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宝塚歌劇花組東京公演「虞美人」観劇 [┣宝塚観劇]

ミュージカル
「虞美人―新たなる伝説―」
~長与善郎作「項羽と劉邦」より~

原作:長与善郎
脚本・演出:木村信司
作曲・編曲:長谷川雅大、手島恭子
音楽指揮:寺嶋昌夫
振付:竹邑類、麻咲梨乃
ファイティング・コーディネーター:渥美博
装置:大田創
衣装:有村淳
照明:勝柴次朗
音響:大坪正仁
小道具:石橋清利
歌唱指導:楊淑美
所作指導:袁英明
太鼓指導:木津茂理
演出助手:大野拓史、岡本寛子

始皇帝の死後、中国の覇権を争った楚の項羽と漢の劉邦の物語。
この戦いに劉邦が勝ち、漢の高祖として歴史に名を残す。結果として漢は400年(含む後漢)続いていく。なぜ劉邦は勝ち、項羽は敗れたのか。劉邦の方が強かったのか?決してそうではない、というのが、この物語のテーマ。敗れた側の項羽を主役にし、勝った側の劉邦の視点も入れることで、項羽の短くも輝かしい一生を描きだす。
我々は歴史を結果から追認してしまいがちだが、まっさらな目で当時を見つめると、別のものが見えてきたりする。
たとえば、秦の始皇帝は、「始皇帝」、つまり皇帝を中心とする中央集権体制を確立した(始めた)わけだが、始皇帝の死後、皇帝位が脈々と継承されていくか、それともまったく別の皇帝によって簒奪されていくのか、これは大きな歴史の分かれ目になる。
始皇帝が死んだ時、その子胡亥に一度は皇帝位が引き継がれる。しかし、広大な中国を治めるには、胡亥は凡人すぎたのだろう。始皇帝に統一された中国の各地から、さまざまな勢力が旗を上げ、再び戦乱の世が始まる。
その戦いに勝った劉邦が中国全土を統一後、皇帝となって中国を治めたので、ここに中国皇帝の原則のようなものが生まれた。
つまり、皇帝は中国全土を治め、中央集権的なその権力は世襲によって引き継がれる。そして、為政者の悪政で国が荒廃したら、武力によって、別の者がこれを倒し、取って代わることが許される。
ごく当たり前のことのようだが、劉邦以前にはこんなルールはなかった。そう考えると、劉邦に一歩先んじていた項羽が愚かな男だったとも言えない気がする。彼は、武力によって権力を掌握した後、どうしていいか、お手本がなかったのではないだろうか?強大な権力とカリスマを持った始皇帝と同じことをするだけの器量が自分にあるのか、また、始皇帝があの広い中国大陸を統一したのは、よく考えてみればおかしなことで、これだけ広い地域なのだから、色々な国に分かれているのが当然、それぞれが昔通り小さな国の王としてやっていけばいい―そういう考え方だってあったはずだ。(この迷いは、このドラマの途中に表れる。)
逆に劉邦は、項羽を反面教師とすることができた。そして、彼には多くのブレーンがいて、手足となる優秀な部下がいた。時が人を選ぶ…というか、時代が大きく移り変わろうとする時には、英雄と呼ばれる人が数多く誕生する。身近なネタで言えば、現在大河ドラマでやっている幕末の日本とか。項羽と劉邦が生きた時代は、まさにそういう時代だった。
韓信とか張良とか、歴史ものが好きな人なら飛びつくような人材が揃って劉邦についていた。彼らの逸話は、詳しい背景までは知らなくとも、故事の名前やことわざとして現在までも伝わっている。(これらのエピソードもドラマの中にしっかりと拾われていて、あー、これもこの時代の話だったのか!そういう意味だったのか!と各所で目から鱗だった。)

