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新作歌舞伎「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」 [┣2.5次元系舞台]

伝統芸能の歌舞伎ですが、「2.5」ジャンルにしてみました。


新作歌舞伎
「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」


原案:「刀剣乱舞ONLINE]より(DMM GAMES/NITRO PLUS)
脚本:松岡亮
演出・振付:尾上菊之丞
演出:尾上松也


美術:前田剛
照明:高山晴彦
音楽:中井智弥
作曲(長唄):杵屋巳太郎
作曲(竹本):豊澤勝二郎
作調:尾上菊五郎劇団音楽部鳴物
音響:土屋美沙
立師:澤村國矢、中村獅一
衣裳:黒崎充宏
小道具:近藤真理子
床山:浅井和幸
演出助手:浅香哲哉
狂言作者:竹柴彰三
狂言方:渡部太郎
制作助手:小椋みどり


附打:佐々木英史
頭取:宮脇信治


製作:松竹株式会社


話題の新作歌舞伎「刀剣乱舞」観劇してきました。


コロナ下で演劇がシャットダウンしていた頃、暇を持て余していたことと、かいちゃんファンに誘われて(その頃、「舞台刀剣乱舞」にかいちゃんが出演することが発表されていた)、審神者(刀剣乱舞ONLINEのゲームをプレイする人)になったので、既に審神者3周年を超えた。あいかわらず、細々とゲームを続けている。
私はあまりゲームをしないし、ゲームに依存するタイプでもない。でも「刀剣乱舞」というコンテンツは好き…というか、刀ミュも刀ステも映像作品もすべてが好きだ。ただ、原作がオンラインゲームである以上、いつかは、サ終ということがあるかもしれない。
(あまりゲームをしないが、ゆうひさんが出演したゲームのおかげでサ終だけは経験があるのだ。)
しかし、歌舞伎という伝統芸能の世界にコンテンツが残れば、それだけは、終わらないかもしれない。(基本、ミュもステも原作ゲームに根幹を依拠している以上、サ終になれば、舞台は遠からず終わってしまうだろう。)登場する刀剣男士の面々が発表された時、その思いは確信に変わった。企画にも関わった、出演・演出の尾上松也は、歌舞伎の演目に馴染みのある刀剣を選んでいる。それは、この作品が古典になって生き残る可能性を示しているような気がしてならない。


そんな期待を大きく抱いて、新橋演舞場に向かった。
だいぶ早く到着したのだが、劇場にはもうたくさんの人が開場を待っていた。とりあえず、イヤホンガイドを借りて、開演を待つ。(お外でも売ってたんですね。)
開場したら、筋書(プログラム)を購入し、2階に上がってグッズ販売に並んで…歌舞伎というよりは、2.5次元舞台の開演を待つような気分。


物語は、いわゆる永禄の変に対する歴史改変を阻止するために出陣する刀剣男士たち…なのだが、そこに歌舞伎ならではの仕掛けがいくつもある。さらに、「新作歌舞伎」と銘打っているだけに、すべてがスタンダードな歌舞伎のままではない。たとえば、女性の演奏者をクローズアップするとか、歌舞伎以外の世界から出演者を選ぶとか、附打ちに合わせた殺陣が、だんだん剣劇のような殺陣に変わっていったり…。
これは、すごいものを作ったな…と思った。


