「最初の悪い男」 [┣本・映画・テレビその他エンタメ紹介]
2018年に発行されたこの本のことは、全く知らなかった。ゆうひさんが、「群像」誌の中ですごい本だ、と紹介していて、まあコロナ禍の中、暇だしなーと、Amazonでポチってみた。
それ以前から、私のツイッター上を賑わせている「掃除婦のための手引き書」もついでにポチった。両方とも訳は、岸本佐知子さん。昨年の「居心地の悪い部屋」以来、岸本さんの手になる本は、4冊目だろうか。
このタイトルで、どんな想像をするだろうか。
最初に出会った悪い男に騙され、その影響で私の人生はこんな悲惨なものに…みたいな物語かと、私は思った。
主人公のシェリルは、NPO法人の職員。NPOでは、女性のための護身術を広める活動をしていて、20年くらい前は、ドラマ仕立てになっているシチュエーションごとの護身術ビデオを販売していた。(夜道で後ろから突然抱き着かれたら、こうするみたいな…)もう一人のヒロインであるクリーがシェリルの家の居候になった後、ひょんなことから二人は、このビデオの中のドラマと格闘を全部演じていくことになる。
「最初の悪い男」というのは、そこに出てくるキャラクターのことだったのだ。え、なんで、それがタイトル
タイトルのみならず、すべての展開が「え、そこ」「え、そうくる」で繋がれていって、最後まで行くと、主人公の人生が大きく変わっている。
この小説を書くちょっとまえに、作者のミランダ・ジュライは母になっている。
赤ちゃんという存在の破壊力が、自分の小さな小さな世界を守ることに喜びを見出していたシェリルの人生を、最後に最大に破壊する。
クリーは、「絵に描いたようなビッチ」と訳者の岸本さんはおっしゃっているが、謎すぎる。ただのツンデレなのかもしれない。
すごくリズムのよい語り口で、音読してみると、良さがさらに伝わるような気がする。