SSブログ

「BACKBEAT」観劇 [┣演劇]

「BACKBEAT」


作:イアン・ソフトリー、スティーヴン・ジェフリーズ
翻訳・演出:石丸さち子
音楽:森大輔
振付:三井聡 
美術:伊藤雅子 
照明:吉川ひろ子 
音響:山本浩一
衣裳:前田文子 
ヘアメイク:鎌田直樹 
演出助手:伊達紀行 
舞台監督:山本圭太
音楽監督補:磯貝サイモン
ドラム指導:赤迫翔太 
楽器:岸拓央、塩屋高嗣
舞台製作:クリエイティブ・アート・スィンク 加賀谷吉之輔
宣伝美術:永瀬祐一 
宣伝写真:西村淳
宣伝衣裳:関けいこ 
宣伝ヘアメイク:奥山信次、国府田雅子、chiyo
協力:ザ・ビートルズ・クラブ 
版権コーディネート:シアターライツ 
演奏利用許諾:日本音楽著作権協会
宣伝:ディップス・プラネット 
票券:インタースペース
制作:伊藤夏恵、竹葉有紀 
プロデューサー:江口剛史


5人目のビートルズの物語を観に行ってきました。


ビートルズ(THE BEATLES)は、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの4人組のバンドだと、みんな思っている。でも、5人目のビートルズと呼ばれた男がいたんだよ…という物語は、この作品だけではない。デビュー直前にメンバーから外されたピート・ベストこそ5人目のビートルズだという意見もあるし、ビートルズを世界的なスターに押し上げたマネージャーのブライアン・エプスタインが5人目のビートルズなのだ、というドラマもあった。
今回の5人目のビートルズは、彼らのデビュー前、まだ10代だった頃に、ベースを弾いていたスチュアート・サトクリフにスポットを当てている。当時のビートルズは、本当に5人組のバンドだった。彼らは、リバプールで出会い、ドイツのハンブルクのショーパブで1日6時間という過酷な演奏を続け、にもかかわらず、最年少のジョージが17歳だということがバレて強制送還される。
このハンブルクでの日々、サトクリフは、アストリッドという女性と恋に落ち、彼女の存在と芸術への情熱が、図らずも、彼をバンド活動から遠ざけていく。サトクリフをバンドに入れ、誰よりもサトクリフを愛したジョン・レノンのショックは大きかった。しかも、そのサトクリフ、ビートルズのメジャーデビュー直前に若くして急死しているのだ。
サトクリフの脱退は、ポール・マッカートニーには朗報だった。レノンの関心を惹くには、サトクリフが邪魔だった。自分の方が音楽性ではレノンと通じているのに、サトクリフがいる限り、レノンは自分を振りむいてくれないから。でも、これから数年後、レノンもまたオノヨーコという女性と恋に落ち、彼女の存在とアートへの興味が、彼をビートルズとマッカートニーから遠ざけていくのよね。歴史は繰り返す。そして、さらに十数年後、凶弾に斃れてしまうし。


有名グループのバックステージものは、フォーシーズンズを描いた『ジャージーボーイズ』が有名だが、あの作品は、彼らのグループ名に因んで、彼らのグループとしての活躍を春夏秋冬の4つの時代に分けて描いている。
今回の「BACKBEAT」は、季節でいったら、初夏で終わるような物語。ビートルズとしては、これから大成していく、その前に、舞台は終わる。
フォーシーズンズのヒット曲をこれでもか、聴かせまくる「ジャージーボーイズ」に対して、オリジナルソングだけで勝負させてもらえない時代を描いているため、ビートルズのヒット曲をガンガン聴かせるミュージカルにはなっていない。「ジョニー・B・グッド」とか、「マイ・ボニー」を演奏しているビートルズというのも、楽しかったけど。(本当にトニー・シェリダンのバックバンドとして「マイ・ボニー」を歌っていたそうです。)
私はビートルズ世代ではなく、ちょっと早めにラジオっ子になり、ちょっと早めに卒業してしまったので、洋楽は、同世代よりちょっとお姉さんが好きなクイーンなどがリアルタイムだった。その時代って、ポール・マッカートニーはウィングスというバンドをやっていたし、ジョン・レノンは、奥さんがオノヨーコだった関係で、日本によく来ていて、ラジオで目撃情報を聞いたりしていた。ビートルズの音楽は、当時全盛期だったカーペンターズを通して知ったような気がする。(両方を聴き比べて、「ヘルプ!」はビートルズが好きだけど、「ミスター・ポストマン」はカーペンターズの方が好きだな~なんて思っていた記憶がある。)ビートルズが天才だな~と思い始めたのは、21世紀になっても色褪せないどころか、むしろ、今聴いた方が刺さる[exclamation]と気づいてから…。だから、10年前にこの企画があっても観に行かなかったかもしれない。
私の中では、そういう意味で、とてもグッドタイミングな上演でした[るんるん]
そういえば、男性出演者は、特に髪を染めたりしてなかったけど、ビートルズのメンバーって髪の色は何色なんだっけ[exclamation&question]と、劇中考えた。それくらいビートルズの資料って、白黒のイメージがある。リアルタイムじゃないせいかな…。ビートルズとクイーンの間に世の中がカラーになったのかしらん…[目]