そんな悲運の将・項羽と、新しい時代を築いた男・劉邦の物語を、人物としての比較、男として女性への振る舞いの比較、という両面で描くことで、このドラマは、単なる「項羽と劉邦」から宝塚らしい「虞美人」へと変貌した。
エンターテイメントとして、非常にわかりやすい。木村先生、前回の「オグリ!」で、コツを掴んだかな?
そして、バウの法則(私が勝手に命名)にしたがって、「オグリ!」で活躍したメンバーが、かなり使われ、またそれによく応えていたのが、面白かった。(ツアー組だったのに大活躍の天真みちるもいるにはいるが。)
また、これも「オグリ!」でコツを掴んだのかもしれないが、群衆シーンでも、群衆を「衆愚」として描くのではなく、芸達者をピックアップして彼らに芝居をさせることによって、群衆の中の個人が浮かび上がるようになった。そうすれば、群衆は決して衆愚としては描けない。
そんなわけで、もしかして、木村信司の“毒”が好きな人には物足りない作品になったのかもしれないが、エンターテイメント作品としては、非常に面白い。トップ娘役、桜乃彩音のサヨナラ公演として、相応しい公演となったようで、まずはなにより。

漢の高祖となった劉邦(壮一帆)の死の場面で幕が開く。
妻の呂妃(花野じゅりあ)が、死んでいこうとする夫を呪詛し、それに対して、もはや意識さえなくなったはずの劉邦が反論するという怖い場面だ。劉邦が死んでセリ下がると、舞台は天国の赤いけしの花畑。そこにセリ上がる純白の衣装を着た項羽(真飛聖)と虞美人(桜乃彩音)。これは、実は、このミュージカルのラストシーンと繋がっている。
大劇場で観た時は、劉邦が死ぬ間際に「項羽が迎えにきた」と言っているのに、別に迎えでもなんでもなくて、項羽が死んだ直後の幻想シーン(つまり、劉邦なんか無視して二人の世界を展開する項羽と虞美人)が出てくることに若干の違和感があった。
が、大劇場公演観劇後1カ月が過ぎ、改めてこのシーンを観ると、なるほど!と思える。
項羽と劉邦の二人の英雄。その直接対決は、劉邦の勝利で終わった。が、二人ともが死んでその一生を並べて評価できるようになった時、幸福とは、長生きすることだろうか?高い地位に上りつめることだろうか?ということを改めて問い、短くも煌く一生を過ごした項羽と虞美人を再評価しようという、そんな場面だったんだな、と納得した。
呂妃といえば、中国が誇る三大悪女の一人。あとの二人は西太后と則天武后というから、かなりのつわものだ。ただし、中国とか韓国の歴史書は儒教の影響が強く、徹底的な男尊女卑思に基づいて書かれているので、その悪行も、まんま信用はできない。(日本で悪女というと、多くの男をたぶらかして人生狂わせちゃったり…とかいう、“毒婦”的印象が強いが、中国では、女のくせに男を押しのけてマツリゴトをやってしまった女性を悪女と呼んでいるような気がする。)
一方、虞美人は中国四大美女の一人。ま、これは異説がいろいろあるが、少なくとも宝塚の中国三大美人の一人ではある。(あとの二人は西施<愛、燃える・月影瞳>、楊貴妃<花舞う長安・檀れい>)

閑話休題、そのプロローグの場面で、天国の二人(項羽と虞美人)を取り囲むのは、赤いけしの花たち。
お仕着せの変な鬘をかぶり、全身赤(赤ダルマの上に着物風上着を羽織り、後ろだけ短いスカートがついてさらに赤タイツ)という超かっこわるい衣装で歌い踊る。が、花組の誇る娘役たちの可愛は、そんなことでは消せるはずもなく…。特にセンター的ポジションに入る4人(華耀きらり・華月由舞・蘭乃はな・天咲千華)が揃った時、その激しい可愛さに叫び出しそうになった。中でも天咲は、こういうコスプレ系の衣装を着せると、ピカ一可愛い気がする。
いやいや、可愛いもの好きには、花組の娘役は危険すぎる…
ここの音楽は、「赤いけしの花」。今回の「虞美人」は白井鐡造先生の脚本によるものではなく、原作小説(長与善郎作)に基づき、木村先生がオリジナルミュージカルとして書いたものだが、オールドファンのために(?)旧作からこのテーマ曲と、後に歌われる「愛・愛・愛」を残している。
「宝塚スペシャル」等のイベントでも必ず登場する曲だが、哀愁のある素敵なメロディーで、以後も要所要所で使われている。

