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「MACBETH」観劇 [┣矢崎広]

「MACBETH」
原作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:河合祥一郎

脚本:斎藤栄作
演出:板垣恭一

ドラマターグ:河合祥一郎
美術:野村真紀
衣裳:森永幸徳
音楽:日野悠平(えりオフィス)
照明:三澤裕史
音響効果:天野高志
殺陣:梶武志
ヘアメイク:山崎潤子
舞台監督:岩戸堅一

ひょんなきっかけから、矢崎広主演の「MACBETH」を観劇することになった。

矢崎広という俳優を知っている演劇ファンもそれほど多くないとは思うが、ミュージカルもこなす、若手の実力派俳優だ。

その彼が、25歳という年齢で初めて舞台主演する。それが、「ロミオとジュリエット」や「ハムレット」ではなく「マクベス」だというところに惹かれ、観劇することにした。

ラフォーレミュージアム原宿という、イベントスペースを使用して、舞台を観客が取り囲むスタイルでの上演。主催の“る・ひまわり”的には、青山円形劇場を使ったりもするので、わりと普通のスタイルかな?
イベントステージのど真ん中に、舞台を設え、その真上から照明を吊っているので、ステージと照明の近さがハンパない。役者は大変だろうな、と思った。

ただ、もう、その役者が素晴らしかった。
舞台を中央に置くと、大道具なんてものは置けないというか、出したら引っ込めることができないので、基本、舞台上にセットは置かない。(そんな関係でか、マクダフ城攻撃の一部始終はカットになった。)
それを補って余りある、役者陣の演技。
スピーディーな展開は、ASCのそれに近い。ただASCは、すべてをシェイクスピアの脚本通りに上演するが、商業演劇としてその辺は、現実の脚本家がばっさり現代の演劇とマッチングするように加工しているので、さらに観やすいシェイクスピア劇になっている。

主演の矢崎の熱演がすごい。
シェイクスピアの長台詞を滔々と語る実力もさることながら、心の動きがダイレクトに伝わる熱い若さも魅力。
マクベス夫人を演じた馬渕英俚可も、夫をそそのかすだけのキツイ女性ではなく、「王になること」が夫の本当の望みだと信じるがゆえに、無理矢理自分自身をも鼓舞して、破滅への道を進んで行く、という非常に愛情に満ちた美しい夫人だった。
そして、マクダフを演じた松村雄基が、作品をきっちりと締めてくれていた。彼が日頃出演している舞台だと、ともすれば“若手”括りになりかねない松村が、この舞台では、いぶし銀的魅力を振りまいていた。しかも年齢がほぼ半分の矢崎を相手に、長い一騎打ちの場面を演じ切る。
すごい迫力だった。
個人的には、今回急遽マルカム王子を演じることになった宮下雄也が、迫力あるよい声で素敵だなーと思った。マルカムは、マクダフと手を組む前に、彼を試す長台詞があるのだが、そこの嘘八百並べ立てるところが、すごい迫力
小林且弥のひょうひょうとした各役もよかったし、(客席いじりも素晴らしい!)女役に違和感のない20歳、長倉正明も今後期待できそう。

満足度の高い舞台だった。

たまたま観劇が一緒になった友人は、今回の設定(25歳のマクベス)にすごく納得していたようだったが、私は、どうかなーと思っている。
“やがて王になるひと”と言われた時、今、王を殺さなければ…という発想が生まれるのは、今の王と同年輩か、むしろ自分が年上だからではないか、と思うからだ。息子のような年齢であれば、王を殺す前に、王子を排除し、自分に王位が来るように色々と策を練る方が自然なのでは?と。
その辺のリアリティーが出てくると、さらに面白くなるかもしれない。一考のほど、お願いしたい。


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