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「桜文」観劇 [┣演劇]

パルコ・プロデュース2022
「桜文」

作:秋之桜子
演出:寺十吾


久々のPARCO劇場公演観劇。


PARCO桜文.jpg


まずは、公演ドリンクをいただいて、作品世界にGO!


明治末期の吉原(新吉原)を舞台にした、一人の遊女(花魁)をめぐる物語。
桜雅(おうが)という名の花魁(久保史緒里)は、かつて、雅沙子(まさこ)という名で、一時的に遊郭に預けられていたお嬢様だった。しかし、彼女を迎えに来るはずの父親は破産、雅沙子は、花魁として客の前に出る身となる。雅沙子が、まだ、身を売る前、桜の季節に木を植えに来る職人がいた。
大門から連なるメインストリートに、期間限定で植えられる桜の木々。その植木職人の中に、仙太(ゆうたろう)という少年がいた。彼は、ひとりぼっちの雅沙子に桜の綺麗な場所を教え、雅沙子と心を通わせていた。しかし、雅沙子が突然、客を取ることになり、驚いて、彼女に一目会おうとしたところを、殺気立った店の男衆に殺されてしまう。その日から、桜雅となった雅沙子は、二度と笑うことはなかった。
桜雅に入れあげている紙問屋の西条(榎木孝明)は、桜雅のために花魁道中を企画するが、そこへ走り出てきた、東新聞の臨時雇い記者(実は小説家)、霧野一郎(ゆうたろう)を見て、桜雅は気を失う。
仙太に瓜二つの霧野は、桜雅に気に入られ、霧野もまた、花魁なのに、明治の世ではまだあまり知られていない海外の文学にも造詣の深い桜雅にぞっこんになっていた。
ある日、桜雅は、誰にも話していなかった仙太との淡い恋の物語を巻紙にしたため、霧野に贈る。その悲しい物語を読んだ霧野は、これを小説にしてみろと言われたような(全然言われていない)気持ちになり、新聞小説として発表する。
当の桜雅は、これを知ってショックを受け、精神を病んでしまう。霧野をそそのかした西条は、何も知らない振りで桜雅を身受けし、結婚する。(そのために妻とは離婚)
桜雅が吉原を出る日、霧野が現れると、取り乱した桜雅は、霧野を刺してしまう。


舞台は、すっかり物が書けなくなった作家の霧野のところに、東新聞の社員の男がやって来たところから始まる。おそらく、時代は大正の終わりか、昭和になっている。男は 吉原に馴染みがいて、霧野を吉原に連れていくことで、自分も馴染みの女に会えることを狙っている。女から、会えないと死ぬみたいな手紙が届いたのだ。そして、その熱烈なラブレターについて女に聞くと、近くに代書屋があり、そこで書いてもらったと言う。店に行ってみると、そこに盲目の女がいて、その女が、代書屋だという。
その店に行くことで、時間が遡る設定だったと思うが、そことラストシーンが繋がるとすると、刺された霧野は、あの時死なず、その後、自分の目を傷つけた桜雅が、代書屋の女になり、その二人が時を超えて再会し、一緒に消えていったというのが筋書きなのかな…と思った。


生田絵梨花、生駒里奈、桜井玲香、鈴木絢音など、どうやら、乃木坂46は、才能の宝庫のようだが、久保史緒里は、初めて知った。ブルジョア出身のインテリ花魁という難しいキャラクターだったが、見事なキャラクター造形だった。
ゆうたろうは、テレビドラマや映画では何度も見ているが、舞台で観るのは初めて。これまで中世的な可愛いキャラで出演することが多かったが、今年になってから、少し方向性が変わったかも。仙太も霧野も、若く純粋なキャラクターではあったが、男らしい雰囲気もあり、新しい魅力を感じた。私が観た時は、まだ初日が開いたばかりで、声を張る場面など、喉の使い方に不安を感じる部分もあったが、その後は、もっとよくなっているんだろうな~。
榎木は、男の色気が駄々洩れ。素晴らしかった。
加納幸和のいけずな芸妓や、宝珠楼のあるじ夫妻を演じた石田圭祐阿知波悟美の落ち着いた芝居、髪結い与平役の石倉三郎の温かさが印象に残った。


もちろん、恋愛がベースにある物語なのだが、桜雅と霧野の間にある、小説愛と創作に供物を捧げるような独特の感性が面白かった。
桜雅から届いた巻物を読んだ時、それを、「もっと面白い話にしてみせてほしい」という挑戦状のように感じた、という霧野。そこには、男女の恋愛を超えた、文学で命をやり取りするような激しい情念があって、その情念だけが時を超えて、永遠に残るのではないか、などと思ったりした。だから、代書屋の話が出てくるんだと。
新吉原の大門に書かれている「春夢正濃 満街櫻雲」「秋信先通 両行燈影」は、福地桜痴の書なのだそうだ。この文字が書かれた大門を移動させることで、場面転換を図るのがスピーディーでかっこよかった。


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「ガマ」観劇 [┣演劇]

「ガマ」


脚本:古川健
演出:日澤雄介
舞台美術:長田佳代子
美術助手:小島沙月
照明:松本大介
照明オペレーター:長谷川楓
音響:佐藤こうじ
音響オペレーター:泉田雄太

音楽:佐藤こうじ
衣装:藤田友
沖縄ことば:今科子
小道具製作:佐藤区役所

舞台監督:本郷剛史、藤本貴行
演出助手:石塚貴恵
演出部:椎木美月、安原あいか、浦田大地、いまい彩乃
スタンドイン:古瀬大樹、小川哲也(平泳ぎ本店)、須藤瑞己

宣伝美術:R-design
写真:池村隆司
撮影:神之門隆広、与那覇政之、松澤延拓、大竹正悟、遠藤正典
タブレット字幕:G-marc(株式会社イヤホンガイド)
web:ナガヤマドネルケバブ
制作協力:塩田友克、瀬上摩衣
制作:菅野佐知子


<配役>
東秀達…岡本篤(劇団チョコレートケーキ)
安里文…清水緑
山城松介…西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)
岸本昭吉…青木柳葉魚(タテヨコ企画)
井上市太…浅井伸治(劇団チョコレートケーキ)
知念孝元…大和田獏
声…アリソン・オパオン、東谷英人、粟野史浩、今里真、緒方晋、照井健仁、村上誠基、黒沢あすか、椎木美月、蓑輪みき、本宮真緒、谷川清夏、中野亜美、中神真智子、柳原実和、永田理那、宇田奈々絵、麗乃


劇団チョコレートケーキが、東京芸術劇場のシアターイースト、シアターウエストを同時に使って「戦争」関連作品六作を一挙上演する企画「生き残った子孫たちへ」をこの夏観劇することにした。
とはいえ、このうち、5篇は再演作品で、今回観劇した「ガマ」だけが新作とのこと。(私は全部初見でした!)
そして、この「ガマ」だけが、現在進行形で戦争が続いている状況の物語ということになるのだそうだ。
そっか…「その頬、熱線に焼かれ」は1955(昭和30)年のアメリカ、「帰還不能点」「追憶のアリラン」は、昭和25年の日本が舞台だし、「無畏」は昭和21年、「〇六〇〇猶二人生存ス」だけは戦争中だけど事件自体は、訓練中の瀬戸内海が舞台だったからな…。


