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「オイディプス王」観劇 [┣大空ゆうひ]

「オイディプス王」


作:ソポクレス
翻訳:河合祥一郎


演出:石丸さち子


美術:土岐研一
照明:日下靖順
音響:清水麻理子
振付:平山素子
衣裳:前田文子
ヘアメイク:馮啓孝
演出助手:高野玲
舞台監督:小笠原幹夫


プロデューサー:栗原喜美子


制作:中村敦江、大島尚子、竹葉有紀
広報:高橋映子、中村敦江
東京公演票券:熊谷冴美


東京公演主催:パルテノン多摩共同事業体
兵庫公演主催:兵庫県、兵庫県立芸術文化センター


企画・製作:パルテノン多摩共同事業体


宝塚の専科公演でも観劇したことのある「オイディプス王」にゆうひさんが出演する。パルテノン多摩という、ギリシャ風味満載の場所で。
主演のオイディプス王は三浦涼介、王妃の弟、クレオンは新木宏典(改名。前芸名:荒木宏文)という、2.5次元でも活躍する美形の俳優たちが共演者。美の暴力が過ぎるやろ…ポスターの時点で声が出なかった。
しかも、過去の上演においてイオカステを演じた女優さんって、小川真由美、麻実れい、鳳蘭、土井ケイト、南果歩、黒木瞳、凪七瑠海など、美しいのはもちろん、それだけでない凄みを感じる方ばかり。
ここに混ざるのか…と思うと、胸アツ。


宝塚版では、「ここまでのお話」の説明があったが、原作にも、本作にもないので、少し補足しておく。
ギリシャ悲劇は、演劇コンクールのようなスタイルで発祥し、その優秀作が後世まで残っているが、多数の人から支持される作品にするために、題材は、当時の人々に膾炙されている伝承から取られていることが多い。なので、当時の観客にとっては、当然知られているエピソードだし、今も、知らない人の方が少ないネタかもしれないが、あれってこの話の前段なのか…と、あらためて納得される方もいるかもしれないので、蛇足ながら。


テーバイの街にスフィンクスという怪物が現れた。
ライオンの身体に、美しい人間の女性の顔、乳房を持つ胸部、鷲の翼を持つ。
スフィンクスは、人間に「朝は四本足、昼は二本足、夕に三本足。これは何か」という質問をし、相手が答えられないと食ってしまったという。そこに偶然現れた旅人のオイディプス(実はコリントスの王子)が、「答えは人間」と喝破し、スフィンクスを退治する。
その雄姿を見たテーバイの人々に懇願され、オイディプスは、テーバイの王になる。そのほんの少し前に、テーバイの王、ライオスは、デルポイの神殿に向かい、その途上で殺害されていた。
オイディプスは、王となり、前王の妃イオカステを妻に迎え、4人の子供に恵まれた。


この「前王の妃と結婚して王になる」という設定は、「ハムレット」のクローディアスを思い起こす。
実は、その「ハムレット」の設定について、本作の翻訳を担当した河合祥一郎先生に、質問したことがある。(河合先生もまた、シェイクスピア作品を多数翻訳されている。)30歳といわれるハムレットが、父の死後、即位できなかったのはなぜか。
先生の答えは、こういうものだった。基本的に王は男性が即位することになっていても、「王位継承権を持つ王女」という存在がある。その場合、その女性と結婚したものが王となり、共同統治をするのだと。(17世紀イギリスでは実際にメアリ二世というQueen Regnantがいて、夫のウィリアム三世と共同統治を行っていた。)
これを念頭に置いて観劇すると、たしかに、妃のイオカステは共同統治者であり、摂政となった弟・クリオンと一緒に、王家の人間でないオイディプスが王になることの調整弁として機能している。となれば、前王・ライオスもまた異邦人であったか、あるいは、親族の人間であったか。
ライオスは、息子によって殺されるという神託を受け、生まれた王子を殺すように命じる。当然、もう子供を持つことはない。その後継者問題を解決するために、イオカステの弟・クレオンが摂政となったのだろう。そう考えると、彼自身の心中は別にして、クレオンは将来の王として温存されていた存在であり、オイディプスが劇中、クレオンを疑うのも無理のないことだったのかもしれない。


