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宙組中日劇場公演「ベルサイユのばら-アンドレ編-」観劇 [┣宝塚観劇]

宝塚ロマン
「ベルサイユのばら-アンドレ編-」

原作:池田理代子
外伝原案:池田理代子
脚本・演出:植田紳爾
作曲・編曲・録音音楽指揮:吉田優子
編曲:鞍富真一
振付:羽山紀代美、尚すみれ、若央りさ
殺陣:菅原俊夫
装置:関谷敏昭
衣装:任田幾英
照明:今井直次
録音音響:加門清邦
小道具:石橋清利
歌唱指導:楊淑美
演出助手:鈴木圭
衣装補:河底美由紀
舞台進行:中村兆成、政村雄祐

全国ツアー公演における「ベルサイユのばら」外伝は、三部作で終了
今回の外伝は、名古屋では初演以来公演がなかったことから、当初の予定外に作ったアンドレおまけ編であり、外伝原作をお願いした池田先生の設定通りでは時間が足りず、希望に添えない展開になっているらしい。植田先生が正直にそんなことをプログラムに書いておられるので、観る前からどんよりと不安な気持ちになってしまった。

開演挨拶の大和悠河の声がとても好きだ。自然で、そこはかとない温かさがあって、若々しくて。

プロローグは、全国ツアー公演「外伝 ベルサイユのばら」シリーズと同様の音楽と衣装が使われているが、主要な娘役のドレスは、これまで見たことがない、菫色のものが使われていた。
大和は白地に赤いポイントが入った軍服風のコスチューム。金髪を結んでいる髪形なので、アンドレ役としてのプロローグではないらしい。
デュエットダンスに登場する陽月華は白地にピンクリボンのついた可愛らしいドレス姿。全国ツアーのトップコンビのデュエットダンスと同じ音楽だが、衣装は違っている。また、中日劇場なので盆回しでのデュエットダンス。美しいコンビが盆の上で舞うのは、夢のような光景。
大和一人が残って、ラベンダー色の軍服を着た男役たちと踊る。ここの振付は、全ツと同じ。宙組男役、音楽を十分取った振付に対応する、ダンスのタメがうまい。なんだ、下手なのは花だけかよ[ダッシュ(走り出すさま)]
陽月はこの間に着替えて、全ツで娘役トップが着ていたラベンダー色のドレスとなる。
ここで、パレードのようなことをして幕が下りる。
大和と陽月がカーテン前に残り、最後にデュエットが入る。
『この道 この愛』というのは、中日のための新曲のようだ。

ここでプロローグが終わり、物語が始まる。1763年、南仏プロバンス。
アンドレの母が死んだので、家を畳むことになり、マロングラッセがその後始末と孫のアンドレを引き取りに来ている。天咲千華がアンドレの子役をやっているが、なんとなく「太王四神記」の野々すみ花とキャラがかぶっているような気がした。
花組でちゃんと二人は並び立つのだろうか?
アンドレと仲良しの少女、マリーズを演じるのは百千糸。丸顔で子供っぽい。
プロバンスの子供達は、坂本龍馬のような土佐弁でしゃべっている。
二人は幼い愛を育てていたらしい。マリーズは、髪を留めている黄色いリボンを1本、アンドレに渡す。そしてアンドレからも交換の品が欲しいという。アンドレはポケットを探り、母親の形見の巾着に入ったどんぐりの実をマリーズに渡した。
二人は、『この道 この愛』を歌う。透き通った美しいデュエット。ちょっと歌上手すぎるかも…だって、成長したら………になるわけだし[爆弾]
歌う二人の姿が、現在のアンドレ(大和悠河)とマリーズ(陽月華)にかぶる。…「太王四神記」の少年タムドク&少年ホゲが、大人の二人になったのと同じ手法だ。まさか、小池をぱくった?いやいや、たしか、これは、かつてオスカル編で植田先生ご自身が使っている手法のはず。
ところで、『この道 この愛』には、
♪この道がどこへゆこうと私の愛は変わらない♪というような、フレーズがあり、それを少年少女時代の二人は無心に歌いあげていた。同じように、大人になったマリーズとアンドレもこの歌を歌っているのだが、マリーズはともかく、アンドレは、既に変わってるんだけど…[爆弾]

アンドレの心変わりも知らず、幼い約束を信じて、ベルサイユに出てきたマリーズ。さっそく行き倒れ、ベルサイユのはずれにある居酒屋アジールに担ぎ込まれる。
女将のシモーヌ(鈴奈沙也)と店の女の子たちの歌によると、相当な不景気らしい。
行き倒れたマリーズは、パンの切れ端を貰って落ち着くと、この店で雇ってほしいと言い出す。これ以上、女の子を雇うことはできない、と断るシモーヌだが、マリーズが自分と同じプロバンスの出身なので、見かねて、雇ってやることにする。

