SSブログ

宝塚歌劇東京公演「カサブランカ」観劇-1 [┣宝塚観劇]

公演も終わって時間が経過しているので、今回の公演感想は、映画との比較みたいな感じで進めて行こうと思っている。よかったら、思い出しがてら、お読み下さい。

ミュージカル
「カサブランカ」

脚本・演出:小池修一郎
作曲・編曲:太田健、青木朝子
編曲:鞍富真一
音楽指揮:西野淳
振付:御織ゆみ乃、若央りさ、桜木涼介
装置:大橋泰弘
衣装:有村淳
照明:勝柴次朗
音響:大坪正仁
小道具:伊集院撤也
歌唱指導:楊淑美
映像:奥秀太郎
演出助手:小柳菜穂子、田渕大輔

第1幕

1940年11月-
上手花道のセリから、リチャード・ブレイン(大空祐飛)がセリ上がる。トレンチコートにソフト帽の後姿。トップお披露目公演をこんな風にスタートさせてくれた小池先生に、ただ感謝した初日だった。
しかも、振り返ってみたら、タバコをくわえていて、すぐにけだるく煙を吐き出す。
まさに、これが大空祐飛です!というインパクトのある場面からのスタートで、映画というオリジナルがありながらも、これはもうアテ書きだろう!と思った。
下手袖から、フェラーリ(磯野千尋)が登場し、「ミスター・リチャード・ブレイン?」と声をかける。
カサブランカでカフェを経営したいというブレインに対して、物件を紹介しようというのだ。初対面の二人の会話の中に、現在の世界情勢やカサブランカでは闇ヴィザが商売になることなどが、さりげなく織り込まれる。
フェラーリが去った後、リックは、『カサブランカの風』を一人歌う。間奏でもう一度タバコを吸い、銀橋からオケボックスに投げ捨てたのは公然の秘密だ。
(古い大空ファンとしては、「BLUE MOON BLUE」の東京公演で、銀橋でタバコを投げ捨てる大和悠河の戦士に、なんか違和感を感じ、博多での大空祐飛が同じシーンをやった時、銀橋はないので袖に投げ捨てる場面になっていたものの、そのやるせなさがピッタリで、この人にはタバコが似合う!と思ったことを思い出した。今回、9年経ってようやくオケボックスへの投げ捨てが叶い、大満足だった。)
この場面は、映画にないオリジナルのシーン。大空アテ書き感の強い場面だが、違和感はなかった。

【映画ではタイトルバックに続いて、カサブランカに人々が吹きだまっている理由を、端的に説明するナレーションが入る。ここで地図を使っての説明があったが、そういえば舞台では説明用のでかい背景地図は出てこなかったな。ナレーションのバックでは市場の風景なんかが写っている。そして、一通のテレグラフが入電し、それを読み上げる係官。ドイツ政府関係者2名が、オラン発の列車で殺害された。被疑者はカサブランカに潜伏していると思われるので、捕えて奪われた重要文書を押収せよ、という内容。】

第1場 裁判所前広場
1941年12月-
リックが歌っている間に時は流れている。
そして一気に『ヴィザを私に』の大コーラスナンバーとなる。こういう緩急が小池先生の天才的なところだと思う。
ナンバーの中で、ブルガリアから出てきたヤン(凪七瑠海)とアニーナ(花影アリス)の夫婦の現状が語られたり、うまくヴィザを手に入れられた男(七海ひろき)が恋人(綾音らいら)と抱き合って喜んでいると、そのヴィザについ手を伸ばして振り払われる男(光海舞人)がいたり、今日もヴィザを貰えずに倒れてしまうマリア(花露すみか)をヤン夫婦が助けたり…さまざまな人間模様が描かれている。
上手からは、まったく違う空気の、アメリカ人観光客カーティス(十輝いりす)とその妻(美風舞良)が現れ、カフェでくつろいでいる。
そこへ、一人の男(蓮水ゆうや)が走って来て上手背景のペタン元帥の看板の前で撃たれ、連れて行かれる。
驚いた観光客夫婦に、現地に詳しそうな男ジャン(珠洲春希)が声をかけ、映画冒頭に登場するドイツ人高官殺害と重要書類の件が出てくる。ついでに、ヤンとアニーナも寄って来て、ペタン元帥の看板についての説明も行われる。
ここで、後に登場するウガーテ(天羽珠紀)がちらっと怪しい姿を見せている。
明るくちょっと無防備なカーティスから財布をスリ取るジャン。それを眺めている現地の露天商が、毎度色々なリアクションをしていたのも楽しかった。
そこに飛行機のプロペラ音が聞こえ、人々は空を見上げる。
「リスボンまで乗せてくれぇ~」
と絶叫する星吹彩翔がすごく場面に合った声を出していて、下級生なのにすごい!と思う。
『銀色の翼』
こちらは、生きていれば必ず乗れる、という希望に溢れた歌。美しいコーラス。
が、やって来たのはナチスの軍用機らしい。不安になる人々。非常に個人的に、「私たちを捕まえに来たの?」と叫ぶ藤咲えりちゃんが可愛い、と思った。
「様子を見よう」と言って事態を収束するヤン。でも、ここまでの集団劇がすごくいい感じだったので、そのおざなり感が残念だった。まだ、凪七には難しいよな、こういうの。

