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「神々の土地/クラシカル ビジュー」感想 [┣宝塚観劇]

宙組東京公演感想、「クラシカル ビジュー」に行く前に、あらためて「神々の土地」について、もう少し感想を述べておきたい。公演中は、上田先生の脚本の素晴らしさと、イリナを演じた伶美うららのヒロイン像に心を打たれ、ほかのことに言及する余裕がなかったので、変な感想になってしまった。
いささか箇条書きっぽい内容になるが、その他感じたことを残しておきたい。


ラスプーチン(愛月ひかる)の初登場シーン、子供なら夢に見るほどの怖さだった。愛月の二枚目をかなぐり捨てた体当たりのラスプーチンには、感動を通り越して震えが来るほど[ー(長音記号1)]


上田先生がこの物語のヒロインは、イリナ一択である、と、どこまでも侠気(おとこぎって読むんですけどね。でも、私がこの言葉を前に使ったの、景子先生だったわ[わーい(嬉しい顔)])を通す一方で、オリガ(星風まどか)にのみ銀橋渡りのソロを与える戦術[exclamation]には拍手を送りたい。
劇団も黙るしかないし、観客も耳福で幸せだし。
劇中でまどかちゃんの美声を聴けて(うららさまに積極的に歌ってほしいわけではない)[グッド(上向き矢印)]ラストシーンは、朝夏伶美の二人だけ[黒ハート]
トップ娘役を置かず、伶美星風を均等に扱うという(おそらく)劇団の方針通りに作りながら、作品の方向性をひとつも曲げていないあっぱれな構成に胸がスカッとした。
そして、このことは、次期トップ娘役の星風まどかも救っていることに、注目したい。
簡単に劇団に忖度し、退団する伶美より次期トップ娘役となる星風に寄った作品を作ってしまえば、伶美に同情的な観客は、その矛先を星風に向けてしまうからだ。星風の今後のためにも、伶美贔屓を完全に成仏させてくれた今回の芝居は、まさに神仕事だった[ぴかぴか(新しい)]


ショーでもやっているのだが、イリナ(=伶美)の大きく開いた背中にネックレスの正面を持ってくるという使い方、私、個人的にすごく好き[黒ハート]そういうところも含めて、伶美うらら、本当に大好きだと思う。
でも最初から好きだったわけではなく、「ロバート・キャパ」の時は、この娘役をトップにするつもりか!と、目眩がするくらい、不安だった。あれから5年。不器用な伶美がひとつづつ積み上げてきた「美」という宝石は、「歌」なんてどうでもいい、と思わせるレベルに達していた。ここで、ワンチャンあげられなかったのは、痛恨の極み[もうやだ~(悲しい顔)]
と同時に、「歌」に寄り過ぎの最近の歌劇団の方針は、30年来のファンとしては、どうも納得がいかない。


さて、イリナの存在は、人間の美徳である真善美そのもの。一方、姉のアレクサンドラ(凛城きら)ときたら、暗いし、偏屈だし、皇后なのに国民への関心がゼロだし…。しかし、もしかしたら、彼女のイケてない性格は、「美人過ぎる妹」にあったのかもしれない、なんてちょっと思った。美人過ぎる妹さえいなければ、アレクサンドラだって、ものすごい美貌の皇后のはずなんですよ[exclamation×2]
(ちなみに、史実のアレクサンドラも、美貌の皇后だったようです。)


アレクサンドラといえば、彼女の人生はマリー・アントワネットを思い出させる。
[1]外国から嫁に来て、[2]僧のせいで国民の憎悪を一身に浴びて[3]皇太子は病気になるし[4]革命が起きて[5]血縁関係のある国からも助けてもらえず[6]処刑される。[7]国の財政が破たんしたのは、もうずっと前から戦争をしていたせいなのに。
皇后/王妃の贅沢だけで国が潰れるか[ちっ(怒った顔)]
外国生まれの皇后/王妃のせいにされてしまうのは、矛先を向けやすいってだけかもしれない。気の毒すぎる。
[1]皇太后との確執[2]社交性のない性格は、エリザベートとも共通しますね[ひらめき]
マリー・アントワネット+エリザベート=アレクサンドラ…不幸の方程式だわ…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]


ラスプーチンの粛清計画がバレたのは、オリガ(星風)が母に話したから…というこの作品の設定。この結果、革命を防ぐ最後の手立てが失われたという流れになっていく。
アレクサンドラにとっては自業自得的な話だが、若くて聡明なオリガだけに、現実的な判断はできなかったのだろうか。
たぶん、それができなかった理由が、失恋だったのかな、と思うと切ない。ドミトリーに振り向いてもらえないという悲しみが、彼女を母と同じ家族の輪に閉じこもる道を選ばせたんだろう。
とすれば、国のために立ちあがったドミトリーは、国のためにオリガを愛していると言わねばならなかったのかも。それができなかったドミトリーの恋愛体質(やや女子力強し)がすべての原因か…[爆弾]


そんな風に中途半端で、何もなしえない、女々しい男達に対して、自分で決めて行動する芯の強い女達。この作品が特異で、爽快に感じられるのは、女達の決断ゆえかもしれない。間違っていても。悲劇だったとしても。


さて、実在のフェリックス・ユスポフ(真風涼帆)は、ゲイだったと言われている。少なくともバイではあったらしい。
でも超美人な奥方とは仲良しだったと言われているので、フェリックスがドミトリーやイリナに向ける愛情は、その史実に基づいているのかもしれない。
そして、イリナのモデルの一部はユスポフの美人妻だったのでは[exclamation&question]と言われているが、そこをあえての100%片思いにしたところが、上田先生、真風を良く見てるな~[ひらめき]って、思う。


柴田作品だったりすると、民衆の比重がもっと高いのかも、という気がするが、そこが強すぎると拡散してしまうので、良いバランスだと思った。
特に、酒場のやりとりが、分かりあえそうで、でも結局分かりあえない、そして、大きな歴史のうねりの中で愛が犠牲になる流れまで描かれていて、一を知れば十を知れるよいテキスト。ラッダ(瀬音リサ)は影のヒロインだと思う。


ゾバールの負のエネルギーがすごくて、そういうときの桜木みなとには、大空ゆうひを感じる。研9という学年での立場は、ゆうひさんよりずっとスターだけど。


最後に、彩花まりをもっと使ってくれれば完璧だったよ、久美子タン[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]


では、ショーの感想に参りたいと思います。 


レヴューロマン
「クラシカル ビジュー」


作・演出:稲葉太地
作曲・編曲:太田健、高橋恵
指揮:塩田明弘
振付:羽山紀代美、御織ゆみ乃、若央りさ、KAZUMI-BOY、桜木涼介
装置:國包洋子
衣装:河底美由紀
照明:氷谷信雄
音響:大坪正仁
サウンドプログラマー:上田秀夫
小道具:松木久尚
歌唱指導:KIKO
演出助手:田渕大輔
舞台進行:中島瑞紀、香取克英


S1 Big Bang(創造)~S2 Diamond(宙の太陽)
この世にビジュー(宝石)と呼ばれる石の種類はそれほど多くない。柔らかい色合いの石は半貴石と呼ばれるものが多く、宝石は、ルビーとかサファイアとか、原色が多い。このショーでは、宝石だけでなく半貴石と呼ばれる石も登場するが、それも原色ばかりで…で、出演者が宝石に扮したプロローグでは、衣装にダイヤカットのような模様が描かれている上に、娘役の衣装は、袖の部分が原色の羽素材の提灯袖なので、目がチカチカする…てか、派手すぎ[爆弾][爆弾][爆弾]


S3 Emerald(冒険の旅)~S4 Coral(海底神殿)
コミカルな三人組が冒険の旅に出て、行った先で美女に翻弄される…というテーマは、前にも稲葉先生の作品で観た記憶が…[あせあせ(飛び散る汗)]
稲葉先生の好きなテーマなのかな[るんるん]
そして、私は、攻めに入った瞬間の星風まどかが、かなり好物である。


S5 Ruby(よみがえる熱情)
クラシカルビジュー(朝夏まなと)が、かつて愛した女(伶美うらら)と再会するが、彼女は“ボス(寿つかさ)の女”になっていた…というありがちな三角関係からの一人が死ぬパターン。
しかし、寿ボスは、自ら手を下さない辺りに大物感があった。
ラストに伶美のソロがあり、彼女の得意な低音のドスの効いた声で、愛を失くした女の慟哭を聴かせてもらい、大満足のシーンだった。
伶美のゴージャスな赤いドレスがとても美しかった。


S6 Sappire(神秘)
新公以下の若手メンバーがズラリ銀橋に並ぶ姿は圧巻だったが、ほぼ誰が誰やら…[もうやだ~(悲しい顔)]
朝夏真風涼帆が組んで踊る場面があり、けっこう絡んでたな~という印象。でも、なぜか萌えない…[バッド(下向き矢印)]
私だけかもしれないが、ダンスが上手いのも萌えない原因なのかも。


S7 El Dorado(見果てぬ夢)
中詰は、“El Dorado”というタイトルが示す通り、全員黄金。宝石のついたグッズを持って銀橋を渡るスター達がかっこよかった。ラインダンスはこの位置に入っていた。


S8 Cats eye(その名は紳士)
真風が大泥棒で、美術館に忍び込むものの、目的の王冠を手にするや、その王冠に触れた過去の亡霊たちに翻弄される。
この場面も伶美の美しさが際立っていた。


S9 Amethyst(継がれる輝き)
トップスターの退団を象徴するダンスナンバー。中詰はゴールド×紫、この場面はシルバー×紫の衣装が、宙組らしくて綺麗だった。
ケガでショーを休演している松風輝がカゲソロを担当しているのが、稲葉先生の愛だな~と思う。


S10 Bijou I(美宙)
クラシカルなダンサーである朝夏らしい飾りのない燕尾服でのソロダンスから始まり、娘役に囲まれて踊る朝夏真風との引継ぎのようなシーン、そして、男役の群舞は、“ジュピター”を使った、羽山先生の王道振付。さらに朝夏のソロ歌から、宙組メンバーが朝夏を囲んでずら~っと揃うシーンは、トップ娘役がいないからこれだけ手厚くできたんだろうな…とも思うが、よい構成だった。


まぁくん、お疲れ様でした[exclamation×2]


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「はいからさんが通る」感想 その2 [┣宝塚観劇]