舞台は、王の宮殿と、その前の広場。
天にまで続きそうな階段の中腹に宮殿の入り口がある。


オイディプス1.jpg


このイメージ。でも、もっとどこまでも続く階段。
そこにコロスが一人、また一人、と請願の枝を持って集まって来る。疫病の流行により、テーバイが存亡の危機に立っていた。コロスは、テーバイの市民の代表者たちという位置付けのようだ。
彼らが求めていたのは、王、オイディプスの言葉。
宮殿の扉が開き、オイディプス王(三浦涼介)が登場する。この扉は、ここから劇中、何度も開く。扉が開くと、中からの光で宮殿全体が、黄金のように輝く。照明の演出が素晴らしい。
オイディプス王は、市民の言葉(代表者:今井朋彦)を聞き、既に手は打ってあると告げる。摂政のクレオン(新木宏典)にアポロンの神託を聞きに行かせていたのだ。やがてアポロンの神託を携えて、クレオンが戻ってくる。アポロンは、前王ライオス殺害犯がテーバイでのうのうと暮らしているので、その犯人を処罰すれば災厄は去ると言っているらしい。
オイディプスは、自分がテーバイに来る前の事件であるため、どう手をつけるべきか、と悩む。クレオンは、予言者テイレシアス(浅野雅博)を呼んで、犯人を示してもらうのはどうか、と助言する。
ところがやってきた盲目の予言者は、なかなか言葉を発しない。オイディプスが暴力に訴えて、仕方なく口にしたのは、オイディプス自身が犯人であるという示唆だった。身に覚えのないオイディプスは激怒する。そもそも予言者を呼ぼうと進言したクレオンの策謀であるに違いない。王の座を狙ってのことだろう、と一方的に決めつける。
騒ぎを聞きつけて、宮殿の中から王妃イオカステ(大空ゆうひ)が現れる。
イオカステは、オイディプスの怒りを抑えるために、昔話をする。神託とはいかに当てにならないかということを説明するために。前王と自分の間には、実は男の子が一人いたが、その子はやがて父を殺すだろうという神託を聞いて、前王が殺すように命じた。そして前王は盗賊に殺された。だから、神託は当たらなかったのだ、と。
オイディプスは話を聞くうち、ディテールが気になってくる。王妃の話は、昔、自分が旅人だった頃に犯した殺人の記憶と妙にリンクするのだ。そこで、オイディプスは、王妃にその事件の唯一の生き残りである羊飼いを呼び出してほしいと頼む。
そんなところにコリントスの使者(吉見一豊)がやって来る。コリントスの王が亡くなったので、息子であるオイディプスに戻って国を治めてほしいという伝令だった。それを聞いて、オイディプスは一瞬、心が晴れる。父を殺し、母を娶るという神託を聞いて、恐ろしくなって出奔したが、父が死んだことで神託は外れた。しかし、まだ、母を娶るという神託が残っているので帰国できない…と言うと、使者は驚いて、あなたはあなたの生まれを知らないのですか?と、オイディプスに尋ねる。
そこへちょうど今は羊飼いになっている、前王殺害事件の生き残りの老人(外山誠二)が召し出されてくる。使者と羊飼いが語るオイディプスの生い立ちの話の途中、先にすべてに気づいてしまったイオカステは、これ以上知ってもいいことは何もない…と王に縋るが、オイディプスは真実を聞きたい、と王妃を退ける。王妃は、狂ったように宮殿に駆け込む。
そして、オイディプスは話を最後まで聞いてしまう。ライオス王とイオカステの子として生まれ、ライオス王をそれと知らずに殺害した自らの運命をー


イオカステは、オイディプスと結婚後、4人の子を産んでいることを考えると、オイディプスを産んだ時は、10代半ばくらいだったのかな。35歳くらいで、20歳のオイディプスと結婚、それから年子のように子を産めば、40歳くらいまでに4人の子を産んでいることも可能かな。
設定的に、なかなか考えづらい物語だけど、ゆうひさんのイオカステは、そんな物語にも、あり得たかも…という説得力があった。りょん(=三浦涼介)演じるオイディプスに対して寄り添う姿は、夫を立てているようで、実は、しっかり根っこを掴んでいるような、肝の据わったところが感じられる。それでいて、色気ムンムンで、現役感漂う見事な女王様。たぶん、色っぽさと、頼りなさを自在に使い分けて、オイディプスを骨抜きにしたんだろうな…などと想像してしまった。
ライオス王が亡くなった頃の風貌を髪に白いものが…と言っていたので、きっと、前の王とも逆の意味で年齢差カップルだったんだろうな。だから、イオカステが想像通り「王位継承権を持つ姫」だったとしても、その婿たるライオス王は、共同統治者としてイオカステを扱ってはくれなかっただろうし、可愛がるだけみたいな関係性だったのかも。オイディプスと結婚して初めて、イオカステは、妻であり女王であることを楽しめたのかもしれない。
そんな愛するオイディプスが実の息子だと気付いた時のイオカステの思いはいかばかりであったか。
ちょっとセリフを深読みすると、途中でオイディプスに話を聞かせないように、抵抗している。知らない方がいい、みたいなことを言って。オイディプスが最後まで聞かなければ、このまま知らない状態でやり過ごそうとしている感じがする。
もし、オイディプスがイオカステの言葉に従っていたら、このままオイディプスと結婚生活をつづけられたのだろうか。
いや、やはり知ってしまった以上、それはなさそう。自分一人の胸にすべてをしまって、やはり命を絶つつもりだったか。とすれば、あまりにも残酷な真実を知るのと、妻が突然謎の死を遂げるのと、どちらがオイディプスにとってマシだったのだろうか。
美しいイオカステの慟哭を見ながら、そんなことを考えて悶々とする日々ー


その他の出演者感想などは、また別記事で。


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