テーマ曲が流れる間に時は遡り、始皇帝死後の会稽から物語は始まる。
太守殷通(いんとう=扇めぐむ)の娘、桃娘(とうじょう=望海風斗)は、今日の使者に会わないでほしいと父に頼むが、一蹴される。が、桃娘の不安は、的中することとなる。
その使者、項梁(紫峰七海)と甥の項羽に、殷通は慇懃に提携を申し出る。が、項羽は殷通をバッサリと斬り殺し、彼の部下にハッタリをかける。自分達の部下になるか、敵になるか、どうするか、と。副官の衛布(華形ひかる)が、兵士一同項梁の部下になりましょう、と宣言して、項羽たちは最初の賭けに勝った。
爽やかに閲兵しましょう、と申し出る項羽のキラキラ感がすごい。
いまさっき、人一人斬り殺した男の顔ではない。
真剣勝負に勝利し、勝った充足感に溢れた男の顏―そう、項羽は、武器も持たず平和的に話し合おうとした殷通を斬ったことを悪いだなんて思っていないのだ。
話は少し変わるが、映画「カサブランカ」のラストシーン近く、リックがシュトラッサー少佐を撃ち殺す場面、当初電話をかける少佐の背後から撃つ、という設定にクレームがついてああいう形(やめろ、と警告するリックに少佐が銃を抜き、それに対してリックが発砲、少佐が死ぬ)に変わったという。欧米では、互いに武器を持って初めて“正々堂々”とした戦いであるという認識なので、冒頭からこれでは項羽は主役にならないし、日本人的に見ても、どうもしっくり来ない場面ではある。
他方、続いて登場する劉邦は、妻、呂妃がいるものの、女にはだらしなく、大言壮語もしちゃうが、人の意見には素直に耳を傾ける。そんな劉邦のところには、自然と人が集まる。
天衣無縫というか、生まれっぱなしの魅力。それは、まんま壮一帆というスターの魅力でもあるのだが、雪組時代までの壮はもっと影のあるキャラクターを得意としているように見えた。真飛時代になって、(一時影のあるキャラクターが当時の2番手・大空祐飛に集中したせいもあって)一気に本来の魅力が開花したような…。
最初の登場シーンから、パーンと存在感で見せ、短いシーンなのに、劉邦というキャラのすべてを余すところなく開示し、客席までも味方に引き込んでしまう、壮の魅力と、壮の描き方に自信を持つ木村先生ならではの場面だった。
また、ここで呂妃の本来の姿をそっと出しておくことで、この物語が終わった後、冒頭の死去の場面までに、劉邦が変質していったことをさらりと匂わせる。呂妃だって最初から鬼女ではなかった。夫の浮気を許し、その大成を信じる優しい女だった。彼女が変わったのは、夫が変わったことと表裏一体なのだと。
項羽、劉邦、呂妃の現状が出てきたところで、今度は、虞美人である。
虞美人には、言い寄る男がいる。この王陵役は彩城レアが演じている。いきなりソロもあるなど、ちょっとした抜擢だ。(研7なので下級生大抜擢ということではないが、これまでの大劇場公演での扱いを考えると…。花組、上級生が頑張っているので、なかなか下級生に役が回らないのよね。)叶わぬ恋に身を焦がす典型的な二枚目役なので、しどころはないが、あの大舞台で堂々と演じたことは、今後大きな財産になると思う。
しかし、虞美人に一顧だにされず、ショックを受けた王陵は、走り去る。
そして、しばらくすると、頬を紅潮させ、血を帯びた(言葉で言っているだけで、姿は普通)項羽がやって来る。ここに来る途中、後ろから斬りかかられて一太刀浴びたので、顔を見る余裕もなく返す刀で相手の首を刎ねた。あとでよく見たら、あなたの知り合いの王陵のようだから、弔いにこの剣にくちづけを与えてほしい、と項羽は言う。
虞美人は、王陵との関係を疑っているのなら、死んで潔白を証明します、と言って自らの首に剣を当てる。
潔いというか、恋一筋というか…こういう恋人は重い。現代的に言うなら。