では、出演者感想。


戸塚祥太(スチュアート・サトクリフ)…パントマイムでよく出てくる「ない壁とか鏡を触る」演技がうますぎる[目]と驚いたオープニングから、スチューの人生を駆け抜けていた。
そもそもスチューは、音楽に興味がなく、ジョン・レノンに誘われて、ほぼ強制的にバンドのベースに就任した。なのに、過酷なハンブルクでの生活にもめげず、頑張ったと思う。
ちなみにビートルズというバンド名は、スチューの命名とか。虫の名前(Beetleはカブトムシ)が当時は流行っていたらしい。BEATLESと、中に「BEAT」を入れ、バンドらしいダブルミーニングになっている。センスもいいみたい。
いつの間にか、音楽と絵画の両立がスチューの人生にとって当たり前のことになっていくが、やがてどちらかを選択しなければならない時が来る。
もしバンドを選んでいたら、彼は若くして死ぬことはなかったのだろうか。
なにか、そういう運命が似合う俳優だな…と思った。


加藤和樹(ジョン・レノン)…加藤和樹とジョン・レノンの共通点が見当たらない…と思ってしまうくらいには、私はジョン・レノンを覚えていて、加藤和樹が好きなんだと思う。あ…共通点…なんか、わりと、フルネームで呼んでしまうところか[exclamation&question]
私の中のジョン・レノンは、ビートルズ解散後の、髪をのばして丸眼鏡をかけた、あのジョンなので…すごいとんがってるレノンを想像するのは難しい。若い頃は、あんな感じだったのかな[exclamation&question]
「顔がいい」=女の子の支持を集めそう…というだけの理由で、ジョンは、スチューをバンドに誘う。絵画にしか興味がなく、ベースのコードすら知らなかったのに。そして、常に強引に彼の人生に割り込む。スチューに恋人ができてからの物語は、スチューを挟んでの三角関係かと思うほど…。
乱暴者で熱くてスチューが好きすぎるジョンを全身で表現し、声の限りに歌い続ける加藤和樹は、(ライブに行かない)私にとってすごく新鮮で、すごく得した気分。
圧巻は、スチューの死後、彼の葬儀に訪れた場面の慟哭。場面自体もすごくよかったが、観ているこちらも、胸をえぐられるような気持ちになった。
ここまで書いておいてなんですが、この座組で和樹がジョン・レノンなのは、石丸さんの拘りとしか思えない。ジャニーズの人達がカッコよく見えないスタイルは、はたして必要だったのだろうか[exclamation&question]


上口耕平(ピート・ベスト)…いや、もうね、素晴らしい存在感。
ビートルズの歴史には疎いが、ビートルズの各メンバーの名前は知っているから、ドラムのピートについては、どこかの段階で離脱するメンバーだと分かって観ている。途中、何度も、リンゴ・スターの名前は出てきて、早い段階から目を付けられてたんだな~と理解。じゃあ、どこで入れ替わるのかな…と思ったら、デビュー直前とか…そりゃないわ…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
「キミがいるとメジャーデビューさせられない。一人だけ辞めてほしい」って、バンドものマンガやドラマの定番ネタだと思っていたが、まさか、過去の実例に根ざしていたのか[あせあせ(飛び散る汗)]
この作品でのピートは、かなりの自信家。ビートルズを本当に支えているのは、自分だと確信している。なのに、この仕打ち…定説では、ピートが外されるにはそれなりの理由があった(そんなに演奏がうまくない&ライブの参加率が低い)が、それらは、この作品ではスチューのキャラになっているため、ピート、なぜ[exclamation&question]と思ってしまった。
クビを宣告された後のドラムソロに込めた、怒りと悲しみ…にもかかわらず、スチューの葬儀に現れ、メンバーと悲しみを共有する人間の大きさに惚れてしまった。最後まで、ロッカーを貫いたヘアスタイルもステキでした[黒ハート]