「はいからさんが通る」、全体感想はこちらです。
では、個々の出演者への感想とともに、各論にまいります。


柚香光(伊集院忍)…伊集院少尉は、日独のハーフ、という設定。見事なウェーブのかかった長めの金髪で、陸軍少尉。つまり、カーキ色のあまりスマートとはいえない陸軍の軍服と少女マンガ王道の容姿というミスマッチの魅力が、このキャラクターの大きな特色でもある。
物語の途中で、行方不明になり、戦死したと思われていたが、ロシア亡命貴族サーシャ・ミハイロフとして再登場する。その間、主役でありながら(原作の主人公ではないため)舞台に登場しない時間があったものの、それを感じさせない圧倒的な主役感は、柚香のスター性によるものだろう。
あまり、本音的な部分を見せない少尉だが、紅緒を助けようとして必死になるところや、笑い上戸な部分をうまく利用して、少尉らしさをしっかりと表現していた。
陸軍の軍服がステキに見えるのは、宝塚七不思議のひとつかもしれない。
余談ながら、公家っぽい響きの「伊集院」は、薩摩の地名に由来する、武家の苗字なんですね。この名を筆名や芸名に使っている方が、名前を一文字にしているのは、「伊集院忍」の影響では[exclamation&question]と、私は疑っているのですが…(笑)


華優希(花村紅緒)…それぞれの祖父母の悲恋ゆえに、生まれた時から忍の婚約者になっていた、という娘。正義感が強く、独立心に溢れているが、かなりガサツで「女らしく」ない。
大正時代の和洋折衷な髪形は、娘役の美貌を半減させる…というのは、「春の雪」の時も痛感したけれど、今回も、ビジュアル的にかなり厳しいものがあった。第2部の職業婦人になって以降はボブのヘアスタイルが可愛かったので、経験の少ない娘役には、大正時代は鬼門だなぁ~と思った。
すごく頑張っていたし、ギャグ的なシーンなど、体を張っていて、見上げた根性だと思ったが、表情が汚く見えることもあり、「全身で表現すること」と「いつも美しく出ること」が、いきなりの実質主役的なヒロインでは難しかったのかな。
しかし、ヒロインとしての魅力は感じられたので、今後も成長を見つめて行きたい。


英真なおき(伊集院伯爵)…薩摩出身の武家華族。公家であった妻の、昔の恋の結果である忍と紅緒の婚約には批判的。
大人げない態度で紅緒を排斥しようとする姿勢は、ともすれば、ドン引きしてしまうところだが、英真の巧みな演技によって、ユーモラスに感じられる。この作品を上演する上で、不可欠な存在だったと思う。


芽吹幸奈(伊集院伯爵夫人)…公家出身。江戸幕府旗本の侍と恋をしたが、ご時世で結ばれることなく、伊集院伯爵家に嫁いだ。その時、自分達は結ばれなくとも、子供の世代で二人の血をひとつに…と誓い合ったことが、忍と紅緒の婚約に繋がっている。
とはいえ、今現在の夫人は、実は夫である伯爵を深く愛しており、そのことが通じたあとのラブラブな雰囲気がとてもよかった。
基本、シンガーでダンサーのくまちゃんなので、お芝居も、ボルテージが高い。その辺がちょっと引っかかることもあったが、可愛くきれいなおばあちゃんでした[わーい(嬉しい顔)]


冴月瑠那(花村政次郎)…紅緒の父。伊集院伯爵家も花村家も男しか生まれなかったことから、約束は紅緒たちの世代に引き継がれることとなったのだが、その紅緒を男手ひとつで育て上げた。陸軍中佐。伊集院少佐は部下でもある。母親が亡くなった時に、強い子になるように、と剣道を教えたのが、失敗だったかもしれない。
るなちゃんは、ダンサーという印象が強かったが、ここ1年ほど、芝居もすごくいいな…と思うようになった。美貌の男役だが、老け役の方が、いい味を出すような気がする。良かったです[黒ハート]


鞠花ゆめ(如月)…伯爵家の奥女中。紅緒の花嫁修業中、徹底的に仕込もうとするが、破天荒な紅緒に手を焼く。そして、その交流を通じて、紅緒と心が繋がっていく。
メイクからして眉をくっきりと描いて、全身で如月になり切っているお姿は、さすがゆめさま[揺れるハート]
紅緒がいなくなった後、伯爵に冷たくする芝居とか、ほんと痺れた~[ひらめき]


天真みちる(牛五郎)…ふとしたことから、紅緒を親分と慕って後を追う、車引き。
いや、もう、花組92期なくしては、この作品の上演はならなかっただろう…と思うくらい、素晴らしい[ぴかぴか(新しい)]たそワールド、堪能しました[るんるん]


鳳月杏(青江冬星)…忍のいなくなった伊集院家を守るため、職業婦人となった紅緒の就職先である冗談社の編集長。奔放でわがままな母親への反発から極端な女嫌いになってしまった冬星だが、紅緒に対してはすぐにアレルギーがなくなり、だんだん惹かれていく。そして結婚までこぎつけたところで関東大震災が起き、少尉の大逆転を許してしまう。
当時の少女マンガは、ごく普通の美人でもなんでもないヒロインのまわりに、美形男子が集まり、どっちを選ぼう…みたいなストーリーが多かったわけだが、それがまさか三次元で実現してしまうとは…[あせあせ(飛び散る汗)]
いやもう、ステキでした[揺れるハート]特に、地震で崩壊した教会に紅緒を探しに行く辺りからの、ジャケットを脱いだ姿[exclamation]
あのお尻、あの長い脚…ほんとうに人類ですか…[exclamation×2]と、思わずニュータイプ疑惑まで感じてしまうほど…。その後の歌もよかった~[黒ハート]歌という意味では厳しい公演だった中、ほんと素晴らしい歌声でした[ぴかぴか(新しい)]


桜咲彩花(花乃屋吉次)…紅緒が忍の恋人、と誤解した花柳界女性。実は、忍の親友の恋人で、親友の死後、なにかと援助しているという関係だった。が、その忍の男気にいつしか、吉次は惹かれてしまって…。
ステキだった~[ぴかぴか(新しい)]芸者らしいきっぷの良さ。芸は売っても身は売らない矜持。それでも抑えきれない女心。なにもかも完璧にこちらに伝わってきた[黒ハート]出番は少なかったけど、べーちゃんにしかできない仕事をしてくれて感謝[exclamation]


舞月なぎさ(狸小路伯爵)…亡命のミハイロフ夫妻を屋敷に滞在させる華族。
当時のマンガでは、完全に脇役・端役のキャラは、ギャグで描くということがよくあり、狸小路伯爵はほぼタヌキとして描かれていた。それを完璧に再現した根性に乾杯[バー]
舞月も、「芝居できなくても無問題」時代の花組の代表格なのだが、こういう使い方はうまいな、と感じた。


和海しょう(鈴木)…冗談社の社員の一人。
社員たちは、そんなに力を入れて書き込まれていなかったにもかかわらず、再現率がハンパなかった[ひらめき]
途中、本役以外でのコーラスも素晴らしかったです[かわいい]


華雅りりか(ラリサ)…サーシャの妻。飛行船で日本に亡命してきた。関東大震災で死亡。
ヒロインの恋路を邪魔するライバル。でも、最後には、サーシャこと忍を解放して死んで行く、本当は優しい女性…という部分が感じられたのでよかったかな。


新菜かほ(ばあや)…通称あごなしばあや。花村家の家事一切を取り仕切っている。紅緒を大切に、時に厳しく育ててきた。
あごをなくすことはできなかったが、あごなしばあやに見える[ぴかぴか(新しい)]やり過ぎの一歩手前でちゃんと留まる新菜の芝居センスは大好き。今回も感動レベルでステキでした[ハートたち(複数ハート)]


水美舞斗(鬼島森吾)…少尉が配置換えになり小倉連隊へ移った時の部下。軍曹。少尉は、鬼島を庇って敵兵に刺され、川に落ちて行方不明となる。少尉から紅緒の写真を見せられており、紅緒に会って詫びたくて東京に現れる。(この辺は時間短縮のため設定が変更されている。)
設定変更にもあるように、時間短縮の一番の煽りを受けたのがこの人。紅緒を想う第三のキャラになれるところが、ちょっと印象が弱くなってしまったのは残念。もちろん、小柳先生からはちゃんと配慮されているのだけど、彼が紅緒を想うキッカケがないので、インパクトが弱いよね。
でも、カッコよかった~[黒ハート]マイティ―、片目のない役続くわね。


矢吹世奈(印念中佐)…少尉を目の敵にしている上官。紅緒が酒乱癖を出して暴れた時のことを根に持ち、少尉を左遷した。
その後、アカと手を組み、紅緒を投獄したが、最後の最後で改心し、少尉を助ける。
矢吹のために、この展開になったんだな~と、思った。小柳先生ありがとう。そして、ちゃんとその展開に繋げていた矢吹の芝居にも感心した。


城妃美伶(北小路環)…紅緒と同じ女学校に通っている。華族の子女。平塚らいてうの思想に憧れ、恋愛結婚を希望している。忍とは幼馴染で、環は忍に好意を持っていたが、紅緒とのことを知って身を引く。
綺麗だった[ぴかぴか(新しい)]環は美人でないと話にならないので、まず、華のある登場にうっとり[ぴかぴか(新しい)]環も出番を削られた一人だけど、それを跳ね返すパワーがあって、つねにキラキラオーラで登場していたのは、素晴らしいと思った。


春妃うらら(青江須磨子)…冬星の母。冬星の女嫌いの原因。恋愛と結婚は別という信念がある(自身も冬星をみごもりながら、銀行家と結婚)ため、冬星には見合いで上流社会との足掛かりをつかんでほしいと、次々に見合い話を持ってくる。
出番は少なかったけど、熟れた美貌、聴く耳持たない一方的な態度、上級生の鳳月を完全に子供扱いする仕草、すべてが美しくて惚れた[ひらめき]
冬星の女嫌いは、実はマザコンだったのでは[exclamation&question]と思うくらいステキなモダンガールだった。


亜蓮冬馬(高屋敷要)…人気作家。思想犯ともつながりがあったばかりに、紅緒が窮地に陥る。
ライオンヘアが見事。長身なので見栄えがして、かっこよかった。


聖乃あすか(藤枝蘭丸)…歌舞伎役者。女形。紅緒の隣家の子で、やはり母親が居ないので、紅緒が姉のように鍛えているが、本人は運動や武術には興味がない。でも、紅緒のことは好きなので、いつも一緒に行動している。
「MY HERO」の時は、めっちゃハンサムな子だわ~と思ったが、女装するシーンの多い(ほぼ女の子にしか見えない)蘭丸は、それほど惹かれなかった。この若さで既にしっかりと男役になっちゃっているということで、逆に頼もしいかも。目立つ役で、ポスターにも載っているので、この先、ぐぐっと使われていくんだろうな~[わーい(嬉しい顔)]


舞台は、段差と柱があるだけのシンプルなもので、それを映像と瞬時に入れ替わるセットを駆使して色々な場面に見せていた。こういうところも、2.5次元っぽいかも。
テーマ曲は時代の雰囲気もあって、ダンスも可愛くて、すごくよかった。
うん十年ぶりに、「はいはいはい、はいからさんが通る!」の呪縛から逃れられました…[るんるん]


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宝塚歌劇花組東京特別公演「はいからさんが通る」観劇 [┣宝塚観劇]

