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「今日もわからないうちに」その3 [┣大空ゆうひ]

「その2」はこちらです。あらすじとゆうひさんへの感想を記載しております。


では、あらためて、その他の出演者のお話など。


舞台は、ものすごくシンプルな作り。
シアタートラムの奥ゆきをほとんど使わず、真ん中あたりにホリゾントを置き、そこに映像を出して、場面転換の助けにしている。この映像は、ほっこり家族の物語から凄惨なラストシーンへ繋ぐ長めの劇中歌の場面などで使用されていた。
頭上に屋根のような形で木材がセットされていて、舞台上にも、家の範囲という意味なのか、木材が置かれていて、これは場面ごとに出演者が動かしてシーンを作っている。
シーンの数はわりと多いのだが、こんな感じで場面転換をするので、次のシーンへの転換がスムーズというか、むしろオーバーラップするように次の場面に転換していき、息もつかせない。
そういう舞台のわりに、小道具の数は、わりと多い。出演者が持って出てくるもの以外は、舞台上に最初から置かれていて、この場面を最後にもう使わないものを、出演者が、セットの階段として開けてある奈落に落とし込んでいく。
装置と呼べるものは、天井の屋根のような木材と、奈落からの階段くらいなのだが、木材のほかに大道具のようなものがふたつある。ひとつは洗濯機でもうひとつは冷蔵庫。しかし、洗濯機はなぜか流しとして扱われていて、冷蔵庫は横倒しにしてテーブルだったり椅子だったり恵の父を埋めるための地面だったりしている。
この、「家具(というか白物家電[exclamation&question])をそもそも有している機能として使わない」ことの不自然さが、芝居の緊張感に繋がっている。


そして、最後の最後、吉田が鳴らす一志の携帯の着信音の中、ホリゾントが落ち、リビングルームのセットがどーん[exclamation]と登場する。これだけのセットが、まったく芝居に使用されず、ラストに登場する不条理[exclamation×2]
その前に吉田が立っているので、最初は、吉田の部屋かと思った。でも、そうではない。
本物の大西家のリビングがこれなのだ。私たちが観ていたのは、恵の壊れた意識の中の大西家。
着信音の中で、そのリビングが現れたことで、恵の記憶がなくなった真の理由は、吉田の存在ではないか…と、思うようになった。
本当のところは分からない。
けれど、もし、一志のちょっとしたミスで、恵が吉田の存在のカケラのようなものに、無意識下で気づいてしまったとしたら[exclamation&question]ハッキリとした証拠であれば、疑心暗鬼の後、放置もしくは証拠探しという行動を起こすだろうが、「なんか変」レベルの違和感が続いていたとしたら、恵自身は気づかないまま、脳が事実を認めたくないために、誤作動を起こすことは考えられる。
特に、秘密を抱えている(普段は忘れている)恵の脳は、少し特殊な働きをしている可能性があるし。
そもそもの秘密自体はお父さんのせいだし、それを一志は知らなかったわけだけど、やっぱ、引きがね引いちゃった一志の罪は重いかもしれない…[むかっ(怒り)]


あと、この芝居、観た後の仲間うちの感想…というか、この大西家に対する感想におけるそれぞれの立ち位置が、すごく面白かったです。
私のような、独身オバサンだけでなく、主婦で母、結婚してるけどDINKS、若い独身…などなど、様々な境遇の友人・知人。でも年齢に関係なく、「子どもがいる人」は恵で、「いない人」は雛なのね、立ち位置が。
私も、ウン十年前の大昔、母に対して感じていたアレコレを鮮明に思い出して、雛に自分を投影していた。
ああ、これが、母親になってみなければ分からない、母の気持ちってやつか…と実感[ひらめき]
(母親になっていないから、母への感謝が薄いってわけじゃく、あくまでも立ち位置がそこなんだ[exclamation×2]…という面白さのお話です。)


