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「グロリア」観劇 [┣演劇]

「グロリア」


作:ブランデン・ジェイコブズ-ジェンキンス
翻訳:小田島恒志、小田島則子
演出:古城十忍


美術:礒田ヒロシ
照明:磯野眞也、榊美香(アイズ)
音響:黒澤靖博(K Sound)
衣裳:友好まり子(アトリエトモヨシ)
舞台監督:尾崎裕


特殊効果:緒方宏幸(インパクト)、森本浩
演出助手:日置なお、田邉かおり
舞監助手:窪田亮(天の原工房)
衣裳助手:増田和
演出部:船場未生、老川礼菜
大道具:伊藤幸夫(イトウ舞台工房)
小道具:田邉かおり、高津装飾美術
運搬:加藤運輸、帯瀬運送


当日券で観劇しました。誘ってくれて、当日券も買ってくれて、丸ノ内線逆走して開演1分前に滑り込んだ私を待っててくれて、K様ありがとう[黒ハート]


ワンツーワークスの公演を観るのは3回目…かな[exclamation&question]
問題提起する演劇、という印象がある。最初に観たのが、在日コリアンについて描いた作品だったし、その次が死刑制度についてだったし…それも、問題があるぞ!と声高に叫ぶのではなく、芝居を通じて観る側があらためて考えさせられる作品作りが面白かった。
いつもは、演出家の古城十忍さんのオリジナル作品を上演しているのだが、このように翻訳劇も上演するらしい。
翻訳であっても十分に考えさせられる芝居だったが。


「グロリア」は、3部構成の芝居。
1幕は、事件当日。編集部。グロリア(長尾純子)という変わった子がいる、とある出版社。昨日、グロリアは新居に引っ越したのでホームパーティーを開いた。招待状を貰ったメンバーは参加すると答えたものの、実際は、無視した。騙されてディーン(北野由大)だけが参加したが、盛り上がらなかった。
グロリアの闇は、おそらく昨夜のパーティーで沸点を超えてしまったのだろう、編集部にピストルを持ち込んで、ぶっ放した。そして、ディーンには感謝の言葉を述べて、自殺した。
2幕1場は、その8ヶ月後。出版社近くのスタバ。事件を生き延びた、ディーンとケンドラ(北澤小夜子)が久しぶりに再会。二人は事件についての本を出版しようとしている。いつの間にか、生き延びたことがネタになると気づいた二人の醜い争い。その後、現場にやってきた彼らの元ボス、ナン(関谷美香子)とディーンの前任者、サーシャ(増田和)。ナンは、事件の起きた編集部の奥にある自身の個室の中で、事件を聞きつけ、机の下に隠れていた。その時、無意識にお腹を抱くようにしていたのだが、実は妊娠していたのだった。これを機に、ナンは仕事中心の生き方を変え、母としての生活を生きようと決心しているが、サーシャの言葉に、事件のことを本にしてみたいと考える。
2幕2場は、さらに1年後。ロサンゼルスのテレビ番組制作会社。ナンの出版した本が話題になり、テレビ化されることになった。(ディーンの本、ケンドラの本は日の目を見なかったり、出ても黙殺されたり。)しかし、このテレビ局には、事件を生き延びたグロリアの上司、ローリン(間瀬英正)が転職しており、事件が金を生んでいく様を茫然と眺めていた。


すごく面白い作品だった。
前週に宝塚や東宝等で上演自粛が始まり、観劇オタクとしては、今、上演している劇場を探す毎日。でも、そのおかげで、こんな作品に出合えたんだな~という感じ。
これまで、ファンである多田さんを追っかけてワンツーの舞台を観てきたが、このハズレなし感は、これ以外の舞台もチェックしなければ…という気持ちになった。


人生は、平等ではない。
編集部の中で、ディーンがホームパーティーに行ったのは、他のメンバーから騙されたからだった。でも、パーティーに行ったから、彼は殺されなかった。一番、口が悪くてグロリアをバカにしていたケンドラ、おそらくグロリアの標的だったケンドラは、サボってスタバに行っていたから、死ななかった。代わりに、今日を最後に大学に戻るインターンのマイルズ(永田涼)が犠牲になった。
目の前で仲間が殺されるのを見て、自分も拳銃を向けられ、グロリアの自殺を目撃したディーンと、スタバにいて、事件を何も知らないケンドラが出版をめぐって、ネタが被らないように探り合う。なのに、勝ったのは、事件を知りながら、ひたすら自室の机の下で震えてたナンだった。ナンは、死ぬ直前のマイルズに面会したのに、彼の名前すら憶えていなかったというのに。
そのナンがテレビ番組の原作者としてもてはやされる一方で、惨劇を目撃し、部下を失い、精神のバランスを欠いて2年、ようやくアルバイトとして仕事に就いたローリンー
そういう物語を次々に見せつけられ、しかも、それがフィクションに感じられない。ほんと、そうだよな、人生って…と思ってしまう。
そんな中、ただ一人、黙々と仕事を続け、ローリンの「一緒にビールを飲みたい」というお誘いを受け入れるデヴィン(植田敬仁)、めっちゃ、いい人やんけ[exclamation×2]デヴィンと飲むことで、ローリンがちょっとずつ、また、人生を楽しめることになればいいな…と思う。


よい作品を紹介してもらったな…と思う反面、気になったのは、これがアメリカ(ニューヨーク)を舞台にした作品であるから…なのか、黒人が登場すること。編集部のインターン・マイルズ、スタバの店員・ショーン(水野駿太朗)、テレビ番組制作会社のチーフ・ラシャード(長谷川慎也)。全員、日本人俳優。日本人が黒塗りして、パーマの鬘をかぶって黒人役を演じるのは、まだ大丈夫なんだろうか。
もちろん、ブラック・アメリカンの俳優を使うことができれば、それが一番なんだけど、日本では、難しいかもしれない。とすれば、本作品の場合だと、人種的な部分が脚本的に要求されるのは、ケンドラ(韓国系)だけなので、全員、普通に日本人(アジア人)の容姿で演じる方がよいのだろうか。
それは、それで、ホワイトウォッシュ(ホワイトじゃないけど)になってしまうのだろうか。
人種の坩堝であるアメリカの作品を日本で上演する時、何が正解なのか…考えてしまった。


大原万由子(陽向春輝)は、元気にがんばっていた。演技開眼したらしいです。てか、今[exclamation&question]


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