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宝塚星組東京公演「ベルリン、わが愛」観劇 [┣宝塚観劇]

ミュージカル
「ベルリン、わが愛」


作・演出:原田諒
作曲・編曲:玉麻尚一
音楽指揮:清川知己
振付:麻咲梨乃、AYAKO
装置:松井るみ
衣装:有村淳
照明:勝柴次朗
音響:大坪正仁
小道具:三好佑磨
歌唱指導:山口正義
映像:栗山聡之
演出助手:栗田優香
衣装補:加藤真美
舞台進行:久松万奈美、香取克英
協力:株式会社シネヴィス


夜野の天敵、原田先生の作品。今回もナチスの無神経な使い方や、歴史を結果からしか見ない中二脳に怒り心頭[むかっ(怒り)]どうして評判のよかったショー作家に転身しないのか、ほんと、迷惑この上ない。


初っ端、ドイツの映画会社UFA(ウーファ)の超大作『メトロポリス』(1927)の映像が流れる。…1927年と聞いただけで気分が悪くなる[むかっ(怒り)](「華やかなりし日々」の舞台は1927年のNY。)
この映画、100年後の未来を舞台にしたディストピア映画で、この製作費が原因でUFAが倒産したと噂される超大作。(ただ、史実としては、ドイツより前にアメリカでも公開されているし、必ずしも失敗作と認定されているわけではないようだ。)
一応、この舞台では、この映画を“金食い虫の失敗作”と認定しているようだ。でも…映画のフィルムまで借りておいて、ずいぶん失礼な話だ[むかっ(怒り)]Disるんなら、架空の映画でも、架空の映画会社でもよくない[exclamation&question]


その映画の監督フリッツ・ラングをはじめとして、作家エーリッヒ・ケストナー、後のナチス宣伝相ゲッペルス、ジョセフィン・ベイカーなど著名人も多数登場するこの作品だが、その人を使う理由…ある[exclamation&question]くらいの薄さだったりする。
この辺りは原田先生あるあるとして放置するとしても、ケストナーが絵本作家だなんて聞いたことないし。(ケストナーはたしかに児童文学作品を多く書いていて、その本はそれゆえに挿絵が入っていたが、そういうものを“絵本”とは呼ばない。)
歴史上の人物を使う時は、せめて、その人へのリスペクトは持って使ってほしいと思う。
絵本作家の件もそうだが、ケストナーは、生涯を共に暮らしたルイーゼロッテと、結婚していない。そこには、ケストナーあるいはルイーゼロッテの事情なり考えがあったと思う。恋愛を描く芝居は、宝塚には不可欠だが、そういう実在のカップルに敢えて舞台上でプロポーズのシーンを作るというのは、全然リスペクトのかけらも感じられない態度じゃないかな。


そして、この物語は1927年からスタートする。
この年、『メトロポリス』の失敗の穴を埋める作品として、主人公のテオ(紅ゆずる)がトーキー映画を製作することになる。
その映画、『忘れじの恋』の公開は翌年くらいだろうか。そこで、映画好きのゲッペルス(凪七瑠海)が、小さな役で出演していたジル(綺咲愛里)を見初める。
でも…ナチスがドイツの第1党として政権を掌握するのは、1933年なんだよね…
反ユダヤが国是となったのは、当然それ以降なわけで、1928年の段階では、ヒトラー自身は反ユダヤをスローガンにしていたけど、政権政党にならない限りは、政策は実行できない。一部のユダヤ人が危機感を感じて亡命を始めたのも、ナチスが政権を取った1933年以降になる。
原田先生は、デビュー作『Je Chante』でも、政権掌握前のナチスドイツが、フランスでユダヤ人弾圧をする…とか恐ろしいことを書いているが、さすがのナチスも、そんなことはしていない。
ナチスドイツを書いておけば、単純に悪と認定出来て楽だと思っているかもしれないが、バウホールデビュー作から、全然その姿勢が変わっていないとは[むかっ(怒り)]
歴史上の事件も、人物も、自分の都合で動かし、その人を描こうとか、その人の人生を知ってもらおうとかいう意識がまったくない。そこが8年近く経っても全く変わらない。この人にドラマを書いてほしくない気持ちは募るばかりだ[ちっ(怒った顔)]


というわけで、不快モード全開で観劇し続けたものの…出演者には罪はないよね…
以下、出演者感想を書いて、気分を紛らわせたいと思います。


紅ゆずる(テオ・ヴェーグマン)…ドイツの映画会社UFAで助監督をしていたが、『メトロポリス』の赤字を埋める低予算映画の監督に立候補し、映画監督デビューすることになる。
明るく元気で前向きな青年役が、それほど似合う気がしなかった。の本来のキャラクターからすれば適役なはずなのに。やはり、台詞に実がないせいだろうか。あと、この公演では、台詞回しもすごく気になった。


綺咲愛里(ジル・クライン)…ネルゾン劇場のレビューガールだったが、映画女優に立候補した同僚のレーニに誘われ、映画女優の道を歩むことに。最初は小さな役だったが、そこで頭角を現し、UFAを代表する女優に。しかしユダヤ人の血を引いていることが問題になり…という風に物語は進んでいく。
ネルゾン劇場のジョセフィン・ベーカーのショーでは、端の方で踊っていたのがリアルだったが、あの出し方では、そこに綺咲がいるのがわからない。(何回か観ると、最初から探すのでもちろん大丈夫だが)
ヒロインの出し方について、演出家にはマジで考えてほしい。ライティングとか、なにかドジるとか、なんかあるでしょう[exclamation&question]トップ娘役は、それなりにファンもいるのだから、ちゃんと客席に配慮してほしい。
デビュー後は、そりゃすぐに頭角を現すでしょう[exclamation]と納得できる美貌。好演だった。でも、前回も女優役だったよね…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]