冒頭、この本丸の審神者が声で登場するが、それは、中村獅童だった。
サンリオピューロランドといい、声の出演が多いな、獅童さん[わーい(嬉しい顔)]
とある本丸。(この本丸は、江戸時代にあるらしい。)時間遡行軍が永禄年間を狙っているという報告が入る。
永禄の変の歴史改変を狙っているだろうということは、誰でも察しがつくが、松永弾正(久秀)を殺害することによって足利義輝生存ルートを作るという「手段」まで想像するとは、なかなか察しのよすぎる本丸である。
(ミュ本丸なんか、敵の目的がわからず、伊達政宗の一生を見張るとか、そういう出陣、しょっちゅうしてますよね[あせあせ(飛び散る汗)]
あ、ちなみに、正史の永禄の変において、松永久秀は実行犯ではなく(これは間違いない)、真犯人でもない(つまり無関係)というのが通説。かといって、善人というわけでもなく、東大寺焼き討ちとかしちゃってるし、舞台で観る、忠臣・松永弾正(中村梅玉)は、だいぶイメージが違う。
刀剣男士出撃の前に、三条宗近(尾上松也)による、三日月宗近鍛刀のシーンが設けられている。この場面は、演奏チームの裃の家紋が「三日月の刀紋」になっていた。すごいな…
鍛刀の場面は、かつて、刀ミュで演じられた三日月宗近(黒羽麻璃央)と小狐丸(北園涼)による鍛刀の歌を思い出したりした[黒ハート]
こうして、至上の名刀、三日月宗近が誕生する。
セリ上がる三日月宗近(松也)。え、いつ、入れ替わったの[exclamation&question]歌舞伎やばい…[あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)]
一緒に出陣するメンバーは、小狐丸(尾上右近)、髭切(中村莟玉)、膝丸(上村吉太朗)、同田貫正国(中村鷹之資)、小烏丸(河合雪之丞)。同田貫以外は、歌舞伎作品にも登場歴があり、縁が深い。小狐丸などは、その誕生にまつわる演目があり、その風景を模したのが、前述の三日月と小狐丸の歌だったりするので、双方、リスペクトしてるんだな…と感じる。
各刀が語る由来(口上)は、ゲームとは少し違う。歌舞伎ファンにも納得できるよう、刀本来の由来だったり、歌舞伎の演目に寄せて語っている。おかげで、記憶喪失気味な髭切(莟玉)が、鬼の腕を切ったので「鬼切丸」の別名があるなんて言ってくれちゃって。源頼光の家臣(=渡辺綱)が一条戻り橋で鬼の腕(かいな)を切ったって…切られたのゆうひさんじゃん…[もうやだ~(悲しい顔)](トッププレお披露目作品・大江山花伝)
おあねえさまの腕、切っちゃったん[exclamation&question]莟玉丈は、梅丸くん時代に、「天守物語」でゆうひさんと共演し、富姫役のゆうひさんを「おあねえさま」と慕う、亀姫を演じてくれてたのです。)
そんな髭切・膝丸は、ゲームでも「源氏の重宝」と自ら名乗っているが、平家の重宝なのが、小烏丸。「紅葉狩」という演目に登場するのだとか。源氏も平家も仲良く出陣するのが、刀剣乱舞のよいところだ。
そして、刀剣男士を演じる出演者も、若手というだけでなく、バラエティに富んだメンバーだった。
松也は、歌舞伎の家に生まれたが、20歳の時に父・松助を失った。後ろ盾がなくなると厳しくなるのが歌舞伎の世界。以後、松也は、活躍の場を歌舞伎以外にも求め、ミュージカルや映像の世界に進出した。城田優・山崎育三郎とIMYを結成したり、今は、本業の歌舞伎でもそれ以外の世界でも大活躍している。
尾上右近は、歌舞伎俳優であり、清元の浄瑠璃方でもある。(兄の斎寿は清元の三味線方。)
なので、当然歌える。というわけで、ミュージカルにも出ている。
家柄的には、清元の家系で、歌舞伎俳優としては傍系なので、自分で掴みにいかないと…というところかな。
莟玉吉太朗は、ともに一般家庭の出身。
鷹之資は、名優中村富十郎の長男だが、晩年の子であったため、小学生の時に父をなくしている。さすがに富十郎の遺児を放置するような歌舞伎界ではないが、苦労もしているはず。
雪之丞は、国立劇場研修生の9期生。そこから、猿之助一門に入り、スーパー歌舞伎などで活躍したが(当時は、市川春猿)、現在は新派に籍を置いている。同時に移籍した喜多村緑郎(研修生同期)とコンビでの公演も数多くやっていたが、最近は、二人とも歌舞伎への出演が増えている。
みんな、いろいろあるけど、頑張っているのね…


