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「神の子」をテレビで見る [┗エンタメへの想いとか薀蓄とか]

12月に本多劇場で観劇した「神の子」(当時の感想はこちら)が、WOWOWで放送されたので、どれどれ…と思い出しがてら、見てみる。テレビの舞台中継は、宝塚やゆうひさん関係を除くと、観劇が叶わなかったものを中心に見ているので、一度観劇した公演を録画して見るのは珍しい。
見てみようと思ったのは、このブログの感想を読んだ友人(田中哲司ファン)が、「たしかにそういう話だったけど、哲司ファンの目では、そういう部分が抜けていた」と言っていて、そっか、脇筋も面白い作品だったよな…と、思い出して、もう一度多角的な目で見てみようと思ったのだ。


主なストーリーは記憶通りだったが、ディテールが抜けていた。
たとえば、道路工事現場で働いているおじさんトリオ、カラオケスナックにも行くが、彼らの最大の楽しみは、“パチンコ”だった。江口のりこがママをやっている店のシーンは多々あるので覚えていたが、パチンコはセリフの中にあるだけなので、すっかり忘れていた。
でも、彼らの一番の趣味がパチンコである…というのは、けっこう重要な気がする。「たまにスナックでカラオケをするのが唯一の楽しみ」というのと、「毎週日曜日には必ずパチンコに行き、帰りに場末のカラオケスナックに寄るトリオ」と書いた方が、この三人の雰囲気をより伝えられる。
また、宗教団体への勧誘の呼び水とするキャンプのゲームだが、その前に楽しくマイムマイムを踊ったことも書いておいた方がよかったな、と思った。最初から厳しい場面だけじゃなかった。
そして、肝心のゲームの中身、あまりよく覚えていなかったのだが、みんなで船に乗っていた時、船が座礁し、沈没することになった。救命ボートに乗れる人数は限られていて、誰かが犠牲にならなければならない、それを話し合いで決める、というものだった。
年の順(若い順、年寄りの順)、リーダーは残るべき、など色々な意見が出る中、突然、五十嵐(田中哲司)は、自分には十歳の子供がいるから死ぬわけにはいかない、と言い出す。あ、これ、ものすごく重要なところだ、人生が変わった瞬間だ、と、気づいた。
五十嵐がこのキャンプに来たのは、田畑(長澤まさみ)狙いだ。スナックのママ(江口のりこ)に相談されているうちにいい感じになり、関係を持ったはいいが、10歳になる子供込みの話になると、逃げ腰になる。体の相性は良かったが、ママの欲求は激しすぎるし、なにより、今更、一家の大黒柱になろうなんて、責任が重すぎる。若い田畑を無責任に愛でていた方がいい。
単なるゲームだったのに、誰かが犠牲にならなければ…という話で、みんなはムキになる。その時、五十嵐は、助かりたい一心で、ママの息子を利用した。どんなに大切か、どんなに可愛いか、どれだけ責任があるか、その言葉は、言霊となって五十嵐の人生を変えた。
キャンプが失敗に終わった後、池田(大森南朋)と土井(でんでん)は、もとの仕事に戻ったが、五十嵐は、ママと結婚し、スナックのマスターになった。
そして、池田の前を通り過ぎる田畑…。前よりも虚ろな顔をしている田畑に必死で話しかける池田。もう、心は届かない。切ない幕切れは、舞台を見ている時には、それほど感じていなかった。これは、表情まではっきりと伝わるテレビならでは、だと思う。


舞台中継で、さらに感じるものってあるんだな~[黒ハート]


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