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「めんたいぴりり」観劇 [┣大空ゆうひ]

「めんたいぴりり~博多座版~」未来永劫編


原案:川原健
企画原案・監修:江口カン


脚本・演出:東憲司


美術:山本修身
照明:山本孝徳
音楽:渡辺秀文
音響:野口雄光
映像:ムーチョ村松
アクション:亀山ゆうみ
振付:原田美穂
演出助手:瀬尾健児
演出部:荒智司、元風呂早苗


主催:博多座、テレビ西日本
協力:味の明太子 ふくや


博多座が開場して20年…私は、開場翌年の2000年に初めて博多座を訪れた。
月組公演「LUNA/BLUE MOON BLUE」…もう、19年前から博多座に立つゆうひさんを観ているわけですね(笑)
で、その時、帰りの飛行機に乗る前、購入したのが、明太子だった。福岡土産といえば明太子…それは、19年経っても変わらない。そんな福岡と明太子の物語を初めて知った。
ずっと、江戸時代頃から作られている郷土料理かと思ってました[あせあせ(飛び散る汗)]
実は、この作品のモデルとなった「ふくや」さんの初代が、昭和20年代に開発したもので、全国的に有名になったのは、昭和50(1975)年の山陽新幹線博多駅開業以降だったというのだから…びっくり[exclamation×2]以来、爆発的に全国に知れ渡ったということなんでしょうね。今や、コンビニおにぎりの具材ベスト3には入る人気者ですもの[黒ハート](あ、私だけ[exclamation&question]


めんたいぴりり3.jpg


 (こちらは、舞台となる「ふくのや」さんの店先。博多座の劇場に入ったすぐのところにこの模擬セットが置かれていて、自由に中を見ることができました。)


本作では、ふくや初代川原俊夫・千鶴子夫妻をモデルにした、海野俊之(博多華丸)、千代子(酒井美紀)が昭和34年夏~昭和35年春のほぼ一年をどんなふうに生きたか、ということが描かれている。「未来永劫編」とクレジットがついているのは、俊之の臨終間際から物語を始め、俊之の見た夢という形で、これまでの苦労の日々だけでなく、未来まで繋がっていく物語になっているから…かな…[exclamation&question]


昭和34年ー
前年、福岡・平和台球場を本拠地とする西鉄ライオンズが、日本シリーズで0勝3敗からの4連勝で読売巨人軍を倒し、“神様・仏様・稲尾様”が流行語になった。ちなみに、この年の西鉄は、ペナントレースも11ゲーム差をひっくり返して優勝しているので、1年を通じて、ミラクル西鉄だったらしい。
一転して、34年は、大阪の南海ホークスが大躍進。稲尾はあいかわらず30勝をあげる活躍を見せたが、南海の杉浦は、38勝4敗防御率1.40…って、もはや、なんなの、これは[exclamation&question]状態。(ちなみに、杉浦は、立教大学で長嶋と共に活躍、プロ入団2年目のこの年、投手5冠王となったが、長嶋もまたセ・リーグで首位打者になっている。日本シリーズで両者は激突しているが、第1戦から4連投の杉浦の大活躍で、4連勝で南海が優勝している。)
最終的にライオンズは4位に低迷するのだが、そんな、調子の悪い夏の終わり(9月初旬)から本編は始まる。
前日の台風で家を流された人々を、俊之は家に招いてしまう。その中には、毎年、俊之の世話になっている丸尾老人(小松政夫)や、俊之と近づきになりたそうな、西陣の商店主・石毛太郎(相島一之)の姿もあった。石毛は、俊之が釜山の郷土料理をヒントに明太子という珍味を作っているという噂を聞きつけてやってきたのだった。
困っている人には、手を差し伸べる俊之は、その一方で、趣味の明太子作りにもどんどん力を入れ、仕入れのために千代子のへそくりにまで手を出すありさまだった。
さらに、地域のコミュニティ作りにも熱心だった俊之は、博多のグランド・キャバレー“グラジオラス”の常連でもあり、綺麗な呑み方をする俊之は、ホステスたちの人気者だった。ホステスたちに囲まれ、次回の来店を約束した俊之は、屋台で飲んでいる見知らぬ女性(大空ゆうひ)に気づく。
声をかけ、一緒にコップ酒を飲んだ二人は、互いに「ストリッパー」「地球の平和を守る博多のおじさん」と言い合って、名を明かすことはなかった。その時、女性が、口ずさんだ「ケ・セラ・セラ」という歌が、俊之の胸に残った。ケ・セラ・セラ=人生、どげんかなる…俊之は、その言葉に、縋るような思いだったのかもしれない。
誰にも見向きをされない明太子だったが、石毛のようにその可能性に気づいている人、丸尾のように「いつか売れる」と励ましてくれる人、そして、現在の未完成な明太子であっても、ファンになってくれた人がいた。
姪浜で小料理屋を営んでいる春日沙織(藤吉久美子)は、釜山に滞在歴があり、戦地から戻らない一人息子のコウタロウが釜山の明太子(明卵漬)が好きだったこともあり、中洲までちょくちょく明太子を買い求めに来てくれるのだった。
沙織の口から「戦争」という言葉を聞いた時、俊之は、10年以上前の初夏を思い出していた。
昭和20年6月、俊之は、韓国で招集され、沖縄で戦っていた。まともな武器もなく、食料もなく、上官の中村上等兵(川原和久)からは、竹槍でグラマンを撃ち落とせと言われるし…お腹いっぱい白いご飯に明太子をのせて食べたい…その思いが俊之に生きる活力を与えたが、戦友たちは、次々に命を落としていくのだった。
そんな野々村(原島孝幸/ワッキー)らの魂は、今も、俊之の前に現れ、応援してくれている。
俊之と千代子には、小学生の息子が二人、長男の健一(河野太司郎/中村太一)と、次男の勝(平澤朔太朗/山下透羽)は、のぼせもんの両親の下、元気に成長していた。ある日、健一の担任の先生が家庭訪問にやってきた。それは、あの日の“ストリッパー”だった[exclamation]
彼女は、花島先生といい、産休の代理教諭として2学期から健一のクラスを受け持っていたのだった。
温かい海野夫妻の前で、花島は心を開き、来年の春には東京に帰ること、クラスには貧しい児童が多く、何もできない自分がふがいないことなどを語る。
俊之は、花島のクラスにも寄附を申し出る。
さらに、戦後、俊之らが尽力して生まれた、山笠の中洲流(ナガレ)が参加できないかもしれない…と聞くと、そこにもなけなしの貯金を使ってしまう俊之。
ある日、丸尾老人がチンピラに絡まれていたところに助太刀してくれたことから、俊之は、中村元上等兵と再会を果たす。多くの部下を死なせて生き残った中村は、戦後15年が経とうとしているのに、大きなトラウマを抱えていた。海野が明太子を作っていると知った中村は、それが美味しいかどうかを尋ねたことから、沙織の店で働くことになる。
様々な小さな奇跡を起こして、お金はなくても、人々の心を温かくしてきた俊之だったが、年末になって、少し旗色が変わってくる。
俊之の作る明太子は「魔法の明太子」だったはずなのに、明太子を食べても花島先生は、人前で歌えるようにならず、丸尾老人は、貧困と孤独の果てに自ら命を絶ってしまった。もう明太子の原材料を仕入れる金もなく、気力もなく、俊之は、明太子作りをやめると言い出す。
しかし、大晦日から元旦にかけて、久しぶりに戦友たちが現れたせいか、千代子との心のわだかまりが消えたせいか、家の空気が変わり、明太子作りから手を引いた石毛の協力もあって、俊之は再び明太子を作り始める。
時が流れ、花島が東京に帰る日、俊之の新たな明太子が完成する。そして、その日、丸尾老人の予言通り、西鉄ライオンズの稲尾投手が店に現れるのだった。