「はいからさんが通る」


原作:大和和紀
脚本・演出:小柳奈穂子
作曲・編曲:手島恭子
作曲・編曲・録音:藤間仁(Elements Garden)
振付:御織ゆみ乃、若央りさ、AYAKO
殺陣:清家三彦
装置:稲生英介
衣装:加藤真美
照明:佐渡孝治
音響:大坪正仁
小道具:市川ふみ
映像:奥秀太郎
歌唱指導:彩華千鶴
特殊メイク:馮啓孝
演出助手:熊倉飛鳥
舞台進行:荒川陽平
舞台美術製作:株式会社宝塚舞台
録音演奏:宝塚ニューサウンズ
制作:井場睦之
制作補:恵美和弘
制作・著作:宝塚歌劇団


2.5次元舞台-最近、演劇のひとつのジャンルとして確立し、“2.5”を縮めて、“てんご”という略称まで生まれているのだとか。
2.5次元の舞台と、一般の演劇の間に壁があるということはなく、双方に出演している俳優も数多くいるのだが、マンガやアニメ、ゲームなど、二次元の作品を舞台化し、特に登場人物のビジュアルを三次元で表現する、というその特徴により、イケメン…というか、少女マンガ的容姿の俳優が多い。


つまり、宝塚も本気を出したら、すぐに、2.5参入ができるわけで、過去に、これはもう2.5なのでは[exclamation&question]という舞台も数々成功させている。
そして、今回の「はいからさんが通る」もまた、本気で2.5次元にチャレンジしたな、と思える舞台だった。


とはいえ、原作マンガ「はいからさんが通る」は、宝塚初の2.5次元作品(当時はそんな呼び方はしていなかったが)「ベルサイユのばら」と同時期に連載されていた古いマンガだったりする。私も中学校の頃に単行本を回し読みして、特に冗談社の「貼り紙」で盛り上がったよな~などと、思い出しつつ観劇した。(最新の演劇事情と、懐古趣味との不思議なクロスオーバー[わーい(嬉しい顔)]


原作は少女マンガなので、主人公は花村紅緒(華優希)なのだが、ここは宝塚なので、主役は伊集院忍(柚香光)になる。この、「物語としての主人公は紅緒だけど、作品の主役は忍役の柚香である」の微妙なさじ加減に、小柳先生の熟練の技を見た。
というか、「少女マンガ」の「王子様」を地上に引きずり降ろさずに提示できているのがすごい[ひらめき]
これは、ちゃんと子供のころから少女マンガを読んでいる人の力、だよなー[ぴかぴか(新しい)]

演じる側にとっては苦しいかもしれない。ヒロインから見た「伊集院忍」を具現化するのだから。
主演の柚香は、その辺の表現が見事だったし、また、登場するすべての男性キャラが、少女マンガを愛する乙女たちの理想の男性キャラになっていて、その辺は小柳先生の手腕でもあるのかな、と感じた。


まあ、だいたい少女マンガの「ヒロインの相手役」たる男性は、とてもヒロインを愛してくれる。どうしてそんなに愛してくれるかわからないが、絶対的な愛を捧げてくれる。その理由づけとか、行動原理とかがわかってしまうと、それは、もはや少女マンガではないのかもしれない。
謎を謎のまま残し、「はいからさん」の世界観をそのままにしてくれた小柳先生には感謝しかない[黒ハート]


ひるがえって、本来の宝塚歌劇は、女性ファンによって支えられているが、実は長年、男性の脚本・演出家による、「男の手前勝手な行動原理」というか、永遠の中2病というか、そういう作品が主流だったりした。
とはいえ、そういうのも、かっこいい男役さんが演じるとサマになるというか、そういう役を理解して演じられてこそ、一人前の男役という部分があったりもして、世界は複雑ね、である。
(そもそも、どんなに見た目が良くても、中身は男性=演出家と同じという設定だから、リアルに演じるということは、実は、手前勝手な行動原理の中2病を体現することなのかもしれない
で、手前勝手な中2病患者の主人公は、あれやこれや、心情を吐露する芝居をしてくれる。その行動は、女子には到底理解できないので、モノローグや歌で説明してくれるのは、ありがたい。説明されても理解できないし、同意も出来ないけど、ヒロインより戦いで死ぬことを選んだり、一人でさびしく出て行くことを選んだりするので、一応釈明は聞いておかないとスッキリしない。


かたや、少女マンガのヒーローは、ちゃんとヒロインの人生をサポートしてくれるので、心情など聞く必要はない。愛しているという言葉があれば十分[るんるん]な気がする。どうして好きになったかくらいは、聞いて嬉しいかもしれないけど。


少女マンガは、主人公の気持ちになって読むものなので、逆に、相手の気持ちが分かってしまったり、先の展開が読めてしまうのも鼻白む。そういう絶妙なこちらの心理状態を読んだ素晴らしい作劇だったと思う。


プロローグで、柱にマンガの絵が描かれているところとか、「ベルサイユのばら」初演を観た時を思い出すようなGJ[exclamation]
(いや、あの時は、この絵でいいのか…と思うような出来だったのだけど…今は、原画をそのまま超拡大して使える技術があるから、いいよね[かわいい]
ベタな効果音も、マンガ原作っぽくて良かったし、別記事で書くけれど、出演者のなりきり具合も最高だった。


世間的にも、この作品は、2.5作品と認識されていたようで、チケット難がハンパなかっただけでなく、トップさん退団公演みたいな高騰チケットを生むことになったのは、残念なことだった。


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「ハンナのお花屋さん」感想 その2 [┣宝塚観劇]

全体の感想はこちらです。


今回の公演、とても登場人物が多くて、特に若手にとってはいい勉強になったと思う。
最近、あまり、出演者感想を書いていなかったが、今回の花組別箱公演はいろいろ感じたことがあるので、登場人物と出演者について書いてみようと思う。


明日海りお(クリス・ヨハンソン)…ロンドン在住の新進気鋭のフラワーアーティスト。デンマーク出身。“ハンナズ・フローリスト”という店の店主で、社長。店の2階に住んでいる。34歳独身、彼女なし。
宝塚歌劇のトップスターが演じる年齢層は幅が広い。明日海も次回大劇場公演では「少年」役を演じる。原作通りの14歳ではないようだが。
にしても、研2で『THE LAST PARTY』に出演し、鮮烈な印象を残した明日海が、34歳という役を普通に演じる時が来たのか…というのは、自分の中で驚きだった。あれは13年も昔なのか。
すごく色々なものを抱えている人のはずなのに、どこまでも爽やかで、好青年。そして、世界のみんなの幸せのために生きているようなところがある。それは、私の中の明日海りおのイメージに重なる。13年前に彼が投げたフットボールがゆうひさんスコットの胸に届いた時からずっと。
クリスは、フェアトレード商品を扱う仕事を今後進めることになるが、そういうところもイメージ通り。そのわりに優等生風ではなくて、天才にありがちな、自分の得意な分野以外はからっきしなキャラクターも可愛い。
まさにアテ書きの勝利[exclamation]ステキでした[黒ハート]


仙名彩世(ミア・ペルコヴィッチ)…クロアチア出身。ロンドンでの生活を始めたばかり。でも、住民票もワーキングビザもない彼女は、色々と行き詰まることばかり。ふとしたことで知り合ったクリスと心を通わせるが、迷惑をかけたくないので深入りを避けている。
けれど、ラストでクリスは、フェアトレードの事業を手伝ってほしいという、とてもステキな提案をする。きっと、今度こそミアは彼女らしさを取り戻して生きていくんだろうな。
ヒロインには、あまりに地味で、しかもダサい服装ばかり。
新しいタイプのヒロインを創出したということなのかな…と思いつつ、その辺は可哀想な気がした。別箱公演のトップ娘役は、時々こういう試練があるのよね。うーむ。


芹香斗亜(アベル・ヨハンソン)…王室にも繋がる貴族の御曹司。大学生の時に、リトアニア難民の娘、ハンナと恋に落ち、クリスが生まれる。当初は結婚を考えていたが、彼の立場はハンナを不幸にしてしまうため、諦める。親子三人で幸せな時間を過ごしたこともあったが、結局、家業の存続のため、政略結婚に応じる。というのも、彼は養子で、家と会社を継ぐためにヨハンソン家に来たからだ。
経営していた工場の火事によってハンナを失い、クリスを引き取るが、自責の念から、心からの笑顔を見せたことはなかったらしい。そして、自らの死期が近いことを悟ると、妻に対して、ハンナと同じ場所に葬ってほしいと泣きながら頼んだらしい。
いろんな意味で、悲劇を生みだした張本人。
そして、一番苦しんだ人。
ただ苦悩した部分を演じるチャンスは与えられない。ある意味中途半端な役ではあるのだが、その空白を補ってちゃんと、物語が息子の世代に繋がっていたのは、芹香の功績だった。なにより、真っ白な二枚目をきっちり演じられる人、という印象。ザ・宝塚な役者だと思った。


高翔みず希(エーリク・ヨハンソン)…養子を取ったヨハンソン家だったが、その後、実子に恵まれる。しかし、二人の息子は分け隔てなく育てられ、事業は、長男である養子のアベルに引き継がれた。アベルの苦しみの根源を理解し、クリスの様子をさりげなく見に行ったりしている優しい叔父さん。
ハンナズ・フローリストの看板をスマホで撮影している姿がツボ。ステキなオジサマでした[黒ハート]


花野じゅりあ(エマ・アザール)…ベルギー人で、エスニックレストランを経営しているやり手のシングルマザーという設定。たぶん、頼まれるとイヤと言えないいい人なんだろうな、と思う。でも、忙しい忙しいと言いたがるタイプというか、ちょっと、ウザく感じるのは、じゅりあが演じているせいなのか…[あせあせ(飛び散る汗)]たしかに彼女がいないと、クリスとミアは出会っていないのだけれど…。


瀬戸かずや(ジェフ・ウォーレン)…フラワーアーティストに専念しているクリスに代わって、ハンナズ・フローリストの経営的な部分のサポートをしている、大学時代の同級生。学生時代からの親友的な雰囲気が伝わって来て、クリス、周囲に恵まれているな~と思った。
クリスのためを思っているだけじゃなくて、会社をどうしていくか、という方向性が、クリスとしっかり一致している。こういうパートナーがいるって重要。この作品のあたたかな土台を作った功労者の一人。愛妻家というのもポイント高い。


白姫あかり(ソフィア)…アベルの妻。アベルがハンナと出会う前から、アベルとの結婚話は持ち上がっていた。アベルはたくさんの女性と交際したが、それはもしかしたら、ソフィアと結婚したくなかったのかもしれない。それだけの目に遭いながらも、アベルがよそで子供を作ったことも知りながら、銀行家である父親の資金提供目当てということも知りながら、アベルと結婚する。母親を亡くしたクリスも引き取る。アベルの望み通りにヨハンソン家代々の墓ではなく、ハンナと暮らした田舎の領地に埋葬してやる。
あり得ない女性ですよ、まったく。でも、白姫がからっとしていたから、救われた部分が大きい。


