宝塚舞台
録音演奏:宝塚ニューサウンズ
制作:溝部誠司
制作補:西尾雅彦
制作・著作:宝塚歌劇団
主催:御園座 中日新聞社


12年ぶり…でしょうか。
涼風さんのバウ公演は、宝塚お休み中(翌月復帰)だったため観ていないのですが、初演版東京公演(主演:大滝子)と安蘭さん版は観ています。とうこさんの時の感想はこちら。今、あらためて読み返してみると、私、長年同じことを繰り返して書いてるんですね…申し訳ない[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
今回、観劇しながら抱いた感想もすごく似ていて、12年前と同じかいっ[パンチ]と、読みながら、自分へのツッコミが止まらなかったです。
というわけで、中村A先生への指摘は今回、割愛します。


「赤と黒」はスタンダールの同名小説の舞台化作品。
柴田先生が一番乗っていた時期の作品かな…。1974年に発表された「アルジェの男」は、「赤と黒」の影響をすごく受けていると思う。主人公の名前もジュリアンだし。でも、「アルジェ…」をやってみて、やっぱり、「赤と黒」を書きたくなったのかな…と思った。大劇場で「恋こそ我がいのち(赤と黒)」が上演されたのは、1975年…なので、相当火が付いちゃったんだな~と思う。


王政復古時代のフランス。
ジュリアン・ソレルは貧しいが、頭の良い青年だった。
ナポレオンの時代なら、軍人になって出世できただろうが、今のフランスでは、出世の道は僧侶だ[ひらめき]ということで、神を信じていないのに、聖職者を目指す。
そして、神学校に入るためのアルバイトとして、町長のレナール氏の3人の息子たちのラテン語の家庭教師の職を得る。ジュリアンは、子供たちの先生としても、遊び相手としても、誠実に仕事をこなし、そんなジュリアンに対して、年の離れた夫との間に心の隙間を感じている、若い夫人、ルイーズは心をときめかせていた。
ジュリアンは、家族同然の扱いをされ、避暑地にも同道した。そこで子供たちを寝かせた後、彼は、婦人たちと世間話をする。その時、ルイーズは、ジュリアンと手が触れあってしまい、思わず手を引っ込めた。
もし、ジュリアンがルイーズに最初から興味を持っていたら、それが恋ゆえの切ない行動だったとわかったはずだが、プライドの高いジュリアンは、勝手に身分の低い自分を振り払ったと誤解し、それゆえに、彼女を征服しなければ…と、闘志を燃やすことになる。
こうして、不倫関係に突入したジュリアンとルイーズは、瞬く間に恋の炎に焼き尽くされるが、やがて、その関係は、町の人々の知るところとなる。そして、ジュリアンは、ブザンソンの神学校へ追われるように旅立っていくのだった。
神学校でのジュリアンは、努力を重ねても成績が上がらず、それは校長のピラールに気に入られているから…という衝撃的な事実を知る。ピラールは神学校での覇権争いに敗れ、パリに行くことになったと告げ、ジュリアンにも神学校にとどまるより、パリの実力者・ラ・モール侯爵が秘書を探しているから、そちらに行ってはどうか、という話になる。
ラ・モール侯爵の秘書として、地道に努力を重ねていたジュリアンだったが、侯爵の娘、マチルドはジュリアンを気に掛けているらしい態度。ある日、部屋に忍んできてほしいとの手紙を受け取ったジュリアンは、からかわれているのだとしたら、その場の全員を殺そうとか、行かなかったら逃げたことになるとか、見当違いなことを考えて、滑稽な行動をするが、変わり者のマチルドは、それを英雄の行為と受け取り、二人は結ばれる。
が、そもそも、勘違い的に始まった恋なので、お互いの気持ちはそれほど盛り上がることはなく、ジュリアンは大いにプライドを傷つけられた。そして恋の手練れと評判のコラゾフ公爵に教えを請い、マチルドの嫉妬心を刺激することにより、恋を復活させる。
マチルドが妊娠したことにより、ラ・モール侯爵も二人の関係を認め、ジュリアンを事業の跡継ぎにと考え、彼の経歴照会をしたところ、ルイーズ自身が、ジュリアンは女性と関係を持ってその家の財産を狙うような男だと回答してきた。
すべてを失ったジュリアンは、ヴェリエールに舞い戻り、用意したピストルでルイーズを撃つ。ルイーズは負傷しただけで死ぬことはなかったが、ジュリアンは死刑を宣告され、二人の女性の愛を感じながら、従容と死に赴く。


