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「表現者ノマド」-7 [┣大空ゆうひ]

「表現者ノマド」第7回に行って来ました。

今回のテーマは、「舞台の上で性を越える」…ということで、わかりやすく歌舞伎の女方である、中村壱太郎(かずたろう)さんがゲスト。
舞台の演出家から始まり、映画監督…と、まず製作側からスタートし、漫画家・作家…と、一人で完結する表現者へ、そこから指揮者…という表舞台に出るけど演者ではなく監督的な立場の人へ行き、前回からいよいよパフォーマンスをする人まで来た、この「表現者ノマド」、とうとう同業者の登場です。
でも、宝塚の男役とは真逆の歌舞伎の女方というチョイスが面白い。

壱太郎くんの出演作品については、このブログでも記載があったので、一応リンクを貼っておきます。こちらこちらこちらです。私自身、お気に入りの女方さんの一人です。
ゆうひさんが壱太郎くんを知ったのは、「GOEMON」という片岡愛之助さん主演の公演。一応歌舞伎とうたっているものの、かの石川五右衛門にスペインの血が流れているとか、フラメンコが踊れるとか、そういうとんでも設定の作品。(五右衛門に関して言えば、有名な「楼門五三桐」でも、明国の大臣の息子だったりしているので、スペインになってもそんなに驚かないけど。)
その作品の中で出雲阿国を演じていた壱太郎くんを観て、ゆうひさん、「相手役にしたい[黒ハート]と思ったんだとか。
へーっと思って調べてみると、この「GOEMON」という作品、初演は2011年の秋、「システィーナ歌舞伎」と銘打っての興行だったようで…ってことは…可愛い相手役さんがすでにいる状態で、そんなこと思ってたんですね、ゆうひさん…[爆弾][爆弾][爆弾]
そんなゲストの中村壱太郎丈-
ご存知の方も多いと思いますが、歌舞伎界のサラブレッドにして、宝塚ともご縁が深い方です。
祖父は人間国宝の沢村藤十郎丈、祖母は往年の宝塚スター⇒映画スターにして元参議院議長の扇千景さん。そして、父は、中村雁治郎丈(一昨年襲名。その前は中村翫雀さん)で、母は、日本舞踊吾妻流宗家の吾妻徳穂さん。父方の叔父は、中村扇雀丈。故・中村富十郎(五世)は、母の伯父に当たる[ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)]
そんなスーパー御曹司・壱太郎くんは、記憶にない1歳と少しで初舞台。幼稚園の頃に、中村壱太郎という芸名でちゃんとお披露目をしたらしい。ちなみに壱太郎は本名とのこと。(本名の姓は林。林家の男子は、○太郎と付けられるらしい。父・雁治郎さんの智太郎はわかるとして、その弟・扇雀さんも浩太郎[ひらめき]
さて、歌舞伎の家に生まれると、自動的に歌舞伎俳優になるべくお稽古を始めていくわけですが、壱太郎くん、一度もイヤだと思ったことがないとか[exclamation×2]好きだから続けていたそうです。そして、(中村鴈治郎⇒坂田藤十郎)襲名の時(2005年)に「曽根崎心中」を観て、「祖父のようになりたい」と思い、歌舞伎俳優を自らの業(なりわい)としようと改めて決意して今に至るそうです。今、26歳だから、14歳位で一生の仕事にしようと決意したわけですね。
歌舞伎俳優になるためには、日本舞踊はもちろん、三味線や鳴りもの(太鼓や鼓など)をずっとお稽古し、ある程度の年齢になると、好きなものを極めようという感じになってくるそうで、壱太郎くんは、お琴を勉強されているとか。
お稽古ごとのうち、日舞は、すべての動き(=所作)の基本になるから、とても重要。ちなみに壱太郎くん自身は、吾妻流の家元。(たぶん、宗家-家元は、会長-社長的な関係じゃないかな。)
この辺で、壱太郎くんの麗しの女方姿の写真が披露されました。
※すべて男性が演じる歌舞伎の中で、女性役を主に演じる(宝塚でいえば娘役・女役)方のことを、“おんながた”と言います。よく女形と書かれ、さらに「おやま」とふりがなまでされてたりしますが、歌舞伎俳優の方は、「おやま」という言葉は好きではないようで、そのためか、「女形」より、ちゃんと「おんながた」と読んでもらえる「女方」という字を使われる方が多いように感じます。というわけで、どちらも正解のようですが、私は「女方」と記載することにします。ちなみに壱太郎くんのサイトでも「女方」標記を使っています。
か、可愛い…[揺れるハート]
ラブシーンのようですが、相手役は、藤十郎さま(=おじいさま)。まあ、こちらのご一家、よく、家庭内で相手役をやっているのです。むしろ、壱太郎くんが14歳役で、藤十郎さまが38歳既婚者役の方がゆゆしき問題だわ。
それと、もう1枚は、めずらしい立役(男性役)、「幡隋院長兵衛」の極楽十三役。「男の役って難しいなぁ~」と語っていました。
ゆうひさんも、在団中に演じた女性の役が難しかったということを、熱く語っていました。型が気になって動けない…とか。演じ手としては、それぞれ男役であり、女方なので、いきなり逆をやれと言われて、本来の性だから簡単でしょ?と言われても、そういう問題じゃないんでしょうね。
ちなみに、頭の金型(鬘の地になる部分)を作る方からも、この鬘を作るとは思わなかった…と、からかわれたらしい。