礼真琴(エーリッヒ・ケストナー)…絵本作家(本作ではそういうことになっている)で、テオの親友。テオの処女作の脚本を担当する。カフェのウェイトレスをしているルイーゼロッテと恋仲。
すごく魅力的な青年。しかし、終わって家に帰ると、彼の役割ってなんだっけ[exclamation&question]と思ってしまった。それは、のせいじゃないけど、ケストナーの無駄遣い、そして、礼真琴の無駄遣い感が強い。爽やか好青年がニンに合っていて、ステキだったことは、もちろんなのだけど。


凪七瑠海(ヨーゼフ・ゲッペルス)…ナチスの全国宣伝指導者で映画愛好家、だそうです。やはり、まだ、宣伝相ではない時代の話らしい。恐妻家のせいか、可憐な美人が好みのタイプらしい。ジルに対しては権力ずくで我がものとしようとするが、拒絶され、彼女の出自(ユダヤ人)をネタに、UFAに対するいやがらせを始める。
ありがちなステレオタイプの悪役だが、二枚目の凪七が演じると、あまり説得力がない。ジルに固執しなくても、女なんてよりどりみどりだろうと思っちゃうからかな。それでもジルに拘る…みたいな、偏執狂的な部分を宝塚の二枚目男役に求めるのって、どうなんだろうか。
凪七がどんな役でも誠実に取り組もうとしているだけに、どうも…ね。


壱城あずさ(アルフレート・フーゲンベルク)…ナチス寄りの大実業家。赤字がかさんだUFAを買収する。
色好みで、ユダヤ人への偏見バリバリ。ゲッペルスを出さずにフーゲンベルクをラスボスにする手もあったんじゃないか、というか、私ならそうする。
まあ、そうしたら、壱城には回っていないんだろうけど。
見事にアーリア人で、見事にイケメンで、見事に悪かったです[黒ハート]


七海ひろき(ニコラス・カウフマン)…UFAのプロデューサー。まったく書き込まれていない人物。それを、数字と人情の間で葛藤する人物、映画関係者への愛に溢れる、温かい、血の通った人物に作り上げた七海の造形力に、感服した。
とはいえ、芝居の好きな人に、芝居をさせてやれよ[ちっ(怒った顔)]と、思ってしまった[むかっ(怒り)]


天寿光希(ヴィクトール・ライマン)…サイレント映画のベテラン俳優。テオたちの溜まり場、カフェ・フリードリヒスホーフに若い頃、日参していて、現在は女将をやっているゲルダ(万里柚美)とはいい仲だったらしい。最初はテオの映画への協力を断るが、第2作である「ビスマルクよ永遠に」には、ビスマルク役で出演することを快諾する。
ゲルダとの場面がけっこうな尺を取っている辺り、原田先生は天寿という役者をお気に入りなんだと思う。そして、天寿は、ちゃんと期待に応える実力を持っている。全編を通して、この場面だけは、納得できる名シーンだった。


音波みのり(レーニ・リーフェンシュタール)…ネルゾン劇場の踊り子の一人。テオが来た時にしっかり自分を売り込んで、「忘れじの恋」のヒロインを射止める。しかし、人の意見に耳を貸さない姿勢が災いして、1シーンだけの出演だったジルに話題をさらわれる。それをテオの依怙贔屓と決めつけて騒ぎを起こした上、フーゲンベルクの愛人に収まって、ジルの出自を彼にばらしてしまう。
頭の弱そうな、底意地の悪そうな、ステレオタイプの金髪美女を、これでもか[exclamation]と見せつけつつ、娘役の矜持を守り抜く姿に、ほろっとしてしまった。音波なら、腹芸でレーニのキャラを演じることもできただろうに、演出指示なのかな…という不満は残ったけど、振り切る力も素晴らしかったです[ぴかぴか(新しい)]


夏樹れい(ジョセフィン・ベイカー)…有名なレビュー歌手。これまでも宝塚の芝居には数々登場してきた魅力的なスター。本当に素敵だったが、これがサヨナラの男役に当てる役だったんだろうか…というのは少し思った。もちろん、目立つ役なので本人は嬉しかったと思うけど、ファンの方が複雑だったのでは…という気がした。
そして、あんまりジョセフィン・ベイカーを出す意味を感じない…[爆弾][爆弾][爆弾]


瀬央ゆりあ(ロルフ・シェレンベルク)…カフェ・フリードリヒスホーフに出入りする若手俳優。歌の上手さを買われて、「忘れじの恋」の主人公に抜擢される。
瀬央と、紫藤りゅう天華えまのトリオが、顔もよくスタイルもよく、三人並ぶと非常に目立つ。映画のスクリーンでも瀬央の顔立ちは、美青年そのもので、納得の配役だった。


有沙瞳(ルイーゼロッテ)…カフェ・フリードリヒスホーフのウェイトレスで、ケストナーの恋人。ケストナーに献身的に尽す。
星組に来て、すっかり可愛い娘役になったなぁ~と思った。典型的な若手娘役用の役だったが、ちゃんと淡い色の役も自分のものにしていたと思う。


次の公演は、みんなの個性がちゃんと生きる舞台になりますように……ちょっと不安だけど…[あせあせ(飛び散る汗)]


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