菜那くらら(マーガレット・パーカー)…ハンナズ・フローリストの近所に住む上品な老婦人。最近、夫を亡くしたが、夫婦でこの店を訪ねた思い出や、花の存在に癒されている。老婦人役の芝居のテンプレというのがあって、菜那はその枠から決してはみだしてはいないが、マーガレット・パーカーという一個人の個性をちゃんと見せているところがいい。アナベル(音くり寿)とのやり取りが心に沁みた。


航琉ひびき(ヘルゲ・インゲマン)…アベルが経営する造船会社の労働者。労働者たちを代表して、経営者であるアベルに労使交渉を要求したが、解雇される。その後行方不明。工場の火事との関係も不明。
不明なことが多くてやりにくかったかもしれないが、印象に残った。


美花梨乃(チェンリン)…ハンナズ・フローリストの従業員。台湾出身。ビザの更新が認められず、作品の途中で帰国するという設定。トーマス(優波慧)とラブラブなのが、とても可愛かった。イギリスにおける外国人労働者の不安定な状況の象徴でもあったが、前向きで元気いっぱいな姿は、必要以上に作品を深刻にさせない功績があった。


羽立光来(グリフィス・エディントン)…ハルフォーズデパートの部長。クリスにデパートへの出店を依頼する。男女の部下を引き連れて、やたらハイテンションで現れ、歌い踊る。「Paradise Prince」のアンソニー・ブラックをさらにコミカルにしたようなキャラクター。
さすがびっく[exclamation×2]という言葉しか浮かばない。楽しかった。


紗愛せいら(カロリーネ)…ソフィアの友人。アベルが連れて来たハンナに対して、場違いであることを全身で表現していた。全身から嫌味な空気が感じられる好演。でも綺麗でした[ぴかぴか(新しい)]


真鳳つぐみ(ローズ・ワトソン)…図書館の職員。クリスに好意を持っている。
真鳳のキャラクターとして、やり過ぎ感は想定の範囲内だったが、今回の役は、それが必要だったのか、謎。やり過ぎなキャラクターとしては、既に羽立らのトリオがいるので、さらに真鳳は余計。お色気路線よりは、むしろひたすら真面目な方向でやり過ぎた方がよかったのではないかな。おそらく演出指示だろうから、ちょっと残念。


乙羽映見(サラ・ウォーレン)…ジェフの妻。クリスも含めて大学時代からの友人。不動産会社勤務。クリスに、彼の理想の家を紹介するがなかなか納得が得られない。
クリスに「結婚っていいな」と素直に思わせるジェフとサラの関係。落ち着きと美貌と衣装の着こなしで、「いい女」を体現していた。
今回、2番手の芹香が別次元の主役だった分、瀬戸がメインストーリーをしっかり支えていた。それには乙羽の存在が大きかったように思う。


優波慧(トーマス・ルイク)…ハンナズ・フローリストの従業員。ウェブとカフェの担当。店のブログを更新したり、カフェのメニューを次々に切り替えたり、仕事が早い。その一方で、恋人との関係は煮え切らない部分もあったり。いろんな意味で今どきの青年。
器用になんでもできる部分と、チェンリンにプロポーズできない気弱さが同居する、そんなキャラクターを納得できるかたちで表現していたと思う。


更紗那知(レスリー)…エディントンの忠実な部下、というか盛り上げ役。タイトスカートでガツガツ踊る姿から目が離せなかった。怪演といっていいと思う。


千幸あき(アレックス)…エディントンの忠実な部下、というか盛り上げ役。アレックスの方が秘書的な感じで、クリスにノートPCを差し出したりしていた。なんだかよくわからないけど、迫力のあるトリオで面白かった。


紅羽真希(ヨハン)…アベルの友人。アベルとハンナが出会った時から一緒にいて、アベルの葬儀にも出席していて。エーリクは役者が変わっているので、実は、紅羽が時間軸としては一番長い時を生きているのだが、すべての場面で名を呼ばれているわけではないので、友人のヨハンがそのままアベルの会社の重役になって、最後までアベルを支えたんだ、ということがわかっていなかった。すみません[あせあせ(飛び散る汗)]


雛リリカ(ナディア)…ハンナズ・フローリストの従業員。フローリスト見習の新人。ルーマニア出身。ちょっとドジっ子なところが可愛いが、完璧主義者のアナベルからは、いつも叱られている。しかし、それにめげない頑張り屋さん。こんな通し役で観たのは初めてかもしれない。すごくキャラが立っていて、ここにも一つの物語があった。


綺城ひか理(ライアン)…ハンナズ・フローリストの従業員。フローリスト。アイルランド出身。店長代理が務まるほどの実力派。クリスがデンマークの仕事にシフトするため、新しい店長を決めることになるのだが、その時、ライアンは選ばれない。クリスとしては、ライアンには、独立を目指してほしいということなのだが、それを聞くまでの間の表情が、彼の性格をすごく表していて、自分に自信があるからこそ、怒ったり落ち込んだりしないで、「え、そうなんだ、どうしてですか」みたいな感じでいられるんだろうな…なんて思った。
いやー、ステキでした[黒ハート]


飛龍つかさ(ヤニス)…ハンナズ・フローリストの従業員。フローリスト。ギリシャ出身。非常に陽気なチャラ男。そしてナディアのことをすごく気に掛けている。チャラいけど誠実、そのバランスがステキでした[揺れるハート]


茉玲さや那(少年時代のクリス)…か…かわいい[揺れるハート]ほかに言葉が浮かばない[揺れるハート]一幕ラストが、まさかの明日海芹香茉玲という終わり方で…震えた[揺れるハート]少年役とはいえ、おいしすぎる…[exclamation×2]


帆純まひろ(ヨージェフ)…ハンナズ・フローリストの従業員。デリバリーと下働きを担当するマッチョ。ハンガリー出身。イケメン・マッチョで、働き者。店のメンバーの中では、下級生だが、しっかりと上級生の芝居に付いていっていて、きっと勉強になっただろうなと思う。


音くり寿(アナベル)…ハンナズ・フローリストの従業員。フローリスト。バレリーナを目指していたが、ケガで挫折。目標をなくしてなんとなく飛び込んだ花屋の世界だったが、完璧主義者なので、この世界でも自分にも他人にも厳しく、を貫いている。そんな真面目さが評価され、ロンドン店の店長に抜擢されることに[exclamation]
ヒロイン役だと子供っぽい感じがするのに、別のポジションだと大人っぽい役もいける。シンガーとして注目されただが、今回は、歌ではなく、芝居とダンスで魅せる。成長がうかがえる好演だった。


泉まいら(少年時代のエーリク)…こちらも可愛かった[揺れるハート]可愛いけど、コペンハーゲンではハンナをエスコートする紳士だった[わーい(嬉しい顔)]


舞空瞳(ハンナ)…リトアニアからデンマークに逃れた難民の娘。草花を摘んで花屋のようなことをしている。アベルと出会って、恋に落ちるが、都会では暮らせないため、結婚はしない。
どこか妖精のような雰囲気をまとっているハンナを、説得力をもって演じていた。
それにしても、この人、すごーく風花舞を思い出すな~[あせあせ(飛び散る汗)]


別箱で、役がいっぱいあると、下級生はすごく成長する。次回の大劇場公演が楽しみ[黒ハート]


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宝塚歌劇花組東京特別公演「ハンナのお花屋さん」観劇 [┣宝塚観劇]

Musical
「ハンナのお花屋さん」


作・演出:植田景子
作曲・編曲:斉藤恒芳、瓜生明希葉
編曲:植田浩徳
振付:大石裕香
振付・映像監修:菅沼伊万里
振付:鈴懸三由岐
装置:松井るみ
衣装:有村淳
照明:勝柴次朗
音響:大坪正仁
小道具:加藤侑子
映像:maruda
歌唱指導:ちあきしん
演出助手:竹田悠一郎
衣装補:加藤真美
舞台進行:宮脇学
舞台美術製作:株式会社宝塚舞台
演奏:宝塚ニューサウンズ


普通、トップと2番手は、親友とか敵とか、とにかく、同じ空間にいて、互いに台詞の応酬があってドラマが進むものだ。
それを敢えて父と子に設定し、同じ次元でまみえさせない(別々の時代の物語をテレコで走らせる)作りは、「落陽のパレルモ」でも試されていて、思えばその時も、2番手彩吹真央の組替えが決まっていたなぁ~と思い出す。
良くも悪くも、景子先生は、今ある並びへの惜別ではなく、今後の体制を見据えた作品作りをしているのかも。
実際、明日海りお芹香斗亜は、ふたつの物語のそれぞれの主役だったので、W主演と言った方がいいのかもしれなくて、組替えを控えたこの時期に、あらためて、ひとつの物語を引っ張る芝居をすることができて、芹香にとってもよかったのではないか、という気がした。


ストーリーを時系列に語ると(脚本上の流れではなく)、物語はデンマークで始まる。
大貴族の家柄で、大学生のアベル(芹香斗亜)は、田舎の領地でハンナ(舞空瞳)というリトアニア難民の娘に出会い、一目で恋に落ちる。ひと夏を田舎で共に過ごした二人は子供を授かり、アベルはハンナを連れて王都・コペンハーゲンに向かう。しかし、そこでハンナは、星の見えない都会の街では自分は生きていけないという現実に直面し、話し合いの結果、二人は、愛し合いながらも、それぞれの人生を歩むことを決断する。別々に生き、時に、二人の愛息子・クリス(茉玲さや那)と三人の時間を共有する-そんな二人ならではの幸せな時間が長続きするはずもなく、アベルは、父の会社を存続させるために別の女性と結婚し、経営者として工場の移民系の従業員と対決し、その工場で起きた火事に巻き込まれてハンナは命を落としてしまう。
残された一人息子のクリス(成人後は明日海りお)は、アベルに引き取られて成長し、大学まで行くが、ある日、母と同じ花屋になることを宣言、家を出てしまう。そして、今ではロンドンで人気のフローリストになっていた。店の名前は、「ハンナズ・フローリスト」。作品タイトルは、ここから来ている。
そしてこの店の従業員は国際色豊か。出身国はなぜか民族的なトラブルを抱えた国が多い。そのこと自体は偶然で、でもそういう国の出身者を集めたところに、作者の意思が感じられる。
そこにヒロインのミア(仙名彩世)が現れる。彼女も紛争地域(クロアチア)の出身で、身を寄せていた親戚が入院したことから、働く必要が生じ、クリスの店の近くのカフェで働くことになる。そしてクリスと交流が生まれる。そんなミアが大好きなのが、「地雷ではなく花をください」という絵本。(これは、実際に日本で発行されている。)



