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ミュージカル「レディ・ベス」観劇 [┣ミュージカル・音楽劇]

ミュージカル
「レディ・ベス」


脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出・訳詞・修辞:小池修一郎
翻訳:薛 珠麗
音楽監督:甲斐正人
振付:桜木涼介
歌唱指導:山口正義、やまぐちあきこ
美術:二村周作
照明:笠原俊幸
音響:山本浩一
映像:奥 秀太郎
衣裳:生澤美子
ヘアメイク:富岡克之(スタジオAD)
指揮:上垣 聡
オーケストラ:東宝ミュージック、ダット・ミュージック 
演出助手:小川美也子、末永陽一
舞台監督:廣田 進
プロダクション・コーディネーター:小熊節子
プロデューサー:岡本義次、服部優希、篠﨑勇己


初演は観ていなくて、今回が初めての「レディ・ベス」。
主人公は、英国女王エリザベス1世。ただし、この物語は彼女の即位で終わる。なので、エリザベス1世が主人公というのは半分正しくない。
さて、エリザベス(愛称ベス)は、ヘンリー8世の次女なわけだが、プリンセス・エリザベスではなく、レディ・ベスと呼ばれている…というところが、このミュージカルの背景のポイントになる。
あんまり詳しく説明されていないが、ヘンリー8世の最初の妻は、スペイン王女で、そもそもはヘンリーの兄・アーサー(皇太子で夭折)の妻だった。
ローマ教皇庁は、「兄の妻を娶る」ことを認めていない。どうやら聖書で禁じられているらしい。が、スペインとイングランドの関係を維持するため、特別に許可を得た上でヘンリーは兄嫁と夫婦になった。が、ヘンリーは、この最初の妻を愛していなかったようだ。そして、後継者としての男子がほしかったが、王子は幼くして亡くなってしまった。
そんなヘンリーの前に、アン・ブーリンが現れる。彼女は、王の愛人となることを潔しとしなかった。結婚を求めたのだ。そこで、ヘンリーは、アンと結婚するために、ローマ教皇に結婚無効(兄嫁との結婚であったことを理由に)の申請をするが、却下されてしまう。まあ、特別に許可されたんだし、それはそうだよね。
ヘンリーは、アンとの結婚を正当化するため、ローマ教皇と決別、英国国教会を成立させる。
こうして、ヘンリーはアンと結婚、アンはエリザベスを出産する。この時、最初の妻との間に生まれた娘、メアリーは、庶子とされ、エリザベスの侍女という扱いになる。庶子となったメアリーは、プリンセスではなく、レディ・メアリーと呼ばれることになる。
ところが、アンもまた、エリザベスの後に男の子を産むことができず、ヘンリーの寵愛を失う。そして、姦通の罪をきせられて処刑されてしまうのだった。
ヘンリーは、アンの侍女だったジェーン・シーモアと結婚し、ようやく王子・エドワードを得る。エドワードは皇太子となり、メアリーとエリザベスはあらためて庶子の身分とされる。
エドワードの誕生と同時にジェーン・シーモアが亡くなり、その後も離婚・処刑で妻を替えたヘンリーは、6人目の妻、キャサリン・パーとようやく落ち着いた日々を過ごすことになる。その中で、メアリーとエリザベスは再びプリンセスとなり、王位継承権もエドワードの下位ながら復活する。
4年後、ヘンリー8世は亡くなり、エドワードが即位したが、エドワードは、姉のメアリーに不信感を抱いていたらしい。プロテスタント国家となったイングランドにおいて、メアリーはバリバリのカトリックだったから。
エドワードは16歳で夭折するが、その際、後継者としてジェーン・グレイを指名する。ヘンリーの妹を祖母とする遠縁の娘だったが、メアリーを即位させるよりは…ということだったのだろう。しかし、やはり、ジェーンで国を纏めることはできなかったのだろう。ヘンリーの娘であるメアリーを支持する勢力が反攻、メアリーは女王として即位を宣言する。


そういう流れはがっつり割愛して、今作は、エリザベスが亡き母・アン・ブーリンを憎むタテの確執、メアリーとの姉妹間のヨコの確執を大きな背景にして、姉メアリーの治世の間、レディ・ベスでしかなかったエリザベス1世の若き日の物語を創作したもの。
生涯夫を持たなかったエリザベスの初めての恋人、ロビンも創造されている。


で、「エリザベート」「モーツァルト」で日本のミュージカル界を席巻したクンツェ=リーバイの作品でもあるし、どんなドラマチックな物語になるだろうと思ったら、これが全然面白くなかった[爆弾]