ジュリアンを演じた珠城りょうは、誠実な男を演じさせたら、宝塚106年の歴史の中でもベスト3には入るだろうと、常々思っている。そして、プログラムの表紙(白ブラウス・赤サッシュ・黒ズボン・もちろん黒髪)とか、めっちゃかっこよくて、そりゃ、ジュリアンの扮装はピッタリだわよ…[ぴかぴか(新しい)]と思った。
しかし、誠実な男がよく似合うということは、不誠実な男を演じさせると、その巧拙にかかわらず、「こんなものは珠城りょうではない[exclamation]」と思ってしまいがち。イメージを裏切られた…[バッド(下向き矢印)]というか。ファンの方は、違う反応だと思うが、一般的に、珠城に好感を持っている程度の宝塚ファンには、そのような印象を持たれた方もいらっしゃるのではないだろうか。
もっと正確に言うと、珠城の演技に入り込めれば「裏切られた」感、そうでないと、「今回の珠城はイマイチだった」感、かな。私は、イマイチだった、と感じた。ジュリアンは、珠城には似合わないな…と。自己中心的で思い込みが激しくて攻撃的な珠城りょうとか、誰得なんだろう[exclamation&question]
演技の幅を広げる必要性…とか、理由は色々あるんだろうけど、まあ、私は、ちょっとごめんなさい[あせあせ(飛び散る汗)]な感じでした。こういうものを珠城で観たいわけではないという気持ちと、主人公の空回り感が痛くて入り込めないという気持ち…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]あと、そういう痛々しい欠点だらけの人物が、最後にボロボロになって辿り着いたヴェリエールで、ルイーズを撃つ場面が無駄にカッコいいのもね、繋がってなくて失望したな…[爆弾]
それにも増して、ルイーズを演じた美園さくらが耐え難かった。
思えば、私の観劇歴の中では、彼女がヒロインを演じた作品のほとんどがミュージカル作品。(残りの「夢現無双」は、出番の少ない役だった。)
美園は、良くも悪くもバタ臭いキャラの女優だが、それは、レナール夫人の持ち味とは真逆であり、真逆な役になり切るには、彼女は、まだまだキャリア不足だったらしい。あるいは、ブロードウェイ・ミュージカルでヒロインデビューした美園は、そこに登場する美女たちのような演技パターンが、知らず身についてしまったのかもしれない。
貞淑と評判のヒロインには見えず、田舎者の文学青年を誘惑する百戦錬磨の女性(作品中で、結愛かれんが演じていた役のような…)にしか見えなかった。
美園には、むしろマチルド役を演らせた方が、凛とした立ち姿を学ぶ機会になったのではないだろうか。
ルイーズの、特にねっとりとしたセリフ回しが堪えられず、最後まで作品に入り込むことはできなかった。何から何まで全部…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
まあ、そもそも、「赤と黒」は、それほど好きな作品ではないので、(子供の頃に観た大滝子主演作品は大好きだったけど、2幕モノになって魅力が失われたと思う)最後まで物語に入り込めず、残念な気持ちだけが残るのだった[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
同じ貧しく野心的な青年を扱うのなら、珠城には、「陽の当たる場所」の方が似合ったのにな…と思う。






これ、ヒロインは、エリザベス・テーラー(マチルド的ポジション)の方なので、華やかな美女だから美園にも合うと思うし、主人公は、本当は誠実な若者なの。誠実ゆえに、別れようと思っていた恋人に対して、ほんの少しでも殺意がなかったか、と牧師に聞かれて、その抱いていた殺意ゆえに(殺したわけではなかったけど)死刑を受け入れる…という…これをやってほしかったな。



アメリカの悲劇〈上・下〉 (1978年) (新潮文庫)