でも、この時、項羽は、そんな虞美人を見て、この女の人生を丸ごと引き受けようと、心に誓ったらしい。王陵に少し同情を感じるだけでもイヤだ、という彼の思いも十分重いけど、虞美人の覚悟も重い。王が後宮に美女を数千人侍らせる時代に、だから項羽は虞美人一人を戦地にまで同道する。まさに連理の枝、比翼の鳥な二人。それが、この場面でくっきりと描かれる。
項羽は、戦いに勝ちあがることによって、一武将から「覇王」への道を歩み始めるが、その一方で、多くの人々が離反していく。項羽の生き方は、大多数の人からは受け入れられないほど厳しく、恐ろしいもののようだ。が、虞美人に対しては、優しく愛に満ちている。虞美人は、項羽を褒め、励まし、ひたすらついていく。どんなに孤立しても、お互いがいるから幸せ、という…ある意味バカップル。
人間は、本来孤独に耐えられない生き物だ。項羽は虞美人がいなければ、もっと早く自分の問題点に気づけたかもしれない、なんてことをちょっと思った。
さて、王媼(梨花ますみ)の居酒屋では、今日も庶民たちがうさをはらしている。
誰もが王になれる時代。本当に、誰でもなれるわけではないが、これは「男はみんな王になりたい」と同じ木村レトリックのひとつだろう。
ここで歌われる「馬鹿」のナンバーの構成や、群衆の盛り上がりようは、木村先生らしい作りだが、「オグリ!」同様あくまでエンターテイメント性を重視しているので、楽しく見られた。木村先生は、よく大衆の意地悪さや当事者意識のなさみたいなもの、要は衆愚を描いて、ある意味それは真実なのだが、大衆の一人である私には非常に不快だった。
今回は、「オグリ!」もそうだったが、全員で御伽草紙みたいな構成で、大衆がえらい人を揶揄するような内容だったので、楽しく観劇できた。
ソロ部分を受け持つのは、煌雅あさひ。「オグリ!」の冒頭、馬頭観音の縁日で歌い出したのも煌雅だった。あれも素晴らしかったので、木村先生の信頼が厚いのだろう。しかし、彩城といい、煌雅といい、大劇場公演として適材適所の配役で、こういう活躍は気持ちがいい。
頭の悪い人を「馬鹿」と呼ぶのは、始皇帝の後を継いだ胡亥の故事によるわけね、なるほど。
(そういえば胡亥については、もうひとつ面白いエピソードがある。始皇帝は、“秦を滅ぼすのは胡”という占いを信じて、北方の異民族(胡)の侵入を防ごうと、万里の長城を造ったものの、実は息子の胡亥のことだった…という。)
頭の悪い天下人を民衆が揶揄する場面ということで、昨年の「太王四神記」ポンファ通りのシーンを思い出した。
群衆場面の人の使い方とか、群衆を全体の中でどう位置付けるかとか、小池先生と比較すると、なかなか面白い。小池先生は、群衆場面を動きと勢いに重点を置いて演出するが、木村先生は絵ヅラと止めの多用で印象的にしていく。割ゼリフを言うメンバーも、個人として扱う小池先生と、持ち駒として使う木村先生というか。
さて、歌では煌雅が大活躍だったこの場面、芝居では「農民」という役ながら、ゼロ番(センター)でたくさんセリフを貰っている天真みちるが光る。丸顔で愛嬌のある、二枚目には厳しいキャラだけど、声が通るし、芝居もうまい。とにかく間がいい。ずいぶんスリムになったし、今後に期待大!
また、この場面では、もうひとつ、「韓信の股くぐり」も登場する。
慣れない給仕で客に粗相をしてしまった桃娘を庇って、侠客の股をくぐる見ず知らずの男。桃娘にしてみれば、王子さまに見えたに違いない…[ぴかぴか(新しい)]というキャラを見事に体現しているのが愛音羽麗本当に知恵と勇気のある男とは、こういうものだ!と思う。
そして、彼らの様子を観察している范増(夏美よう)と、張良(未涼亜希)。著名な軍師である范増と、始皇帝暗殺に失敗しておたずねものの張良。二人の師弟関係は、この後、大きく変化していくが、ここではひとまず范増が項羽、張良が劉邦に付くことを表明して、しばらくは味方だがいずれ敵になるだろう、と楽しそうに語り合う。武将本人と軍師では、見ている次元が違う、ということが端的にわかって面白い場面だった。未涼のクールな飄々としたキャラと、夏美の組長らしいものごとを俯瞰した見方がうまく合っている。
