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「贋作・好色一代男」 [┣矢崎広]

少年社中15周年記念第三弾・第28回公演
「贋作・好色一代男」

原案:井原西鶴
脚本・演出:毛利亘宏

照明:斎藤真一郎(A.P.S.)
音楽:依田謙一
衣装:村瀬夏夜
舞台美術:秋山光洋
舞台監督:杣谷昌洋
音響:井上直裕(atSound)
演出助手:伊達紀行
舞台監督助手:弘光哲也
振付:森川次朗

劇団少年社中の結成15周年記念公演。主演は、私が最近注目している矢崎広。原作はもちろん、井原西鶴。
主人公の世之介は、7歳で女を知ってから、60歳で消息を絶つまでの間に、3千人を超える女、700人を超える少年と関係し、親からの金だけを元手にその一生をすべて“色”に費やした、という、まあ言ってみれば大馬鹿野郎だが、たぶんそれは、この地上に住む大半の「男の夢」かもしれない。
少年社中の舞台を観るのは初めてだったが、毛利亘宏の脚本の芝居を観るのは二度目。
その二回を通して思ったのは、笑う場面はしっかりありつつも、すべての人の人生に“意味”を見出してあげたい、すべての人間を“善意”でとらえてあげたい…というような優しさを感じる脚本だなーということ。現実社会は、もっと厳しいし、無意味なヤツ、悪いヤツもいっぱいいるような気がするが、演劇の世界だけでも、そこは夢を見ようよ!というのは、私も賛成。あと、にどんないい人にも、“人に言えない心の闇”があって、それを吐き出させたいっていう部分もあるかな。でも結局、最後はポジティブになるので、いい感じで劇場を出られる
なので、世之介さんも、“幸せをふりまく男”になっていた。誰からも愛される男に。

女護が島(女だけが住む島)に向かう途中嵐にあった世之介は、60歳だったはずなのに、気がつくと顔から皺が消え、今までに出会った懐かしい人々に再会していた。その中に、ひとりだけ知らない男がいた。彼は世之介に刀を向け、彼のこれまでの人生を聞きたいと言う。
こうして世之介が語り出した人生は、空前絶後の物語だった。
父は、けっこう裕福な商人。彼は京で生まれ育った。
7歳の時に、“母の双子の妹”と初体験を済ませ、そこから色の道にまっしぐら。
そのまっしぐら具合が現代と違っている部分も多く、いろいろと勉強になった。
まず、男色が特殊な趣味でも性的志向でもないこと。これって日本固有の文化ではないだろうか?
そして、自由恋愛と女郎遊びが並列で語られること。
遊郭ってものに、特殊なイメージがあった。市井の未婚の女性の身持ちが硬いから遊郭が必要だとか、もてない男が行く場所だとか、身請けなんて特別にラッキーなできごとだとか。
なんか、もう普通に恋愛の場です、遊郭。合コンお持ち帰りのノリです、身請け。
世之介は、街中で女を口説き、土地の遊郭は必ず訪れ、ついでに怪しげな男娼も買う。
興味が湧けば、親友の恋人も口説く。
ただ、決して、自分の意思を押し通そうとはしない。脈がない感じで振られたら深追いはしない。そして、彼の金離れの良さは、色ごとが成就したかどうかには、関わらない。そこが太っ腹で、誰からも愛される所以だろう。
(親の金だから=金の苦労をしてないから、とも言えるが)
さて、3000人を超える女と関係しながら、世之介には子供がいなかった。
なんとなーく理由は想像できるが。
芝居の中盤で、世之介は自分がもう死んでいること、彼に刀を突きつけて彼の人生を聞きたがった男こそが、彼の唯一の息子で、しかもこの世に生まれずに終わったことが分かる。そして、世之介が極楽に行くか、地獄に行くかは、この男が決めることになっているのだった。
世之介の人生を聞き、彼が極楽に行くべきだと思えば酒を差し出し、地獄に行くべきだと思えば斬る。そして世之介が地獄に行けば、彼はこの世に生まれることができるらしい。
言われるままに、その後の人生を語り出した世之介だったが、「よかれと思ったこと」が悪く働いて、助けようと思った人たちが死んだり、不幸になったりしていることが、だんだん分かってくる。
しかも、初体験の相手と信じていた“母の双子の妹”が実在しないことも明らかになる。母の一人二役…[がく~(落胆した顔)]
落ち込む世之介。みんな不幸になって、よけいなお世話で、しかも実はマザーファッカーって…[爆弾][爆弾][爆弾]
しかし、先に死んでいった人々は、彼に言葉をかける。
ありがとう、会えてよかった、と。
刀を構えた男は、世之介に酒を差し出す。極楽へ行けという合図だ。
しかし、世之介は、感謝しつつこれを断る。そして、俺を斬れと言う。
生まれてこい!彼は息子に、力強く言う。
この世への全肯定。
そして、祭り→大団円となって芝居は終わった。

井原西鶴が書いた物語が、どこまで忠実に描かれているのかわからない。“贋作”と書かれている以上、かなりアレンジしているのかもしれない。
でも、人生への限りない讃歌になっていて、私はすごく好きな作品だと思った。

奇しくも、私が観劇した日は、劇団少年社中の結成16周年の記念日だったそうだ。
いつまでも少年の心を持ち続け、生きるエネルギーに満ちた芝居を作ってください。
おめでとうございます[黒ハート]

【今日の言葉】
「マルセイユの港から、海は世界中に広がっているんだ」byジェラール@『アデュー・マルセイユ』
作・演出:小池修一郎
花組 2007年

掲載されている写真は、春野寿美礼さん、桜乃彩音さん。

『アデュー・マルセイユ』『ラブ・シンフォニー』 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 宝塚クリエイティブアーツ
  • 発売日: 2007/12/20
  • メディア: DVD

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