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  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/04/17
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原作はこちらです。読んだことないけど。


2番手の月城かなとが、ジュリアンの親友・フーケと、コラゾフ公爵を演じた。
これ、涼風のバウホール公演では、フーケを天海祐希、コラゾフを久世星佳が演じてたんだよね。前回の安蘭版から、2番手スターが両方演じるようになった。(そもそも涼風版上演時は、涼風自身が2番手で、天海は研3だった…)
前回は、さすがに柚希礼音(当時研9)が安蘭(当時研17)に恋の指南とか何の冗談[exclamation&question]という感じだったが、月城珠城とは1期違いだし、それほど違和感はなかった。
ただ、2幕ではフーケとコラゾフ公爵を忙しく往復するため、鬘に違和感があった。本来なら地毛でやりたいところだよね[バッド(下向き矢印)]そして、2番手が演じるには、ちょっと役不足なのよね、両役とも。
端正な美貌だからコラゾフ公爵の方がブロマイドになっていたが、月城の本質は、フーケの方にあると思う。ジュリアンを本当に一番に考えてくれていたんだなーと。でも理解はできなかったんだなーと。それがしっかり伝わって、ぐっと哀しい気持ちになった。
マチルド役は、男役から転向してまだ1年くらい…なのかな[exclamation&question]天紫珠李が演じた。良家の我儘な令嬢らしさは感じられたし、先祖・マルグリット女王への憧憬の強さなど変わり者なところも似合いだったと思う。が、まだ女役としての引き出しが少ないというか…拙い部分が多かった。
こちらも、前回の安蘭版から、新進の娘役を起用することとなっているが、そもそも、この役は、レナール夫人と並び立つような女役の大役だと思う。適任の娘役がいないなら、男役に演じさせるという手もあったと思う。
マチルドの兄、ノルベール伯爵が夢奈瑠音、マチルドの婚約者…と紹介されているが、そこまで正式な感じでもなく、今一歩、決定打に掛けているクロワズノワ侯爵は蓮つかさ、マダムキラーのラ・ジュマート男爵が礼華はる。これにコラゾフを加えた4人で、女は難しい…みたいな浮かれたナンバーがあるところが見せ場…かな。
前回もそうだったけど、この辺の配役は勿体なさすぎ。これは、ショーがある大劇場ものの前ものならともかく、2幕モノの芝居では、しどころがなくて、涙が出そう。
一方、レナール氏を演じた輝月ゆうま、ヴァルノ氏を演じた千海華蘭は大活躍。作品をグッと引き締めていた。そういえば、昔の宝塚作品って、若手の二枚目より、脇役のできる中堅の方が活躍していたよな…と、あらためてここ30年くらいの変化への思いが胸を過る。その方が、芝居としては面白いのだ。
娘役は、ルイーズの友人、デルヴィール夫人を演じた晴音アキが、しっとりとした淑女の魅力を漂わせて好演。若いツバメが大好きなフェルヴァック元帥夫人を演じた結愛かれんが、コケティッシュな魅力を振りまいていて敢闘賞ものだった。若手娘役の儲け役、エリザを演じたきよら羽龍は、それほど目立った活躍ではなかったが、ま、私は、北原千琴の超可愛いエリザを観ているので、何も感じなくても仕方がないか。むしろ、彼女に岡惚れしている下男のサン=ジャンを演じた大楠てらの、セリフのない時でも役として生きている感じがよいなと思った。


そんなに気に入った公演でもなかったが、小さな旅気分が味わえる名古屋公演が復活したのはなにより。


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初めての伏見。出発前にリサーチしていたお店で名古屋メシ。
味噌おでんが食べたかったので満足です。


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手羽先はマストアイテムですね。


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台湾焼きそば。これ、めっちゃ、嵌まりました[黒ハート]


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翌日の昼食は、キャトルレーヴの臨時店舗に行った後、近くの山本屋本店のお店へ。フロアマネージャーのお姉さんのキビキビした動きが小気味よいお店でした。


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御園座(建物の1階の土産&食事処)にあったチャイルドシート。これ、すごく便利じゃないですか[exclamation&question]


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