一方、ジャルジェ家では、オスカル(早霧せいな)が、黒い騎士の居場所を突き止めた、と大喜びでアンドレに報告している。早霧は、意気揚揚としていて、実に明るいし、美しい。芝居は、ベルばらを変に意識することもなく、とても自然ただし、植田先生直々のご指導がある所作と、早霧らしい自然なセリフ回しがかみ合っていない。そこが、非常にもったいなく感じる。
パレロワイヤルは、線画で白く浮き上がり、ハッとさせる。
ただ、前後の流れから、オスカルはアンドレをパレロワイヤルまで、連れて来ているわけで…でも、パレロワイヤルって、ベルサイユから20キロ先のパリにあるんだけどな…。夜中に連れてったら、到着は深夜かも?
ベルナール(凪七瑠海)は黒い騎士として、一場面登場する。アイマスクを外してから、立ち回りになるのも、顔見せとしてアリだろう。ただ、黒い騎士の正体がベルナールだったという件はないので、ベルばらを知らない人は、凪七がベルナールと黒い騎士の二役を演じていると思うかもしれない。ま、それでも話は通じるが。
黒い騎士は、剣でアンドレの目を傷つけ、立ち去る。凪七は、顔が小さく、綺麗だった。
オスカルの父・ジャルジェ将軍(箙かおる)は、黒い騎士逮捕に焦ってアンドレを負傷させたオスカルにご立腹。それに対して、オスカル大事のマロングラッセ(邦なつき)は、アンドレの眼くらい、オスカルさまがご無事なら…的なことを言うが、実際、一人になればアンドレのことも心配している。
その可愛らしい心配っぷりが、素敵だった。
オスカルは、アンドレが病床に伏せっている間も、情報収集に動き回っている。今日は、居酒屋「アジール」に行ったとマロングラッセから聞いたアンドレは、慌てて後を追おうとする。安静にしていなければならないと、引きとめられるが、「オスカルのためなら、片目くらいいつだってくれてやる」と走り去る。
大和のアンドレは、情熱的で包容力がある。
オスカルの早霧がてこずっている、自然な演技と大仰な所作の匙加減も抜群だ。
オスカルは、「アジール」に行き、マリーズにワインを注文する。お互いにアンドレの知り人であるということを知る由もなく。
飲んでいるオスカルは、周囲に囃されて、だんだんピッチが上がる。そして、酔うにつれてだんだんフェルゼンに対する愚痴が出てくる。オスカルの飲みっぷりに周囲は盛り上がり、猥雑な言葉でオスカルを煽る。無視しているオスカルだが、王妃を愚弄されて、とうとうブチ切れ、ケンカを始める。
マリーズが女将に言われて警察を呼んでいる間にアンドレが現れ、平民たちの前で謝って、その場を収める。その後、酔ったオスカルを居酒屋の庭先にあるベンチで膝枕するのだが(ベルばら定番の場面)、さすがにそのポーズはどうなの?という感じ。
かつてのベルばらと似ているのだが、セットの関係か、オスカルは正面を向いて横向きに可愛く寝ていて、アンドレの膝枕は、足がかろうじてカカトだけついている。非常に妙な姿勢なので、ちょっと笑える。
最後にオスカルを姫だっこして去っていくのは、オトコマエだった[ハートたち(複数ハート)]
立ち去るアンドレと、警官を連れて戻ってくるマリーズ。超ニアミス[exclamation×2]

フェルゼン(悠未ひろ)は、登場しない王妃アントワネットを思って歌っている。ここで、オスカルがフェルゼンを諌めるシーンは、ベルばら本筋と同じ。
そこで、オスカルが色々ヒントを与え過ぎて、フェルゼンがオスカルの思いに気づいてしまう。これはこっ恥ずかしい場面だった。いくら鈍くても、そこまで言えば、バレるってば。
オスカルの捨て身の作戦が功を奏し、フェルゼンは帰国を決意する。

「アジール」では、女の子たちが、揃ってイレーネ(花影アリス)をいじめている。それをマリーズが庇い、強気なところを見せるのだが、イレーネは別に新人でもないし、マリーズも「アジール」に来て1年になるのだし、どうしてイレーネが突然いじめられ、どうしてマリーズだけが庇うのか、不思議なシーンだった。
男気のあるマリーズに、女将・シモーヌが感動しつつ、マリーズに養女の話を持ち出す。店にお忍びでやってくる貴族の男が、マリーズを養女にしたいと思っているらしい。そして、マリーズの探し人、アンドレに会うには、貴族の屋敷に出入りできる方がいいのでは?と切り出す。
鈴奈が、温かみのある女将でいい味を出している。

一方、帰国するフェルゼンに、一目オスカルに会ってほしいと押しとどめるアンドレの場面も、今回は登場する。
フェルゼンこそオスカルの思い人だと、言い募るアンドレに、君がオスカルへの愛を貫くのだ、と言って去っていくフェルゼン。悠未の「身分違いはなんだ!」は、大きく、温かかった。

シモーヌはマリーズを伴ってブイエ将軍を訊ねる。
先年夫人を亡くし、子供もいない将軍の養女って、本当はなぐさみものなんじゃ?と思ってしまった私は、Studio Lifeの「死の泉」から脱却してない?

