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「死の泉」観劇(1) [┣Studio Life]

「死の泉」


原作:皆川博子『死の泉』(ハヤカワ文庫刊)
脚本・演出:倉田淳


舞台美術:乘峯雅弘
舞台監督:倉本徹
照明プランナー:阪口美和
照明操作:高橋明子、宮内理恵、和田東史子
音響・音楽制作:竹下亮(OFFICE my on)
衣裳プランナー:竹原典子
衣裳協力:矢作多真実
ヘアメイクプランナー:川村和枝(p.bird)
ヘアメイクスタッフ:望月香織
演出助手:中作詩穂


各劇場が、早々に公演中止を決める中、強い意志を持って公演を続けているスタジオライフ。演るからは、応援します[exclamation×2]


「死の泉」は皆川博子の長編小説。
入れ子構造になっていて、中身は「ギュンター・フォン・フュルステンベルク著/野上晶訳」の回想録という体裁。最後に訳者の野上が、著者のフュルステンベルク氏を訪問したエピソードが載っていて、それによって、彼の著書の真実性が崩壊する。古城の崩壊とともに死んだのは、本当にクラウスだったのか…[exclamation&question]
倉田脚本は、その部分をまるっとカットしているため、皆川博子の書いたフィクションとしてマルガレーテの物語が綺麗に完結する形になっている。(ということは、座席に置いてある無料ペーパーにも記載されている。)
私が前に一度だけ観たのは、再々演だったのかな。その時の感想はこちらです。


今回の公演は、スタジオライフ×東映のコラボ企画ということで、出演者は、ライフ初めましてのメンバーが多かった。もちろん、準劇団員といってもおかしくない、宮崎卓真氏も出演[黒ハート]いや、もう、You、入っちゃいなよ[わーい(嬉しい顔)]
初めましてさんが多かったせいか、Wキャストは少なめ。
配役は、(AパターンBパターン)の順で記載します。色の変わっていないところは、シングルキャストです。


舞台は、恋人、ギュンター(曽世海司)の子を身ごもった金髪の娘、マルガレーテ(松本慎也関戸博一)が、レーベンスボルン(生命の泉という意味)という施設を訪れるところから始まる。ここでは、未婚の娘が出産でき、子供は、ナチスの将校が引き取ってくれることになっている。ただし、アーリア人の特徴(金髪・碧眼)を持たない子供が生まれた場合は、赤ん坊はその場で処置(殺害)される。
マルガレーテの産んだ子供は、美しい金髪だったため、ミヒャエルという名を付けられ、レーベンスボルンの中で育てることができた。そして、ある日、施設の医師、クラウス(笠原浩夫)がマルガレーテに求婚した。施設には、未婚の妊婦が産んだ子供だけでなく、ポーランドなどから連行された金髪の子供たちも、実験台のような形で住まわされていた。その一人、エーリヒ(伊藤清之)は天使の声をしており、その声に惚れ込んだクラウスは、彼を養子にしようと考えた。しかし独身のクラウスが養子を持つことに当局は難色を示し、レーベンスボルンの産婦から誰かを選んで求婚しようと思ったところ、ポーランド人なのにこれ以上ないほどアーリア人の特徴を持つ娘、レナ(宇佐見輝澤井俊輝)の勧めで、エーリヒがマルガレーテを選んだらしい。
こうして、エーリヒが兄と慕うフランツ(澤井俊輝松本慎也)、マルガレーテの息子ミヒャエルの三人の息子たちを持つ両親として、クラウスとマルガレーテは結婚した。
しかし、マルガレーテには、大きな秘密があった。彼女は、見事な金髪を持っていたが、実は、彼女の祖母は、ロマとの混血だった。マルガレーテの血の1/8はロマ…それがわかったら、マルガレーテだけでなく息子までも収容所に入れられるかもしれない…マルガレーテにとって、クラウスとの結婚生活は、針の筵に座るようなものだった。また、同じようにレーベンスボルンの産婦から看護師助手になったブリギッテ(山本芳樹)が、クラウスと関係を持ち、子供を産んだことも、マルガレーテを傷つけていた。
戦局は、どんどん悪くなり、マルガレーテが疎開した城は、故郷の近くだった。そこで、レーベンスボルンの施設からマルガレーテの家の家政婦として働きに来ていたモニカ(石飛幸治)が、村の青年と恋仲になり、その曾祖母からマルガレーテの秘密を聞き出してしまった。空襲の中、モニカの怒りが爆発、ミヒャエルを地面に叩きつけようとした時、フランツがモニカを刺殺した。
クラウスは、エーリヒを去勢しようとし、空襲の中、マルガレーテを助手に手術を敢行、フランツは、まだ傷口が塞がっていないエーリヒを抱いて失踪する。
そして、戦後ー
ブリギッテの息子、ゲルト(松村優)は、スポーツ少年団に所属していたが、団長のヘルマン(船戸慎士)が苦手なため、ヘルムート(宮崎卓真)の誘いから逃げまくっていた。が、親友のニコス(滝川広大)を介して、ロマのグループと知り合う。そして、コンビの歌手、フランツ(馬場良馬)とエーリヒ(松村泰一郎宇佐見輝)に対して、競争心を抱くが、いつの間にか仲良くなる。
一方、マルガレーテの恋人だったギュンターは、現在、かつてマルガレーテが疎開していた城の持ち主になっていた。そこへ、息子ミヒャエル(鈴木宏明)を連れたクラウスが現れる。運命の歯車に導かれるようにすべての人々がひとつの場所に集まっていく。そしてー