太平洋戦争の中で、唯一、日本国内で地上戦が行われた沖縄。
ガマというのは、沖縄本島南部にある、石灰岩で構成された鍾乳洞。沖縄戦の時、このガマは、避難壕や病院壕として利用されたそうだ。
とあるガマに、中学教諭の山城と、一校女の女学生、文が、一人の兵隊を背負ってやってきた。このガマは無人のようだったが、後で奥を調べてみると、集団自決の痕跡があった。
兵隊は、調べてみると将校のようで、看護要員として病院壕で働いていた文は、テキパキと処置をし、山城に看護を頼むと、働いていた病院壕まで行って、必要なものを取ってくる、と言う。山城は、最初、危ないと言って止めるのだが、もしかしたら彼女は逃げるつもりなのかもしれない、と思い、行かせることにする。
しかし、彼女は戻ってくる。それが当然であるかのように。
将校の東は回復し、下級兵士(たしか軍曹と二等兵だったかな?)の岸本と井上、そして、現地の老人・知念がガマの住人に加わる。山城を含む彼ら全員が、それぞれの事情で、このガマにやってきた。少しずつ、お互いの事情を語ったり、何か語れない事情がある風情を見せたり…という毎日が続く。ガマの奥に残された人骨を丁寧に拾い上げ、供養したりしながら。
そんな中、アメリカ軍から、拡声器で投降の呼びかけが聞こえてくる。東は、将校の自分は自決すべきと言うし、岸本と井上は、特殊任務の命令を受けていることに鑑み、今すぐ逃げて任務に戻るか、投降するか本気で悩み、山城は、生徒を死なせている自分に生き残る価値があるのかと考え、しかし、全員が、文だけは生き残るべきだと考えている。
一方、文は、最後の一人になるまで戦うのが当然で、アメリカに降伏するなんて、先に死んでいった仲間たちに申し訳が立たない、私たちは日本臣民なのだ、と、強く反論する。
将校である東は、この戦争において、日本軍は、沖縄を犠牲にしようとしている、それは、本土のどの県でも行われないことだ、沖縄だからやっているのだ、と言う。岸本たちも、日本のほかのどの県だって、ここまで軍に協力的な県はなかった。その沖縄人の純真な心を軍は利用したのだと言う。
知念は、「うちなんちゅ」も「やまとんちゅ」も「アメリカー」も命に区別があるはずがないと言う。
後半は、投降に向けて、頑なな文の心を、大人たちがどう溶かしていくか、に焦点が当てられている。その中で、沖縄人の「同化政策」の根の深さや、沖縄差別の痛みが浮き彫りになってくる。


沖縄県の歴史は、その地理的条件も相俟って、とても複雑だ。
江戸時代の初め、琉球王国に薩摩藩が攻め入り、支配下に置いた。(王国は存続したが、薩摩藩と中国のふたつの宗主国の支配下で独自の文化を築いていく。)
沖縄が「日本」となったのは、1872年の「琉球処分」以降。それまで日本と清の両属状態だった「琉球」を明治政府が併合している。沖縄県誕生は1879年。その後、沖縄の「日本化」が進められていくが、その中で、差別や沖縄文化の否定が、あからさまに続けられていった。
そんな「日本化」教育の中で、一校女の女生徒たちは、純粋に「神国日本」の勝利だけを信じて、そのお役に立ちたい一心で、つらい病院壕勤務に耐えている。麻酔なしで手足を切ったり、薬もなくて死んでいく兵士に付き添ったり…平和な世界でしか生きていない私には、想像できない世界だ。
もうひとつ、今の私に想像できないことがある。価値観の崩壊だ。「日本の臣民として、天皇陛下のために命を投げ出す」という価値観でずっと生きてきて、既にそれを信じてたくさんの友達が死んだのに、沖縄は捨て石にされたんだ、誰も沖縄の人間を日本の臣民だなんて思ってないなんて聞かされたら、それは生きていけないほどの地獄だろう。いくら想像しても、私自身の経験の中には、そんな価値観の崩壊はない。
壊れていく文が痛くて痛くて、つらかった。
その痛みやつらさこそが、戦争中から、今もなお、私たちが沖縄に強いているものなのだろう、と思った。


熱血愛国少女の頑なさを、こちらが苦しくなるほどの熱量で演じきった、清水緑さん、本当にすごかったです[exclamation×2]そして、文の痛々しさをつらく感じたり、「沖縄」に対する本土の人間として罪の意識の重さに打ちひしがれそうになった時に、温かい沖縄言葉で、登場人物だけでなく客席までも癒してくれた大和田獏さんの人間力に感銘を受けた。素晴らしい沖縄のおじいでした[ぴかぴか(新しい)]


きっとまた再演されるだろうから、初演作品である「ガマ」のラストについては詳しくは書かないが、照明が美しく、印象的だった。


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「誰かが彼女を知っている」 [┣演劇]

演劇ユニット100点un・チョイス!第18回公演
「誰かが彼女を知っている」


作・演出:相馬あこ


舞台監督:今泉馨、長沢涼音(P.P.P.)
照明:青木大輔、大島由香恵
音響:(有)ALLEX
演出部:掛橋七海、渡部真也(100点un・チョイス!)
ビジュアルデザイン:ngsm
プログラムデザイン:太田明日香
スチール撮影:溝口拓
記録撮影:TWO-FACE
宣伝メイク:堀江裕美
票券:高岩明良


制作:松本匡平(100点un・チョイス!)
企画・制作:演劇ユニット100点un・チョイス!


昨年、三上俊と夫婦役で私のハートを射抜いた花奈澪が、今度は、多田直人と共演してくれた。どうやら、私の推しを総なめしてくれるらしい。早く、大空さんとも共演してください[exclamation×2]


ある朝、同棲中の彼女、新田花乃(相馬あこ)がいなくなった。古賀大和(多田直人)は、警察に捜索願を提出し、刑事の野村(近江谷太朗)と江藤(阿瀬川健太)が調査している。心配して、花乃の同僚で大和とも面識がある高木啓太(松村優)と花乃のアシスタント・葉月杏奈(花奈澪)が大和のマンションを訪れた。
マンションの住人で、やたらと花乃に近づいていたらしい流川(我善導)や、花乃をお水のアルバイトに誘った玲奈(神屋敷樹麗)や、地下アイドルらしい光莉(熊手萌)が入れ替わり立ち替わりやってきて、捜査の邪魔をするし、生命保険会社の加藤という男(清水弘樹)は、花乃が1億円の保険に入ろうとしていたと言う。
花乃が捨てる予定だったゴミは[exclamation&question]花乃の妹の千夏(大坪あきほ)が持ってきたパンは[exclamation&question]となくなったものがある一方で、謎のたこ焼きの存在…とか、解決を妨げる問題がたくさんあって…しかし、光莉の暗躍により、少しずつ、真相が明らかになっていくー


何度も再演されている作品で、今後も再演されるだろう作品なので、これ以上のネタバレは自主規制。
啓太と杏奈の存在感が後半どんどん増してきて、変人ばかりに見えた花乃周囲の(主にマンションの住人)人々の輪郭が少しずつ明らかになってくる。
心理劇として、とても面白かったし、オレ達の花奈澪は、今回もサイコーだった。
2.5次元やってる時の(残念ながら一度も生では観ていないのだが…)あの華やかで押し出しの強いイメージとは、真逆の、儚げで、ずっとそこにいてもうるさくならない、それでいて、自分のターンで期待以上の成果を出してくる…100点un・チョイス!での花奈は、まさに最終兵器なのかもしれない。


さて、ある朝、忽然と姿を消した30代女性ー
そのニュースバリューがどれだけのものなのか、自宅に報道陣が押しかけてくるほどのものなのか、というあたりに疑問が残る。また、捜索願が出ただけで、刑事が捜査することも、通常ありえない。犯罪に巻き込まれた可能性があるかどうかで対応は変わってくるように思う。たとえば、血痕が残っていたとか。
この辺りがクリアになると、さらに納得度の高い物語になったように思う。
あと、花乃が出ていく姿が、近所の(マンションには備え付けの防犯カメラがない)防犯カメラに映っていないというセリフがあったが、大和が大きな荷物を持って出ていく姿は映っていなかったのだろうか。


とはいえ、人気により、再演を重ねているということは、人物模様の面白さが、少々の難点を上回っているということなのだろう。
キャストも、私のハートをくすぐるメンバーだったし、今後も期待したい。


多田直人のクズっぷり、私は、好きです[黒ハート]