軍用機が彼方から現れ大きくなり着陸するところは映像で処理される。
「太王四神記」の時は、スクリーンに投影していた映像を、背景の壁(モロッコらしい薄茶の石壁)に投影することで、ざらざらした壁面の絵柄が少々ぼやけた映像をさらに古ぼけたものにする効果があった。また映像を使うことで、戦争中の映画っぽい雰囲気も残ったし、映像の飛行機のドアに実際のドアを重ねるなど、アイデアによって映像が生きる部分も多かった。
また、風景のパン(横移動)で映像が出てきた「太王四神記」の時は、それほど必要性を感じなかったが、今回、俯瞰する映像を見た時は、この効果は大きいなーと思った。

【映画では、係官のアナウンスの後、ただちにバザール周辺での大掛かりな捕り物シーンになり、そこにペタン元帥の看板の前で殺される男のシーンもあるが、説明はない。ただ男が手に持っている書類に“FREE FRANCE”の文字が読み取れる。カフェで、カーティス夫妻がジャンに財布を擦られる場面もある。軍用機を見て、“明日は私達も空の上ね”と呟いているのはアニーナ。その軍用機は、リックのカフェの上を飛んで飛行場に到着する。】

第2場 空港
ここの場面は、ほぼ映画と同じ。
到着したドイツ軍のシュトラッサー少佐(悠未ひろ)を出迎える人々。その中でルノー大尉(北翔海莉)は、恰幅のいい陽気な人物のようでいて、ジャンが近づくと“馴れ馴れしくするな!”と言ってのける怖い部分も持っている。
陽気でKYと言えば、イタリア軍のトネリ(月映樹茉)。彼が出てきたので挨拶しそこなったルノーの副官カッセル(澄輝さやと)から腹立ちまぎれに「聞いてないよ」と言われても全然堪えない。
(ちなみに映画では、この辺色々な国の言葉が登場している)
シュトラッサーはルノーに「事件の犯人は捕まえたのか?」と聞き、ルノーは「今夜リックの店に現れるでしょう」と答える。夜ともなれば、誰もがリックの店にやってくる…これは映画でも、Everybody comes to Rick'sというセリフになっている。
少佐を迎えにきた車を運転していたのは、蓮水。今回、大車輪の活躍だった。代役でカーティス夫を演じた時は、ここの兵士が髭アリになっていたっけ。
そして、映画にはないルノー大尉のソロ、『笑って見過ごす』。小池先生も私と同じで、ルノー大尉が好きなんだな…と思った。体形はアレだけど、ルノー大尉は二枚目なのだ。大劇場の最初の頃は、歌う時に白手袋をズボンのポケットにしまっていたと思ったが、間に合わないのか、途中から上着のポケットになってしまった。ま、体形がアレだからそんなに影響ないしね。