まず、観劇したのは、Bパターン。
マルガレーテは美女じゃないと、話が進まないんだなー[ひらめき]と思った。いや、その、せきどっちがアレというわけでは…まあ、あるんですが…[あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)]
でも、マルガレーテに初めて感情移入することができた。
やはり、美しいマルガレーテの気持ちは、私にはわからないし、ついついひねくれて、モニカやブリギッテの方に気持ちが寄ってしまうので。関戸の演じるマルガレーテは、彼女の心の美しさにクラウスが惹かれ、物語が動いていくという面白い展開だった。だから、マルガレーテの心の動きは、最初から観客に漏れていて、それは、長い長いマルガレーテとフランツの秘めた愛の物語だったーということが、初見の観客にもわかる。
演じているのが、関戸×松本というのは置いておいても。だって、関戸×馬場になっても、ちゃんと繋がっていたから。
その一方で、笠原がクラウスを演じたことは、ずいぶん大きな改変だったように思う。
原作のクラウスは、醜い小男だったはずだ。だから、過去に観た時のクラウス役は、山本芳樹だったり、山崎康一だったり、美しいけれど(醜さは演技で作り出すことができる)、小柄な俳優だった。
美丈夫な笠原船戸がナチコスを着ている姿は、めちゃくちゃかっこいい。やはり、ナチコスって、徹底的に考え抜かれたデザインなんだなーと、しみじみ感じる。が、見た目をステキにしたことで、逆に、彼の異常さが際立つのは、笠原の長年に亙る看板役者としての経験に裏打ちされているのだろうか。
15年後のクラウスも、それほど年を重ねた演出を施さず、笠原VS曽世の若々しい対決が観られたのも、眼福だったし、緊迫感を持って舞台を観ることができた。彼らは、スリ集団やスポーツ団員にボコられる場面もあるので、初老のオジサンにすると、なんか可哀想に感じてしまうし、15年の歳月は演技力でいかようにでもなるので、この演出は良かったと思う。
モニカとブリギッテは、12年前、青木隆敏(Jr.5)、吉田隆太(Jr.7)が演じていたのだから、逆にベテランに移っていっている。これは、スタジオライフの課題というか、中堅がどんどん退団していったり、在団していても、使われなかったり…ということで、昨今、出演者の空洞化が起きているような気がする。
倉田さんの起用法にも、少々問題があるのかもしれないが、ライフの芝居は、すでにライフとしての、ひとつの型ができあがってしまって、そのメソッドでしか生き残れないようになっている。それが、俳優たちに、「このまま一生、この芝居をやり続けるか」という強迫観念をもたらしているのかもしれない。
Jr.8から下は、本当に定着率が悪いんだよね[爆弾]あと、毎年オーディションやってるわりに、起用される役者とそうでない役者の差が大きいし、結局、ある程度美形じゃないと使われないし。そういう意味で、Freshの富岡くんの今後に注目したい。残ってほしいな。
話が逸れたが、やはり、ベテランの演じるモニカとブリギッテの印象はすごかった。勝手にマルガレーテに同情してしまうもの[exclamation]
少年フランツ、エーリヒは、美少年コンビ[ぴかぴか(新しい)]そりゃ、クラウスでなくても養子にしたいよね。松本のフランツは、説得力があり、マルガレーテへの忠誠心(愛)と、クラウスへの強い憎しみが、ストレートに表れていて、さすがライフの現・看板役者[exclamation×2]伊藤は、悪魔的な美少年なので、エーリヒにはピッタリだと思った。成長したミヒャエル役の鈴木は、運命を背負って生まれてきてしまったことへのストレスとか、諦念とかが、端正な顔立ちからうかがえて、とてもよかった。伊藤もそうだが、声変わりしていない、と言っても納得できるような、柔らかなテノールボイスが魅力的。
澤井のレナは、完璧なアーリア人と言われると、そうかもしれない…と思ってしまうような、顔の各パーツがセンター寄りな顔をしていて、しかも、薄倖そうな顔立ちなので、レナ役はピッタリだった。ブリギッテでなくても、ちょっと意地悪をしてみたくなるような、そんなレナだった。ラストシーンも、透明感があってよかった。
船戸は、さすがの怪演[黒ハート]ライフに、なくてはならない役者だと思った。


Aパターンの感想と、客演者については、別記事で。


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