サニーのおねがい 地雷ではなく花をください

サニーのおねがい 地雷ではなく花をください

  • 作者: 柳瀬 房子
  • 出版社/メーカー: 自由国民社
  • 発売日: 1996/09/01
  • メディア: 大型本


この本の存在が、ミアの故郷の「紛争地域」とクリスの仕事である「花屋」の接着剤になっている。そして、そのどちらもハンナを連想させる(ハンナは紛争地域からの難民であり、デンマークの田舎で花屋をしていた)。
つまり、ミアによってこの本の存在を知らされたクリスは、おそらく、その時、母親を連想してしまっただろうと思う。
さらにミアは、とても困っている状況にあって、でも健気に生きている。そりゃ、好きになるよね[わーい(嬉しい顔)]
しかし、ミアは、店のセルビア人スタッフから苛められ、さらに入国管理局に通報され、(ワーキングビザを持っていなかったから)、行方不明になってしまう。
クリスは、店舗の2階に住み続けながら、週末を過ごす別荘地を探していた。彼には理想の家があって、えらく具体的なその理想の家がなかなか見つからない。そんなある日、叔父のエーリク(高翔みず希)が訪ねてくる。出張のついでと言いながら、実は、アベルの体調が悪いということをさりげなく伝言していく。
ほどなくアベルは危篤に陥り、クリスが戻った時には口もきけない状態で、そのまま旅立った。(晩年のアベルは舞台には登場しない。)
アベルは、ハンナと同じ場所に埋葬され、クリスはエーリクによって、以前、クリスとハンナが住んでいた家を案内される。そして、彼の理想の家、それは、幼い日に住んだ家だったのだ! と気づく。クリスは、その家を買い、活動拠点をデンマークに移す決意をするが、さしあたって、店をどうするか、そしてミアの行方は[exclamation&question]…と、悩みは多い。


もちろん最後には、これらが綺麗に解決して大団円となる。
というわけで、主人公のキャラと立ち位置は違うが、私の好きな「Paradise Prince」っぽい作品だな~と思った。
21世紀の作品らしく、店のHPやブログ、SNS、スマホでのやり取りが、作品を彩る重要なアイテムになっている。クリスとミアの最初の接点も、ロンドンに住む外国人たちの交流サイトだし。
何度か観劇することができたので、この交流サイトにおける書込みとコメントの応酬(セリフでも語られるが、背景に書き込み状況がアップデートされる。)をオペラグラスで眺めたが、英語の勉強にもなって面白かった。
矢車草は、英語ではCornflowerと言うのね[exclamation×2]人魚姫の瞳の色…と言われても、矢車草を実際に見たことがないので、紫の花なのかな~と舞台上に咲く花を見て思っていたが、コーンフラワーなら、最上級のサファイアの色だ。つまり青い瞳なのね。
(ちなみに矢車草という名前の花が2種類あるため、Cornflowerに該当する矢車草は、現在ではヤグルマギクと呼ばれているそうだ。)


「Paradise Prince」同様、主人公は際立っているが、あとは群像劇という感じ。
その中に挿入される父親の恋物語とその結末だけは、まったく別の色彩を放っている。
ただ、その物語が、クリスという人物を造形するすべての要素になっている、というところまで明日海が体現しているので、2つの物語がひとつに融合できたのだと思う。明日海ありきの舞台といっていいだろう。
群像劇の部分は、登場人物が多いが、それぞれキャラが立っているので、人数が多いことはマイナスになっていない。
しかし、コメディではないハズなのに、なんか変に笑いを取ろうとする場面があって、少々違和感があった。同時に、花組の中で、芝居の世界観に誘ってくれる出演者と、ぶった切ってくれる出演者がいるなーと感じた。景子先生は、誘ってくれる方のキャストで物語を動かしたいのかもしれないが、その選別によってぶった切る系の出演者が悪目立ちしてしまったようにも思った。 景子先生の拘り的な装置や振付はうまく嵌まっていたと思う。


女性演出家もどんどん育ってきて、第1号としては、正念場かな、と思うが、アテ書きの現代ものと、文芸作品。という景子先生らしい領域で今後も頑張ってほしいな、と思う。


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宝塚宙組東京公演「神々の土地」観劇 [┣宝塚観劇]

ミュージカル・プレイ
「神々の土地~ロマノフたちの黄昏~」


作・演出:上田久美子
作曲・編曲:青木朝子、高橋恵
指揮:塩田明弘
振付:前田清実、桜木涼介、鈴懸三由岐
擬闘:栗原直樹
装置:新宮有紀
衣装:有村淳
照明:勝柴次朗
音響:実吉英一
小道具:下農直幸
歌唱指導:KIKO
演出助手:町田菜花
衣装補:加藤真美
舞台進行:政村雄祐


朝夏まなとサヨナラ公演となる宙組東京公演を観劇した。


今年2017年はロシア革命勃発から百年目の年に当たる。そんなこともあって…なのか、ロマノフ王朝の落日を描いた作品が登場した。
いつもの大劇場のお芝居同様、1時間35分の上演時間。でも、どっぷり3時間の舞台を観るような重さがある。その重さこそが、ロシアの空気の重さなのか、上田先生の作品が持つ重さなのか…たぶん両方[exclamation&question]
でも、とてもよい作品だった。


この公演で、朝夏まなとと一緒に4人の娘役が退団する。
93期の瀬音リサ、95期の彩花まり涼華まや伶美うらら。キラキラの麗しき娘役たちが、それぞれの居場所で美しく咲いていて、さらに次期トップ娘役就任が決まっている100期の星風まどかや、今回は女役に起用された組長の寿つかさ、92期の凛城きらも大活躍、さながら女たちの物語にもなっている。
中でも、劇中のヒロインを演じる伶美の集大成的演技には、ついついオペラを向けることが多く、まぁくんのサヨナラ公演なのに…という事態にすら陥っている。でもしょうがない。だって、うらら嬢もサヨナラなんだから。


ロマノフ王家の一族でありながら、ラスプーチン暗殺に加わったドミトリー・パブロヴィチ・ロマノフ(朝夏まなと)を中心に、彼が心から愛した女性、イリナ(伶美うらら)と、テロルとボリシェビキ活動の前にいつ倒れるかわからないロマノフ王朝の皇帝一家<これがまた個性的なご一家だったりする>、彼らの懐に入り込んだ得体の知れない男、ラスプーチン(愛月ひかる)、そして、やたらとドミトリーの世話を焼くロシア一の富豪の友人、フェリックス(真風涼帆)…すべての登場人物がパズルのように綺麗に嵌まった美しく、哀しい物語だった。
私、呼吸していたかしら[exclamation&question]と思うほどの集中。
語りたいことが山のようにあって、でも語ったら、すべてが消えてしまいそうで、今は無理かも。
上田先生の作品は、どれもこれも珠玉の名作だわ[ぴかぴか(新しい)]とだけ、書き残しておきたい。


あ、そうそう、ひとつだけ。これだけは、玉に瑕かもしれないけど、書いておく。
エピローグ部分。フェリックスが、ニューヨークの街角で、ロマノフの貴重な財産だと嘯いて絵画を売っている場面を観て、5年前に退団した人を思い出した。比べようもない駄作だけど、フェリックスがロナウドに重なる。
もしかしたら、あの詐欺師は、フェリックスを見て、ロシアの亡命貴族になりすますことを思いついたのかもしれない。そう思わせてくれ[exclamation×2](←思ったところで駄作は変わらないけど。)


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宝塚歌劇月組東京公演「All for One」観劇 [┣宝塚観劇]

三井住友VISAカードシアター
浪漫活劇(アクション・ロマネスク)
「All for One~ダルタニアンと太陽王~」


脚本・演出:小池修一郎
作曲・編曲:太田健
編曲:鞍富真一、大貫祐一郎
音楽指揮:西野淳
振付:御織ゆみ乃、若央りさ、桜木涼介、KAORIalive、鈴懸三由岐
擬闘:栗原直樹、浅井星光、新美智士
装置:大橋泰弘
衣装:有村淳
照明:勝柴次朗
音響:大坪正仁
サウンドプログラマー:上田秀夫
小道具:市川ふみ
映像:奥秀太郎
歌唱指導:飯田純子、山口正義
演出助手:谷貴矢、指田珠子
装置補:國包洋子、稲生英介
衣装補:加藤真美
舞台進行:片桐喜芳


2011年に「仮面の男」というトンデモ作品があった。その「仮面の男」のベースになったのが、デュマのダルタニアンシリーズ。その中の「ブラジュロンヌ子爵」という、元祖三銃士の物語から30年後を舞台にした小説に、“鉄仮面伝説”の物語がある。ここに、ルイ14世の双子のきょうだいだったり、ルイ14世の寵姫ルイーズだったり、その後の老三銃士だったりが出てくる。
なんだけど…これをもとにした「仮面の男」は、悪ノリのしすぎ…というか、とにかく大劇場公演は観るに堪えなかった。時期的にも、東日本大震災の年ということもあり、観客側が悪ノリを拒否していた部分もあったかな。今にして思うと。で、その公演は、悪ノリ部分を修正して東京公演を行い、今、映像等で確認できるのは、その東京公演のものなのだが、そうなってみると、超駄作[爆弾]こんなにつまらない芝居もめったにない、というものになってしまった。
作・演出を担当した児玉明子先生は、その後、挽回の機会を与えられることなく、翌年退団した。


今回、「All for One」を観劇して、一番最初に思い出したのは、この「仮面の男」のことだった。 「ブラジュロンヌ子爵」をドラマ化するなら、こうしなくちゃダメなんだ、という、小池先生からの「6年後の解答編」を見せられたような気分。
あの時、もやもやしていた観客としては、正解を見せられてうなった[ぴかぴか(新しい)]
小池先生、すごい[ひらめき]
そうだよ、宝塚の二枚目スターをわざわざくたびれたオッサンとして出す必要があるだろうか[ちっ(怒った顔)]
単独で「仮面の男」部分だけを使うのであれば、三銃士もダルタニアンも現役で構わない。こんな簡単なことだったんだ、と目からウロコだった。かっこいい若き三銃士のまっつが観たかったよ… [バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)](原作では「息子」となっているラウルが「弟」だったんだから、若くしたっていいじゃんねー)


閑話休題。プロローグは、銃士隊面々勢ぞろいの歌とダンスから。 ここで、センターにセリ上がる銃士。トップスター登場、かと思ったら、美弥るりかアラミスだった[exclamation×2]
実は、三分割できる中セリの真ん中が先に上がってきただけで、その後、サイドの宇月颯アトス、暁千星ポルトスもすぐにセリ上がり、最後に、センターの小セリからダルタニアン=珠城りょうがセリ上がってくる。
まず、この見事な構成に息を飲んだ。
「三銃士」の視覚化として、これほど完璧なシーンがほかにあるだろうか。
そして、この「一瞬だけどセンターでセリ上がる」場面を美弥に与えてくれる小池先生の愛情が、またニクい。宝塚では、トップスターを中心とするピラミッドが確立していて、その中で時折、“上級生2番手”というものが誕生することがある。最近だと、花組・真飛聖時代の大空祐飛(現・ゆうひ)がそうだった。
ゆうひさんが花組時代、出合った小池作品が「太王四神記」。
この作品は、プロローグが縁起譚になっていたため、ショーシーンはフィナーレだけだったが、劇中の合戦の陣形や、フィナーレの男役群舞等で、通常の2番手以上の厚遇をしてもらったことを覚えている。
それが、小池先生なりの思いやりだったのか、既に動き始めていた大空トップを見据えてのことだったのか、私にはわからないが、何も知らないあの当時の私は、「小池先生、ありがたや~」と思っていた。今回、それと同じ感情が湧きあがってきて、最初からめっちゃテンションの上がるプロローグとなった。
そこからすぐに本編となり、ダルタニアンが国王ルイ14世の剣術指南役に任じられた、という話になる。本人の知らないことが周囲の銃士たちに知れ渡っていることが不思議だとは思うものの、そういう重箱のスミをほじくるようなことは、この作品には不粋というものだろう。


