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「神々の土地/クラシカル ビジュー」感想 [┣宝塚観劇]

宙組東京公演感想、「クラシカル ビジュー」に行く前に、あらためて「神々の土地」について、もう少し感想を述べておきたい。公演中は、上田先生の脚本の素晴らしさと、イリナを演じた伶美うららのヒロイン像に心を打たれ、ほかのことに言及する余裕がなかったので、変な感想になってしまった。
いささか箇条書きっぽい内容になるが、その他感じたことを残しておきたい。


ラスプーチン(愛月ひかる)の初登場シーン、子供なら夢に見るほどの怖さだった。愛月の二枚目をかなぐり捨てた体当たりのラスプーチンには、感動を通り越して震えが来るほど[ー(長音記号1)]


上田先生がこの物語のヒロインは、イリナ一択である、と、どこまでも侠気(おとこぎって読むんですけどね。でも、私がこの言葉を前に使ったの、景子先生だったわ[わーい(嬉しい顔)])を通す一方で、オリガ(星風まどか)にのみ銀橋渡りのソロを与える戦術[exclamation]には拍手を送りたい。
劇団も黙るしかないし、観客も耳福で幸せだし。
劇中でまどかちゃんの美声を聴けて(うららさまに積極的に歌ってほしいわけではない)[グッド(上向き矢印)]ラストシーンは、朝夏伶美の二人だけ[黒ハート]
トップ娘役を置かず、伶美星風を均等に扱うという(おそらく)劇団の方針通りに作りながら、作品の方向性をひとつも曲げていないあっぱれな構成に胸がスカッとした。
そして、このことは、次期トップ娘役の星風まどかも救っていることに、注目したい。
簡単に劇団に忖度し、退団する伶美より次期トップ娘役となる星風に寄った作品を作ってしまえば、伶美に同情的な観客は、その矛先を星風に向けてしまうからだ。星風の今後のためにも、伶美贔屓を完全に成仏させてくれた今回の芝居は、まさに神仕事だった[ぴかぴか(新しい)]


ショーでもやっているのだが、イリナ(=伶美)の大きく開いた背中にネックレスの正面を持ってくるという使い方、私、個人的にすごく好き[黒ハート]そういうところも含めて、伶美うらら、本当に大好きだと思う。
でも最初から好きだったわけではなく、「ロバート・キャパ」の時は、この娘役をトップにするつもりか!と、目眩がするくらい、不安だった。あれから5年。不器用な伶美がひとつづつ積み上げてきた「美」という宝石は、「歌」なんてどうでもいい、と思わせるレベルに達していた。ここで、ワンチャンあげられなかったのは、痛恨の極み[もうやだ~(悲しい顔)]
と同時に、「歌」に寄り過ぎの最近の歌劇団の方針は、30年来のファンとしては、どうも納得がいかない。


さて、イリナの存在は、人間の美徳である真善美そのもの。一方、姉のアレクサンドラ(凛城きら)ときたら、暗いし、偏屈だし、皇后なのに国民への関心がゼロだし…。しかし、もしかしたら、彼女のイケてない性格は、「美人過ぎる妹」にあったのかもしれない、なんてちょっと思った。美人過ぎる妹さえいなければ、アレクサンドラだって、ものすごい美貌の皇后のはずなんですよ[exclamation×2]
(ちなみに、史実のアレクサンドラも、美貌の皇后だったようです。)


アレクサンドラといえば、彼女の人生はマリー・アントワネットを思い出させる。
[1]外国から嫁に来て、[2]僧のせいで国民の憎悪を一身に浴びて[3]皇太子は病気になるし[4]革命が起きて[5]血縁関係のある国からも助けてもらえず[6]処刑される。[7]国の財政が破たんしたのは、もうずっと前から戦争をしていたせいなのに。
皇后/王妃の贅沢だけで国が潰れるか[ちっ(怒った顔)]
外国生まれの皇后/王妃のせいにされてしまうのは、矛先を向けやすいってだけかもしれない。気の毒すぎる。
[1]皇太后との確執[2]社交性のない性格は、エリザベートとも共通しますね[ひらめき]
マリー・アントワネット+エリザベート=アレクサンドラ…不幸の方程式だわ…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]


ラスプーチンの粛清計画がバレたのは、オリガ(星風)が母に話したから…というこの作品の設定。この結果、革命を防ぐ最後の手立てが失われたという流れになっていく。
アレクサンドラにとっては自業自得的な話だが、若くて聡明なオリガだけに、現実的な判断はできなかったのだろうか。
たぶん、それができなかった理由が、失恋だったのかな、と思うと切ない。ドミトリーに振り向いてもらえないという悲しみが、彼女を母と同じ家族の輪に閉じこもる道を選ばせたんだろう。
とすれば、国のために立ちあがったドミトリーは、国のためにオリガを愛していると言わねばならなかったのかも。それができなかったドミトリーの恋愛体質(やや女子力強し)がすべての原因か…[爆弾]


そんな風に中途半端で、何もなしえない、女々しい男達に対して、自分で決めて行動する芯の強い女達。この作品が特異で、爽快に感じられるのは、女達の決断ゆえかもしれない。間違っていても。悲劇だったとしても。


