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「双曲線上のカルテ」 その2 [┣宝塚観劇]

「その1」はこちらです。 

2幕は雨のシーンから始まる。
雨というだけで「シャングリラ」を思い出すとは、自分かなり病んでます。
しかし、星組公演を観た後だと、フェルナンドとモニカって…美稀千種&夢咲ねね?(身長差が逆な気がする)
雨のなかのデートシーンをイメージしているのかもしれない。モニカ(星乃あんり)は、黄色いレインコート(けっこう可愛いデザイン)に、白ブーツという、どこのアイドル?的衣装。フェルナンド(早霧せいな)は、コートを着ていても胸元は開けている。さすが![いい気分(温泉)]
これに絡んでくるクラリーチェ(大湖せしる)は、赤いレインコートにパンプス、こちらも胸元を開けて大人の女を演出。早霧のダンス、前に「ニジンスキー」を観ているので、あんまり上手くないのでは?という偏見があったが、こうやって観ると、シャープでいいダンスをすると思う。あの時は、話題性を重視して、小林十市さんというプロのバレエダンサーに振付を依頼したのが間違いだったのでは?
ここで再び天使(舞園るり・妃華ゆきの)登場。
人は死ぬと、天国の門で二つの質問をされるという。ひとつめは「お前は幸福だったか」もうひとつは「お前は人に幸福をもたらしたか」、この二つの質問にYESと答えられないと、中には入れてもらえないらしい。
謙虚な日本人には無理かも…?そういえば日本人は、幸福実感度も低いそうですね。
さて、マルチーノ病院では、小児がんの子供達のために、チャリティーコンサートが開催されていた。場所は、アニータ(夢華あみ)のバー。さすが、婦長を愛人にしているだけあって、妻と愛人の同席など気にならないのでしょうか、院長(夏美よう)。そのわりには、おどおどしてたけど。
お店の経営が赤字なのに、太っ腹にもただで場所と料理を提供するアニータの真意や如何に?
場所もただで提供してもらう位だから、コンサートといっても、出演者は自前。最初は、モニカ、サンドラ(桃花ひな)、イレーネ(雛月乙葉)による「月影のナポリ」。続いてランベルト先生(夢乃聖夏)、患者のベルナルド(久城あす)とウーゴ(透真かずき)による、「チャオチャオ・バンビーナ」。どうやら、ベルナルドの入院、治療費をただにすることと、この出演がバーターだったらしい。ランベルト先生も、フェルナンド先生の代打ということで、いったいいつ練習したんだ?
ここで、無駄に踊りの上手い院長夫人(五峰亜季)が、ラテンダンスを踊る。その相手役もランベルト先生が引き受けるのだが、フェルナンド先生の代わりに来たと聞いて、ちょっと残念がる院長夫人。タイプなのね、フェルナンドが。
ここで、人気のアイドルスター、ニーナ(天舞音さら)が登場する。「砂に消えた涙」をぶりぶりで歌うニーナちゃん。その衣装は!!!伝説のHANA-CHANGの衣装じゃありませんか!「MIND TRAVELLER」の野々すみ花着用以来の登場じゃないかと思うのだが、なかなか可愛かったです。やり過ぎなアイドル感が出ていて。
ここに登場する曲は、1960年前後のヒット曲のようだ。
人気アイドルのニーナちゃんの名前は、イタリアで「砂に消えた恋」をヒットさせた歌手、ミーナから来ているのかもしれない。もちろんイタリアのアイドルなので、大人っぽい女性でしたが。(by Youtube)
隅のテーブルでは、出番を終えた看護婦チームが、女子トークに花を咲かせている。そこで、モニカがフェルナンドとデートしたことが明かされる。その時、
「私服もかわいいね」
と言われたらしい。それが、あの雨のシーンだとしたら…フェルナンド先生、ロリ好きですな…[爆弾][爆弾][爆弾]