次の場面は、その王宮。国王ルイ14世(愛希れいか)はバレエの稽古に余念がない。スペインから従妹のマリア・テレサ王女(海乃美月)がフランスを訪問するので、歓迎の宴用のバレエ・プログラムを作成中なのだ。周囲のバレリーナは、宰相マザラン枢機卿(一樹千尋)の姪たちで、イタリア出身のこの枢機卿は、自分の甥や姪で権力を固める意向を持っているらしい。
(枢機卿というのは、カトリックの僧職位階の最上位に当たる。つまり、彼自身は結婚し子を成すことは禁じられている。そこで、甥や姪が登場するのだろう。)
そんなところへダルタニアンがやってきて、王と手合わせをしたのだが、手が滑って王にケガをさせてしまう。これまでの師範は、適当なところで王に花を持たせていたようだが、ガスコンの田舎者であるダルタニアンにはそういう忖度はできない。王への忠誠心があるからこそ、強い王になってほしいという思いもあったのだろう。
そこでマザラン枢機卿は、国王の怒りを利用して、ダルタニアンの所属する銃士隊を解散させてしまう。
国王に直属する銃士隊はマザランには目の上のたんこぶであり、甥のベルナルド(月城かなと)が指揮する「護衛隊」の邪魔になる存在だったのだ。


一方、ルイ14世は、従妹であるマリア・テレサとの婚約話を聞き、これ以上自分を偽れない、と言い出す。男女の双子として生まれたルイ14世。縁起が悪いので女の子を捨てることになったが、とんだ手違いで男の子の方を捨ててしまった。そのため、ルイ14世は女の子でありながら、男の子の振りをして国王になってしまった。マザランに権力が集中したのも、そもそもは、この秘密を共有し、国王の母(憧花ゆりの)をよくサポートしたからだった。
しかし、女の子である国王が結婚し、子を成すことは不可能。どこまで嘘で固め続けるつもりなのか…と思い悩んだルイは、隠し持っていた女の子のドレスと鬘で夜の街へとさ迷い出る。
(この頃は、まだルイ14世最大の事業であるベルサイユ宮殿建設は行われていないので、国王はパリに住んでいた。)
そこで偶然、彼女は、ダルタニアンに再会する。が、ダルタニアンは、その女の子が国王とは気づかずに恋をしてしまう。


踏み込んできた護衛隊から逃れるため、手に手を取って酒場を脱出した二人。
そこで、もう一度会いたいから…と自己紹介を始めたダルタニアンだが、まさかルイは名乗るわけにもいかず、「ルイ…-ズ」と名乗り、送って行くと言うダルタニアンの言葉も断る。
あまりにもルイーズが逃げの一手なのに業を煮やしたダルタニアンは、壁ドンで彼女の行く手を阻むが、ルイーズは大声を出して助けを呼ぶので…以下省略。


この場面への感想は、あえて別記事でたっぷり書くことにして、瞠目したのは、珠城の包容力。
これがあるから、この場面が成立するのよね、ということは、力説しておきたい
と思います。
この時、ルイーズが首から下げていた黒い鷲のペンダントが落ち、ダルタニアンは、それを自分が持っていることに再会の期待を持つ…のだけど、このペンダントが実は、双子のきょうだいを捜すためのアイテムになっていて、ここで落としたことの意味がまったくないというのが、まあ、残念ポイントかな[爆弾]
ルイーズこと国王ルイ14世はペンダントを失くしたことに気がついたんだかどうだか、あまり、返してもらった時にもリアクションがないし、そこから改めてダルタニアンに貸与しているから、落としたこと自体には意味がない。
ここは、ダルタニアンがそれと知らずにペンダントを下げている間にジョルジュと出会い、同じペンダントを持っているということで意気投合した後に、ルイ(ルイーズ)から、このペンダントの意味を知らされ、それなら、心当たりがある[exclamation]私に任せて下さい[exclamation×2]という流れの方が、ルイーズに約束したジョルジュの捜索が一瞬で終わってしまう…という劇的効果の薄さを補えると思うのだが。


さて、護衛隊が踏み込んできた時に、マザランを誹謗して盛り上がっていたかどで、店は営業停止になり、銃士隊は解散の憂き目にあった。国王命令ということだが、もちろんルイーズは知らない。
失業した面々は、それぞれの動きをする。ここは文句なく面白い。
アトスは、10年前にクーデターに失敗して牢獄にいる王の従兄弟・ボーフォール公爵(光月るう)に会いに行く。
アラミスは、聖職者に戻り、モテモテの神父様として、悩める女性達の告解に忙しい。
ポルトスは、かつて銃士隊にいて、今は旅芝居の座長をしているビゴー(綾月せり)を頼って、アクション俳優に。その一座にジョルジュ(風間柚乃)という役者がいて、彼こそが20年前に捨てられた本物のルイ14世ということになっている。
この旅芝居の一座が町で公演の宣伝をしているところに、ルイ14世の見合い相手、スペイン王女マリア・テレサが通りかかり、一目でこの一座を気に入る。これが、最終的にルイ14世が恋愛結婚をすることになるだろう伏線となっている。
(史実と違っても、そこは、コメディらしく、すべてハッピーエンドになるためのお約束)


一度バラバラになった三銃士とダルタニアンが再び結束した時、マザランを排斥し、正しいルイ14世を即位させるための計画が生まれる。そして、それは、銃士隊VS護衛隊の最終決戦でもあった。 と、まあ、そんな物語。


話はご都合主義で、辻褄の合わないこともある。たとえば、10年前にクーデターへの関与を疑われ銃士隊を辞めたビゴーが、20年前に旅芝居の途中でジョルジュを拾ったとかね。
(まあ、その辺はいくらでも裏設定の補足が可能だろうが、作品を見ただけではちょっと理解できない。)
でも、小池先生がホームグラウンドである宝塚大劇場の装置を融合させて作るエンターテイメント世界の楽しさは、無限の広がりを見せ、歴史上の事実よりも物語の幸福感を優先させた作品作りと相俟って、なんともいえない爽やかな仕上がりとなっている。
さらに、主演の珠城をはじめとする、適材適所の配役によって、荒唐無稽なストーリーが三次元的に立ち上がり、月組の確かな演技力によって、アドリブなしでも、連日どっかんどっかんの笑いが起きていた。
まるで奇跡のような公演[ぴかぴか(新しい)]

今の宝塚で、こういう作品を観られるんだな~という幸せ感いっぱいの舞台だった。


そんな「All for One」成功の立役者は、やはり、なんといっても、実は女であるルイ14世を演じた愛希れいかだろう。元男役という経歴を生かし、ダンサーという特技を生かし、バレエ好きな国王・ルイ14世と、母に愛されたいだけの普通の娘・(仮称)ルイーズが、一人の人物として立体的に融合し、そのメインとなる部分が、ダルタニアンとの出会いによって、ルイ⇒ルイーズに変化していく様が自然に表現された。
いやー、まさに、円熟期の娘役芸、堪能しました[黒ハート]
そして、主演の珠城りょうとのコンビ力にも感動する。
愛希が自分の仕事を全うし、珠城は、さらに大きな包容力と魅力で彼女を見守る。
「主役の珠城さんは素敵、でも、一番の立役者は、ヒロインの愛希さんよね」なんて感想を持つ、私のような観客をも「そうですね」と許し、包み込んでくれる(だろう)ゆるぎないなにか、が珠城にはある。
それは、この若きトップスターの、自分自身への信頼の表れかもしれない。


そして、2番手として、もはや十分すぎる魅力を発揮している美弥るりか
「太王四神記」の時のゆうひさん(大空)を彷彿
とさせるものがあった。
オープニングのシーンで、最初にセリ上がる美弥の輝きが、トップスターのそれだと勘違いしてしまい、後から宇月がセリ上がって初めて、それが美弥だと気づいた。


期は熟した、そんな気がする。


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宝塚雪組全国ツアー公演「琥珀色の雨にぬれて/“D”ramatic S!」観劇 [┣宝塚観劇]

ミュージカル・ロマン
「琥珀色の雨にぬれて」


作:柴田侑宏
演出:正塚晴彦
作曲・編曲:高橋城、吉田優子、寺田瀧雄
編曲:高橋恵
振付:司このみ、名月かなで
装置:大橋泰弘
衣装:任田幾英
照明:平田良一
音響:大坪正仁
小道具:太田遼
歌唱指導:山口正義
演出補:鈴木圭
衣装補:加藤真美
舞台進行:庄司哲久


全国ツアー版としては、2011年に星組で上演されている。その時の感想がこちらこちらです。


こちらで詳しく書いているので、ストーリーなどは、今回は割愛させていただき、たった一度しか観劇できなかった新生雪組について、印象に残った点のみ、書いていきたい。


まず、プロローグのダンスシーンの後、芝居の冒頭で、見送りに出てきたショーガールのマオ(羽織夕夏)と二言三言、言葉を交わし、小雨の中、家路につくクロードが、思い出を語るように歌う場面。
全ツということもあると思うが、カーテン前、銀橋もないところで、トップスターが、長々とテーマ曲を歌う。
歌声は申し分ない。

しかし、何もない舞台上をただ右往左往するだけ、というのは、どうなんだろう[exclamation&question]
本当に右往左往に見えてしまったところが、新米トップなんだなぁ~[わーい(嬉しい顔)]という、感慨にも繋がるが、ショーじゃないんだから、「まだ誰とも分からない」主人公に、客席は、基本「ハテナマーク」状態。さすがに、トップスターの力でどうこうするのは、難しい。演出でカバーしてほしいと、思う。
抜群の歌唱力なのだから、あまり歩かせず、立ち止まるシーンを多くした方が、今回はよかったんじゃないだろうか。


さて、今回の舞台で、一番謎の配役が、エヴァの沙月愛奈私がこれまで観た舞台では、矢代鴻、花愛瑞穂、と錚々たる歌姫が担当している役で、どうしてダンサーの沙月になったのか、全然わからない。
そんなわけで、ルイ(彩凪翔)が新しいステップを考案したというシーンでは、ルイはエヴァと踊る。
あー、なるほど、そうきたか[exclamation]と思いつつ、それってエヴァがダンサー設定になってしまって、なんだか話が変な方向へ…。
正塚先生、最近、緻密さを失っているというか、もっと自由に創りたい気持ちが強いのかな。
そして、正塚先生、なにげにあゆみちゃん贔屓だよね…[たらーっ(汗)]