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「8人の女たち」観劇 [┣演劇]

「8人の女たち」


原作:「HUIT FEMMES」by Robert THOMAS
上演台本・演出:板垣恭一
翻訳:山口景子
美術:乘峯雅寛
照明:三澤裕史
音響:友部秋一
音楽:かみむら周平
衣裳:十川ヒロコ
ヘアメイク:佐藤裕子
アクションコーディネーター:渥美博
振付:当銀大輔
美術助手:酒井佳奈
演出助手:高野玲
舞台監督:藤崎遊


著作権代理:(株)フランス著作権事務所
企画・制作・主催:梅田芸術劇場


ロベール・トマのミステリを元宝塚のトップスター、トップ娘役だけで上演するという企画作品。
出演は、上級生順に久世星佳(月)・真琴つばさ(月)・湖月わたる(星)・水夏希(雪)・夢咲ねね(星)・蘭乃はな(花)・珠城りょう(月)・花乃まりあ(花)。トップになった組は、宙組以外わりとバラけているが、月組ファンとしては、月組っぽい布陣だな~と感じる。
各人が月組に出演した年を黄色で塗ってみた。わたるさんは特出経験あり、花乃まりあちゃんは、初舞台が月組なんですよね。


無題.jpg


勝手にゆうひさんを入れてみると、らんちゃんまでは、ゆうひさんと一緒に月組の舞台に立ってますね。(クリックしたら、表の全部が見えると思います。)わたるさんは、専科時代に「長い春の果てに/With a song in my Heart」で。
(ちなみに、かのまりちゃんは、宙組時代に同じ舞台に立っているので、まったくすれ違ったのは、珠城さんだけですね。一応、ナイスリー時代のゆうひさんのファンでいてくれたと聞いているので、まったく無関係ではないと信じたいですが。)


12月24日の早朝、雪景色の中、実業家マルセルの屋敷に、大学が冬休みになった長女のシュゾン(蘭乃はな)が帰ってくる。迎えに行って一緒に戻ってきた母親のギャビー(湖月わたる)、帰りを楽しみに待っていたギャビーの母・マミー(真琴つばさ)、メイドのシャネル(久世星佳)。初対面なので全然興味がない新米メイドのルイーズ(夢咲ねね)。ギャビーの妹、オーギュスティーヌ(水夏希)、寝間着姿の次女、16歳のカトリーヌ(花乃まりあ)も現れるが、マルセルだけが起きてこない。
ギャビーに頼まれて見に行ったルイーズが悲鳴を上げて飛び出してくる。
マルセルの背中には、短刀が突き立てられていたのだった。
警察に通報しようとすると、電話線が切られている。孤立した建物の中、この中に犯人が隠れているのか、それともこの中に犯人がいるのか…疑心暗鬼になる家族の中に、突然現れる闖入者。彼女は、マルセルの妹、ピエレット(珠城りょう)だった。


互いが互いを疑う中、車椅子に乗っていたはずのマミーが歩けることや、シャネルがポーカーに狂っていることや、オーギュスティーヌがマルセルに猛烈アタックしていたことや、ギャビーが駆け落ちしようとしていたことや、シュゾンが妊娠していることや、ルイーズがマルセルの愛人だったことが、次々に露見していく。さらに、ギャビーの駆け落ち相手が、マルセルのビジネスパートナーだということまでがわかり…しかも、マルセルを裏切って破産に追い込んだんだよね、この男…[あせあせ(飛び散る汗)]
ドロドロした物語の意外な結末、それは…まあ、スタンダードになっている戯曲なので、書いてしまうが、カトリーヌが手助けした、マルセルによる自作自演。しかし、女性たちの醜い争いのいっさいを部屋の中で聞いていたマルセルはー[爆弾]


8人のキャストそれぞれ、アテガキ[exclamation&question]と思うくらい、ピッタリ配役。
全員が主役で、全員が輝いていた[ぴかぴか(新しい)]
特に、今回は、花乃のカトリーヌがすごくよかった[exclamation×2]トップ娘役時代は、ちょっと苦手だったけど、こうして外部で観ると、いい女優さんになったな~と思う。今後、注目していきたいです[exclamation×2]


ロベール・トマあるあるで、舞台を観ている間は、そのサスペンスにハラハラドキドキさせられるが、終わって冷静になってみると、え、この話、おかしくない[exclamation&question]という気持ちになる。今回も、え、マルセルって本当に被害者[exclamation&question]という気持ちが…[爆弾]
だって、愛人のルイーズをメイドとして雇って、妻に隠れてこっそり情事を楽しもうとしていたわけでしょ[exclamation&question]ギャビーに駆け落ちされてもしょうがなくない[exclamation&question]
ちなみに、シャネルとピエレットは本当はレズビアンの関係で、そのためにピエレットはシャネルの小屋に足しげく通っていたというのが、原作設定(もしかしたら映画設定かも)なんだとか。基本同性愛を描かないのがお約束の宝塚だけど、OGになってもタブーなのですかね…[爆弾]のんちゃん×たまちゃん(←役名で言いなさい)とか、私的にすごく需要あるんですけど…[ハートたち(複数ハート)][ハートたち(複数ハート)][ハートたち(複数ハート)]


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「無畏」観劇 [┣演劇]

「無畏」


脚本:古川健
演出:日澤雄介
舞台美術:長田佳代子
美術助手:小島沙月
照明:松本大介(松本デザイン室)
照明オペレーター:工藤夢生
音響:佐久間修一(POCO)
音楽:加藤史崇(POCO)
衣装:藤田友
舞台監督:渡邊歩
演出助手:桒原秀一(JAPAN)
演出部:浦田大地、いまい彩乃
スタンドイン:古瀬大樹、小川哲也(平泳ぎ本店)、須藤瑞己

宣伝美術:R-design
写真:池村隆司
撮影:神之門隆広、与那覇政之、松澤延拓、大竹正悟、遠藤正典
タブレット字幕:G-marc(株式会社イヤホンガイド)
web:ナガヤマドネルケバブ
制作協力:塩田友克、平田愛奈
制作:菅野佐知子


<配役>
陸軍大将 松井石根…林竜三
松井の私設秘書 田村明政…渡邊りょう
陸軍少将 飯沼守…浅井伸治(劇団チョコレートケーキ)
陸軍大佐 武藤章…近藤フク(ペンギンプルペイルハウス)
陸軍中将 柳川平助…原口健太郎(劇団座敷童子)
陸軍中将 中島今朝吾…今里真(ファーザーズコーポレーション)
巣鴨プリズン教誨師 中山勝聖…岡本篤(劇団チョコレートケーキ)
東京裁判日本人弁護士 上室亮一…西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)
声…岡本篤(劇団チョコレートケーキ)


劇団チョコレートケーキが、東京芸術劇場のシアターイースト、シアターウエストを同時に使って「戦争」関連作品六作を一挙上演する企画「生き残った子孫たちへ」をこの夏観劇することにした。
今回は、東京裁判でA級戦犯として死刑判決を受けた、陸軍大将・松井石根(いわね)にスポットを当てた「無畏」を観劇した。
観劇日は、「帰還不能点」観劇の一週間後。あの…「帰還不能点」出演者が出てますよ[exclamation&question]両方初演ではないとはいえ、長々セリフしゃべってるんですけど、どうなってるの[exclamation&question]
私の推し劇団も、基本Wキャストで両チーム出演とか、恐ろしい上演形態取ってるけど、世の中には、まだまだ恐ろしい劇団が存在するらしい。