さて、ジャルジェ将軍の方は、オスカルの結婚話を決めていた。
それを聞いて大喜びのマロングラッセ。あまりに幸せそうなので、アンドレは、理由を聞こうとする。
嬉しそうに鼻歌を歌ってなかなか言わないマロングラッセ…このイラつくやり取りが、くどくなる絶妙のタイミングで話が進む辺りの、間はさすがだと思う。
マロングラッセは、孫を愛しているし、心配もしているが、とにかくオスカル至上主義そこがキッチリと見えているから、安心して見ることができる。
大和のアンドレは、この結婚話に慟哭する。大和がよくやる、わざと声を掠れさせるわざとらしさも、こういう時代がかった芝居には向いている。そういうテクニックと、心からの叫びがミックスして、大和のアンドレ像を立体的に見せる。大和のやりたい芝居と、制作側のやらせたい芝居が、ようやくリンクしたように思った。
しかも、ベルばらで。
これは、何かの奇跡かもしれない。
植田マジックなのだろうか
[exclamation&question]

衛兵隊ソングは、全ツ花組と同じ。ただし、プロローグ直後とかではないので、最初から大人数でやれる。
88期の蓮水ゆうやは、衛兵隊のセリフ多い一人、という感じ。逆裁組の二人は活躍していたので、ちょっと切ない。
衛兵隊の歌が終わるとアラン(北翔海莉)が登場する。アランは既にオスカルに心酔した状態。「昔は、隊長に逆らったりしてたよな」的話題が出てくる。
そこへブイエ将軍(一樹千尋)が登場する。今回、ブイエ将軍は、マリーズを養女に引き取るなど、いい人設定なので、厳しい言葉を吐きながらも、オスカルの手腕に感心している。衛兵隊は、みんなブイエ嫌いで、あからさまに態度に出しているのに、ブイエは、衛兵隊の纏まり具合に気づいて、オスカルを正当に評価している。
ブイエ将軍、上官の鑑のような人だ[exclamation×2]
アンドレはオスカルの従卒なのに、オスカルの側にいないで、ハートブレイク状態。それをアランが見咎め、アンドレをからかったので、二人の間に険悪な空気が生まれる。そのやり取りの中で、アンドレの目に異常があることが、アランにわかってしまう。
アンドレは、アランに事情を打ち明け、オスカルの側に居たいから、黙っていてくれ、と頼む。アランは、男気を出して、約束を交わす。

一方、ジェローデルからの結婚申し込みの件は、ジェローデル本人(十輝いりす)が、直接、オスカルに求婚の言葉を述べ、あっさりとオスカルに断られる。
「愛は、愛しい人の不幸せを望まないものだが…」から始まる、アンドレのために結婚をしないというオスカルのセリフはある。が、「受け取ってください、ただ一つの愛の証です、身を引きましょう」と言って、オスカルの手に口づけるジェローデルの見せ場はない。
ジェローデルという人物も、ここしか登場しない。
外伝シリーズを主役でスタートしたジェローデルは、とうとう、一場面キャラまで落ちてしまった。
でも、今回のベルばらは、主な登場人物を、一場面ずつ出していくので、ダイジェスト版としては、わかりやすい作りになっている。

視力が日々減退しているアンドレは、ジャルジェ家の階段の段数を数えている。オスカルの行くところをすべて把握し、失明してもそばにいたいと願うアンドレの努力。それがとうとうマロングラッセにばれてしまう。
が、マロングラッセは、アンドレを実の子のように思い、貴族だったらオスカルと結婚させてもよかった位に思っているジャルジェ将軍にばれることを恐れる。もし、失明を知ったら、どんな医者を呼んでも治そうとする将軍の優しさを分不相応と感じ、かわいい孫が失明していくにまかせる選択をする。
こんなところにも、身分ゆえの悲しみが見えて、深い。
大和がこんな深い演技を見せるようになったんだなぁ~と感慨深く観ていたが、もしかしたら、もっと早くベルばらをやらせるべきだったかも…。

