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「泣くロミオと怒るジュリエット」観劇 [┣演劇]

シアターコクーン・オンレパートリー2020
「泣くロミオと怒るジュリエット」


作・演出:鄭義信


美術:池田ともゆき
照明:増田隆芳
音楽:久米大作
音響:藤田赤目
衣裳:半田悦子
ヘアメイク:宮内宏明
擬闘:栗原直樹
振付:広崎うらん
歌唱指導:大塚茜
演出助手:松倉良子
舞台監督:榎太郎、大刀裕介


オールメイル&関西弁の「ロミオとジュリエット」を観てきました。
まず、驚いたのは、「ロミオとジュリエット」の物語を日本に置き換えたのかな…と思ったら、ティボルト(高橋努)がジュリエット(柄本時生)の兄で、ソフィア(八嶋智人)という恋人がいる…という。ソフィア…だれ[exclamation&question]
そこでようやく、この物語が、「ウエストサイド物語」を相当、ベースにしている、と気づいた。
戦争が終わって5年、ロミオは、愚連隊“モンタギュー”を卒業し、今は、カストリ屋台で働いていた。この辺、ジェット団から身を引いて、ドックの店を手伝っているトニーとかぶる。が、「ウエストサイド…」と違って、マキューシオ(元木聖也)とベンヴォーリオ(橋本淳)は二人とも存在していて、(「ウエストサイド…」では、この二人は統合されてリフになっている)ロミオとのトリオのわちゃわちゃが、ひとつの魅力となっている。
ロミオ役は、桐山照史。髪は短く、まじめでどんくさいキャラ。吃音があるのは、脚本指示だと思うが、あまりうまくない。イケメンのマキューシオとベンヴォーリオが、イケてないロミオを利用しているんじゃないのか…という気がしてくるが、これがダンスホールに入ったとたん、様相が一変する。
さえないにいちゃんが、踊り始めたらスーパースターって、どこのサタデーナイト・フィーバーなのっ[exclamation&question]
この人、ジャニーズちゃうん[exclamation&question]
すみません、ジャニーズでした…[あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)](アイドル事情疎くて、本当にすみません…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
そのダンスホールに現れた、可憐な美女、ジュリエット。あの柄本時生が、可憐な美女を演じている[exclamation×2]ほんとに可憐に見えるのがすごい[exclamation×2]彼女の兄は、愚連隊“キャピュレット”のリーダーだったが、最近、暴力団の構成員になろうとしていて、恋人のソフィアがそれを必死に止めている。
警官もこの辺では、偏見に満ちていて、感じ悪いカラス(福田転球)とスズメ(みのすけ)のコンビは、シュランク警部とクラプキ巡査を彷彿とさせる。
しかし、「ウエストサイド物語」において、大人たちが傍観者に過ぎなかったのに対して、「ロミオとジュリエット」では、大人が積極的にコミットしていく。悪い方へ。本作も、同じように進んでいく。暴力団や警察が加わるから、さらにひどいことに…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
悪夢のような「ロミオとジュリエット」だったが、そんなに違和感を持たなかったのは、戦後まだ5年という状況、大阪の猥雑な地域という特殊性、そして、人々の心の中にある、差別とか悪意…そんなものが、あからさまにではなく、じんわりと作品の底辺に流れているから…だろうか、と思う。
愚連隊“モンタギュー”は、作中【三国人】の若者によるグループであると語られる。つまり、彼らは在日コリアンの青年なのだ。これは、作・演出が鄭義信であることも、大きく作用しているだろう。
「ウエストサイド…」でも、シャーク団はプエルトリコからの移民だった。貧しさや、外国籍であること、警官の矛先になりやすいんだろうな…と思う。そんな中でせいいっぱい生きる若者の姿が、オールメイルなのに、ものすごく真剣で、熱くて、胸を打った。
さて、ロミオとジュリエットの最後の悲しい行き違いの原因ージュリエットの死をロミオに伝えに行ったのは、ミュージカル「ロミオとジュリエット」と同じ、ベンヴォーリオだった。が、このベンヴォーリオ、ローレンス(段田安則)からの詳しい事情を書いた手紙を持っていた。にもかかわらず、ロミオにジュリエットは死んだと伝えたのだ。
[るんるん]どうやって伝えよう[るんるん]じゃなくて、[るんるん]どうやっても伝えない[るんるん]ベンヴォーリオの暗い独占欲[爆弾]これは、BLの世界[exclamation&question]ではないにしても、この内面のドス黒さに橋本淳を起用した意味が出てきたな…と、にんまりした瞬間でした[黒ハート]


クセになるような、魂を掴まれるような、そんな時間…行ってよかった[exclamation×2]
個人的には、高橋努の鬼気迫る芝居に息を呑んだ。これに応じる岡田義徳の狂気もたまらなかったし、八嶋智人が痛々しくて涙が…そういう大人の芝居部分も堪能した公演だった。



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