店がはねた後、ここで働く桃娘を訪ねて呂妃がやってくる。
父の仇、項羽を倒したくないか?と、桃娘につめよる呂妃。こうして、殷桃娘は、虞美人付の稚児金翔鳳として復讐の機会を狙うことになる。
が、実はこの店の女主人は、衛布のスパイ(市井の情報を得るため)だったので、この件は、すぐさま衛布の知るところとなる。そして、衛布は、正体をバラされたくなければ…と桃娘を脅し、彼女を自分のものにしてしまう。
小柄とはいえ、望海は男役。娘役としてはけっこう大きい。それを小柄な華形が無理やり柱に押しつけて唇を奪うこのシーンは、華形が小柄ゆえに、衛布の中の“男”が見えてかっこよかった。同じ位の身長でも、力は男の方が強い。女は、男に本気で押さえつけられたら、なす術がない。
先が読める男ゆえに、桃娘を持ち駒にして、隙あらば項羽を倒して…と計算するしたたかさと、目の前で震える桃娘を力で蹂躙することを楽しめる残忍さ、よくも悪くも生身の男である衛布を、華形はふてぶてしく演じて小気味いい。
さて、項梁は戦いに勝っていたものの、相手を深追いして戦死してしまう。その後、項梁が立てた傀儡の王、懐王(眉月凰)に対して、項羽は表面上の恭順を見せるつもりもなく、事実上宮廷を仕切っている宋義(悠真倫)に不満たらたら。懐王自身の前でも、お構いなしに本音で罵倒する猪突猛進なバカ男かと思えば、その裏側で、冷静に人々の技量を推し量っていたりする。
そんな項羽のおめがねに適ったのが劉邦で、さっそく二人は義兄弟の契りを交わす。大劇場でこれを観劇した後、日生劇場の「染模様恩愛御書」を観劇し、衆道の恋に陥った二人が同じように義兄弟の契りを交わす(腕に傷をつけ、互いの血を吸う)場面を見て、まさか…と思ってしまった。まあ、この二人に限ってはそちらの心配は無用なほど女好きだが。(項羽の相手は一人だが、執着度が半端ない。)
それはともかく、自分が無体なことを言い出して、他人の技量を推し量るのは、絶対権力者なら必要なこと(追従を言う者ばかりで周囲を固めるのは危険)だろうが、一介の武人がやっては、却って自分の技量を悪く推し量られてしまって、まったく得策ではない。項羽のキャラとして偽悪家ぶるというのがあるのかもしれないが、このやり方では、あまり頭がいいようにも感じられないし、真飛のキャラにも似合っていない気がした。
しかし、そういう風にでも書かないことには、フォローのしようもないほど、項羽という男は世渡りが下手だし、人づきあいが苦手だし、人が寄って来るのではなく、離れていくような行動ばかり取っている。それに対して、劉邦は、大らかだし、人心を掌握するカリスマ性があるし、普通、主役にするならこっちだろう、というキャラ。
でも、宝塚で上演する限りは、どんなに頭が悪くても、性格が悪くても、項羽を主役にしなければならない。だって、項羽の奥さんは虞美人で、劉邦の奥さんは悪妻の呂妃だから。(劉邦と戚氏の純愛に焦点を当てる、という作品なら作れるかもしれないが、それはすでに項羽と劉邦の物語ではなくなってしまう。)
そんなわけで、項羽を主役にするために、木村先生はかなり苦労をしていると思うが、残念ながら、その点は、あまり成功しているとはいえない。語れば語るほど、キャラとしての項羽は魅力をなくしていく。
そんな項羽をほとんど本能的に熱い男として描き出し、真飛は項羽を力技で主役に押し上げている感じだ。
決してどんな役を振られても、あきらめない。
真正面から取り組んでいく…それは真飛の良い面でもあり、悪い面でもあるのだが、私は一ファンとして、いつも感動しながら観劇している。

長くなりそうなので、この辺で続く。


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