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「演劇ドラフトグランプリ」 [┣演劇]

「演劇ドラフトグランプリ2023」


企画・プロデュース:荒牧慶彦
総合演出:植木豪


演劇ドラフト会議MC:赤平大


構成:堀裕介
音楽:田中マッシュ、HILOMU
映像演出:佐々木章介
照明:大波多秀起
音響:山口剛史
映像操作:荒川ヒロキ
衣裳:伊藤祥子
ヘアメイク:瀬戸口清香
演出助手:杉山恵
舞台監督:堀吉行、久保健一郎


総合司会:山寺宏一
ナビゲーター:鈴木拡樹
楽屋レポーター:高木俊
アシスタントレポーター:田中涼星
特別審査員&国歌独唱:中川晃教
審査員:中野博之(週刊少年ジャンプ編集長)、川窪慎太郎(週刊少年マガジン編集長)、大嶋一範(週刊少年サンデー編集長)、松山英生(週刊少年チャンピオン編集長)、熊井玲(ステージナタリー編集長)


昨年から開催されている「演劇ドラフトグランプリ」、今年はお誘いいただいて、武道館に行ってきました[exclamation×2]
「演劇ドラフト」じたいは、コロナ禍の頃、2.5次元俳優の間で【おあそび】レベルでやっていたのを見たことがあるので、アイデアは目新しいものではない。
この企画のすごいところは、忙しい2.5次元界の俳優たちに、12月5日の本番を頂点とする何日かの稽古期間と本番をあけさせて、ドラフトに臨むというところだ。引き受ける方は、このドラフトグランプリが、やがては紅白レベルの国民的行事になってくれないと、割に合わない。なぜなら、ドラフト時点では、作品も役柄もまったくわかっていない状態だからだ。そんなオファーってなかなかない。
プロデューサーの荒牧慶彦は、2.5次元というコンテンツの市民権のために、常に多大なリスクを背負って、様々な企画を世に出している。12月、実は、一番演劇業界が忙しい時期なので、この企画を通す努力はすごいだろうなと思う。
そんな荒牧に共鳴し、ドラフトに登場した5人の座長。彼らが選択した「俳優」「演出家」「演劇テーマ」、そして登場順のくじ引き結果がどのような影響を与えるのか、ワクワクドキドキ[揺れるハート]しつつ武道館へ入場した。


総合司会:山寺宏一、ナビゲーター:鈴木拡樹、国歌独唱:中川晃教っていうのも、すごくよい人選だったな。
鈴木は、プロデューサーとして多彩に業界を活性化させていく荒牧に対して(まっきーだけじゃなく、ACTORS LEAGUEの黒羽くんとかに対しても…)、自分は俳優+αの仕事しかできないけれど、必要な時は言ってくれれば協力するよ、みたいに必ず登場してくれるのが嬉しい。しかも、本当に素敵なお言葉の数々、人柄が伝わる~[もうやだ~(悲しい顔)]
あと、審査員が演劇雑誌の編集長は1名だけで、残りが少年誌の編集長というのがまた面白い。20分の武道館での演劇対決の判定は、少年漫画の連載会議のようなものなのかもしれない。そして、その編集長たちのご挨拶がすべて揮っていた。
「演劇を観る方ではないが、今年はジャンプ作品が多く舞台化されたので、年間16本観劇した。年内にもう1本残っている。呪いのやつが…」(ジャンプ編集長)
 「自分は「進撃の巨人」の担当をやっていて、舞台化の時も観劇している。今日、その時の出演者も出ているが、誰も挨拶には来なかった。挨拶があれば手心を加えたかもしれないがガチで行く」(マガジン編集長)
「総合司会の山寺さんとは、新入社員の時、コロコロコミック担当で、「おはスタ」に出ていて以来。懐かしいです」(サンデー編集長)
「先週金曜日に編集長の辞令を受けまして、今日が編集長としての初仕事です。よろしくお願いします」(チャンピオン編集長)
さすがすぎる…この編集長たちを納得させる芝居しなきゃならないんだな~[あせあせ(飛び散る汗)]
(かつて、「バクマン。」という作品を観て、少年誌で連載を勝ち取るのって奇跡の上に奇跡が重ならないとダメなのでは…[exclamation&question]と思ったっけ。)


ということで、以下、登場順に感想です。


「劇団びゅー」
座長:高野洸
メンバー:北川尚弥、高木トモユキ、古谷大和、松島勇之介
脚本・演出:松崎史也
演劇テーマ:天気
原案協力:古谷大和、高木トモユキ
脚本協力:上城友幸
音楽:Yu(vague)
演出助手:小林賢祐