本作は、陸軍大将・松井石根がA級戦犯として処刑されるまでの日々を、巣鴨プリズン教誨師や東京裁判の日本人側弁護士の視点も重ねながら、描いていく。
松井は、南京大虐殺の責任を問われ、極刑を覚悟して巣鴨プリズンにやってきた。
連合国側は、南京大虐殺を、「東洋のアウシュビッツ」の位置付けで弾劾しようとしている。東京裁判は、ニュルンベルク裁判と対をなす裁判であり、同じように戦犯を裁くつもりの連合国側は、関係者の中で唯一存命だった松井を責任者として裁こうとしていた。
これに対し、松井の個人秘書だった田村は、戦前から親中派だった松井が、戦犯として処刑されるのはおかしい、と言い続けている。そして当の松井は、興亜観音に帰依し、既に死を覚悟した状態で、平静な日々を過ごしていた。
南京大虐殺の責めを負うべきは、彼の部下だった陸軍中将の柳川や中島だったかもしれないが、二人とも、戦中、戦後に病死していた。


途中まで、平和を愛する松井が、どうして日中戦争の泥沼にはまっていったか、という、松井に同情的な形で進んでいくが、死を覚悟した松井が、敢えて弁護士の上室を呼んだところで、状況は一転する。
本当に松井に罪はなかったのか。
どうしてそこまで、というほどに、上室は松井の本心に切り込む。
「無畏」とは、何も畏れない、ということで、「死を恐れない」人に、何を言っても、暖簾に腕押しみたいな感じになって虚しい。それでも、さらに上室が押すと、少しずつ、松井の鉄壁の防御が崩れていく。
「自分は何も知らなかった。しかし、すべての責任は自分にある。だから自分は死刑になってもかまわない」
これが松井の論であり、松井は、南京大虐殺について、間接的な責任を負って死刑になろうとしていた。
そんな松井に、「本当にあなたには、直接の責任はないんですか」と、上室は追い込んでいく。松井もまた、そうなることを知っていて、上室を呼んだのだろうと思う。自らの本当の罪を、自分でも気づいていないことがあるのだとしたら、それを知ったうえで死んでいきたいと。
古川健の脚本は、どれも本当によくできていて、歴史上の重大な出来事が、実はそれよりずっと前の、ほんの小さなことを原因にしているのではないか、という問題提起が鮮やかだ。
上室は、南京大虐殺のとっかかりは、「徴発」だったと言う。兵站の到着を待たずに進軍した日本軍は、途中の村で徴発を行った。徴発とは、物資の現地調達であり、軍人が民間人を武器で脅して、物資を奪う。
一度上からの命令で徴発を行った部下たちは、その後、陥落した現地の人々に対して、どうして略奪しないなんてことがあるだろうか。そして、そこに女が一人でいたらどうなるか…。
さらに、中国贔屓の松井大将から、軍紀粛正が下達されていたら…。略奪・強姦の事実を消すために村ごと焼いてしまうことが起きたって、不思議ではない。
それなら、それなら、すべて本当に自分が悪かったのだ…と松井は苦しむ。
さらに上室は、あなたの中国贔屓は、本当に対等な立場としてのものでしたか、という点についても攻め込む。どこかに、下に見る気持ちがなかったですか、と。孫文を尊敬し、蒋介石との交渉に人生を賭けていた松井に、そこまで言う[exclamation&question]と思ったが、それすらも、松井は、思い当たることがあるのか、項垂れる。


観ていて、つらい時間だったが、最後に、上室が松井の住んでいた熱海に行き、興亜観音像を拝む。朝晩、この山に登って祈っていたという松井を思い、70歳近い年齢の松井が、朝晩この山に登っていたことに上室は驚く。そこで、上室は、松井の祈りの強さを思い知ったのだと思う。
よきエピローグだった。
松井石根は、この南京攻略を最後に軍籍を離れ、再び予備役となって、二度と軍務には就かなかった。彼の戦争犯罪は、日中戦争に限定されている。彼の願いも祈りも(彼は本気で大東亜共栄圏を信じていた)、今の時代には、受け入れられるものではない。ちなみに、「無畏」というタイトルは、松井の時世「天地(あやつち)も人もうらみずひとすじに無畏を念じて安らけく逝く」から採られている。


松井役・林竜三諦念からの激しい後悔の姿が、痛々しくて忘れられない。上室役・西尾友樹知的なサディストっぷりがかっこいい。(けっして本物のサディストではありません)そして、教誨師の岡本篤がいい味を出していた。


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「〇六〇〇猶二人生存ス」「その頬、熱線に焼かれ」観劇 [┣演劇]

「〇六〇〇猶二人生存ス」「その頬、熱線に焼かれ」


脚本:古川健(劇団チョコレートケーキ)
舞台美術:長田佳代子、伊東あおい
美術助手:小島沙月
照明:長谷川楓、松本大介
照明オペレーター:渡邉日和
音響:佐藤こうじ、小曽根未来
音響オペレーター:泉田雄太
衣装:藤田友
特殊メイク:梅沢壮一

舞台監督:本郷剛史、鳥巣真理子
演出部:宮崎明音、加藤愛菜
舞台監督:本郷剛史

宣伝美術:R-design
写真:池村隆司
撮影:神之門隆広
web:ナガヤマドネルケバブ
制作協力:塩田友克、瀬上摩衣
制作:菅野佐知子(劇団チョコレートケーキ)


長期ワークショップメンバー:松本兼薪、伊織夏生、森円花


「〇六〇〇猶二人生存ス」
演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)、石塚夏実


<観劇時配役>
黒木博司大尉…大知
樋口孝大尉…仁村仁弥(劇団ひまわり)
後藤俊康…谷口継夏
※公演は3パターンの配役で1回ずつ上演された。記載しているのは、私が観劇した日の配役。


劇団チョコレートケーキが、東京芸術劇場のシアターイースト、シアターウエストを同時に使って「戦争」関連作品六作を一挙上演する企画「生き残った子孫たちへ」より、今回は、短編2編を観劇した。


1本目は、人間魚雷として知られる「回天」開発秘話。
訓練初日に事故が起きた。海底に突っ込んで動かなくなった「回天」の乗組員、黒木と樋口の二人が、酸素がなくなり死亡するまでの数時間を追う一方、整備士として、終戦まで回天を出撃させ続けた後藤が、戦後、靖国神社を訪れて回想するモノローグ(死んだ二人への鎮魂の呼びかけ)が、場面のつなぎ目に差し挟まれる。
この事故で殉難した黒木大尉は、この「回天」プロジェクトの考案者だった。
命中率の低い魚雷の精度を上げるために、人間が操縦して敵艦に突っ込むという決死の武器は、なかなか上層部に受け入れられなかったが、黒木らの嘆願書により、1944年2月より試作が始まった。同年7月、「回天」のための部隊が編成され、9月、訓練開始。その初日に事故は起きた。
敵と戦って死にたかったと悔しがる樋口に対し、黒木は、今回の事故による自分たちの死を「犬死」から、「最も効果的な死」にするために、回天を突破口に、やがては、飛行機による特攻を実現するため、すぐに頭を切り替え、克明な記録と、改善提案を残し、一言も泣き言を書き残さず、皇軍の一員としての「完璧な死」を演出しようとする。(彼は過去に実際に起きた潜水艇の訓練中の事故例を参考にしている。その時も、潜水艇の艇長が克明な記録を残し、海軍の伝説となった。)
訓練中に無念の死を遂げた黒木と樋口の思念が、回天の以後の乗組員だけでなく、海軍のひとりひとりの兵に至るまで、後退を許さず、玉砕への道が出来上がっていく。誰も断れない空気感の醸成。結果的に、ではなく、作中の黒木はこの時点で明らかに「狙って」いるのだ。彼らの訓練中の事故死が、その後の海軍の方向を決定づけていく…すべては黒木の思い通りに展開していったことが、後藤のナレーションで語られる。同時に、特攻によっても戦局に影響はまったくなかった…という悲しい結果も。
(昔、「永遠の0」を見た時に感じたのだが、影響がまったくなかったというよりは、日本人クレイジーだぜ、こいつら最後の一人になるまで突っ込んでくるかも…の恐怖心が、原爆投下というシナリオに流れていったってことはないだろうか?というむしろ悪影響さえ考えてしまう。)
その思念の恐ろしさに胸が締め付けられた。そして、酸素がなくなり、少しずつ死に近づいていく二人を見つめ続けるらしい…と気づいた時の、観客としてのいたたまれなさ、恐怖感も忘れられない。
とはいえ、演劇なので、観客を置いていくようなことにはならず、二人の海軍士官は、平静を保ったまま死に赴く。もちろん死を見つめるのはつらく苦しい時間だし、死んでいく側のエネルギーもすごいだろうな…と想像する。今回の3公演は、ワークショップ参加者からキャスティングし、黒木役、樋口役は、公演ごとに交代するので、1回にこめた二人のエネルギーの強さはハンパなかった。