ニースのホテル。シャロンは、ボーモン氏の誘いで、青列車に乗ってニースのホテルへ。ボーモン氏は、最高級のコネクティングルームを自分とシャロンのために予約しているが、どうやら、シャロンは、続き部屋の間のところに鍵を架けているらしい。それが、マヌカン=職業婦人としてのシャロンの矜持だと、エヴァたちは思っている。
でも、シャロンって、もう少し自由な人だと私は思っていて。ただ、ボーモン氏とそういう関係になりたくはないだけ、みたいな…ね。
真彩希帆のシャロンは、若いながら、その辺が出ていて、こいつやりおる、みたいな気分になった。


「聞かせてよ愛の言葉」のコミカルなダンスは、今回も素敵だった。やりすぎじゃなく、綺麗。
でも、「黒い瞳」をエヴァが歌う意味は不明…いいんだよ、歌手の人に歌わせて…[あせあせ(飛び散る汗)]

そんなフルールの場面の後、クロードとシャロンは、クロードが結婚した後で、抜き差しならない関係になるわけなのだが、そのラブシーン前の二人の歌はすごかった。なんだ、この熱は…[exclamation×2]
そこからラストになだれ込む一連の流れは、これまで観てきた中で一番集中できる「琥珀…」だった。
主演コンビ、彩凪のルイもよかったが、真那春人の演じたミッシェルの芝居が、決定打だった。フランソワーズ(星南のぞみ)は、この緊迫感を壊さずにいてくれただけで、今は十分です。


新トップコンビ、まずは上々の滑り出しと言えると思います[黒ハート]


Show Spirit
「“D”ramatic S!」


作・演出:中村一徳
作曲・編曲:西村耕次、甲斐正人、鞍富真一、中川昌、青木朝子
録音音楽指揮:大谷木靖
振付:御織ゆみ乃、平澤智、KAZUMI-BOY、佐藤親教
装置:関谷敏昭
衣装:任田幾英
照明:平田良一
音響:関谷健一
小道具:太田遼
歌唱指導:彩華千鶴
演出助手:熊倉飛鳥
衣装補:加藤真美
舞台進行:庄司哲久


 ショーは、こちらの早霧せいな&咲妃みゆサヨナラ公演のショーをリメイクしたもの。
サヨナラ公演で使ったショーを、ちゃんとお披露目に転用してしまうのだから、宝塚のショー作家は器用だな…といつも思う。


ここでは、変更点のみの記載とします。


全国ツアーでは、プロローグの後にトップさんの客席降りが入ることが多い。ここも、若手スターが銀橋に居残って歌う場面を、新トップ・望海風斗の客席降りシーンに変更となった。
余裕の客席練り歩き。とっても楽しそうだったのが印象的でした[かわいい]


次のBryant先生のダンス場面はカット、2番手で全ツを回る彩凪翔のために作られた新場面が入る。その名も「Show Star Show」と、彩凪の名前を使ったりして[わーい(嬉しい顔)]シルバーとブルーの衣装がステキ。相手役は、あゆみちゃん…って感じかしら[exclamation&question]千風カレンの歌がカッコよかった[るんるん]


現・トップコンビが中心だった「サプール」の場面はそのまま残った。
娘役たちの衣装は、真彩を除いて、ヴァレンチノ(Apasionado!!)のモノトーン衣装(一人ずつデザインが違う)ではなく、白+黒の全員同じ衣装になっていた。


中詰は、大劇場・東京から引継いだ形だったが、退団者がいて、別箱公演があって…という中、真那春人煌羽レオらが大活躍していた。
トップコンビのデュエットダンスは、セクシー[キスマーク]
そして、豪華に客席降りもあって…。私は、天月翼くんにウインクちょうだいして、倒れそうになってました[ハートたち(複数ハート)]
「スワンダフル」のソロは、若手の陽向春輝。広い舞台に臆することなく、満面の笑顔で歌い踊り…すごい舞台度胸[exclamation×2]
続くロケットは、星南のぞみを中心に。個人技を見せるパートも豊富で飽きさせない。


「絆」の場面は、もちろん変更になり、「Snow Troupe 希望」というシーンになった。
娘役も膝丈のドレスの上にジャケットを着ていて、いつもと雰囲気が違って面白かった。サーモンピンクという色が、花組出身のトップコンビをイメージしているのかな、と思ったがうがちすぎか。


フィナーレナンバーでのトップコンビのデュエットは、「ダンシン・イン・ザ・ダーク」。藍色の衣装がよく似合っていた。


パレードのエトワールは、羽織夕夏。今回、彩凪以外の番手スターがいないため、トップ娘役の真彩は、なんと組長とご挨拶[がく~(落胆した顔)]これはなかなか見られない光景かな、と思った。


お芝居の途中でも歌が凄いと思ったが、ショーになると、もはや劇場が壊れるんじゃないかというくらいの、凄い歌声で…[exclamation×2]このすごいトップコンビを思う存分歌わせてくれ~と心から思った。


さて、私が観劇したのは、松戸。ここでのご当地アドリブは「二十世紀梨」。
え…千葉県民だけど、たしかに千葉は梨の名産地だけど、二十世紀なんてとんと見かけないぞ…[exclamation&question][exclamation&question][exclamation&question]
家に帰ってこっそり調べたら、二十世紀梨は、千葉県の松戸市で「発見」されたんだそうです。もちろん、現在の主な産地はご存じの通り鳥取県で間違いありません。千葉県では、幸水とか豊水とか新高とかを作っています。


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宝塚歌劇雪組東京特別公演「CAPTAIN NEMO」観劇 [┣宝塚観劇]

MUSICAL FANTASY
「CAPTAIN NEMO…ネモ船長と神秘の島…」
~ジュール・ヴェルヌ「海底二万里」より~


脚本・演出:谷正純
作曲・編曲:吉崎憲治、植田浩徳
振付:尚すみれ、御織ゆみ乃
装置:新宮有紀
衣装監修:任田幾英
衣裳:加藤真美
照明:勝柴次朗
音響:切江勝
映像:酒井謙次
小道具:市川史弥
演技指導:立ともみ
演出助手:吉田瑞季
舞台進行:香取克英
舞台美術製作:株式会社宝塚舞台
録音演奏:宝塚ニューサウンズ
制作:谷口真也
制作補:北村賢次
制作・著作:宝塚歌劇団
主催:阪急電鉄株式会社(日本青年館ホール)、株式会社梅田芸術劇場(梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)


その昔、「大海賊」というトンデモ作品があった。
カリブ海を拠点とする海賊たちの物語。しかし、決して『カリブの海賊』という固有名詞は使わない。
今回の作品は、そのトンデモ感を思い出して、最初からイヤな予感はしていた。(“神秘の島”って、『ミステリアス・アイランド』だよね[exclamation&question]
しかし、ここまで、ぶっとんだ作品になるとは、さすがに予想できなかった[爆弾]
初見の観客は、口あんぐり、二度め以上の観客は、そんな初見の方に「家族[黒ハート]」と声をかける的な不思議な連帯感が劇場を支配していた(笑)
主演の彩風咲奈は、プラチナブロンド長髪の超イケメン男子で、ポーランドの貴族にして天才物理学者という設定。
まあ、トンデモ作品もらったら、ビジュアルで押さえこむのは常道。ゆうひさんも、過去作品でビジュアル双璧は、「第海賊」と「暁のローマ」だし[爆弾][爆弾]
咲ちゃんの決意のほどが、表れていて、いっそ清々しい。

作品の大きな欠点については、既にこちらに記載しているので、ここでは、ラストシーンに至る一連の流れへの提言と、トンデモに負けず頑張った出演者へのエールを記載しておきたい。

世界各地からロシアによって拉致された一流の科学者・技術者が、その総力を結集して建造した、世界初の潜水艦ノーチラス号。
しかし、彼らは、それをロシア軍に渡さずに奪い取り、脱出に成功した。
そして、南極近くの無人島に「マトカ」という理想郷を作り上げ、そこで、世界中の「帝国主義の犠牲者」たちを受け入れ、「家族」として一緒に暮らしている。
そんな島に闖入者が…[exclamation×2]イギリスの軍艦が周辺の海洋調査にやってきたところ、艦内で爆発が起き、救命ボートに乗った4人が流されてきたのだ。4人は、海洋生物学者のジョイス博士(華形ひかる)、海洋気象学者のレティシア(彩みちる)、新聞記者のシリル(永久輝せあ)そして、英国海軍少佐ラヴロック(朝美絢)。
4人は、マトカの客人として日々を過ごし、なんとレティシアは、ここで父・モリエ博士(汝鳥伶)と再会まで果たすが、ラヴロックは英国への帰還を忘れていないし、シリルに至っては、実はロシアのスパイだった。
シリルが海に酒瓶を海に流したことにより、マトカの正確な位置がロシアに知られてしまい、やがて、ロシア艦隊が、マトカの近くまで迫っていることが判明する
彼らの目的は、世界唯一の潜水艦ノーチラス号。


パイレーツ2‐8.jpg


ビジュアルはこれにそっくり(色は違う)だったので、けっこう笑った。
そこで、リーダーのネモ船長(彩風)は、彼らにノーチラス号を渡さないため、艦を爆破する計画を立てる。
実は、この島には秘密があって、南極にこれだけ近い島でありながら、常春の気候を保てるのは、海底火山の地熱を利用していたのだった。なので、海底火山にノーチラス号を衝突させることで、火山の噴火を誘発し、ロシア艦隊を撤退させようという作戦。
しかし、艦は自動操縦できない。ネモと科学者・技術者からなる乗組員たちは、艦と運命を共にする決意を固めた。そこに、レティシアが侵入していた。彼女は艦を降りることを拒否し、短くともネモへの愛を貫きたいと、思いを語るのだった。
…と、なんとなく納得できるようにストーリーを端折ってみたものの、どう考えても、納得いかない色々な矛盾や綻びが満載のトンデモ作品。
そういうトンデモな話の最後が集団特攻だったりすると、すっごく後味悪いんですよね、実際[むかっ(怒り)][むかっ(怒り)][むかっ(怒り)]

最後、誰も死なない形にすれば、トンデモだけど痛快劇になってイヤな気持ちはなくなる…[ぴかぴか(新しい)]
そう、「コード・ヒーロー」のように。(あれは誰も死なない…じゃなかったけど。)
もし[exclamation×2]
レティシアが、「うたかたの恋」的まどろみに向かうのではなく、賢い彼女ならではの、痛快なロシア艦隊騙し作戦を考え出し、それによって全員が生きてマトカに戻れ、ネモとレティシアのハッピーエンド、となれば、どんなにトンデモな話でも、「まいっか」と思えるのにな…。
トンデモ設定は、痛快ハッピーエンドにだけ許されるのだと、私は思うのです[exclamation×2]