JUON(ポール・マッカートニー)…本作では、ポールとジョージはニコイチな感じで、それほど描かれていないが、それでも当時のビートルズが、既にジョンとポールのバンドと認識されていたというくだりは出てくる。また、スチューの脱退について、ポールだけが明確に歓迎の意志を表明している。
オレはジョンにぞっこんなのに、才能的にもオレとジョンのコンビは無敵なのに、ジョンは、スチューしか見てないんだぜ[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
という、ポールの嘆きを聞きながら、罪な男だぜ、ジョン・レノン…と思った。
オノヨーコとの交際がビートルズ解散の引き金というのも、納得できるエピソードだった。


辰巳雄大(ジョージ・ハリスン)…ハンブルクで、徐々に人気バンドになりつつあったビートルズが強制送還されるキッカケは、ジョージが17歳でまだ労働年齢に達していなかったこと。そういう末っ子キャラな部分は理解したけど、それほど大きな役ではないのかな…という感じ。


夏子(アストリッド)…スチューの恋人。最初にビートルズのファンになったっぽいクラウス(西川大貴)の恋人だったはずが、気がついたら、スチューの恋人に。写真家で、彼女の写真が初期のビートルズの宣伝写真などに使われていたらしい。まだあまり演技経験がないのかな…という感じ。でも、ひんやりとした美貌が作品に似合っていたと思う。
ラストシーンの衣装は、それほど似合っていると言い難い。あの衣装はめちゃくちゃ痩せている人でないと着こなせないと思う。演出家、女性なんだから、もっと気づいてあげてほしいと思った。


鈴木壮麻(トニー・シェリダン/ブライアン・ウェブスタインほか)…ちょっともったいない使われ方かな…と思ったが、トニー・シェリダンの歌唱は見事だったし、ウェブスタインは、めちゃくちゃ芝居を〆ていた。


尾藤イサオ(ブルーノ・コシュミダー/医師)…ロカビリーを実体験したキャストを起用したのは、すごくいいと思った。あの時代の雰囲気を伝えることができる。そして、歌が、まさにあの時代。感激しました[黒ハート]尾藤さん、ビートルズの武道館公演にも出演されていたしねー[黒ハート]


鍛冶直人(ベルト・ケンプフェルトほか)…ビートルズを見出した一人なんだけど、それより、前半の水夫に全部持ってかれた…[わーい(嬉しい顔)]すごく、すごく楽しんでたよね[わーい(嬉しい顔)][わーい(嬉しい顔)]
しかし、なんで鍛冶さんが出てるのかな[exclamation&question]と思ったけど、石丸さんご指名なのかも。


西川大貴(クラウス・フォアマン/リンゴ・スター)…クラウス…恋人を取られたのに、全然スチューを責めないし、それからもビートルズとアストリッドに変わらぬ態度で接して…神なんじゃないか、と思う。(その後、ビートルズをやめたジョンのバンドにミュージシャンとして参加したんだとか。ほんとにビートルズが好きだったんだね…)
リンゴ・スターは、マッシュルームカットがよく似合ってて可愛かった[かわいい]


結局のところ、ジョン・レノンは、スチュアート・サトクリフを愛していたんだよね、ということを2時間かけて聞かされたような時間だったが、それはそれで楽しかった。
また、そういえば、この芝居紅一点なんだよね…と途中で気づき、ということは…と、ハンブルクでの若き日、演奏の合間にグルーピーとお愉しみだったジョンとスチューのアレ、男性キャストかいっ[exclamation]と色めき立った私は、まだ現役の腐女子だったみたいです。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。