黒木役の大知さんは、正面顔(カーテンコール)と横顔(公演中、黒木と樋口はずっと向かい合って座っていて、横顔しか見ることができない)の雰囲気が全然違う方で、精悍で意志の強い横顔と(セリフも力強かった)正面顔のまだあどけなさの残る顔立ちとのギャップにやられた。樋口役の仁村さんは、典型的な体育会軍人の樋口を温かいキャラクターに造形していた。
戦後の後藤がせめて幸せな人生を送れますように…と、思った。


「その頬、熱線に焼かれ」
演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)、安原あいか


 <観劇時配役>


敏子…椎木美月
智子…蓑輪みき
弘子…本宮真緒(劇団チャリT企画)
節子…谷川清夏
昭代…中野亜美
信江…中神真智子
美代子…柳原実和
※公演は2パターンの配役で2回または1回上演された。Wキャストは昭代以下の3名。記載しているのは、私が観劇した日の配役。


短編2作目は、戦後、アメリカの篤志家の協力で、ケロイドの手術を受けた25名の「原爆乙女/ヒロシマガールズ」の物語。簡単なはずの手術後に一人の女性が亡くなったその夜の物語。明日手術を受ける敏子を中心に、死んだ智子を含めて、7人の若い女性たちの本音トークが展開される。
それぞれ、体のどこかに特殊メイクで原爆の爪痕が生々しく付けられている。
数千度ともいわれる熱線を浴びて、一度溶けた皮膚が冷えて固まったような状態なので、皮膚が引きつれたり、別の部分とくっついたりして、手術をしなければ、瞼を閉じられないとか、腕が上がらないとか、そういう人々が、広島のあちこちにいた。
そのうち、「将来ある若い女性」に限定して、アメリカの篤志家がお金を出し、NYの病院で最先端の治療をするという企画が立ち上がった。25人の女性たちは、寄附金によって渡米し、クエーカー教徒の家にホームステイし、何度も手術を受けた。一人が亡くなり、一人が結婚して現地に残り、帰国したのは23人だった。
原爆を落としたアメリカ人の家にホームステイして、アメリカ人医師の手術を受ける…実際にピカ(原爆ーピカドンーのことを彼女たちはそう省略する)の熱線に焼かれ、たくさんの友人を亡くし、自分は偶然にも生き残ったけれど、心と体に大きな傷を負い、いつ原爆症が発症するかもわからない状況下で、彼女たちがどれだけの葛藤を抱えていたか、想像するだけでも、つらい気持ちでいっぱいになる。
病院にいるのは、亡くなった智子の霊、明日手術予定の敏子、そして、一匹狼的な弘子。あとの4人は、ホームステイ先から訃報を聞いて飛んできた。智子の急死を受け入れられない人、自分の手術に恐怖を感じる人、このまま治療が継続されるのか不安を感じる人、さまざまな感情をぶつけ合い、心が揺れたり、泣いたり、叫んだり…智子は、彼女たちの間をさまよいながら、心を寄せる。
戦後間もない時期に、10代後半から30歳くらいまでの未婚の女性たちが、言葉もわからないアメリカで治療を受けていた…というのは、知識程度には知っていたが、それってこういうことなんだな…という認識は、芝居を見て、初めて納得することができた。ものすごい勇気と善意の塊。
どの女性も、みんな真摯で美しい。
特に、ふくよかで嫋やかな信江役の中神さん、華奢で時折見せる笑顔が爽やかな中野さんが印象に残った。


20代の若い女優さんだけの出演だったので、ご両親でさえ戦争を知らない世代だろうと思う。
あの戦争と、悲惨なピカと後遺症について、やはり戦争を知らない客席に向けて、精一杯伝える真摯な姿勢に感動した。
作り手も、受け手も、もう誰も戦争を知らない時代。それでも、伝え続けることはできる。
明確にそれを実感できた夜だった。


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「帰還不能点」観劇 [┣演劇]

「帰還不能点」


脚本:古川健
演出:日澤雄介
舞台美術:長田佳代子
美術助手:小島沙月
照明:松本大介
照明オペレーター:桐山詠二
音響:佐藤こうじ
音響オペレーター:たなかさき
音楽:佐藤こうじ
衣装:藤田友
舞台監督:本郷剛史、鳥巣真理子
演出助手:平戸麻衣
演出部:大知、本宮真緒、麗乃
宣伝美術:R-design
写真:池村隆司
撮影:神之門隆広、与那覇政之、松澤延拓、大竹正悟、遠藤正典
タブレット字幕:G-marc(株式会社イヤホンガイド)
web:ナガヤマドネルケバブ
制作協力:塩田友克、瀬上摩衣
制作:菅野佐知子


<配役>
岡田一郎…岡本篤(劇団チョコレートケーキ)
久米拓二…今里真(ファーザーズコーポレーション)
千田高…東谷英人(DULL-COLORED POP)
城政明…粟野史浩(文学座)
市川仁…青木柳葉魚(タテヨコ企画)
泉野俊寛…西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)
吉良孝一…照井健仁
庄司豊…緒方晋(The Stone Age)
木藤芳男…村上誠基
山崎道子…黒沢あすか
声…近藤フク(ペンギンプルペイルハウス)


劇団チョコレートケーキが、東京芸術劇場のシアターイースト、シアターウエストを同時に使って「戦争」関連作品六作を一挙上演する企画「生き残った子孫たちへ」をこの夏観劇することにした。
スケジュールの都合により、「追憶のアリラン」だけは、映像での鑑賞となるが、その他の5作品はすべて劇場で観劇する。私にとっても、これはひとつの挑戦になる。戦後77年、生き残った子孫として、あの戦争について、深く考える時間がほしかった。ひとつひとつの作品を噛みしめつつ、あの戦争とは、ということを考えて記録していきたい。


さて、タイトルの「帰還不能点」とは、航空用語で、燃料の計算上、出発地に戻ってこれなくなる飛行地点を言う。これより先に何か起こった場合は、出発地点に戻ることを諦めて別の着陸地を探すか、不時着を決断することになる。
転じて、本作では、我が国が敗戦へまっしぐらに突き進んでいく昭和10年代のどこに「帰還不能点」があったのか、逆に言えば、「どの地点なら、やり直すことが可能だったのか」という問題を考える作品になっている。
昭和16年、将来を嘱望される各分野(主に各省庁)の若手エリートによる「総力戦研究所」という組織が対米戦が実施された場合のシミュレーション結果を首相官邸で発表している。対米戦は絶対に負けるという結論に対し、講評した陸軍大臣東条英機は、「諸君の机上演習結果は、勝利につながる意外裡なことを考慮していない」と不満を述べたらしい。
が、総力戦研究所のシミュレーション通り、昭和20年、日本は敗戦を迎える。