さて、後日、婦長(麻樹ゆめみ)が患者と、入れ墨があるとMRI撮影はできませんよ~みたいな話をしているところへ、ニーナちゃんが刺された、という一報が入る。
MRIってそんな昔から使っていたっけ?と思ったら、日本でも1983年には東芝、日立、島津から初めてMRIが発売されている。
暴漢に襲われたニーナちゃんはマルチーノ病院に入院することになったが、マネージャー(詩風翠)は、映画の製作発表を予定通り行おうとして、病院側にせっつく。対応に困るランベルトに対し、フェルナンドは「鎮痛剤投与を止めれば、痛くて記者会見なんか出られるはずがない」と言い放つ。
医者として患者に対する適切な治療を放棄するなどありえない!と驚くランベルトに、「死ぬよりはましだ」と言うフェルナンド。医者として破天荒すぎるフェルナンドに、ランベルトは動揺を隠せない。
公演2番手なので、夢乃ランベルトの歌がここに入る。しかも客席降りで。
伝説の「トマケ」(個人的には麻路さきの“♪オヨヨヨヨ♪”に匹敵する場面だと思っている)を歌った夢乃なので、どんな恥ずかしい歌にも耐えられると思っていたのだが、二枚目の医師役として客席で歌うことに、どっぷり浸った感がない。なんとなくよそいきな雰囲気のまま、終わってしまったような気がする。
組替えの違和感なのかな?
さて、ニーナちゃん、実は、初めての映画出演が決まっていたが、水着のシーンがあることから、その出演を回避したくて、自分を刺したことが分かる。彼女は孤児院の出身で、かつて施設が火事になった時、フェルナンドが大学病院で手当てしたのだった。それで九死に一生を得たのだが、全身にケロイドの痕がある。アイドルとして、そのことを誰にも知られたくなくて、こんなことをしたのだった。
この話は、これで終わるのだが、どうもネタとして浮いていて、不思議な印象を禁じ得なかった。
ベルナルドとウーゴは、最後まで登場するキャラクターだし、学生はフェルナンドの人柄の一環を見せるための存在で一場面で消えて行ったから問題ないが、ニーナちゃんに関しては、本筋に関係ないわりに、後を引きずるキャラクターなので、その意味を考えてしまった。
発想の突飛さは「相棒」のヒロインといい勝負で、女というのはとんでもないことを考える生き物、という風に石田先生は考えているのだろうか?

この辺りになってようやく、重要な登場人物が一人登場する。
アニータの息子、アントニーオ(彩凪翔)だ。なんと、彼は、アニータと院長の間に生まれた息子だった。
アニータは、院長の愛人というよりは、院長の恋人で、彼が病院の女婿となるまで付き合っており、その後、誰にも言わずにアントーニオを産んだのだった。その時、アニータは10代で、アントーニオは今年大学を卒業したらしい。
ざっと計算して40歳そこそこですか、アニータさん。
お肌はつやつやだが、なんとなく納得してしまう。大丈夫ですか、夢華さん…(汗)
お店の経営も苦しいし、いっそ認知請求して養育費を一気に取ってやろうと考えていると言い出した母親に、アントーニオは意見する。
「それは母さんの若かった頃の恋を貶める行為だ」と。
そこに愛があったのなら、私生児ということがわかっても、自分はちっとも恥ずかしくない、と語るアントーニオ。若くてもかっこいいわ♪