それにしても。
ストーリー展開的には影響ないけれど、潜水艦の中に、なぜかパイプオルガンがある[exclamation]とか、もしかしてこの潜水艦の操縦、乗組員が踊ることによって成し遂げられる[exclamation&question](だって誰も操縦してないのに動いてる)とか、トンデモ設定には、事欠かない、すごい作品でした[exclamation×2]


それでは出演者一言感想。
彩風咲奈(ネモ船長)…一切の反論を許さない圧倒的なビジュアルで、最大の危機を乗り切った、まさにヒーロー。雪組のトップスターは、トンデモ作品を乗り越えてこそ…という組の伝統を思えば、この経験もきっと生きるはず[exclamation]
彩みちる(レティシア)…19世紀のフランスで、海洋気象学者の女性って…谷先生、真顔で書いてます[exclamation&question]とは思いましたが…[わーい(嬉しい顔)]知的で、しっかりもののキャラクターは似合っていた。ラストの急展開も、彼女の演技力でどうにか持ちこたえた感じ。お疲れ様でした[ダッシュ(走り出すさま)]
汝鳥伶(アランド・モリエ博士)…妙に潜水艦乗組員コスチュームが似合っていた。いやー、どんなトンデモ作品でも、どんなトンデモ台詞でも、説得力をもって演じることができるって、この方、人間国宝レベルなんじゃないだろうか。
華形ひかる(ジョイス博士)…冒頭の軍艦の事故のところから、芝居の力ってこういうことか、と、客席の目を引きつけて離さない世界の彼氏でした[揺れるハート]
朝美絢(ラヴロック少佐)…懐かしい「TRAFALGAR」の英国海軍軍服がよく似合って、ステキでした[黒ハート]四角誌面な融通の利かない役が続いたけど、美貌にそういう役、似合うよね。
永久輝せあ(シリル)…とにかくうるさいキャラ…と思いきや、とんでもないヤツだった。脚本の穴をすべて背負わされたような部分があって、「アル・カポネ」に続いて気の毒だったな…と思う。これもお勉強。
潤花(ラニ)…インド藩王国の王女。祖国を蹂躙した英国軍人への恐怖心を抱えている、という役どころ。深窓の令嬢的なムードはピッタリ。まあ、本人のせいではないが、陸軍と海軍では制服がまったく違い、海戦を担当する海軍の将校が、陸地で蛮行を行うことはない…んだよねー[爆弾]
スチールメンバーには入っていなかったが、野々花ひまりは、1幕の終わりにネモ船長を刺してしまう重要な役で、フィナーレのダンスナンバーでも、彩、潤と並んで三人で彩風に絡み、三組のデュエットダンスにも参加していた。
ほかにも、乗組員メンバーの若手、ミーシャ役の彩海せらが、セリフも多く、こんなに使われてるんだ!と驚いたのと、安定の笙乃茅桜のダンスについては特筆しておきたい。冒頭の赤いドレスのダンスで一気にテンションが上がった。


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ショー「Sante!!」感想 [┣宝塚観劇]

レビュー・ファンタスティーク
「Sante!!~最高級ワインをあなたに~」


作・演出:藤井大介
作曲・編曲:青木朝子、手島恭子
指揮:塩田明弘
振付:羽山紀代美、御織ゆみ乃、若央りさ、ANJU、KAZUMI-BOY
装置:新宮有紀
衣裳:河底美由紀
照明:佐渡孝治
音響:大坪正仁
小道具:加藤侑子
歌唱指導:彩華千鶴
演出助手:竹田悠一郎
装置補:國包洋子
舞台進行:岡崎舞、荒川陽平


2002年、大劇場デビュー2作目のショー「Cocktail-カクテル-」は、ちょっとしたセンセーションだった。
デビュー作の「GLOURIOUS!!」もそうだったが、中詰にJ-POP…というより、歌謡曲をガンガンに持ってくる当時の藤井先生のスタイルが、宝塚的には珍しくて、それを宝塚のスターがかっこよく歌うのが目からウロコで…。
色々な意味で、若手演出家の新しい風を感じるショーだった。


あれから15年―
藤井先生は押しも押されもしない、歌劇団の中心的ショー作家に成長した。
そして、満を持して発表するのが、「Cocktail」の続編的なこのショーということになる。


序章 ル・ミリオー・ヴァン(最高級ワイン)
芹香斗亜・瀬戸かずや・鳳月杏・水美舞斗・柚香光の5人が、ボルドーの5大シャトーの美女に扮して銀橋で美を競う。長袖のレオタードの上にガウンをまとったスタイルで、美脚を微妙に隠しながらのダンスがニクい[ぴかぴか(新しい)]
そして、酒の神バッカス(明日海りお)やアンジュ<天使>の音くり寿・華優希・咲乃深音・舞空瞳が現れ、華やかにショーが始まる。
今回の舞台、これまでショーでは、あまり見たことのない、ワインカラー×金色の衣装が豪華。その衣装で、大階段にワイングラスの形に並ぶところとか…娘役もかっこよくて、ドキドキ[exclamation×2]
あとは、もう、スターがあっちにもこっちにも…というウハウハを楽しんでいたら、さらに客席降りがある…という…[ぴかぴか(新しい)]
大劇場の時は、客席降りメンバーは手ぶらだったのだが、ファンの声に応え、東京公演は、それぞれグラスを手に客席のファンと「サンテ」(グラスを当てて乾杯のポーズ)[ひらめき]まさに神演出[るんるん]


第2章 アロム・ド・フリュイ(果実の香り)
前章でバッカスから最高級の男グランクリュとなった男(明日海)が、さらに、KIZZAとなって客席を煽る。さらに、二人のソムリエ、ルージュ(美穂圭子)とブラン(星条海斗)も加わり…
KIZZAがフルーツや野菜で作ったワインを飲むたびに、ワインのレディが登場する。
ここの場面、詞はワインのことを歌っているのに、音楽は石原裕次郎の「ブランデー・グラス」というのが、笑える。藤井先生が枯れた頃、ブランデーをテーマにしたショーも観られるのだろうか…。
最後にKIZZAがべろんべろんに酔っぱらう姿は、「Cocktail」の頃と変わらないな~と思った。


第3章 オドゥール・アニマル(動物の香り)
ANJU先生振付のスーツ+ソフト帽の場面。
まずは、酒瓶片手にジゴロA(芹香)が登場し、銀橋で一曲。
そこから、一人、また一人とジゴロたちが登場して、チーム(芹香・瀬戸・鳳月・柚香)ごとにダンス合戦。そして、最後にジゴロS(明日海)が登場、30人以上いるジゴロ全員が一列になってピタリとポーズを決めるところは、ハッとする美しさだった。


さらにそこから、3組のダンスへ。明日海・仙名彩世のトップコンビを軸に、芹香・白姫あかり柚香・朝月希和の3組が、セクシーに踊り、銀橋を渡る。


第4章 サントゥール・デピス(香辛料の香り)
中詰は、まさかの料理フルコース。
まず、なぜか宮廷服とワッカのドレスに身を包んだ、ムッシュ・ライ(夕霧らい)とマダム・イブ(梅咲衣舞)たちがフランス料理店に入っていく。そこでは、シェフ(柚香)がアシスタント(城妃美伶)らと、調理の真っ最中。
プログラムによると、レストランの名前は「シャトー・ドゥ・ベルサイユ」。
ここから、シャンソンに乗って、料理たちがラテンの衣装で歌い踊る、というシーンへ(意味不明)。
オードブル(瀬戸・華雅りりか)⇒ポタージュ(星条・花野じゅりあ)⇒魚料理(芹香)⇒肉料理(明日海・仙名・美穗)⇒チーズ(鳳月・水美)⇒アントルメ(鳳月⇒桜咲彩花)と次々に踊り、歌い、さらに、柚香を中心としたカンカンもあり、そして、最後は全体でパレードとなる。
ここで再び客席降り。いや、本当にご馳走様でした[exclamation×2]


第5章 エルブ(ハーブの香り)
和海しょうの見事な歌唱に乗って、瀬戸水美(女役)が見事なオリエンタル風のバレエを見せる。何回観ても、水美の腹筋の美しさに吸い込まれてしまう私なのでした[黒ハート]


第6章 オドゥール・ドゥ・トレファク・シオン(ローストの香り)
エディット・ピアフ(美穂)と、ボクサーのマルセル・セルダン(星条)の悲恋を、名曲「愛の讃歌」乗せて描く場面。
ピアフの歌うシャンソニエ(シャンソン酒場)に登場する男女の衣装と動きがステキ。そして、恋人を不慮の事故で失っても、高らかに「愛の讃歌」を歌い続けるピアフの姿に、胸が熱くなった。


第7章 スー・ボワ(土の香り)
吟遊詩人ムッシュ・ポエット(芹香)と少女フィル・ダムール(仙名)だけが愛と平和を信じている世界。その他の住人・エラフルールは、天使(舞空)の翼をもいだり、互いに争ったり、すさみきっている。そこに、祈りの神デュー・ド・ラ・プリエール(明日海)が現れ、平和のために自分は何が出来るか、と歌い続ける。エラフルールたちは、デュー・ド・ラ・プリエールにも襲い掛かり、彼を屠り去ってしまう。
哀しみの中、フィル・ダムールが踊り、それに呼応するように、エラフルールの一人()が歌い出す。一人、また一人と、エラフルールは愛に目覚めていく。
そして、デュー・ド・ラ・プリエールがワインの神、デュー・デュ・ヴァンとして現代に蘇る。私の血が極上のワインとなって希望と命を注いだのだ、と。
キリストの死と復活をワイン(キリストの血)とかけている場面なのかな…と思うが、とにかく、群舞が素晴らしい。スターが後ろに回って若手が前方で踊ったり…とか、フォーメーションの変化が全員のパワーを呼び込んだのかな。しっかり盛り上がる場面でした。


第8章 フェルマンタシオン・マロラクティック(乳酸発酵による香り)
ムッシュ・ポエットとエラフルールの衣装のまま、序章で5大シャトーに扮した5名(芹香・瀬戸・鳳月・水美・柚香)が、男役として、序章の歌から主題歌を歌い、銀橋を渡る。
そして、仙名を中心とした娘役たちが、ダルマで踊りながら銀橋を渡る。


第9章 フルール・ルージュ(赤い花の香り)
「Cocktail」のANJU先生振付、長渕剛の「乾杯」の音楽を使った大階段の黒燕尾ダンスを再現。ボレロのリズムを刻みながら、銀橋に集まる黒燕尾の男役たち…これぞ宝塚!な、素晴らしい場面でした[揺れるハート]


そこから、トップコンビのデュエットダンス。新トップコンビのお披露目公演らしい、初々しいデュエット。


終章 Sante!!(最高級ワインをあなたに)
エトワールは、乙羽映見・朝月・更紗那知の同期トリオ。
仙名のヘアスタイル(ワインの瓶6本くらいが頭に乗っている)は、いかがなものか…と思いつつも、満足度の高いショーだった。


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