明太子完成までの日々を思い出したのち、俊之は、臨終を迎える。
亡くなった俊之を迎えに来たのは、戦友たちと、SL。SLに乗って、千代子に後を託して、俊之は旅立っていく。


映像で、華丸さんの相方、大吉さんも出演。スケトウダラ王国の女王(スケトウダラの妖精)という役らしい。
この映像シーンを含め、笑いあり、涙あり、小松政夫さんの往年のギャグすべて搭載し…と、3時間超の公演が、短く感じられるほど、楽しい公演だった。


特に、ラストシーンの雪がすごくて…
舞台だけじゃなくて、客席の8列目くらいまでは、頭が真っ白になっていたと思う。
その雪の欠片(紙片)をホテルまで…どころか、家まで連れて帰って、私の家までが「めんたいぴりり」に染まったような感じ。家に帰るまでが「めんたいぴりり」ってことですかね[るんるん]


昭和35年代半ば…直接知らないこの時代が、どうして、後の世代の日本人にも「郷愁」を呼び起こすのか、その辺のメカニズムはわからないが、これって、エンタメ感想を書いている人間としては、研究すべきテーマかもしれないな、と思う。
貧乏だけど、夢がある…とか。
もう、戦争がない、家族が一緒にいる、だけで幸せだと思える…とか。


私は、稲尾登場の辺りから鳥肌状態で、そこから、東京オリンピック~山陽新幹線博多駅開業と繋がる場面で、もう涙が止まらなくなっていた。なんだろうな、この感覚。
自分の生きているこの時間に地続きになっている歴史…みたいな話にめっちゃ弱いんだよね。
この、笑って泣いて感動して…という、ザ・商業演劇的舞台で、ゆうひさんがマドンナ的存在として活躍していることがとても嬉しく、奇跡のように楽しい時間だった。
ゆうひさんたち出演者の感想はまた別記事で。


めんたいぴりり5.jpg


「大江山…」の時は、大きなポスターが貼られていた場所も、今は、デジタルサイネージ。
その分、現在上演中の作品が出てくるタイミングを待つのが、なかなか大変でした。


めんたいぴりり6.jpg


こちらは、ロビーに入る手前の壁面。「大江山花伝」の時は、博多座10周年記念で、ここに上演作品のミニポスターがずらっと貼ってあったな~なんて思い出す。


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