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人は自分の見たいものを見る [┗エンタメへの想いとか薀蓄とか]

新型コロナウィルスの感染拡大により、あらゆる場所でクラスターが起きている。そして、現状の事実だけに目を向けると…


パチンコ屋では、クラスターは起きてない。
満員電車でクラスターが起きたという話はない。
感染拡大に最大限配慮しても、劇場でクラスターは起きてしまう。そして、配慮すればするほど、クラスター発生の危険は、舞台関係者側に限定される。


感染リスクを語る時、つい思い入れも込みで語ってしまう。
仕事以外に趣味のない人は、「2.5次元の舞台に何度も遠征したりするから感染するのだ」とか言ってみたり。
満員電車が嫌いな人は、「土日の渋谷の人出を言うなら、平日の山手線の混雑はどうなの[exclamation&question]」と言ってみたり。
同じ業界なのに、「こっちが一生懸命感染対策して準備してるのに、ハンパな公演しやがって…」と、クラスターが出た公演を罵倒した伝統芸能の関係者もいた。
でも、実際のところ、伝統芸能関係者からも感染者が出て、もちろん対策は大事だけど、対策しても絶対大丈夫ではないということがわかった。宝塚など、対策に対策を重ねていたのに、10人を超える感染者を出し、クラスター認定される事態となった。


私の愛する宝塚が、第一報で、「私の嫌いなタイプの演劇」と評した舞台と同じ、“クラスターを出した演劇”枠になってしまったのだ。


個人の思い入れや、対策の実施状況、ファン対策状況…クラスターは、そんなのお構いなしに、襲ってくるんだなーと、実感したこの数か月だった。
コロナ対策論とか言って、自分の気に入らないタイプの演劇批判していただけなんじゃないか…と、最初の記事について、深く反省した。あの時は、そうとしか思えなかったが、結果は間違っていた。
あの記事にコメントをくださったトキカ様から、コメントの記事への転載の許可もいただけたので、もう一度、「人狼ゲーム」の舞台について、ちゃんと語りたいと思う。


件の舞台が批判を浴びた後、出演していた俳優の一人が、匿名ながらマスコミの取材に応じた。
これによると、この公演は、冒頭の30分だけ台本があり、残りの60分については、「人狼ゲーム」の設定に基づく即興劇だったという。


「人狼ゲーム」そのものについては、私はやったことがないので、コメントをくださったトキカ様による説明をご覧ください。


この舞台は「汝は人狼なりや?(通称・人狼ゲーム)」※1と呼ばれるパーティゲームをベースにした内容だと思います。
人狼ゲームを下敷きにした舞台は別の主催も長年にわたって定期的に行っていて※2、そちらの方の公式サイトには「台本はオープニング以外なし」との記載があります(それがどこまで本当なのかは一観客には分かりかねますが)。
人狼ゲーム自体はマイナーながら根強いファンがいて、上記の舞台だけでなく、声優がプレイしている模様がDVDのシリーズになっていたり※3、動画サイトで人狼ゲームのプレイ中の様子がリアルタイムで配信されたりしています。
ご存知かも知れませんが、人狼ゲームは各参加者が「その場で与えられた役を演じる」いわゆるロールプレイングの要素が強いゲームなので、演劇との親和性が高い部分があります。 「誰が人間のふりをした人狼か」をみんなで探し当てるという推理と議論と説得がゲームの主目的なので、「人狼」役を与えられたプレイヤーは「人間」を演じなければいけません。
また、実際のゲームでも参加者ではない「観戦者」という存在が認められていて、オンラインセッションなどでは上級者のプレイングを観て観戦者が配役を考察したり技術を見て学んだりするところも、演劇の「観客」という存在に近いように思います。
仮にゲーム参加者がまったく同じでも、与えられる配役によって展開は無数に分岐するので、そこがゲームとしての面白さであり、根強く支持されている理由ではないかと感じます。
ゲームとしての骨格はパーティゲーム(対面式)でもオンラインゲームでも舞台でも同じですので、それが舞台で行われる場合、ゲームのルールにのっとった即興劇というジャンルにあたるのでしょうか。


※注釈(下記)、改行、強調(太字&赤字)、漢字/かな変換は、夜野が行っています。
※1 アメリカのゲームメーカーLooney Labs.により2001年に発売された会話と推理を中心としたパーティーゲーム。他のメーカーが発売したもの、日本のゲームメーカーによるネット上のものも含め、総称して「人狼ゲーム」と呼ばれる。
※2 「人狼 ザ・ライブプレイングシアター(TLPT)」は、2012年から公演を行っている。この舞台では、脚本はオープニング以外まったくない。2020年8月にも公演が行われる予定だったが、中止となった。
※3 AmazonでもDVDの取扱があるみたいなので、ご紹介しておきます。



声優イベントDVD企画 人狼バトル lies and the truth 2020 FEBRUARY~人狼VSプリズナー~

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  • 発売日: 2020/08/26
  • メディア: DVD



以下、トキカ様からの今回の舞台「THE★JINRO」(6/30~7/5 シアターモリエール)についていただいたコメントを紹介します。トキカ様は、今回の舞台をご覧になっていないため、私の書いた記事をご覧になっての感想となります。


