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東宝版「エリザベート」感想 その2 [┣ミュージカル・音楽劇]

感想の「その1」はこちらです。

では、エリザベート以外の出演者ミニ感想です。

<トート役>
井上芳雄…ルドルフでミュージカル界にデビューして15年、満を持してトート役に挑戦してきた井上井上の登場と新演出で、宝塚版の主役はトートだけど、東宝版の主役はエリザベートという力関係に変化が訪れた。
数々のミュージカルに主演してきた井上の、圧倒的な主役感は、相手役の二人が娘役出身で、宝塚でこの役を経験していたためか、自然に引く演技をしてしまうことも相まって、揺るがないものになっていた。
出てきただけで、黄泉の帝王感、ハンパない。
「主役はオレだ!」(悪い意味でなく)
そんなトート閣下でした。
一方、宝塚ではトップコンビ感というか、エリザベート(の中の人)は、基本トート(の中の人)を愛している、というお約束が成立しているので、観ている側も、あんまり、「どこからトートを愛するようになったか」みたいなことを考えていない。
それを取り去ってしまうと、結局、エリザベートはトートを愛したことはないんだろうな~という結論に落ち着くような、それでいて、舞台のすべてを支配している、トートの正しい姿を見せてもらった気がする。
プリンス井上は、あまり胸元はだけても効果が薄いような気がする。私がプリンスに興味ないせいでしょうか。

城田優…前回のトートも観ているけど、突き抜けた声量が素晴らしく、質量のあるトート。
エリザベートとの対格差が圧倒的で、あらがうことのできない大きな力=死に対して、それでも力の限り闘い抜いたエリザベート、という図式が伝わる、見事なラスボス感。そして、胸元はだけてる姿が、とてもセクシー[キスマーク]
演出家、小池修一郎の狙っているトートはコレかな、と思う。エリザベート以外の人間は、このトートが来たら、抗う気をなくしてしまいそう。
今回の公演に関して言えば、「プリンス井上芳雄がトート役に挑戦」というトピックスの反対側で、小池先生は、トート役として今もっとも相応しい存在として城田をしっかり今回もキャスティングしていて、やるなーと思った。
初演から15年、紆余曲折あったが、日本のミュージカル界もこんな二人のトートを持つことができるようになったんだな、と感無量。

<ルキーニ役>
山崎育三郎ルキーニってこんな役だったっけ[exclamation&question]と戸惑いながら、ルイジ・ルキーニは、もしかしたら、こういう人だったのかもしれない…ということは感じた。良くも悪くも、ずっとルキーニ役を演じていて、ストーリーテラーとしての役割以上の情報を発信しているっぽかった。そして、なんか、とても気持ち悪い人、だった。
山崎自身が、革新的に何かをやろうとしているエネルギーを感じるものの、ほかの人が出てる時は、そこまでルキーニを観てないので、そのルキーニが「あ~そういうことね[exclamation]」と腑に落ちるところまでは、いかなかった。山崎ルキーニは一回しか観ていないので。

尾上松也…3ヶ月もミュージカルやってる余裕あるんでしょうか…と不安になる昨今の歌舞伎界。でも、尾上松也個人の戦略的には、これは正しい。松也は、御曹司である。しかし、歌舞伎界では、親が生きている間に一枚看板背負っておかないと、親が死んだとたんに手のひらを返される。早くに父親を失った松也は、歌舞伎以外の世界で名を上げるしかない。かつて中村獅童がそうだったように。
とはいえ、彼はミュージカル俳優ではない。ルキーニ役は、かなりの力量がないとこなせるものではない。
そんなわけで、6月に観た時は、かなり不安を感じる歌声だったが、8月は、堂々としたものだった。ストーリーテラーとしての華が見事で、ハッタリの効かせ方が、さすが歌舞伎俳優だな、と思った。

<フランツ役>
フランツ役、そんなに真面目に観てなかったのか、あんまり印象がない。
いや、たぶんそうじゃない。宝塚版だと、フランツがこの時、こうだったから、エリザベートはこうなって…みたいな、夫婦間の行き違い、フランツがゾフィ―寄りなのか、エリザベート寄りになるのか、で、エリザベートの気持ちが変化したり…と、フランツは、とても重要なキャラクターなのだが、東宝版では、そもそもエリザベートの性格に問題があり過ぎ、結婚前からすれ違っているために、エリザベート中心に観ていると(夫なのに)注視する必要を感じないのだ。
若い頃のプリンス感がさすがだったのは、田代万里生だが、あまり老年は似合わない。そちらは、佐藤隆紀の武骨で真面目な雰囲気がよかったような気がする。

<ルドルフ役>
かつて、井上芳雄が演じて、日本のミュージカル界に、ルックス的にルドルフ役をできる人が出てきたか[exclamation]と、わくわくして早15年。
もう普通にルドルフやれる俳優があっちにもこっちにもいる。
今回は、古川雄大京本大我が演じている。私なんか、京本パパにNHK大河(「草燃える」)で初めてBLの存在を教えていただいたおばちゃんなので、隔世の感がある。
古川は、やたら身体だけ立派になっちゃったけど、少年の青臭さが抜けない、革命戦士(絶対失敗する感じ)。
京本は、その美貌ゆえにトートに愛され、遅かれ早かれこうなってしまう運命から逃れられない薄倖の皇太子。

<ゾフィ―役>
歌唱力がすばらしい香寿たつきのゾフィ―と、なんかわからないけど、ゾフィ―の方が正しく見える剣幸のゾフィ―。どちらも宝塚OGとして素晴らしいゾフィ―でした[黒ハート]
しかし、現役時代、老けてると言われていたたーたん、ゾフィ―のオファー来るの、さすがに早すぎない[exclamation&question]
剣さん、60期でしょ[exclamation&question]たーたん、72期なのに。轟理事より下級生なのに。

その他、ヘレネ役を演じていた原宏美が、長身で可愛いなと思ったのと、ヴィンディッシュ嬢を演じていた真瀬はるかが、怖いくらいなり切っていたのが印象に残った。

最後に。
エリザベートには、キスシーンがいくつかある。
最近のミュージカル全般に言えるのだが、別にどうしても本当にキスしなくてもいいじゃん…と私は思う。だって、不自然なんだもん。
(自然なキスしたら口紅がよれるから、できるだけ正面から口と口だけが付くようなキスをするのだ。)
特に、蘭乃はなが、キスシーンの前に口紅を変えてきたのにはドン引きだった。やる気満々かよ[exclamation&question]と。花總まりは、最初からキスシーンありきで、ずっと抑えたトーンの口紅を使用。この辺、東宝ミュージカル慣れしている感じ。
宝塚の文化である「エアキス」はもっと市民権を得てもいいのではないか、と思う。
だって激しいキスシーンができるんだよっ[exclamation×2]私はそっちのが観たい[exclamation×2]


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