昭和25年、朝鮮戦争特需の日本、かつて総力戦研究所で対米戦シミュレーションを発表した模擬内閣メンバーが、一堂に集結した。2年前に病死したメンバーの一人、山崎を追悼するために。場所は、戦後再婚した山崎の妻が切り盛りしている飲食店。こぢんまりした店は本日彼らの貸切になっている。そこへ次々と9年前の模擬内閣メンバーが集まってくる。「久米首相」「海軍大臣」など不思議な名称で呼び合う面々に、山崎の妻は不思議な顔をする。山崎は戦前のことをほとんど言わずに亡くなったのだった。そこで、酔った勢いもあって、色々な役を演じながら、彼らは一晩で、総力戦研究所のことや、彼らの知っているあの戦争の内情を山崎の妻に説明する体で、客席に説いていく。
演劇的手法を用いて、大胆に、「帰還不能点」を推論していく登場人物たちの説得力は、彼らの出自にある。総力戦研究所にいたということは、あの当時シミュレーションに必要だったすべての材料を彼らは手にしていたわけで、「帰還不能点」を特定するのに、これほどピッタリの登場人物たちはいないだろう。
それと同時に、それぞれの出身母体においては、決定権を持たない若手だった彼らが、「日本は戦争に負ける」というシミュレーション結果を知りながら、どのように戦中・戦後を過ごしてきたのか、彼らは、本当に何もできなかったのか、ということにも、舞台は容赦なく切り込んでいく。昭和16年に戦争に負けると知った数人の男たちは、当然のようにあの戦争を生き抜いた。その事実を口にすることなく。多くの人々が、勝利を信じて死地に赴いた時、どうにかして生き残る道を探してきたはずなのだ、彼らだけは。
事務方の一人として参加した山崎は、敗戦を自分の責任のように感じ、戦後は人助けに奔走し、自身の体調悪化は放置して、緩やかな自殺のように死んでいった。道子も、山崎に救われた一人だった。


昭和25年現在の彼らが、戦犯として指摘したのは、文人の近衛文麿と松岡洋右。
特に近衛内閣では、中国との講和条件を「閣議決定」で変更、蒋介石が飲めない内容にして、戦争継続(による特需)を図るとか…この当時から、閣議決定でヤバいこと決めてたんだなー[ちっ(怒った顔)]と、現代の問題に繋がる発見もあった。
陸軍も海軍も、上層部は不戦論者が多かった。そんな彼らを動かしたのは、天然ゴムの不足だった。北部仏印(フランス領インドシナ)には既に日本軍が何年も前から入っていて、軍部としては、南部にも入るというだけだから…という認識で、南部仏印への進駐を執拗に求めた。が、これが、アメリカを怒らせることになる。
戦争にイケイケドンドンだった近衛と松岡はこの南部仏印進駐には反対だったという。不思議なものだ。
戦争をすれば負けると言って戦争反対を唱えた陸軍と海軍が、なぜ、近衛・松岡を説得してでも仏印進駐にこだわったのか、それは、組織の存続に関わる時、それが最優先してしまうから、と、芝居は語る。天然ゴムがないと軍が維持できない、その時、冷静に事態を読んでいた陸軍、海軍の目算が狂う。近衛や松岡は、ここまで外交上の失敗を重ねてきたこともあって、軍部の要請を全力で突っぱねることができなかったー


総力戦研究所の話だと聞いて、冒頭の数分間の芝居がずっと続くと思っていた。つまり、舞台は昭和16年のまま進んでいくのだと。しかし、本作は、昭和25年、あの戦争が何であったのか、冷静に分析できる時代を舞台とした。
「このまま行ったら、こんな風に日本は負けますよ」
ということを提示して、ああ、現実に近い結果が出ていたんだな…と、観客に納得させるだけではダメだということなのだろう。この作品が示したいのは、「あれが負けるとわかっていた戦争だった」ということではなく、そういうシミュレーションが出るような、無謀な戦争を「誰がどうして始めてしまったのか」ということだったのだろう。
舞台では、対中戦争の行く先にバラ色の未来を見ていた近衛文麿、ヒットラーに傾倒してドイツとの同盟にこだわる松岡洋右の失策の果てに、ABCD包囲網をくらって、軍部の南部仏印進駐にNOと言えなくなったーというストーリーが大きな点として語られるが、もちろん、その前にも、いくつも分岐点があったように思う。
特に、対中戦争のさなかに、ヨーロッパで戦争をしているドイツやイタリアと軍事同盟を結ぶことで、世界中に、日中の講和を取り持ってくれる国がいなくなってしまったこと、は大きかった。ドイツとソ連の関係の読み違いも大きい。


メンバーが、松岡や近衛、東条などを演じるという設定も、テレビや映画では変に思うかもしれないが、演劇だと、すっと入り込める。演劇ってこういう面白さがあるよね、と改めて感じた。
展開が面白く、あの戦争について、学ぶところも多かった。
それだけでなく、人間としてどう生きるべきか、という問題も、観客に突き付けられた気がする。
終了後、短い一人芝居2編も、作品を補完する意味で、面白く鑑賞した。


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「白が染まる」観劇 [┣演劇]

演劇企画集団Jr.5 第13回公演
「白が染まる」


作演出:小野健太郎
演出助手:大嶽典子
舞台監督:前木健太郎
大道具:倉本工房
舞台美術:寺田万里奈
照明プラン:横原由祐
照明オペレーター:遠藤宏美
音響プラン:島猛
音響オペレーター:川崎理沙
ドラマトゥルク:山崎理恵子
衣裳プラン:青木隆敏
映像撮影:堀雄貴
映像編集:小野健太郎
ヘアメイク:大嶽典子
宣伝撮影:大参久人
パンフレット撮影:横田敦史
宣伝ヘアメイク:MUU 工藤聡美
宣伝美術:岡野椋子
パンフレットデザイン:宇佐見輝
撮影協力:高円寺ウシータ
制作:山崎智恵


本作は、実際に起きた事件「久留米看護師連続保険金殺人事件」をモチーフにしている。
主犯のYJと彼女に騙された同僚の看護師たちが、共謀してメンバーの夫を殺害し保険金を詐取した連続殺人事件で、主犯のYJは既に死刑が執行されている。裁判経緯を読むと、YJの自己中心的で刹那的な異常性格と、彼女にマインドコントロールされた3人の同僚による、歯止めのきかない狂った犯行に思える。
ただ、本作は、実際の殺人事件を忠実になぞるのではなく、これをモチーフにして、4人の女たちの痛々しい共依存の関係性を描き出している。


ヒロインのイシイヒトミ(高野志穂)が警察署に相談に行ったところから、物語は始まる。担当する刑事のカワウチ(成田浬)はヒトミをリラックスさせようと手を尽くすが、ヒトミはなかなか言葉を紡ぎだせずにいる。
主人公の名前が“カワウチ”でないことに軽く衝撃。カワウチ姓はこの刑事の方なのだが、彼は劇中一度も名を名乗らない。Jr.5において、アイデンティティともいえる“カワウチ”を卒業する時が近づいているのかな…。
※続編的設定の舞台「明けない夜明け」(2019)では、主人公一家の姓は「カワウチ」になっている。


ヒトミは、夫・ゴウ(奥田努)との間に三人の娘がいる看護師。目下の悩みは、夫が700万円の借金を抱えてしまったこと。職場の友人であるヨシダジュンコ(紺野まひる)、ツツミミユキ(罍陽子)、イケガミカズコ(山崎静代)の前で弱音を吐くと、ジュンコが「先生」を紹介するから相談してみないか、と話を持ち掛ける。
警察にも政財界にも顔がきく「先生」という人が知り合いにいて、借金の問題なども、解決してくれるという。
4人は、看護学校時代の友人で、現在はミユキが看護師長。ジュンコとミユキがこの病院で再会したことから、当時の仲間に声をかけてみようということになり、ヒトミとカズコは、二人の呼びかけに応じる形でこの病院で働くことになった。そんなわけで、看護師たちの中でもこの4人は、とりわけ仲がいい。しょっちゅう4人でつるんでいる。
「先生」の調査によると、ヒトミの夫は、行きつけのスナック「フォレスト」のママ、モリと男女の関係にあり、それを苦にして、最近夫が自殺したという。夫の親族は、不倫相手に慰謝料として5千万円を要求しようとしているらしい。夫が家に寄り付かず、既に夫婦関係も冷め切っていたヒトミは、その調査結果に絶望し、夫を憎むようになる。
また、無言電話が鳴ったりして精神的にも追い詰められたヒトミの憔悴ぶりに、3人の友人たちは、あなたさえ決意してくれれば、私たちが彼を消してあげると言い出す。
ゴウは、直観の鋭さを自慢していたが、ジュンコの胡散臭さと、「先生」など実在しないということを、ヒトミに言い聞かせようとするが、ゴウの存在に耐えられなくなっているヒトミには逆効果だった。ヒトミはとうとう、一線を超える決意をするー