今回の舞台を観ていない私は推測でしか申し上げられませんが、もしかしたら根強い人狼ゲームファンの需要を多少なりとも期待していたのでは、と思いました。
(中略)人狼ゲームをベースにしたアドリブ前提の演劇が2012年から脈々と続いているということ、恐らく商業として成立する程度には人気があること、をお伝えしたいと思い勝手なことを長々と申し上げてしまいました。
夜野さんのような熱心で献身的な演劇ファンにとっては、
> 大枠演劇でありつつ、実は、アイドル運動大会のようなゲーム大会
と思われてしまうのも、当然のことだとは思いますが……。 (後略)
(以下、別日のコメント)私事になりますが、私はもともと観劇とはまったく別の入り口で人狼ゲームを趣味にするようになりました。
そこから人狼ゲームをモチーフにした小説、漫画、舞台(件の舞台です←2012年からの方<夜野註>)も見つけるたびに触れてきたのですが、結局「実際にゲームをプレイするorゲームを観戦する方が面白い」という結論に達したゆるいプレイヤーです。
(中略)人狼ゲームのプレイヤーは、「人狼」という単語を使ったタイトルでは「=人狼ゲーム」と連想する人が少なくないと思うので、今回の騒動で「イケメン人狼(笑)」というようにタイトルだけが独り歩きした扱いになったのは一プレイヤーとして正直切ない気持ちになってしまいました。 私も実は、舞台の日替わり要素はあまり好みではなかったりします。 (後略)


※改行、強調(太字&赤字)は、夜野が行っています。
私が、一演劇ファンとして感じた、イヤな思いに対して、トキカ様は、人狼ゲームファンとして切ない思いを抱かれたのですね。
こういう舞台だから、クラスターを出してしまうんだという論調でさえあったのですから、当時は本当に人狼ゲームファンの皆様に酷いことを書いてしまったのだなーと、改めて、今、自分の心ない文章を恥じています。
「人狼TLPT」、私自身は観ていないのですが、推しの一人である三上俊が何度も出演しており、それを一度も観劇していないのは、ファンとしてどうなのよ[exclamation&question]と、自分の不徳の致すところにも恥じ入るばかりです。


この「人狼TLPT」は、2020年6月公演(6/23~28)を無観客ライブ配信公演としており、長年、この作品にかかわってきた主催者としては、この時期にこの作品を上演することのリスクを強く感じていたのだろうと思う。
ほぼ同じ時期に公演を強行した「THE★JINRO」は、先輩が培ってきた作品に対する思いを、結果的に踏みにじってしまったんだ…とあらためて知った。あくまで、「結果的に」だけれど。


そんな「THE★JINRO」のHPを、あらためてよ~く読み込んでみると、企画プロデュースの有村崑氏のコメントはこう書かれている。


イケメンアイドルたちが、歌って踊る、新感覚の全く新しい「スペクタクル人狼エンターテイメント」を企画しました。

「人狼ゲーム」と同じように舞台が進行するので、毎回違う物語が楽しめます。

さらに、観客の推しによりキャストが有利になったり追放されたりするといった特別な仕掛けや、日替わりで特別ゲストが参加します!

騙し騙され、真剣にプレイするアイドルたちを是非とも応援しに来てください!


※強調(赤字&拡大)は、夜野が行っています。
「人狼ゲーム」と同じように…ということは、これは「人狼ゲーム」そのものではなく、ゲーム自体もアレンジされた舞台だったということかな。「人狼TLPT」にも、様々なバリエーションがあり、背景やあらすじが少しずつ変わる。しかし、基本のゲーム部分は変えていない。
つまり、「THE★JINRO」は、人狼ゲームとギリギリ呼べるかな…というモドキゲームだったのかもしれない。
そして、「観客の推しによりキャストが有利になったり追放(人狼ゲームにおける“処刑”に相当)されたりする」ことになっていたらしく、これが、私としては、好きじゃない最大のポイントなわけです。
どんなふうに「推し」たら、好きなキャストが有利になったのか、観劇していない私にはわからないけど…投票とかなのでしょうか[exclamation&question](「人狼TLPT」では、人狼が誰かを観客が当てる投票があるそうだが、それはまっとうな気がする。)
物語は、昼⇒夜⇒昼⇒夜と展開していき、そこで一人ずつプレイヤーが消えていく。2時間半ほどのステージだったそうだが、最初の昼に消えるのと、最後まで残るのとでは、推しを堪能できる時間はおおいに違う。推しを残すためには、客席側でも策をめぐらす必要があるかもしれない。エグいな…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
(そう思うのは、某有名放送作家が企画したホストもの舞台の、苛烈なファン事情を記した“note”を読んだ経験があるからかも…[exclamation&question]
ただ、これらの「演劇としてエグいな[爆弾]」という感想は、コロナ対策とは分けて考えるべきで、主催者側の経緯報告(こちらです)によると、単に不幸な条件が重なったことにより、クラスターが発生してしまったと考えられる。(舞台からの飛沫を浴びそうな席の観客にフェイスシールドを断られた、というところに、イケメンアイドル出演舞台の闇はありそうだけれど…)


こういう舞台だから感染が広がったんだ…みたいな偏見は慎むべきですね。
人は自分の見たいものを見るのだということを、あらためて考え、反省した出来事だった。


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