さて女方の極意とは。
壱太郎くんは、見事ななで肩なのですが、それでも肩幅があるため、まず気を付けているのは、正面向いて立たないこと。必ず斜めに立つそうです。
そして、相手役さんの方が大きく見えるように、膝を折り、さらに胴を折る。しかも両膝はくっつけて、肩甲骨も引き寄せる。どう考えても…全身が攣る…[あせあせ(飛び散る汗)]
壱太郎くんの思う女方とは、「女性じゃない」。女性にない“女らしさ”を表現するのが、女方だと。舞台の中にだけ存在する幻の女性…そういうところ、宝塚の男役と似ていますね。
普段の壱太郎くんは、J-WAVEが大好きな、洋楽をよく聴く普通の男の子だそうで、そんな壱太郎くんが14歳の乙女に変身するトリガーみたいなとこがどこなのか、と聞かれ、「女性というより、“役”ですね」と回答していた。女性としてじゃなく、役として相手役を愛し、その心の動きを表現する。そこは、経験とか情報収集じゃなくて、もっぱら想像だと。
…26歳位の頃、ゆうひさんもそんなこと言ってたっけ、と思い出すと、この先、そうは言っても…みたいな揺り戻しが、壱太郎くんにも起きるかも…?
そんなゆうひさんは、男役スイッチはどこ[exclamation&question]と聞かれ、お稽古場では、どっちなの[exclamation&question]とか、色々、興味津々な壱太郎くんに、「いつでも入れるところにいた」というようなコメントを。これ、新しい発言だなーと思った。また検証したい話だと思う。
女方として、というか歌舞伎俳優の居方について、すごく興味深い話が続く。
「目を外す」…相手を見続けていたら芝居が小さくなる。だから、目を外す。自分を客観視する。なりきるだけじゃなくて、内面のコントロールも必要。あと、どんなことでも、基礎をちょこっとでもやっておくことが重要。

歌舞伎では、お稽古期間が短いので、初役の時などは、事前に諸先輩にお稽古をつけていただく。その時、とても細かく教えてくださる方もいれば、好きにやっていいよという方も。藤十郎さまは、「お客様が入らないとわからないなー」などとおっしゃるそうで。
揃ってのお稽古期間は3-4日。その日程中、演じるのが3回しかないことも。なので、幕が開いた後、初日と千秋楽では全然違うのだとか。長期公演(1ヶ月)では、成長を観ていただける楽しみもあるとのこと。(もちろん初日は完成しているけれども…と言いつつ)
また演じて観たいのは、「女殺油地獄」の豊嶋屋お吉。
次回作(歌舞伎座の四月大歌舞伎)では、夜の部で「帯屋」に出演する。先ほどの写真に出てきた14歳のお半役。
今度は、10代を芸で魅せたい[グッド(上向き矢印)]と決意を語ってくれた。

今後の夢、というところで、宝塚の男役を相手に女方を演じたいと、壱太郎くん。
それを聞いて、ぜひ相手役になってほしいと思った可憐な人なので、壱太郎くんのためなら、再び精進して男役を頑張ってみようか…とゆうひさん。2014年の「天守物語」の時に、スケジュールが合えば出演したかったという壱太郎くんなので、運が良ければ実現するかもしれません[黒ハート]
ちなみに、壱太郎くんはカルメンをやりたいんだとか。
それを聞いて、一瞬間が開いたゆうひさんに、逆にリップサービスでない本気を感じました[わーい(嬉しい顔)]

様々な制約に守られているから、実は、自由に羽ばたけるというのが、歌舞伎・宝塚なのかも、というまとめは、逆説的ながら真理だなーと思った今回のノマドでした。


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