さて、実在のフェリックス・ユスポフ(真風涼帆)は、ゲイだったと言われている。少なくともバイではあったらしい。
でも超美人な奥方とは仲良しだったと言われているので、フェリックスがドミトリーやイリナに向ける愛情は、その史実に基づいているのかもしれない。
そして、イリナのモデルの一部はユスポフの美人妻だったのでは[exclamation&question]と言われているが、そこをあえての100%片思いにしたところが、上田先生、真風を良く見てるな~[ひらめき]って、思う。


柴田作品だったりすると、民衆の比重がもっと高いのかも、という気がするが、そこが強すぎると拡散してしまうので、良いバランスだと思った。
特に、酒場のやりとりが、分かりあえそうで、でも結局分かりあえない、そして、大きな歴史のうねりの中で愛が犠牲になる流れまで描かれていて、一を知れば十を知れるよいテキスト。ラッダ(瀬音リサ)は影のヒロインだと思う。


ゾバールの負のエネルギーがすごくて、そういうときの桜木みなとには、大空ゆうひを感じる。研9という学年での立場は、ゆうひさんよりずっとスターだけど。


最後に、彩花まりをもっと使ってくれれば完璧だったよ、久美子タン[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]


では、ショーの感想に参りたいと思います。 


レヴューロマン
「クラシカル ビジュー」


作・演出:稲葉太地
作曲・編曲:太田健、高橋恵
指揮:塩田明弘
振付:羽山紀代美、御織ゆみ乃、若央りさ、KAZUMI-BOY、桜木涼介
装置:國包洋子
衣装:河底美由紀
照明:氷谷信雄
音響:大坪正仁
サウンドプログラマー:上田秀夫
小道具:松木久尚
歌唱指導:KIKO
演出助手:田渕大輔
舞台進行:中島瑞紀、香取克英


S1 Big Bang(創造)~S2 Diamond(宙の太陽)
この世にビジュー(宝石)と呼ばれる石の種類はそれほど多くない。柔らかい色合いの石は半貴石と呼ばれるものが多く、宝石は、ルビーとかサファイアとか、原色が多い。このショーでは、宝石だけでなく半貴石と呼ばれる石も登場するが、それも原色ばかりで…で、出演者が宝石に扮したプロローグでは、衣装にダイヤカットのような模様が描かれている上に、娘役の衣装は、袖の部分が原色の羽素材の提灯袖なので、目がチカチカする…てか、派手すぎ[爆弾][爆弾][爆弾]


S3 Emerald(冒険の旅)~S4 Coral(海底神殿)
コミカルな三人組が冒険の旅に出て、行った先で美女に翻弄される…というテーマは、前にも稲葉先生の作品で観た記憶が…[あせあせ(飛び散る汗)]
稲葉先生の好きなテーマなのかな[るんるん]
そして、私は、攻めに入った瞬間の星風まどかが、かなり好物である。


S5 Ruby(よみがえる熱情)
クラシカルビジュー(朝夏まなと)が、かつて愛した女(伶美うらら)と再会するが、彼女は“ボス(寿つかさ)の女”になっていた…というありがちな三角関係からの一人が死ぬパターン。
しかし、寿ボスは、自ら手を下さない辺りに大物感があった。
ラストに伶美のソロがあり、彼女の得意な低音のドスの効いた声で、愛を失くした女の慟哭を聴かせてもらい、大満足のシーンだった。
伶美のゴージャスな赤いドレスがとても美しかった。


S6 Sappire(神秘)
新公以下の若手メンバーがズラリ銀橋に並ぶ姿は圧巻だったが、ほぼ誰が誰やら…[もうやだ~(悲しい顔)]
朝夏真風涼帆が組んで踊る場面があり、けっこう絡んでたな~という印象。でも、なぜか萌えない…[バッド(下向き矢印)]
私だけかもしれないが、ダンスが上手いのも萌えない原因なのかも。


S7 El Dorado(見果てぬ夢)
中詰は、“El Dorado”というタイトルが示す通り、全員黄金。宝石のついたグッズを持って銀橋を渡るスター達がかっこよかった。ラインダンスはこの位置に入っていた。


S8 Cats eye(その名は紳士)
真風が大泥棒で、美術館に忍び込むものの、目的の王冠を手にするや、その王冠に触れた過去の亡霊たちに翻弄される。
この場面も伶美の美しさが際立っていた。


S9 Amethyst(継がれる輝き)
トップスターの退団を象徴するダンスナンバー。中詰はゴールド×紫、この場面はシルバー×紫の衣装が、宙組らしくて綺麗だった。
ケガでショーを休演している松風輝がカゲソロを担当しているのが、稲葉先生の愛だな~と思う。


S10 Bijou I(美宙)
クラシカルなダンサーである朝夏らしい飾りのない燕尾服でのソロダンスから始まり、娘役に囲まれて踊る朝夏真風との引継ぎのようなシーン、そして、男役の群舞は、“ジュピター”を使った、羽山先生の王道振付。さらに朝夏のソロ歌から、宙組メンバーが朝夏を囲んでずら~っと揃うシーンは、トップ娘役がいないからこれだけ手厚くできたんだろうな…とも思うが、よい構成だった。


まぁくん、お疲れ様でした[exclamation×2]


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