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「今日もわからないうちに」その2 [┣大空ゆうひ]

初日から千秋楽まであっという間の公演。
あらためて、ネタバレ含め、公演を振り返ってみたい。ちなみに「その1」はこちら


大西恵(大空ゆうひ)は、夫・一志(鈴木浩介)、中学2年生の娘・雛(池田朱那)の三人暮らし。
郊外の住宅地にある一軒家。そこは、小さくても恵にとってはお城のような存在。
ある日曜の朝から物語は始まる。恵の父親がやって来ることになっているらしい。一志は、スマホを手放そうとせず、女優が結婚したよ、とかなんとか妻に話しかけるが、忙しい妻は、ろくに相手をしない。着替えを出す出さないでこぜりあいがある。夫は「よかれと思って」あれこれ言っているのだが、妻というか主婦として、恵にはそのすべてが、「うざい」。
この家では、居間は2階にあるらしく、恵は忙しく居室や玄関のある1階と2階を往復している。(舞台中央に奈落への階段が設えられている。最近の舞台によくある設定。)
娘の雛は、今日はソフトボールの試合らしく、そろそろ起こさなきゃ…と、恵は気をもんでいる。居間に放り出された部活のバッグの中から、泥まみれのプリントが出てきて、恵は腹を立てる。が、起きてきた雛は、どうして勝手にバッグを開けるのか、とそのことにキレる。(←すごくリアル。身に覚えがある…[爆弾]
起きる時間も、今日の試合会場に合わせて自分で考えているのに、早く起こされたということにもキレている。
が、恵は、雛の言っていることを、それほど重く考えていない。とはいえ、雛は、「おじいちゃんに会いたくないから」と、早めに出ていき、それと入れ違いに恵の父・井岡一郎(串田和美)がやってくる。
戸締りがされていない、と文句を言う父に、「お父さんが来るから、雛が出る時に開けたままにしただけ」と恵は答えるが、戸締りがなってないと、父は文句を言い続ける。父は、我が物顔で居間に座り、恵は、「今月分」と父に封筒を渡す。中の一万円札は10枚。
公共料金の請求書が来たという父に、恵は、説明が面倒になって「私がやっておく」と封筒から1万円を抜き、コンビニ支払の請求書を受け取る。父親の通帳には、その程度の残高もないらしい。
その日は、夫と父親に軽い食事を作り、その後は、職場の友人(宮田早苗)とランチの約束。主婦は、こういう時でも、家族の食事のことを考えた上で…なんだよね。ご苦労様です。
夫や子供の話をあれこれした後、店を出て、恵は驚く。
どうしたら家に帰れるか、わからないのだ。


その日は、夫に迎えに来てもらった。(ちなみにその時、夫は、若い女の子、吉田(山谷花純)と会っていた。お金を渡そうとして、お金なんかいらない、と押し問答。どうやら、パパ活しているらしい。そんな中、恵からの電話で、よくわからないながらも慌てて出ていく。一応、家族も大事らしい[むかっ(怒り)]
が、翌日、夫から昨日のことを聞かされると、恵は「そんなはずない」と言って認めない。
でも、また、その日も家を忘れてしまう。ようやく、病院に行くと、医師(風藤康二)は、治るとも治らないとも答えず、現状に慣れることを考えましょうと言い出す。脳には影響がなく、家を忘れる以外の問題はない。ただ、眠る時間が長くなり、忘れた家に帰っても家事ができない。
一志は、吉田と別れることを決意するが、お金はいらないから別れないでほしいと懇願される。井岡にも恵にたかるような生活を改めるように伝えに行き、逆ギレされて追い出される。
急に変わってしまった母を見て、病気のことを知らない雛は、心が荒れる。たぶん、「私のお母さんでいることがイヤなの[exclamation&question]」みたいな気持ちなんだろうな。
三者面談の帰り、雛と一緒にいる時にも、帰り道がわからなくなり取り乱した恵。
その翌日は、朝から夕方まで寝ていて、帰宅した雛に罵倒され、買い物に行くと言って、ソフトボールだけを持って家を飛び出す。帰宅した一志から、雛はとうとう母の秘密を聞かされる。


公園のベンチにポツンと座る恵を見つけた雛は、それまでの怒りを忘れ、傷ついた母をいたわる。
二人は、キャッチボールをしながら、心の交流を取り戻していく。とってもやさしい時間ー


しかし、物語はここでは終わらない。
井岡が家にやって来る。そして、記憶を失くした恵をこの家に置いておくわけにはいかないので、引き取ると言い出す。何を言ってるんだ…みたいな雰囲気の大西家。
が、記憶を失くした妻…ということで、井岡は、認知症だった妻を思い出していた。
失禁までするようになった妻が、夫である自分の名前を忘れ、昔の男の名前を呼んだことにキレた井岡は、妻を殴り殺し、埋めたと言い出した。しかも、それを高校生だった娘の恵に手伝わせたと。恵がずっと父にお金を渡していたのは、その口止め料だったのだ。
(様々な情報を勘案すると、実際は、井岡が苦し紛れに語った、その後息を吹き返して施設に入って亡くなったというのが事実だと思うが、井岡と恵の中では、母を殺して埋めた記憶が、真実として残っているように思う。)
ひどい父親である。
すると、雛が、金属バット(ここで彼女がソフトボール部ということが生きる)を出して、祖父を殴り殺そうとする。最初はもちろん止める両親。が、吉田からの着信音(谷川さん演奏[るんるん])が、空気を変える。「そういえば、オレ、この人に殴られたわ」と一志は言い、「何が起きてもどうせ明日には忘れるし」と恵が言い、雛は凶行を完遂してしまう[爆弾][爆弾][爆弾]
そして、大西家の三人は、必死に、井岡を土に埋めようとするー


ここで突然の終幕。
さすがですよ、さすが、大空さんが選んだ舞台ですよ[爆弾][爆弾][爆弾][爆弾][爆弾]


ただ、おおーっ[あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)]と思ったのは事実だけど、そんな衝撃も含めて面白かった。
少なくとも、イヤな感じのするドラマではなかった。こういう演劇を教えてもらえて、また世界が広がった。
そして、ゆうひさんに関しては、ごく普通の家庭の主婦で母親というキャラクターに自然に扮していて、声のトーンだったり、セリフの早さだったり、演劇的というよりは、テレビドラマなくらい誇張がなく、またひとつ、演技面での新たな挑戦を感じた。
セリフがダイアローグ(対話)として無理がないということも大きいのだが、娘の抗議に対応する母親のトーンが非常にリアルで、実の親子の会話か[exclamation×2]と思うくらいだった。
記憶を失くす…という経験に不安いっぱいになっている恵と、家族の愛を感じて安心している恵、声のトーンひとつで、それらをくっきりと観客に伝えてくる。芝居は音楽…たしかにな、と思う今回のゆうひさんだった。
夫役の鈴木浩介さん、娘役の池田朱那さんの演技力の素晴らしさ[ぴかぴか(新しい)]…ももちろん大きいが、その演技に引き出してもらってゆうひさんの丁寧な演技が、よりクリアになったのではないかと思った。
そして、食えない感満載の串田和美さんが、芝居が終わった途端、ゆうひさんを労うように、カーテンコールからの帰り道をエスコートしてくれるのが、また嬉しかったりした[るんるん]


ゆうひさん以外の出演者感想と、色々な作品考察については、また、別記事に書きたいと思います。


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