モニカの方は、順調に交際が進展し、フェルナンドの家に招かれ、誕生祝いをしてもらっている。
(料理は自分で作ったらしい。)
シャンパンを促されたモニカは、席替えを要求する。フェルナンドの右側が落ち着くらしい。そして、フェルナンド先生の助手として、メスを渡すタイミング等習熟して、もっともっとフェルナンド先生の役に立ちたい!と瞳をキラキラ輝かせる。
星乃は、バウホールで私が観劇した時、この場面で、やたらとシャンパンを飲んでいた。酔って潰れる設定なのかと思うほどに。
東京で観劇した時には、その状態は直っていたので、早霧か、ファンの誰かが指摘したのかな?手持無沙汰な時に、ついやってしまう行動にも、しっかりとチェック機能が働いているのが宝塚。だから、初日近辺にのみ観劇した公演で、あまりボロクソに言うのはよくないなーと、あらためて自戒してみた。
(脚本に関しては、初日に観ても千秋楽に観ても、感想に大差はないだろうが。)
この頃まで、フェルナンドは、モニカに対して“本気”ではなかったように思う。
フェルナンドとモニカの関係は、『うたかたの恋』のルドルフとマリーを彷彿とさせる。
最初は単純な好奇心、次にたぐいまれな純粋さと自分への過剰な尊敬への戸惑い、ただ、自分の苦しみが重すぎて、その心地よさの中に浸ってしまう。それでも、まだ自分の中には葛藤があって、身も心もひとつになってしまった後の彼女の想いを考えると、そこまで踏み切っていいものか…と。
けれど、彼女の無私の深い愛の前に彼は思い直す。この女に、すべてを委ねてもいいのではないか、と。
それを、フェルナンドはこう言っている。
「愛よりも大きなもの、赦し」
そして、フェルナンドは、モニカにひまわりの花束を渡す。薔薇より似合う、と。
石田先生にとって、ひまわりは、そういう存在なのかー!…と、『ファンキー・サンシャイン』を思い出してみる。だめね、私[あせあせ(飛び散る汗)]

一方、フェルナンドに振られたクラリーチェではあったが、彼のことを心配する気持ちは残っていて、フェルナンドが持っていたレントゲン写真をランベルトに見せる。
それは、末期の多発性骨髄腫患者のものだった。
が、人の心配をしている場合ではなかった。そのクラリーチェが突然倒れる。以前から、フェルナンドに転んだ時の傷の治りが遅いという指摘を受けていたが、クラリーチェは精密検査を受けることなく放置していたのだった。
フェルナンドの方も、徐々に病状は悪化しており、アニータの店で倒れ、自らモルヒネを注射することになった。そこにアントーニオが現れ、アニータはフェルナンドに、彼が院長の息子だということを話す。この展開が唐突に感じないのは、フェルナンドが倒れたことにより、この二人が秘密を共有したからかもしれない。ひとつの秘密を共有したから、もうひとつの秘密も素直に共有できた、というか。

そしてランベルトは、レントゲン写真を持って、フェルナンドのマンションを訪れる。
医師として、少しでも長く生きられる方法を選択してほしいと勧めるために。しかし、フェルナンドは、命の終わりを知った自分だからこそできる医療をすることが、自分の生き甲斐=死に甲斐だと言う。そして、モニカには真実を伝えないでほしいと言う。愛しているから。
クラリーチェは、再生不良性貧血だった。両親とは血液型が合わず、彼女にはきょうだいはいない。
絶望する院長夫婦に、フェルナンドが告げる。彼女にはお兄さんがいます、と。
一般から骨髄移植を募る場合、ドナーとレシピエントは知り合いであってはならない。だから、アントーニオの骨髄を移植するためには、彼を認知し、家族としての移植を行わなければならない。アニータは、この事実を前に反発する。自分ひとりが育てた息子を、そんな理由で認知されても嬉しくないし、しかも、移植に関して金銭のやり取りは禁止されているので、当初の認知してもらってお金をいただく計画もパーになってしまう。
しかし、アントーニオは決然として答えるのだ。「聞いたからには放っておくことはできない」と。
こうしてクラリーチェの命は救われた。
アニータは店をたたんで、アントーニオと共にロンドンに行くことになった。そして、院長が差し出した「気持ち」を、あの頃の私の恋がニセモノになってしまうから、と押し返す。
この場面のアニータがバウと比べて格段によくなっていた。フェルナンドのことを心配する部分を含め、心が動いているのが伝わって来る…というか。
この役をちゃんと生きる、それがヒロインとは程遠い役であっても…夢華にタカラジェンヌの心意気が備わった公演になったのかも?