アランが、出動前の歌を披露した後、パリ出動に向けての衛兵隊の場面となる。
ここは、全ツ花組でも同じ場面があり、どうしたって、一人いい軍服を着ているアンドレが主役にしか見えない、と苦言を書いたのだが、今回は、アンドレが主役だったので座りが良かった。
アンドレが、不自由な目であってもオスカルと一緒にパリに出動したい、という気持ちに素直に感動できる、いい場面になっていた。

なのだが…

女のオスカルが出動しなければならない理不尽さに我慢ならないマロングラッセ。
ジャルジェ将軍に直訴するが、仲の悪いブイエ将軍にお願いはできないと一蹴される。
そこで、マロングラッセは、アンドレに、こっそりブイエ将軍に直訴してくるようにと頼みこむ。

え…

もし、その直訴が認められたら、さっきの感動的な場面は…[あせあせ(飛び散る汗)]

一方、パリ出動前に、晩餐会に出席するために、美しいわっかのドレスのマリーズとお出かけ予定のブイエ。
そこへアンドレが現れ、マロングラッセの希望を伝えるが、ブイエは、そんなアンドレを諭す。そんなことをして、オスカルは喜ぶのか?オスカルなしで衛兵隊がまとまるのか?
返す言葉もないアンドレ。
ま、そんなことはどうでもいいのだ。この場面は、アンドレとマリーズの再会のための口実なんだから。
アンドレは、天咲だった時代の約束をちゃんと覚えていた。「忘れ雪」を観た身としては、このことに素直にホッとした。
が、アンドレの心はすでにオスカル以外の女性を受け入れる余地はなかった。子供の頃の思いを忘れずにそれだけのためにプロバンスから出てきた我が身を悲しく振り返るマリーズ。
つらい場面なのだが、同郷のよしみで、ついつい土佐弁が出るところが[バッド(下向き矢印)][爆弾]
アンドレは去り、マリーズのためなら信念を破ろうとするブイエに、マリーズは首を振る。
ブイエ将軍、せっかくかっこよかったのに、威厳なし[ふらふら]

革命の場面はツアーと同じ。
幕が開くとベルナールがセンターで踊る。
やがてアンドレと衛兵隊が現れ、ツアーでは市民の男が一人撃たれるところで、アンドレが撃たれる。
最後、瀕死のアンドレに三色旗を持たせるアランのポーズで幕が下りる。

マリーズは、訪ねてきたマロングラッセからアンドレが戦死したことを聞かされる。
愛するオスカルと共に戦死したと聞かされ、「それでもただの従卒として…」と言うマリーズに、マロングラッセは、衝撃の事実を伝える。

「いいえ、結ばれました。パリ出動の前夜に…」

なんで、知ってるんだよ[exclamation&question]
新婚初夜に不首尾だったことを母に告げるフランツもどん引きだったが、それでも一国の皇帝にとっては、夜の生活も国家行事かもしれない…と納得していた。
でも、いくらなんでも、孫がおばあちゃんにそんなことを言うなんて…[がく~(落胆した顔)]
しかも、自分だけ幸せになってマリーズに申し訳ないと言ってたらしい。

よけいなお世話じゃ[むかっ(怒り)]

貰った黄色いリボンをマリーズに返してほしいというのが、アンドレの遺言だったらしい。
それに対して、マリーズも、アンドレに貰った母の手作り巾着をマロングラッセに返すのだが、中のどんぐりだけは貰いたいと言う。
そのどんぐりを植えて、この庭に櫟の木を大切に育てたいという、マリーズのセリフに、思わず目頭が熱くなった。
なんだかわからないが、すごく変なキャラなのに、マリーズには感動した。
そして、そのマリーズの決めセリフ。
「アンドレ、少しも早くオスカルさまのところに!」
植田紳爾、ブラボー
[exclamation×2]

天国への階段を一歩ずつ踏みしめていくようなラストシーンは、雪組オスカル編のツアーのしょぼい背景が脳裏に焼き付いている身としては、シンプルだが、素敵な演出になっていると、素直に感動した。


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コメント 2

★とろりん★

>>「アンドレ、少しも早くオスカルさまのところに!」
>>植田紳爾、ブラボー!!

ほんま、ブラボー!!
やはりこの科白回しは植田先生の真骨頂なのですね…。
ショーのレポも楽しみにしてまーす♪
by ★とろりん★ (2009-02-13 08:35) 

夜野愉美

★とろりん★さま
今回、このセリフが最後まで出てこなくて、最後の最後に出てきた時には、痺れました。
子供の頃から、このセリフで育ってきたんだな~と、自分の原体験に触れた気分でした。
……ショーのレポ…忘れてた。終わった気になってました(爆)いやあ、出演者が違うだけで、全然印象変わらないんですよ、さすが中村Bです、よくも悪くも。
by 夜野愉美 (2009-02-13 10:56) 

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