衣装とメイクでしっかり、神話的世界観を作る一方、テーマの「天気」については、手元のiPadに映像を映し、それがプロジェクターにアップで映されることを見越して表現する…というのが、ジャンプ編集長さんもおっしゃってたけど、手練れだな~と思った。
アマテラスの天の岩戸隠れ付近のエピソードを描いているのだが、出演者のキャラクターがアニメ並みにハッキリしていたり、「うけい(誓約)」についても説明なく進行するけどちゃんとわかる!など、20分という制約ゆえに通常の演劇とは少し違うものを提供していたが、その中で、こちらの感情に訴えかけるものがしっかりあったのは、素晴らしかったと思う。
高野洸のスサノオを始め、俳優陣が、誰一人欠けても成り立たない、素晴らしい個性を見せてくれたのも良かったし、衣装やメイク、すべて手を抜かずに力を入れていて、20分でも総合芸術であることを見せつけたのも、素晴らしいと思った。高木トモユキは、さらったよね、客席を[黒ハート]


「劇団国士無双」
座長:染谷俊之
メンバー:糸川耀士郎、椎名鯛造、鳥越裕貴、長妻怜央
脚本・演出:中屋敷法仁
演劇テーマ:宝箱


クリスマス、サンタ、トナカイ、紛争中の国の子供…容赦なく勝ちを取りに来たな[爆弾]というのが、スタート直後の印象。子供たちの本当に欲しいものが出てくる宝の箱。そして、1年間本当にいい子でいないと、プレゼントがもらえない設定。そんなサンタの世界に疑問を持ち、紛争地域の少年に肩入れするサンタと、彼の身を案じてわざと厳しい言葉を掛ける仲間のサンタ。(案じてるってのは最後にわかる)
2頭の赤鼻のトナカイは、どちらも愛らしくサンタを補佐する。1年間必死に良い子で居続けた少年が欲したのは、自動小銃だった。サンタは身を挺して(本当は死なないけど)少年に銃を使うことの虚しさを知らせる。
少年が本当にほしいもの、それは「平和」であるべきなのだが、生まれた時から戦時下にある少年には「平和」がどういう状態なのか、正しく理解できはしないだろう。そういうことも考えさせられる作品だった。
ただ、若干、脚本(と脚本家の主張)が前面に出ている気がして、「演劇グランプリ」としては、役者が前面に出ているものを推したかったので、その部分が私的にはマイナスにはたらいた。
糸川耀士郎の芝居が良かったな~[ぴかぴか(新しい)]この少年の人生を長尺で観たいと思った。
椎名鯛造鳥越裕貴がかっつり組んだら、最強の「エンゲキ」が観られると思うのだが、敢えてのトナカイコンビ、敢えての…というのがツボだったし、長妻怜央の異質さをいい感じのスパイスにしているのもうまかった。


「劇団一番星」
座長:荒牧慶彦
メンバー:木津つばさ、高橋怜也、福澤侑、松井勇歩
脚本・演出:川尻恵太
演劇テーマ:アイドル
音楽:あらいふとし、ミヤジマジュン
振付:福澤侑


アイドルのステージ[exclamation&question]と思いきや、そこに踏み込んでくる刑事。
アイドルの影響力の大きさを恐れた国の手によって「アイドル禁止法」が成立、こっそりアイドルになろうとする若者は獄につながれてしまう。刑事の前で、必死にアイドルであることを隠そうとする4人。
しかし、刑事のオタ芸の前にとうとう耐え切れずアイドルであることを自白する4人。が、刑事は、4人の真摯な姿に、自らのアイドル願望に気づいてしまうのだった。
そんなわけで、メンバーが一人増え、伝説のアイドル、スターズと同じ5人組となった彼らの未来は明るい[exclamation&question]
刑事役の荒牧を加えたアイドルステージが、2番まであるフルコーラスで、これは演劇なのだろうか、寸劇+ライブなんじゃないか、みたいな印象を持った。
設定は面白かったので、もう少し、芝居部分でいろいろな展開を観たかった気がする。
あと、「ファンサを見せ」て客席を喜ばせるのはよいことだけど、それにここは武道館だったりもするけど、「演劇グランプリ」って言ってるんだから、それで票を稼ぐのは違うだろうと思った。
着替えNGにはギリギリ抵触しないとは思うものの、他の劇団がガチで着のみ着のまま演じていたこともあり、アイドル衣裳の着脱は気になった。
※伝説のStarS(井上芳雄・浦井健治・山崎育三郎)がいつの間にか5人組になっていて、あと二人は誰なんだろう[exclamation&question]と盛り上がったが、ここは城田優と加藤和樹を加えて5人組というのはいかがでしょうか。