第3場 Rick's Cafe Americain(A)
この場面は、感動的なほど映画を踏襲している。
ただ、店の前で、盆が回る間、観客を癒してくれたドアマン(風馬翔)の姿は舞台だけのものだ。(映画ではドアの中にずっといる)
『It Had To Be You』をサム(萬あきら)が歌っているのも映画と同じ。
店の中の風景も映画のまま。
待って待って待ちくたびれて、このままカサブランカで死ぬのか…と悲観的になっている男(星吹)。
ダイヤを高く売ろうとしている女(マリア=花露)とダイヤが値崩れしているから2400フランでしか売れないという宝石商(天輝トニカ)。
外で車が待っている、という話をしているところに人が通りかかって話を止める男たち(鳳翔大・愛月ひかる)。
漁船で亡命させるから15000フランキャッシュで持ってこいと言っている男(天玲美音)。
これら店の中をパンする中でアトランダムに描かれた映像が、並んだ4つのテーブルで次々に展開していく『どうしたらいい?』という楽曲はすごい、の一言。カサブランカの地に吹きだまった亡命者たち、ヨーロッパから一時的に避難している富裕層、そして軍人やドイツ政府関係者、現地人…同じカフェで時を過ごしていても、彼らに温度差があるのは当然だが、同じナンバーをサムと富裕層のメンバーがドゥーワップで盛り上げてしまう展開は、端的に現在のカサブランカとリックの店を表現していて、とにかく目から鱗だった。
一方、この曲の間に店に入って来たカーティス夫妻。妻の方が店の中をきょろきょろして、亡命の手助けの密談をしている風なバーガー(鳳翔)とアンリ(愛月)の手元の書類を覗き込んで慌てさせたり、やっぱり宝石が高く売れないヤンとアニーナ夫妻のがっかりした顔を見ながら、「みんな楽しそうね」と呟く。
それを見て、バーテンのサッシャ(春風弥里)が、「お客さん、アメリカから?」と聞く。それに対して、突然「なんでわかるの?」と突っ込んでいくカーティス妻がステキ過ぎ。そして、思いきりビビっているサッシャのチキンっぷりも可愛い(笑)
テーブルのメンバーが、またまた交替して、今度は富裕層のマダム二人(妃宮さくら・愛花ちさき)がリックと一緒に飲みたいと言い出す。映画ではカジノでカードをしているテーブルの客で、実際にアムステルダムの銀行の支配人だったという男性(マダムの夫)も出てくるのだが、舞台のカジノは狭くてカード用のテーブルは置けないためか、表のテーブルでの場面になっている。
カジノに入りたいという尊大なドイツ人、ヘルム(雅桜歌)を拒否する場面は映画と同じだが、映画ではリックはカジノの中にいる。舞台では、店のカーテンの奥にいて、そこから手を出して指示している。
ドイツ人が怒りだしたところで、テーマソング(As time goes by)の音楽と共に登場する。その大仰さが、大作ミュージカルらしくて面白い。リックは、映画と同じ白タキシードを着ている。宝塚では、白タキのズボンは白だが、フォーマルウェアとしては、ディナージャケットだけを白にする。
ハンフリー・ボガートはタキシードを細身に着こなしているが、大空祐飛は、むしろ恰幅良く着るような感じ。第1幕のこの場面、映画と違ってリックは、シングルのタキシードのインナーにベストといういでたちだ。映画では人前で余計なことはしゃべらないリックだが、ここでは、大上段に「私の店では人間はみな平等です。」と言って登場する。「たとえそれが従業員と顧客であっても、平等であることに変わりない」ムーア人の従業員を突き飛ばすような客はお断りなのだ。
ドイツ人は、自分が拒絶されたのに、直後にどう見ても風采の上がらないウガーテが通してもらえたのでさらに逆上する。
どうやら偉い人らしい、ヘルムの名刺を一瞥して二つに千切って返却するリックがめちゃくちゃクールだ。

第4場 カジノ(A)
盆が下手の方に回ると、ドアの向こう側のカジノになる。下手背面にカフェと行き来するドアがあり、その横にキャッシャー(狭い中に天風いぶきが入っている)があり、上手側にルーレットが1台、ここにディーラーのエミール(蓮水ゆうや)がいる。上手、下手にソファがあって、現地人が占いをしたり、みんなでまったり語ったりしている。ルーレットの少し手前にリックのテーブルとイスがあり、テーブルにはチェス盤が乗っている。映画では、ここでリックが一人チェスをして時間を過ごすことが多い感じだったが、舞台版は、それほどチェスが好きではなかったようだ。
ウガーテがチェス盤の前に座ったリックに話しかける。リックは、闇ヴィザを高額で売っているウガーテを軽蔑していて、そのことを隠そうともしない。だからこそ信用できるとして、ウガーテはリックにある書類を預ける。ルーレットが終わるまでの間…と。
この辺はほぼ映画と同じ。ウガーテの小者っぷりを映画に近い線で見せた天羽、芸達者だなぁ。

第5場 カフェ(B)
書類を受け取ったリックは、カフェに戻って来る。ここで盆が逆回しになり、元のカフェが登場する。
映画同様、サムが陽気に客たちと『Knock On Wood』を歌っている。映画のサムはピアニストだが、宝塚の萬あきらはダンサーなので、途中でピアノを離れて踊り出す。その隙にリックは、書類をピアノの中に隠す。(映画では、ピアノの蓋を微かに開いて差し入れるのだが、舞台では豪快にやっている。)
店には、フェラーリが来ている。
人気のこの店が欲しいらしい。リックは売る気はないと突っぱねる。するとサムだけでも売ってほしいとフェラーリは言う。当然のように、「俺は人間は売らない」とリックは答える。で、本人に聞いてみると、サムはどこへも移籍する気はないと答え、この話は終わる。
と、今度は、サッシャが、さっきのドイツ人が小切手を置いて行ったと声をかける。カウンターには、ハデな服の若い女、イヴォンヌ(純矢ちとせ)がいる。映画では、イヴォンヌの上着は腹出し。ぜひあの恰好をしていただきたかった[揺れるハート]
リックは小切手を破って投げ捨てる。これも映画より派手だけど、クールでかっこよかった。
映画でも有名なイヴォンヌとの会話はそのまま展開される。
「昨夜はどこにいたの?」
「そんな昔のことは覚えていない」
「今夜は逢える?」
「そんな先の計画は立てたことはない」
もう一杯飲もうとするイヴォンヌだったが、リックはサッシャにタクシーを呼ばせる。リックに連れ出されながら、「あんたみたいな男を好きになるなんて」と悪態をつくが、はたしてリックとイヴォンヌの間には、何かあったのだろうか?「今夜は逢える?」なんて訊かれるとこを見ると、ちょっとイミシンだなーと思った。
舞台版のリックは、なにもなさそうな感じだけれど。
盆がさらに回って、カフェの入り口へ。外もオープン・カフェになっていて、そこはルノー大尉の定位置みたいな感じ。

