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「桜文」観劇 [┣演劇]

パルコ・プロデュース2022
「桜文」

作:秋之桜子
演出:寺十吾


久々のPARCO劇場公演観劇。


PARCO桜文.jpg


まずは、公演ドリンクをいただいて、作品世界にGO!


明治末期の吉原(新吉原)を舞台にした、一人の遊女(花魁)をめぐる物語。
桜雅(おうが)という名の花魁(久保史緒里)は、かつて、雅沙子(まさこ)という名で、一時的に遊郭に預けられていたお嬢様だった。しかし、彼女を迎えに来るはずの父親は破産、雅沙子は、花魁として客の前に出る身となる。雅沙子が、まだ、身を売る前、桜の季節に木を植えに来る職人がいた。
大門から連なるメインストリートに、期間限定で植えられる桜の木々。その植木職人の中に、仙太(ゆうたろう)という少年がいた。彼は、ひとりぼっちの雅沙子に桜の綺麗な場所を教え、雅沙子と心を通わせていた。しかし、雅沙子が突然、客を取ることになり、驚いて、彼女に一目会おうとしたところを、殺気立った店の男衆に殺されてしまう。その日から、桜雅となった雅沙子は、二度と笑うことはなかった。
桜雅に入れあげている紙問屋の西条(榎木孝明)は、桜雅のために花魁道中を企画するが、そこへ走り出てきた、東新聞の臨時雇い記者(実は小説家)、霧野一郎(ゆうたろう)を見て、桜雅は気を失う。
仙太に瓜二つの霧野は、桜雅に気に入られ、霧野もまた、花魁なのに、明治の世ではまだあまり知られていない海外の文学にも造詣の深い桜雅にぞっこんになっていた。
ある日、桜雅は、誰にも話していなかった仙太との淡い恋の物語を巻紙にしたため、霧野に贈る。その悲しい物語を読んだ霧野は、これを小説にしてみろと言われたような(全然言われていない)気持ちになり、新聞小説として発表する。
当の桜雅は、これを知ってショックを受け、精神を病んでしまう。霧野をそそのかした西条は、何も知らない振りで桜雅を身受けし、結婚する。(そのために妻とは離婚)
桜雅が吉原を出る日、霧野が現れると、取り乱した桜雅は、霧野を刺してしまう。


舞台は、すっかり物が書けなくなった作家の霧野のところに、東新聞の社員の男がやって来たところから始まる。おそらく、時代は大正の終わりか、昭和になっている。男は 吉原に馴染みがいて、霧野を吉原に連れていくことで、自分も馴染みの女に会えることを狙っている。女から、会えないと死ぬみたいな手紙が届いたのだ。そして、その熱烈なラブレターについて女に聞くと、近くに代書屋があり、そこで書いてもらったと言う。店に行ってみると、そこに盲目の女がいて、その女が、代書屋だという。
その店に行くことで、時間が遡る設定だったと思うが、そことラストシーンが繋がるとすると、刺された霧野は、あの時死なず、その後、自分の目を傷つけた桜雅が、代書屋の女になり、その二人が時を超えて再会し、一緒に消えていったというのが筋書きなのかな…と思った。


生田絵梨花、生駒里奈、桜井玲香、鈴木絢音など、どうやら、乃木坂46は、才能の宝庫のようだが、久保史緒里は、初めて知った。ブルジョア出身のインテリ花魁という難しいキャラクターだったが、見事なキャラクター造形だった。
ゆうたろうは、テレビドラマや映画では何度も見ているが、舞台で観るのは初めて。これまで中世的な可愛いキャラで出演することが多かったが、今年になってから、少し方向性が変わったかも。仙太も霧野も、若く純粋なキャラクターではあったが、男らしい雰囲気もあり、新しい魅力を感じた。私が観た時は、まだ初日が開いたばかりで、声を張る場面など、喉の使い方に不安を感じる部分もあったが、その後は、もっとよくなっているんだろうな~。
榎木は、男の色気が駄々洩れ。素晴らしかった。
加納幸和のいけずな芸妓や、宝珠楼のあるじ夫妻を演じた石田圭祐阿知波悟美の落ち着いた芝居、髪結い与平役の石倉三郎の温かさが印象に残った。


もちろん、恋愛がベースにある物語なのだが、桜雅と霧野の間にある、小説愛と創作に供物を捧げるような独特の感性が面白かった。
桜雅から届いた巻物を読んだ時、それを、「もっと面白い話にしてみせてほしい」という挑戦状のように感じた、という霧野。そこには、男女の恋愛を超えた、文学で命をやり取りするような激しい情念があって、その情念だけが時を超えて、永遠に残るのではないか、などと思ったりした。だから、代書屋の話が出てくるんだと。
新吉原の大門に書かれている「春夢正濃 満街櫻雲」「秋信先通 両行燈影」は、福地桜痴の書なのだそうだ。この文字が書かれた大門を移動させることで、場面転換を図るのがスピーディーでかっこよかった。


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