狭すぎる人間関係の中に投じられると、まさか、こんなことに騙されるなんて…と驚くような事件が発生したりする。久留米看護師連続保険金殺人事件も、YJの穴だらけの嘘に、3人の看護師が騙され、自らの家族を殺めてしまった。もしかしたら、途中で、気づくことがあったかもしれない。「連続」殺人事件なのだから。でも、途中で気づいたとしても、既に犯罪に手を染めてしまった時点だったら…信じ続けることで、自分の過ちから目を背けることができたのかもしれない。
人間の心の闇の深さ、依存しあうことで強まる関係性にぞっとする。
また、最後に事件に巻き込まれるヒトミの視点から物語を観ているため、先行してカズコの夫を殺害している3人の関係性の微妙な違いも興味深い。ジュンコとミユキは相棒であり、リーダーのジュンコに唯一意見できるのがミユキ。カズコはジュンコから明らかに格下扱いを受けているが、夫を殺してもらった恩があるからか、ジュンコに盲従しているところがある。
ジュンコの夫(大村浩司)は人畜無害で、妻を心配しているが、ジュンコの動機は、裁判で明らかになったYJのような破滅型犯罪者のそれでなく、過去に信頼していた人に裏切られた トラウマから、犯罪を共有することで絶対に裏切らない強固な人間関係を作りたかったのではないか、などと考えた。
少なくともジュンコをわかりやすい異常性格者にしなかったことで、演劇としてずっと深い作品になった。


私が観劇した回は、オノケン出演回で、小野は、スナックフォレストの共同経営者(ゴウの浮気相手と思われていた女性の兄)として登場。女性の夫が今も生きていること、ヒトミに接触しないようにと言って、ジュンコらしき女性が300万円を置いて行ったことを伝える役どころ。
このモリの登場により、ヒトミは、ジュンコの嘘を知る。そして、警察に向かうことになる。
言われてみれば、ゴウが言っていたことは正しかった。ヒトミの後悔を思うと胸が苦しい。
と同時に、気づいていれば、やり直せただろうか、と考えるに、それは無理だっただろうな、とも思う。それほど、奥田の演じるゴウは、これ以上一緒にいるの無理…というキャラを造形していて、尊敬に値する。
離婚できれば、それが一番よかったんだろうな…と思うが、自身の親が離婚していたので、それだけは避けたかったというヒトミの気持ちもよくわかる。
よくわかる、よくわかるの集合体で、全然理解できない連続殺人事件を構成してしまうオノケンの作劇力は、すごい。
そして、俳優たちの演技[exclamation×2]
紺野は、激ヤバなジュンコを強烈な寂しさを抱えるアンビバレントな女性として、一方でやや強引なリーダーとして、印象濃く演じた。小劇場作品には初めて参加したということだが、もともと宝塚時代も、自然な演技が身上だった紺野には、小劇場、向いているように思う。
高野は、ナチュラルメイクなのに、ものすごい美人で、あまりの美しさに、何度もガン見してしまった。終盤、涙を手でおさえながら、訥々と語る場面の美しさは、ちょっと言葉にならない。巻き込まれたヒロインの心理が手に取るように伝わり、感情移入が止まらなかった。
は、ヒトミが巻き込まれるのを防ごうと、何度も手を尽くたミユキの、その各ポイントで観客に少し違和感を与え、あーあの時、ミユキは本当はこうだったんだ!と後で思い出せるような、細かい芝居をしていて、終盤、一気に謎が解けて、ぞわーっと鳥肌が立った。
山崎は、実は、最凶殺人兵器かもしれないのだが、この恐ろしいドラマの緩衝材として、色々な場面で際立っていた。その一方で、ジュンコへの忠誠心のような感情が恐ろしく、純粋な人が方向を間違えるとこうなるのか…と、何とも言えない気持ちになった。


重苦しい作品を支えた男性陣、特に、カワウチ役の成田浬の田舎町の刑事さんらしさに、だいぶ救われた気がする。少し気が早いが、年末恒例、今年の「よかった芝居」でピックアップするだろうな、と思っている。


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「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」観劇 [┣演劇]

舞台
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」


原作:「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」
演出:宇治川まさなり
脚本:畑雅文
音楽:佐香智久(少年T)
作詞:うえのけいこ
美術:はじり孝奈
照明:松本雅文
音響:香田泉
衣裳:木村猛志
ヘアメイク:横山桂子
演出助手:山口美絵
舞台監督:櫻岡史行
制作:株式会社コントラ
宣伝美術:株式会社Alice
制作協力:株式会社S-S I Z E
プロデューサー:片岡義朗、慶長聖也


人気のアニメーション作品の舞台化とのことだったが、まったく知らなくて、場違いを感じつつ観劇。


じんたん.jpg「鳥越裕貴の舞台は、絶対に見逃しちゃいけない」と悟ってチケットを取っただけだったのよ…[あせあせ(飛び散る汗)]
不思議なことに、公演パンフレットは販売されておらず、出演者のブロマイドと舞台となった秩父市とのコラボグッズが販売されていた。
パンフレットがないと、グッズ買いづらいよなぁ…と思って、かなり悩んだのだけど、最終的に、鳥ちゃんのブロマイドと、秩父市のサイダーを購入した。
サイダーの柄は何種類かあって、選べるのだが、これ、アニメのキャラクターだから、鳥越さんじゃないよね、なんて言えば…と、ピヨピヨした顔をしていたら、「じんたんでいいですか[exclamation&question]」と、察してもらった。
お味は、めちゃめちゃ爽やかでした[黒ハート]


アニメ版でじんたんを演じたのは、入野自由くんだったんですね[るんるん]


小学生のころ、超平和バスターズという名前で、つるんで遊んでいた6人。でも、メンバーの一人、めんまの死をキッカケに、バラバラになってしまっている。
彼らが高校生になった夏、突然、同じように高校生レベルに成長した姿で、めんまこと本間芽衣子(市川美織)が、じんたんこと宿海仁太(鳥越裕貴)の前に現れた。芽衣子が現れたのは、元超平和バスターズのメンバーにお願いがあったから、らしい。が、出現しためんまは、自身の願いを覚えていない。それを知るために、バスターズのメンバーが、少しずつ集まって…という物語。
めんまが銀色の髪なのは、彼女がロシア人の血を引くクォーターだから、なのね。


なんか、胸が熱くなった。
舞台を観ながら、ZONEの「secret base」が脳内再生されていたのだが、アニメでこの楽曲を使っていたと知り、まあ、そうだよね…と納得。
めんまの死をキッカケに、残った5人は、バラバラになってしまった。それは、会えばめんまを思い出して悲しくなるから…みたいなことかと思っていたら、本当はもう少し複雑で。めんまのことが好きだった、ゆきあつこと松雪集(佐香智久)は、その日、めんまに告白をしていて、その後めんまが事故に遭ったことを気にしていたし、ぽっぽこと久川鉄道(伊勢大貴)は、まだ生きていためんまを見つけた時、恐怖のあまり逃げ出していたことを気に病んでいた。じんたんも、めんまに言ってしまった一言を後悔している。
複雑といえば、めんまの母親のイレーヌ(麻生かほ里)は、娘の死を受け入れられず、父の学(河合龍之介)は、そんな妻に向き合うことをやめてしまっていた。
めんまの「願い」を知るために、少しずつ交流が戻ってくる5人。イレーヌは、それが気に入らなくて、花火を作ろうとするじんたん達の妨害を始める。てか、15、6歳の花火作り…大丈夫か[exclamation&question]
ところどころに挿入される、幼い頃のじんたんと病弱だった母(横山智佐)の物語だったり、妻の仏壇の前で、じんたんの日々について報告を欠かさない父(小林けんいち)の姿だったり、がひとつの伏線になっている。
めんまは、じんたんの母親との約束を果たそうとしていたのだ。
じんたんが、ちゃんと泣ける子になってほしい…という母の願いは、めんまの成仏を妨げるほどの力になっていた。母の愛、強し[exclamation×2]横山智佐さま、「サクラ大戦」を思い出しました[かわいい]


