東京宝塚劇場月組新人公演(1789)ミニ感想 [┣宝塚観劇]
本邦初演のミュージカル「1789」の新人公演を観劇。
1本もの公演の慣例として、休憩なし2時間弱の上演時間。フィナーレ以外にもプロローグや、大がかりなナンバーを外して、そこを台詞で繋いで…という細かい作業をして舞台を成立させたのは、まだ、デビュー前の谷貴矢先生。
その努力は、敢闘賞ものだった。
また、狂言回し的に、本公演にない台詞部分を担当した、アルトワ伯の朝美絢たち4名も見事だった。
カットになった場面は、冒頭のバスティーユ襲撃シーン、アントワネットのいかがわしい夜会場面、三部会の議員勢ぞろい場面など、群衆シーン。派手さはなくなったが、そもそも人数が少ない新人公演では、数で圧倒する場面より、一人一人が際立つ場面を残した方がいい。貴重な新公の機会が群舞だけにならない配慮がありがたい、と思った。
今回はフォーメーション重視で2階席を選んだが、なんと、2階1列センターにて、龍真咲、美城れん、沙央くらまが観劇。考えること、一緒だったのね…
それでは、出演者感想。
暁千星(ロナン・マズリエ)…前回主演した(初主演)「明日への指針」は30分の小品。今回は2時間の大作。いきなりハードルが上がった感じだが、順調に成長を感じられる出来。特に歌声には、目を見張った。癖のない素直な歌い方で、ややハスキーな声が魅力的。ロナンは大人の男ではないので、若い暁の未熟さもまた、魅力的に映った。終演後の挨拶も隙がなく、すごい余裕だなーと思ったら、カーテンコールでぐだぐだになったのも可愛かった。
美園さくら(マリー・アントワネット)…冒頭の夜会シーンのソロがカットされ、地味な登場となった。お化粧のせいなのかな、娘役というよりは女役の貫録。本役がトップ娘役の愛希なのでヒロインとして写真が掲載されているが、前回の“カリスタ”で言えば、美穂圭子さん的ポジションの役なのではという気がした。
歌声は美しく心に響いたが、演技面でヒロインらしい華やぎがほしかったかも。本人の方向性がそっちじゃないのなら、しょうがないですが。
夢奈瑠音(カミーユ・デムーラン)…歌も素晴らしく、演技も危なげない。本役が凪七瑠海だから2番目にクレジットされているが、役としては実は地味なのかも。その中で優しさが前面に出ていて、ラストシーンは涙が出そうだった。本当に弟のような存在だったのだなーと。
こういうミュージカルだからこその抜擢だったような気もするが、好きな芸風なので、今後も期待したい。
朝美絢(シャルル・アルトワ伯爵)…本公演では、美弥るりかが不思議な髪型で頑張っているが、朝美は黒ロングのストレートをベースに金髪や編み込みを入れて、豪華な髪型を作っていたが、美貌に似合っていて、全体的に“美”が貫かれていた。
作品短縮に伴うつなぎの台詞については、ほぼ朝美が主導していたが、客席とのキャッチボールも出来ていて、余裕が感じられた。
蓮つかさ(マクシミリアン・ロベスピエール)…おお、かっこいい本公演は月組男役陣の微妙な関係性を反映して、三人の革命家が平等に扱われていて、印象が分散されている感じだが、新公は、ロベスピエールに求心力が集まった感じで、わかりやすい。革命家としての強さやスター性が突出していた。ボディーパーカッションも、情熱が迸る感じでかっこよかった。
佳城葵(ルイ16世)…またまた当たり役、来ました
本役(美城れん)の心優しく温かい立派な王様像もとてもステキだが、王族ならではの鷹揚さを見せつつも、これじゃ妻に浮気されちゃうよなー的、人への執着の少ない、浮世離れした王様像がとてもツボ。でも、彼なりに王妃のことは愛してるんだよね
陛下が出てくる場面は、目が離せなかった。これはもう、ファンかも
春海ゆう(ジョルジュ・ジャック・ダントン)…本役(沙央くらま)が、二枚目半的に演じたダントンを、三枚目的可愛らしさで演じて見せた。どちらもキャラに合っててよかったと思う。
蒼真せれん(デュ・ピュジェ中尉)…まったくノーマークの生徒だったが、うまい人だなーと思った。医者に変装する場面では、老医師みたいに腰を曲げたりして、色々考えつつ作っているところも好感が持てた。
茜小夏(ヨランド・ドゥ・ポリニャック)…王妃とポリニャックの姿は、本公演では、この作品の見せ場の一つでもあったのだが、王妃がヒロインポジションに見えないこともあって、ポリニャックも見せ場を失った感じ。暇乞いをするシーンが唐突に始まることになってしまったカット状況も災いしたかもしれない。
メイクの工夫であだっぽい女役が嵌まっていた。
輝月ゆうま(ラザール・ド・ペイロール伯爵)…ロナンの天敵、ペイロールを重厚に作ってきた。重いな…という印象。そして、やや脇的に感じた。重厚なペイロールはとてもよかったが、スターとしての輝きも見たかった。ついては、見栄えをもっと考えてみる手はなかったのだろうか
楓ゆき(ソレーヌ・マズリエ)…ロナンの妹には少し大人っぽい風貌が仇となったかも研7ということで、大きな役が来たのかななんか今回はメイクもイマイチで、残念な感じ。歌も頑張っていたとは思うけど…
叶羽時(オランプ・デュ・ピュジェ)…新公は、オランプをヒロインとして成立していた感じがする。顔立ち的にヒロイン向きではないが、娘役スキルもだいぶ身について、ロナンの恋人として作品を盛り上げることに貢献していたと思う。声が可愛らしく、歌声も素直で、安心して観ることができた。
暁同様、体温が低いというか、情熱的な恋人感が乏しかったのが、ちょっと残念
輝生かなで(ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン)…おおっ、王子様だと思った。登場した時の居方が、シメさん(紫苑ゆう)のような感じで。
アントワネット、ロナン、オランプとの四重唱もとても良かった。
その他、印象に残ったメンバーについて。
カミーユの恋人、リュシル役の麗泉里。はっきりした大人っぽい顔立ちの美人で、とても目立っていた
ジャック・ネッケル役の蒼瀬侑季。説得力のある芝居が見事で、浮世離れした国王との対比が印象に残った
パレ・ロワイヤルでバトンを回していた新斗希矢。おお鶴美舞夕の後継者が
アルトワ伯の配下の秘密警察トリオ(朝霧真・周旺真広・蘭尚樹)。笑わせるだけでなく、カット場面を説明するシーンにも活躍。トリオとしての結束力も見事だった。
ルイ・シャルルとして一場面登場したひいな凛。可愛い
そして、バスティーユの兵士という男役をはじめ、モブシーンでガンガン踊ったり、大活躍をしていた愛希れいかもどこにいても目を引くかっこよさだった
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