第6場 カフェ外(A)
リックはサッシャにイヴォンヌを送るように言うが、喜ぶサッシャに「すぐに帰ってこいよ」と付け加える。サッシャがイヴォンヌに惚れていて、イヴォンヌが自暴自棄なことに気づいているからだ。ニヒルだけど、ちゃんと見るところは見ている。
そんなリックにルノーが声をかける。今の女をこれから訪ねようかな、というルノーに、その勤勉さでヴィザを発行したらいいのに、と言うリック。そこへ、言い争いながらトネリとカッセルが店へ入って行く。と、リスボン行きの夜間便のプロペラ音が聞こえ、それを見上げるリック。アメリカに帰りたくないのか?と訊くルノー。何かやらかしたのか?と重ねて訊く。なぜカサブランカに来たのか?と聞かれたリックは、「水が飲みたくて」と答える。そこへ、エミールが現れ、2万フラン負けたので、キャッシュを出してほしいと声をかける。
ここまでも、映画と同じ展開。少々セリフのニュアンスが違うくらいだ。なお、何かやらかした内容が少し違っていて、偉い人の女を寝取ったか?というものは抜けている。それだけでなく、「女に興味はないのか」「ああ、ないな」とまで言わせている。
ストイックなまでのニヒリズムは、舞台版だけの特徴で、それが宝塚化に当たっての小池先生のアレンジ部分なのだろう。
登場したエミールの「こんなに負けてプロとして恥ずかしい」というセリフは、映画版にも同じようなのがあるが、蓮水のエミールからはプロのディーラーとしての矜持がストレートに伝わって来て、胸を突かれた。

第7場 オフィス~カジノ(B)
金庫は、下手の花道にセリ上がっている。
実はこの公演では、この金庫だけがこのセリを使っている。大スターの金庫さまである。
カフェの2階がオフィス兼リックの私室になっているのだが、ここでは、そのルートは使わず、庭から花道、銀橋というルートでオフィスに行ったことにする。
エミールは、金庫から、店の入り口経由でカジノに帰って行き、リックとルノーは銀橋に出て、シュトラッサー少佐の目的の話をする。ナチスの敵、ヴィクター・ラズロがカサブランカで出国ヴィザを探していると。
自然と二人は、ラズロが出国できるかという賭けをする。
ラズロは女づれだという。置いていくかもしれないとリックは言うが、ルノーは一緒に行くと言う。そんなところからどっちがロマンチストか、という話になり、ルノーはリックの過去に言及する。
1935年エチオピアに武器を密輸出、1936年スペイン内乱に参戦し銃を取った、と。それはリックという男が本来どんな男であるか、を表しているが、「十分儲けた」と彼は嘯くのだった。

長すぎる…この辺で、続きます。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 1

コメント 2

★とろりん★

夜野さま、

カサブランカ、今でも大好きな舞台です。祐飛さんが、宙組があの作品に出逢うことができて、本当に良かったなぁ…とあらためて思いながら、レポを拝見しました。

祐飛さんの動きのひとつひとつが、リックその人にしか見えなくて!!あれだけ役者と役が同化できることって、奇跡だと思います。

ちーちゃん…銃殺される男も演じていたのですね!!(気づくのが今更過ぎる)そっかぁ、死に様マイスターのらんとむから受け継いだ技を、2ヶ月にわたって実践演習していたのですね(笑)。さすが、ポストらんとむ☆(←勝手に認定)。

次回のレポではいよいよ、ラズロとイルザが登場ですね。今からドキドキしてお待ちしてます(笑)。
by ★とろりん★ (2010-07-09 12:40) 

夜野愉美

★とろりん★さま
コメントありがとうございます。
とろりんさまにも愛される作品で、嬉しいです。
次回、早くレポしないと~!!!
by 夜野愉美 (2010-07-09 22:48) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0