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「storyA 大悲 31mm」観劇 [┣演劇]

舞台「大悲」[story A 大悲 31mm ]


脚本・演出:西森英行
音楽:遠藤浩二
舞台監督:筒井昭善
舞台美術:松本わかこ
照明:川口 丞((有)キングビスケット)
音響:天野高志
映像:富田中理(Selfimage Produkts)
衣装:鈴木真育
ヘアメイク:工藤聡美 
演出助手:きまたまき
宣伝美術・写真:古田 亘(ゴーグル) 
題字:丹羽文雄
プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ(BS-TBS)
主催・企画・制作:BS-TBS、オデッセー


2001年6月8日、白昼の小学校に一人の男が乗り込み、児童8名を刺殺、15人の児童・教師に重軽傷を負わせた。 日本犯罪史上空前の無差別殺傷事件に世間は震撼した。
[story A 大悲 31mm ] 弁護士・新谷重雄(西村まさ彦)は、事件の犯人・佐久間護(玉城裕規)の国選弁護人を依頼される。妻・和江(久世星佳)は強く反対するが、結局、家訓に従い、新谷は弁護を引き受ける。
これだけの犯罪となると、死刑はほぼ免れない。免れるとしたら、犯行時に心神耗弱状態であったことを証明しなければならない。が、佐久間は、新谷に反抗的で、死刑になりたいと言い、法廷でも被害者遺族を挑発するような態度を続けている。
新谷は、真実が明らかにならないまま、佐久間を死刑にしてはならない、との思いを胸に、不毛とも思える弁護を続けるのだった。


2001年ー
21世紀の始まったこの年といえば、日本国内では、この池田小事件、世界的には、アメリカの同時多発テロ事件を思い出す。ちょうど、ゆうひさんが初めてのDS「Selfish…」を開催したのが、7月。その時、具体的な事件名は挙げなかったが、池田小の犠牲になった子供たちのことに言及していて、幸せなDSの中、「あ…」と、事件のことをあらためて考えた瞬間があったことをハッキリと憶えている。


この舞台では、学校名は石田小学校、犯人の名前は佐久間護(実際は宅間守)…と、かなり近いが一応仮名のスタンスを採っている。この近さは、池田小の事件をモチーフにあらたに創作したのではなく、この事件とは何だったのか、そして、関係者の心にどんな傷を残したのか…ということを、できるだけ生の形で提示しようとしたから…かもしれない。


そして、本作は、事件を「A 大悲 31mm」と「B 大悲 37m」の2作で表現しようとしている。
Aは、事件後、弁護人という形でこの事件に対峙することになった新谷を主人公とする物語だ。(Bは、事件で犠牲となった一人の少女の家族の物語。)
新谷は、何度も被告の面会に行く。面会室の二人を隔てる壁の厚さは31mm、その3センチの壁は、実際の壁の厚み以上に、被告と弁護人、被告と世界を隔てている。死刑になるとしても、なぜ8人の罪のない子供たちが殺されてしまったか、その真相究明と、被告から謝罪の言葉を引き出すこと、それが、弁護士としての義務だと新谷は思っていた。
しかし、佐久間は、法廷で奇行を繰り返し、遺族を愚弄し、金持ちの子供たちだから殺してやったと言って挑発する。佐久間は親の愛を知らずに育ち、大人になって結婚もしたが、今は妻から絶縁され、よりを戻す希望も失われていた。
それが免罪符になるわけではないが、自分を大切にできない人は、他人の命の大切さも分からないことがある。死刑が刑罰になるのは、それを失いたくない相手に対して…であって、自分の命にも他人の命にも何の意味も持っていない相手を死刑にするのは、刑とはいえない。
そして、そんな悪魔の様な男を弁護しているだけで、新谷もまた人非人のように言われ、世間の攻撃の対象になる。その一方で、佐久間と獄中結婚をしようとする「死刑廃止運動家」が現れ、彼との交流について一生懸命に語る。彼女の口からは、被害者への視点が完全に抜けているのだが、それは彼女のやっている運動上仕方がない。しかし、余裕を失くしている新谷は、その女性を怒鳴りつけてしまう。


何から何まで貧乏くじを引いているような、それでも一生懸命な新谷を、西村が誠実に演じている。
妻の和江とは、「しげおさん」「かずえさん」と呼び合っていて、それが、沁みる。和江役の久世は、家族のことを考えて最初は反対するものの、夫の決断は、尊重する。いい距離感の夫婦だな~と思って眺めていた。
最後に、被害者の母親の一人、清水(壮一帆)が、彼を罵倒したことを詫び、その尽力に感謝する場面が、唯一の救いとなった。でも、の声のトーンがめっちゃ低くて、激怖かったけど…[あせあせ(飛び散る汗)]
佐久間役の玉城は、ついこの間、だんだん狂っていく羽柴秀勝役を印象的に演じた(「錆色のアーマ」)が、また、このような役で一カ月もしない間にお目にかかれるとは…[あせあせ(飛び散る汗)]てか、すこい精神力[exclamation×2]何を考えているのか分からない佐久間という男を、ものすごいエネルギーで演じ切っていた。佐久間なくしては、この舞台は成立しない。この難しい作品に挑戦し、佐久間を体現した玉城には、感服しかない。


当初、久世の出演しているこの舞台だけを観るつもりだったが、出演者の芝居に胸を動かされ、急遽、「storyB」も観劇することにした。その感想は、また別記事で。


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