以上、考察含め、書ききれなかった最後の感想でした。(個人の意見です。加藤さんが全然違うことを考えて脚本を書いていたらすみません…)
続いて、ゆうひさん以外の出演者感想です。


鈴木浩介(大西一志)…「緊急取調室」や「ドクターX」で大人気の鈴木さんを毎日のように拝める日々は、至福でした[黒ハート]しかも、生着替えとか、誰得[exclamation&question](すみません[あせあせ(飛び散る汗)]決してすべてのゆうひファンが変態ではありません[exclamation]
訥々とした語り口で、人の好さをうかがわせるものの、チャラくてテキトーな部分も併せ持っていて、それが、妻を追い詰めている。悪気はないのに。
いるよね、こういう人…[むかっ(怒り)]
どこも誇張していないのに、存在感とか、説得力がありすぎて、この人はどういう俳優なんだ、どんなメソッドで演じているんだ[exclamation×2]と、終わってみてしみじみ不思議に感じる。
いや~ステキでした[るんるん]


池田朱那(大西雛)…朱那ちゃんは今年18歳。もう思春期じゃないけど、数年前のことだよね。すごいリアルなキレ方をしていて、大人ならそれは簡単なことだけど、18歳の彼女がこういうキレ方をするのは、とても恥ずかしいよね、数年前の自分を演じるって。もしかして、キレない思春期を送ってきた[exclamation&question]でもそうだったら、これだけ瑞々しくキレる演技力ってなにもの[exclamation&question]
もう、どちらにしても、天才女優なんじゃないか、と。
彼女が大人の女優になった時、もう一度、ゆうひさんの前に現れてほしい。そう思います。待ってるよ[exclamation×2]


山谷花純(吉田)…ゆうひさんの事務所の後輩みたいですね。もしかして、ゆうひさん主演公演って、エイベックス枠があるのかしら[exclamation&question]まあ、可愛い後輩ちゃんと一緒でゆうひさんも楽しそう。
吉田は、今のところ、決して怖い存在ではない。でも、確実に、着実に、彼女の存在が大西家を壊していく。ちょっとしたパパ活だったのに…[爆弾]その普通さ、純粋さに恐怖を感じる。
まあ、それほど難しいポジションの役ではないので、いい舞台経験になったのではないかと思います。


宮田早苗(恵の同僚)…すごくもったいない使われ方で、1シーンしか出てこない。ごく普通の主婦同士の会話。旦那の話、子供の話…でも、恵が家を忘れるキッカケになったのは、彼女との食事のあとだ。
なぜ、このタイミングだったのか…と思うと、重要なシーンだったりする。
でも、印象づけようとか、そういう意識ゼロで、普通に演じている姿が、起用の理由かな、と思いました。


風藤康二(医者)…飄々とした医者なんだけど、もしかしたら、とんでもない藪医者なのでは[exclamation&question]と思わせる助手との会話がツボ。その飄々は、たぶん彼が本職の俳優ではないからだから…と思うけど、こういうポジションに、彼のような人を入れることで、芝居が変わる。恵の病気が深刻なものかどうか、その辺が曖昧になっていく。
病気のことが主たるテーマでなくなるためには、このひと工夫が重要なのかもしれない。
そして、風藤さんのセリフがツボになる…と。


串田和美(井岡一郎)…今回の芝居、セリフのテンポが速いし、メリハリも少ない。そんな中、串田さんの演技スタイルは、普段の彼とそれほど変わっていない。変わっていないが、テンポの速い人たちの中で、決して浮いていない。雛にとってはおじいちゃんだから、一志にとっては舅だから、もう老人だから…ということで、ちょっとだけ、家族がテンポを落としているというのもあるし、それがまたリアルだし。
そして、彼の背負った業がまたすごい。
だから、串田さんなんだ[exclamation×2]と、オファーの理由が納得できる。
ゆうひさんと共演していただけたこのご縁に感謝。また、ご一緒できますように[黒ハート]


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