じんたんに素直に泣く力を与えるのは、生きている仲間たちの存在だった。
そうだよね、誰にも頼れないから、泣けないんだもんね。
めんまが成仏する場面、絵面がとても美しくて、小劇場の舞台劇として、見事な作りだったし、出演者の熱い芝居ともリンクしていて、感動的だった。


装置は、舞台上に回転するセットを組んでいるのだが、その背面を支えるための直角三角形の支柱(?)が、飾りもなく放置されているので、どの場面にも出てくる「あのでっぱり」は何なのだ[exclamation&question]と、けっこう気になってしまった。美しいセットも作れるのだから、その辺の「ごまかし」も綺麗に作ってほしかったな。
あと、子供時代の6人が登場するのだが、いなくても成立する(映像とか、人形とかでも表現可)のに出してきたのには、なにか政治的な意図があったのだろうか。


<出演>
宿海仁太(じんたん)…鳥越裕貴
本間芽衣子(めんま)…市川美織
安城鳴子(あなる)…桃月なしこ
鶴見知利子(つるこ)…椿梨央
久川鉄道(ぽっぽ)…伊勢大貴
松雪集(ゆきあつ)…佐香智久(少年T)
宿海塔子…横山智佐
宿海篤…小林けんいち
本間聡志…小辻庵
本間イレーヌ…麻生かほ里
本間学…河合龍之介
じんたん(幼少)…紙谷果穂
めんま(幼少)…羽瀬まりや
あなる(幼少)…長坂心結
つるこ(幼少)…平子かな
ぽっぽ(幼少)…櫻田結貴
ゆきあつ(幼少)…大樫萌恵


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「中島鉄砲火薬店」観劇 [┣演劇]

文化庁委託事業 令和3年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業
日本の演劇人を育てるプロジェクト 新進演劇人育成公演俳優部門
「中島鉄砲火薬店」


脚本・演出:伊藤栄之進
美術:松生紘子
音響:今里愛(sugar sound)
照明:大波多秀起(デイライト)
衣裳:中村洋一(東京衣裳)
ヘアメイク・かつら:川村和枝(p.bird)
音楽:佐々木久夫(Sean North)
殺陣:新田健太(ジャパンアクションエンタープライズ)
舞台監督:田中翼
演出助手:田邊俊喜


大道具:俳優座劇場


アシスタントプロデューサー:川瀬良祐(SET)、矢崎進(Spacenoid Company)
プロデューサー:鈴木庸子(SET)


宣伝協力:幕末ジャーナリスト
制作協力:スーパーエキセントリックシアター、Spacenoid Company
Special Thanks:中島大成氏


制作:公益社団法人日本劇団協議会
主催:文化庁、公益社団法人日本劇団協議会


育成対象者:大見拓土、松井勇歩、市橋恵


「侍戦隊シンケンジャー」以来、その渋さに惚れている唐橋充サマ主演の「中島鉄砲火薬店」を観劇した。
意図してなかったが、10日の間に2回も新国立劇場小劇場に来てしまった。国立の立派な劇場が、若い俳優の出演する舞台(ミュージカル「刀剣乱舞」でおなじみの伊藤栄之進さん(旧名:御笠ノ忠次)が脚本・演出なので、2.5舞台に出演している俳優も多く参加している)に門戸を開いてくれているのは、ありがたいことだなと思う。


本作は、函館戦争まで戦った元新選組隊士、中島登(のぼり)のその後の人生を少しだけ切り取った物語。
西南戦争も終わり、侍の世は完全に終結した。けれど、生き残った新選組隊士は、まだ、この日本のどこかに何人も生きている。が、最近、最後の局長、相馬主計をはじめ、不審な死に方をした者がいるらしい。
そんなことも知らず、ここ、浜松では、中島登(唐橋充)が、昼寝をしていた。今日は、昔、捨てたといってもいい息子の登一郎(とういちろう・小西成弥)がやってくる日だというのに。浜松での生活が安定し、再婚もしたので、息子を引き取ることにしたのだ。
新妻のヨネ(福永マリカ)は、その妹のヨシ(市橋恵)ともども、よくしゃべる明るい女で、今日も、石田散薬の薬売り(飯野雅彦)を富山の薬売りだと勝手に決めつけ、相手に話すスキを与えない。
この辺のテンション高いやり取りは、初演が、SET(スーパーエキセントリックシアター)だったことと関係があるのかもしれない。
一方、甘利正太郎(田村心)という若者は、登を父の仇と狙い、相棒の内山孝介(松井勇歩)と一緒に、登の動向をうかがっている。そのために、鶴太郎(松本寛也)と亀吉(大見拓土)をスパイとして中島家の周辺に放っている。が、この二人の気配は、登はじめ、色々な人に見破られている。
この辺の、慎重にまじめにやっているのに、バレバレみたいなネタも、SETっぽい。たぶん、SETで上演された時は、お笑い、でも少し人情もの…みたいな作風だったんじゃないかな、と思った。演出次第で、舞台って、雰囲気変わるんだな。
登は飄々と生きているようで、心にたくさんの重荷を抱えている。そして、時々、心の中の土方歳三(高木トモユキ)と会話し、生きるべき道を探ろうとしている。その結果、突然、今持っているものをあっさりと捨てたりする。
甘利と内山が近くに道場を開く予定なので…と挨拶に来ると、いっそ…と、門人ごと道場を譲ると言ったり、貧しさゆえに甘利に雇われた鶴太郎に、土地の権利書を渡したり…すごいのは、妻のヨネが、そんな登を、どうにかなる…と、認めて、どーんと構えているところ。人の話を聞かないヤバいテンションだけの女じゃなかった。
甘利の父親を殺した理由も、なるほど…と思えるものだったし、ラストシーンも最高。
月一回、決闘を定例会にして、戦う前から、次回のスケジュール調整するなんて、もう、それ、殺す気ないでしょ[exclamation&question]大好きで、会いたいだけでしょ[exclamation&question]


あ、そうそう、石田散薬さん、実は、元隊士の不審死を調査しに来ていた、警視庁の藤田五郎こと、斎藤一でした[黒ハート](政府の中枢にいる、元薩長藩士が、過去の恨みを忘れず、元隊士殺害にお金をばらまいていたという設定でした。)


唐橋さん、シンケンジャーの頃は、マジやばいかっこいい…[揺れるハート]って感じだったけど、40代になって、いい感じに枯れたイケオジになってました[黒ハート]でも、殺陣とかは、もちろん衰えてないし、ほんと、動きがシャープで無駄がない。
高木さんとは、同い年とのことで、現実と脳内の世界の会話なんだけど、すごく嚙み合ってる。高木さんの、土方は、やっぱりかっこいい。ほんと、2.5次元界、イケオジ枠が充実してるわ。
石田役の飯野さんや、元隊士の大島役の栗原功平さんなど、ベテランの力が発揮される中、若いメンバーが生き生きと全力でぶつかってくる。ほんとにステキな座組だった。
新進演劇人育成として、とてもよい演目だったと思った。
ところで、育成対象者は、役者歴10年未満と聞いていたのだが、田村心が対象者になっていないのには理由があるのだろうか[exclamation&question](主演経験があったらダメとか…)


中島鉄砲.jpg


 


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