フェルナンドは、自分の故郷であるスイスとの国境付近の村にモニカを誘う。
(“マリー、来週の月曜日、旅に出よう”ってことですね)
夏になると湖の周り一帯はひまわり畑になるらしい。今は、貸しボートもやっていなくて、万一湖に落ちたら、溺れる前に凍死するとか。湖底には倒木が無数に沈んでいて、遺体は上がらない。
フェルナンドはこの村の出身で、今の季節がどんなに寒いか知っているのに、手袋をしていない。
モニカはそんなフェルナンドの手に息を吹きかけ、自分の手袋を片方渡して温める。こ…この場面をやりたいばっかりに手袋忘れた設定にしたのかな…(寒)[爆弾][爆弾][爆弾]
フェルナンドがモニカを抱きしめると、モニカは呟く。
「せんせい、あったかい…」
「生まれてきた甲斐があった」
と答えるフェルナンドに、モニカは、そんな大げさな…とほほ笑むが、この時、フェルナンドは、人生にひとつの悔いもない状態になっていた。ここで、モニカが呟いた“あったかい”の言葉は、チェーザレさんの亡くなる前日の出来事を思い起こさせる。
石田先生、寒い演出の隙間に、しっかりと作劇テクニックのお手本を挟み込んでいるのがニクい。

やり残したことがあるから…と、モニカ一人を病院に返し、フェルナンドは、湖に身を投げた…らしい。
幸せの絶頂で、フェルナンドの死を、義母になるはずだった人からの電話で聞いたモニカの心情は如何ばかりだっただろうか?座り込んでしまったモニカの放心が切なかった。
一方、フェルナンド(の魂)は、天国の入り口で、天使達の質問を受ける。
お前は、幸せな人生を送ったか?お前は、他人の人生に幸せをもたらしたか?
誇らかにはい、と答えるフェルナンドをチェーザレさんが優しく迎えてくれるのだった。

そして5年後、スイス国境付近のホスピスを研修で訪れたクラリーチェは、そこで看護婦をしているモニカに再会する。そこには、ウーゴとベルナルドも介護士として働いていた。
ひまわりに囲まれたその土地に根をおろしているのは、モニカだけではなかった。モニカの生んだ息子(舞園)がいて、二人をフェルナンドの幻が温かく見守っていた。

ラストシーンは、『Red Hot Sea』的な気がした。

さて、トップが退団発表した後の2番手バウ公演というと、今年の『ロバート・キャパ』(凰稀かなめ主演)、2009年の『逆転裁判』(蘭寿とむ主演)、2008年の『ブエノスアイレスの風』(柚希礼音主演)位かな、最近は。
見事に、バウ主演コンビがトップコンビとして就任(柚希・夢咲)、2番手の上に後から落下傘発表(蘭寿)、主演はトップ就任したが、相手役は他組から落下傘(凰稀)と結果は分かれた。
そして、この公演の、バウと東京の間に、新トップコンビが発表された。
そのバウを観劇した時、“蘭寿パターンかな?”という気がした。
星乃あんりは、まだ研4だが、同期の愛希れいか、美咲凛音が既にトップに就任していることを思えば、もう出来上がっていてもおかしくない。が、幼い。子供っぽいというなら、長所にもなるが、幼い&拙いでは話にならない。
星乃の就任は、今回はちょっと無理なのでは?と。
そして、そんな星乃と、ラストに言い訳できないほどのデュエットダンスが組まれていたのを観た時、早霧の就任もないのでは?と感じた。
自身はトップになるが、相手役は公演での相手役だった伶美うららではなかった凰稀の場合、デュエットダンスらしき場面はあったものの、伶美の衣装が他の娘役と同じだったり…と、特別扱いがなかったからだ。
もちろん、星乃こそトップ娘役に相応しいと思えば、この答えは真逆になるので、これがトップ就任を当てる方法とは言えない。(意味ないじゃん)
星乃には、下級生時代の花影アリスのような雰囲気を感じる。妹キャラばかり演じていては、旬を逃してしまう。退団前の花影のところまで早く化けることができれば、間に合うかもしれないので、どうか精進を!


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