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「言葉の奥ゆき」配信 [┣Studio Life]

Jun企画
「言葉の奥ゆき~回帰~」


「言葉の奥ゆき」、劇場で2回公演見て、配信で2公演見た。
こんな舞台の楽しみ方がwithコロナ時代ということなのだろう。劇場で観た(聴いた)時の感想はこちらです。


配信で選んだ作品は、以下の4作。


倉本徹…「メキシコのメロンパン」(皆川博子)
曽世海司…「薔薇密室」(皆川博子)
大村浩司…「人の顔」(夢野久作)
松本慎也…「ルルとミミ」(夢野久作)


倉田さんの挑戦として、太宰、モーパッサン、O・ヘンリーが封印になり、今回は、久坂葉子、皆川博子、夢野久作作品が台頭した。なかなか面白く、そしてちょっと怖い、そんな作品群。朗読作品としてよい選択だったように思う。
以下、順に感想を。(感想は聴いた順です。)


「ルルとミミ」(夢野久作)
語感から、二人の女の子の話かと思ったら、ルルは男の子で、ミミは女の子、二人はきょうだいだった。
二人の父親は、鐘を作る職人だったが、ある時、お寺の鐘を新規に鋳造したところ、附いても鳴らず、そのことを苦にして湖に身を投げた。すると、どす黒かった湖が美しく澄んだという。
ルルは父の汚名を雪ぐため、子供ながら鐘を作り始める。そして、美しい鐘が完成する。しかし、その鐘も鳴らなかった。ルルもまた、一人で湖に飛び込み、ミミは一人ぼっちになった。
ある日、ミミは、湖に咲く睡蓮の花から、ルルは湖の底に住む女王様のところで、湖の底にある噴水の修理をしていると聞かされる。湖がどす黒くなるのは、底の噴水が壊れるからだった。そして、湖に住む生物(女王様も含む)の生存をかけて、地上から職人を呼び寄せるために、鐘を鳴らなくしたりしていたのだ。
ミミは、花のロープを作って、湖に入っていった。
そこでミミはルルに再会し、ルルは噴水の修理を終え、二人は海月に見守られて地上に戻ってきた。しかし、湖の女王様の母親のような魅力に心を奪われたルルは、やはり湖に戻る道を選ぶ。ミミはルルの作った鐘が、女王様の魔法が解けて美しく鳴ることを確認して、やはり湖に飛び込むのだったー


湖の女王様のセリフの読み方が、今回の松本の挑戦というか、新境地だったらしい。小柄で童顔なので、舞台上ではキャラが限定されてしまうが、朗読という世界では、新たな松本を打ち出しやすかったかも[exclamation&question]
ライフの顔として、これからも、精進してほしいです。


「メキシコのメロンパン」(皆川博子)
普通に生きている人と会話をする亡くなった人々…という、かなり混乱する不思議な作品。だんだん、話が見えてきたところで、また混乱して、そしてゾッとするラストの一行に繋がる。さすが皆川先生、という短編を倉本が飄々と語り上げる。
ポチというあだ名の画家の雰囲気が、倉本自身に重なって、ああ、だからこの作品は倉本に当てたんだな~と思う。画家という設定もピッタリだし。
まあ、そんなわけで、ラストの衝撃はハンパなかった。うそ…そういう話なの[exclamation&question]


「人の顔」(夢野久作)
全体は五つのパラグラフに分かれている。主人公はチエ子という子供。最初のパラグラフで、チエ子の生い立ちが語られる。孤児だったが、船乗りの夫婦にもらわれて可愛がられて育つ。が、時々、空をじっと見ていることのある、ちょっと変わった子供に成長していく。
二つめのパラグラフで、父が航海に出ている間のある日のことが語られる。チエ子は、母と活動写真を見に行った帰り、空の星が父の顔に見えると言い出す。それだけでなく、別のところの星が“おかあさまと仲良しの保険会社のおじさま”に似ていると言い出す。それを聞いて母親はチエ子を恐れる。
三つめのパラグラフで、母親に可愛がられなくなったチエ子が、夜、壁などを見ていると、そこが人の顔に見えてくるので眠れない…という話を聞いた母親が、チエ子に眠り薬を与えるようになったことが語られる。
四つめのパラグラフで、父親が帰ってきた夜のことが語られる。父親は、薬のせいか、すっかり病的になったチエ子を心配しつつ、せっかく家族がそろったので、活動写真を見に行こうと言う。母親は具合が悪いと言って参加しなかったので、父とチエ子は二人で行くことになる。
そして五つめのパラグラフで、あどけない顔でチエ子は、空の星が母の顔に見えると言い出す。そして“オジサマ”の顔も見えると言う。父親が誰のことか、と聞くと、ずっと前から毎晩家に来ておかあさまとキスしたり、座敷でおねんねしたりなさるの…と付け加える。
ヤバい話を淡々と語る大村の語り口が、それゆえに怖い。そして、チエ子役は、めちゃ可愛かったです[黒ハート]


「薔薇密室」(皆川博子)
曽世の朗読は、女性の一人称。ミステリーの語り口らしく乾いた口調は、どこかに色っぽさを含む。
女性の一代記の背景に、ジロドゥの「オンディーヌ」がまとわる。バレエに一生を捧げた女性が、一番愛した男のことを語る。長い片思い。が、思いが遂げられたのもつかの間、彼はフランスに行き、帰ってこなかった。女は、年を取り、バレエもできなくなり、記憶もあやふやになった。そんな時ー
ぞっとするような、でも、耽美にも思える物語、曽世にしか表現できない世界。


「言葉の奥ゆき」は、全部で12ステージ。
コロナの感染が広がる中、万全の態勢をとっているとはいえ、中野まで毎日通うのは、家族にも説明しづらい。配信というシステムはとてもありがたかった。
これは、コロナが収束しても、続けてほしいかも。


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