「劇団品行方正」
座長:七海ひろき
メンバー:加藤大悟、唐橋充、後藤大、廣野凌大
脚本・演出:三浦香
演劇テーマ:待ち合わせ
音楽:TAKU
振付:YOU
演出助手:國重直也
振付助手:柳原華奈


一人の男が青年と謎の陣取り合戦を繰り広げている。この場所をキープしなかればならないらしい。
そんな不条理劇風のスタートから、上下日本代表ジャージ姿の唐橋が登場し、どうやら、ここで美女と待ち合わせらしいということが判明してくる。そんな風に少しずつ状況が明かされてくると、かつてシンクロ(現在はアーティスティックスイミング)で金メダルを取ったコンビが分裂し、片方は芸能活動をしている…みたいなことが分かってきて、でも本当は仲違いしたかったわけではなくて…みたいな展開になりつつ、結局二人は同じ女性に騙された国際ロマンス詐欺の被害者同士だったという、もうどこから突っ込んでいいかわからない、ハチャメチャ展開の物語。
結局のところ、三浦香さんは、七海ひろき×唐橋充のシンクロ演技(ダンス)が見たかったってことでFAでしょうか[exclamation&question](しかも歌唱:加藤大悟で)
(AS競技に男性デュエットは存在しないんですけどね)←まあ、こんなことも含めて、ちょっとこの作品はNOT FOR MEだったかも。好きな俳優さんばかりの座組ではありつつ、まとまりが悪いというか、色の違いを揃える(シンクロ)こともなく、違いをキャラ立てて演劇的に楽しめる方向でもなく…。
ただ、「愛のシンクロ」が名曲すぎ、振付が天才すぎて一瞬すべてを忘れそうになった。


「劇団恋のぼり」
座長:玉城裕規
メンバー:石川凌雅、小西詠斗、萩野崇、服部武雄
脚本・演出:私オム
演劇テーマ:初恋


演劇ドラフトにおいて、ベテラン枠俳優をどうポジショニングするかは、かなりキーになっていると思う。5人で演劇を作る…と考えた時、あえてそこにベテラン枠の俳優を突っ込まなくてもいいという考え方もある(国士無双・一番星)し、ベテランと思わせておいてあえて主役に使う(品行方正)考えもある。
「恋のぼり」は、主人公の大人になった姿(回想者)として、萩野を使った。これによって、設定は悲惨な沖縄戦であるものの、少なくとも登場人物全員が死亡するバッドエンドだけはないことが約束されていて、それがけっこうラストまでの私の耐久力につながった。
萩野以外の4人は没個性の衣装・髪形で、軍に奉仕する形で首里城地下に軍司令部を置くためのトンネル掘りをしている。そこで初恋の話をしたり、自分たちの名前に「城」の字がついている共通点を語ったり。没個性に見える4人の個性が、だんだん語らいの中で見えてくる丁寧な作りがいい。
そして、主人公が隣に住んでいる「玉城さん」(女子)に好きと言えない気持ちで悶々と悩んでいるところから、まさかの「降伏の白旗=鯉のぼり」という発想の大転換が大感動を呼ぶ。スローモーション風の演技と、萩野のナレーションが重なり、「この美声、ずるくない[exclamation&question]」と思ってしまった。
そこでまた、現在の萩野が少年時代の彼にリンクして、米軍に包囲された中、玉城さん(ここは布を被って玉城裕規が扮する)を助けに行くという展開が美しく、ほっこりとしてしまった。もちろん、戦争の悲惨さというのは十分に伝えつつ、局地的なほっこり感動展開というのは、ちゃんと作れるし、そこを両立できるのはすごいな…と思った。グランプリは本当に文句なく彼らのものだと思った。


戦争とか重いテーマでも大丈夫なんだ…というのは、先に「国士無双」があの作品をやっていたから思えたのだと思うし、あまりに「品行方正」が荒唐無稽すぎたから、ちゃんと演劇見たいな、と思ったところに出てきたというのも大きくて、登場順というのにも左右されたとは思う。
でも、今回は、「恋のぼり」のグランプリ、大納得でした。


演劇ドラフトグランプリ2.jpg


演劇ドラフトグランプリ.jpg


終演後の盛り上がり、雰囲気だけですが、ご覧ください。


 


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