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「アメリカの時計」観劇 [┣演劇]

「アメリカの時計」


作:アーサー・ミラー
翻訳:高田曜子
演出:長塚圭史


美術・映像:上田大樹
照明:横原由祐
音響:池田野歩
衣裳:阿部朱美
ヘアメイク:赤松絵利
演出助手:鈴木章友
舞台監督:足立充章


制作:田辺千絵美、西原栄
プロデューサー:笛木園子
チーフプロデューサー:笛木園子、伊藤文一
事業部長:堀内真人
芸術監督:長塚圭史
主催・企画制作:KAAT神奈川芸術劇場
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会


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左に行けばホール公演「ブラッククローバー」、右に行けばスタジオ公演「アメリカの時計」。
振り幅が広いKAAT[exclamation×2](ま、私も両方観るヒトですが。)


1980年に書かれたアーサー・ミラーの戯曲。
1929年のあの大恐慌がアメリカの普通の家族に与えた影響を細かく描いている。演出の長塚圭史は、スタジオに砂を敷きつめ、そこで恐慌で進学を諦め、人生が変わってしまったリー(矢崎広)に自転車を走らせたりしている。また、リーおよび彼と一緒にMCを担当するアーサー・ロバートソン(河内大和)、そしてリーの父母(中村まこと・シルビア・グラブ)のほかは、全員が複数の役を演じ、少ない人数で多様な物語を描き切る力作だった。
その分、少し分かりづらい(この人、誰だっけ?)みたいな部分もあったが、それは、もしかしたら、些末なことなのかもしれない。
リーの一家の物語というよりは、あの当時のアメリカ人の物語という部分を強調したかったのかな[exclamation&question]


アメリカという国全体が歴史上危機に見舞われたのは、二度だけ。それは、南北戦争と大恐慌。
アーサーが語る大恐慌前夜の物語は、決して忘れてはならない教訓のように感じた。株は上がっても下がることはないーそう思って、お金持ちも一般庶民も次々に株式投資に走っている。いつか弾けるバブル…どこかで聞いたことのある響きだ。
アーサーが損をしなかったのは、「物が売れていない」という当たり前の事実に「気づいた」からだ。だから、株から手を引き、現金や金に換えて、身に着けて守った。
株が大暴落して銀行が取り付け騒ぎを起こし、誰もがすべてを失った。アーサーだけが気づいたのではない。しかし、多くの人は、バブルが弾けることから目を逸らしていた。ローリング・トゥエンティ(1920年代)は、転がり続けることでしか、身動きの取れなくなってしまった時代なのかもしれない。フィッツジェラルドは、「ジャズエイジ」と呼んだが、ジャズという言葉の持つ「自由」とは反対に、誰もが同じ方向を向いて突っ走り、そうでないと生きていけなかった窮屈な時代だったのかも…と、思ってしまった。
それって、現代にも通じるのかな。ふるさと納税とか、マイナポイントとか、「やらないと損する」みたいな勢いでみんな手を出しているけど、それって、自分たちの首を絞めてない[exclamation&question]みたいな。


冒頭、毛皮のコートに身を包み、毎週、新作のミュージカルを楽しんでいたゴージャスな母・ローズは、どんどん貧しくなり、借金取りから逃れるために窓も開けられない状態になる。
リーも公共事業促進局で仕事をもらうために、必死になっている。父親と不仲の振りまでして。
フーバーの後に大統領になったフランクリン・ルーズベルトのニューディール政策は、歴史の教科書でも学んだが、当初はなかなか効果が出なかったらしい。肌感覚で知っていたアーサー・ミラーならでは、だと思った。
そして、長い不況の後、ようやくルーズベルトの政策が効いてきた時、彼らがどれだけ安堵したか、幸せを感じたか、そこは物語の終わった後の世界だが、そこまで思いを馳せることができるような、奥行きのあるドラマだった。(そりゃ、4期も大統領やるわな)


この間、46歳のパパを演じていた矢崎が、ここでは高校生からスタートする青年役。どちらも違和感がないのがすごい。いや、すごいのは知っていたけど。時代に翻弄される若者を等身大に演じていて、とても良かった。
河内は、バルカ共和国の外務大臣(@VIVANT)で「見たばかり」の方だったので、内心、盛り上がった。スーツ姿だとスマートな雰囲気。またまた気になる役者を見つけてしまった。
おじいちゃん役の大谷亮介、ドクターなどを演じた天宮良が脇を固め、いぶし銀の輝き。
先日までゆうひさんと共演していた大久保祥太郎くんも活躍していて、楽しく応援した。


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