メアリー(吉沢梨絵)の治世の間、たしかにエリザベス(花總まり)は、とても可哀想だ。
そもそも、メアリーにとってエリザベスは敵だ。父・ヘンリー8世が、アン・ブーリン(和音美桜)と結婚するために、母は離婚させられ、自身は庶子の身分に落とされた。生まれたばかりの妹、エリザベスの侍女として扱われるという屈辱も受けた。しかも、エリザベスは、父や弟と同じプロテスタントだ。なんか悔しい、なんか憎い。
エリザベスから見れば、かなり、理不尽な理由で彼女は嫌い抜かれた。メアリーの母が離婚されたんなら、エリザベスの母なんて処刑されたのだ。しかも姦通の汚名を着せられて。
でも、そんなこと関係ない。メアリーは心底エリザベスが嫌いだったし、もし自分が子供を産まずに死んだら、エリザベスが即位して、この国を再びプロテスタント国家にしてしまうだろうことも、イヤだった。
メアリーの行動原理はわかりやすい。
だから彼女は、カトリック国家であり、母の故国であるスペインの皇太子、フェリペ(平方元基)と結婚した。38歳で。彼女がどれだけ、妊娠を望んでいたか、痛いほど伝わってくる。それが、想像妊娠のあげく、実は卵巣がんとか…哀しすぎる[もうやだ~(悲しい顔)](しかも、実話だし、これ[爆弾]


一方のベスの方は、もちろん、可哀想な境遇であるのは間違いないが、よくわからないレディだった。
父を愛し、尊敬していた。だから、姦通の罪で処刑された母を憎んだ。
しかし、ある日、母の無実に気づいた。自分が無実の罪で、牢に入った時に。無実の罪でも、陥れられることはあるのだと。何度も出てきて無実と娘への愛を訴えるアン(和音美桜)の美しい歌声が全然聞こえていなかったらしい。自分の境遇に落とし込んで初めて、気がつく。恐るべき鈍感力である。
そして、考えない。誰が母を陥れたのかを。…もしかして、頭が悪いのだろうか…[exclamation&question]
(あえて考えないようにしている的な展開にはなっていない。)


そこに現れる吟遊詩人…というか、旅芸人トリオの一人、ロビン(加藤和樹)。
彼は、誰もが自由に生きていいんだ、ということをベスに教える。エリザベスは、ロビンと深い仲にまでなったものの、最終的には、亡くなったメアリーの後を継いで英国女王になる決意をする…ところで物語は終わる。
え、終わるんだ…[あせあせ(飛び散る汗)]まだ面白くなっていないのに[爆弾]


「エリザベート」が結婚から始まった、よく知られているエリザベート皇后の物語だったのに対し、これは人に知られる前のエリザベス女王の物語で、ああ、だから「エリザベス」じゃなくて、「レディ・ベス」だったのか、と納得………
しないっ[exclamation×2]


騙されたような気がする。


たぶん、私が、「エリザベート」のような歴史に直結するミュージカルが大好きだから、というのは大きいと思うが、このミュージカルは、それだけでなく、いろんな意味で、残念な作品だった。
花ちゃんを主演にするなら、やっぱり、女王としてのエリザベスI世の物語が見たかった。
25歳で終わる物語なんだったら、別に若いミュージカル女優でよかろうに[爆弾]


それでも、再演され続けるのは、鳴り物入りで作り上げたけれど、結局のところ、日本でしかやれないからなんだろうな。ヨーロッパじゃ、
はぁ[exclamation&question][むかっ(怒り)]
みたいな感じで相手にされない気がする。


以上、辛口すぎたので、出演者に関しては簡単に。
私が観たのは、下記のキャストでした。上記の感想も、このキャストで観た感想なので、あえてWキャストには触れていません。


IMG_3606.jpg


まず、山口祐一郎さまの解説ソングがつらかった…[もうやだ~(悲しい顔)]
てか、祐さま、この作品に必要か[exclamation&question]


アン・ブーリン役の和音美桜と、メアリー・チューダー役の吉沢梨絵が最高に素敵だった。歌に魂が宿っていて、この二人のおかげで、作品の歴史的背景が、ずっしりと伝わった。
それに対して、花總まりの演技は、よくも悪くも「私だけに」感が強い。
イングランド<私…な感じ。
そもそも、ベス自身の政治的なスタンスが描かれている作品ではないので、花總の「私だけに」感が、ベスのキャラクターを決定づけてしまうというか。だから、この人が女王で大丈夫か[爆弾]と思ってしまう。
ついでに、ロビンを愛している感じもあんまりしないし。
ま、そもそも、体温低そうだしね。(さんざんだな、私。これでも花總ファン。)


石川禅さんの無駄遣いとか、まじか…[むかっ(怒り)]と思ってしまうが、これはこれで、素敵だったからしょうがない。


加藤和樹くん、平方元基くん、イケメン二人(とそのファン)は、イケコに噛まれたと思って諦めて下さい。


実も蓋もない感想でごめんなさい[あせあせ(飛び散る汗)]


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