さて、近江の国、志賀の里では、のちの足利義輝(尾上右近)と、その妹の紅梅姫(莟玉)が、手遊びに和歌を交換していた。そこへ、時間遡行軍が現れる。天袋から回転しながら出てくる辺りは、歌舞伎でもよくある曲者のパターンだが、ここでアクロバットや、ワイヤーアクションを見せるところが、今回の作品のちょっと違うところだ。
いわゆるアンサンブル的なポジションは、今回、歌舞伎の俳優さんではなく、アクションのできる一般の俳優(あるいはアクションに特化した俳優?)が演じている。彼らは、ところどころで歌舞伎由来の「トンボ」も見せるが、ちゃんと「トンボ」になっていて、すごいと思った。(トンボは、助走をつけないので、普通のアクション俳優にはかえって難しいと思う。)
時間遡行軍は、客席にも登場し、それを刀剣男士(諸般の事情により四振)がなぎ払う。
義輝は、刀剣男士達に名を聞き(三日月は、「宗近」とだけ答える)、家来になってほしいと頼むが、男士達は断り、その代わりに、義輝を見守り続けることを約束する。
そこへ、知らせが入り、義輝が室町幕府第十三代将軍となることが告げられる。
一方、異界の翁(澤村國矢)、異界の媼(市川蔦之介)がどこからともなく現れ、時間遡行軍と結託、洛北山中の「禍獣(わざわい)」の封印を解いて、その魔力によって若返り、そして、義輝に病の呪いをかける。
義輝は元服、その将軍宣下を祝い、ささやかな宴が催されている。
上手には、筝、十七絃、二十五絃などが並び、下手には鳴物。今回、女性琵琶奏者の長須与佳さんが、歌と琵琶演奏、そして尺八も演奏していて、え、なに[exclamation&question]女神[exclamation&question]と思った。ほかにも、何度か女性ボーカル(影ソロ)が聞こえたのが、歌舞伎としてはチャレンジな部分かな。
祝いの舞を舞う、右近莟玉の美しさ[ぴかぴか(新しい)]莟玉演じる紅梅姫は、ここでは赤姫の姿。可愛いよ~[揺れるハート]
刀剣男士四振もお祝いに駆け付け、それぞれ一節舞う。それぞれの扇が、刀紋入りの扇で、とても美しかった。三日月は優雅、膝丸は豪快、同田貫は勇壮、そして小烏丸は妖艶だった。
華やかな場面だったが、揃って花道を引っ込む時には、既に義輝は病を発症している。
二幕は、既に病が重くなった義輝のところに、弾正の息子、松永久直(鷹之資) が見舞いに訪れるところから始まる。義輝は、紫の鉢巻をしている(病気の印)だけでなく、顔半分がファントム状態になっている。(宝塚ファンならわかると思う…)
そこへ、人気の祈祷師、果心居士(國矢)が現れ、祈祷を始めると、義輝のファントム痣がぽろっと取れる。これですっかり義輝は果心居士に心酔してしまう。でも果心居士は、異界の翁が禍獣の力によって変身した姿で、彼自身が義輝を呪っていたのだから、自らの力で術を解いただけ。そりゃ効くだろう…[ちっ(怒った顔)]果心居士は、さらに、このように心身が耗弱してしまったのは、義輝の生真面目な性格のせいで、かくなる上は、女性を近づけると良いと言い、雲居姫(蔦之介)の幻を見せる。
さて、一方、紅梅姫。彼女は、一目見て以来、宗近を恋い慕っていた。
夜の庭で宗近を待ち、恋の和歌を渡そうとするが、宗近は、あっさりと「あきらめてください」と断る。紅梅姫は、つれない宗近を恨みながら去る。
一人、佇む宗近のもとに、刀剣男士たちが、次々と集結する。時々、小狐丸と髭切が出てこないという、お約束のネタも交え、軽口も出てきたりするこの場面、髭切(早替え、お疲れ様です[exclamation])の弟の名前を忘れているネタも登場、ショックを受ける膝丸のリアクションも含め、審神者の心をガッツリと掴んでくれた。
一幕のラストは、ちゃんと刀剣男士六振で締めてくれ、気分良く休憩時間になった。


いやー、最高じゃないですか[exclamation×2]
(別記事へ続く)


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