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ブロードウェイ・ミュージカル「カーテンズ」観劇 [┣ミュージカル・音楽劇]

ブロードウェイ・ミュージカル
「カーテンズ」

Book by Bupert Holms
Original Bool and Concept by Peter Stone
Music by John Kander
Lyrics by Fred Ebb
Additional lyrics by John Kander and Bupert Holms

演出・振付:ビル・バーンズ

共同演出:菅野こうめい
翻訳・訳詞:高平哲郎
音楽監督:清水恵介
装置:島川とおる
照明:原田保
衣装コーディネート:村上由美
ヘアメイク:藤重礼
音響:実吉英一
振付助手:岸田有子
演出助手:堀内立誉
舞台監督:木村力

バックステージもののミュージカルだが、ミュージカルを作る課程を描きながら、犯人探しもやってしまおう、という、一粒で二度美味しい作品。主人公は、殺人課の刑事でありながら、無類のミュージカル好きな警部補。
初日の舞台の幕が下りた劇場で起きた殺人事件。犯人は、この閉ざされた空間に必ずいる!という状況で起こる第二、第三の殺人…という“そして誰もいなくなった”的要素も織り込みつつ、犯人がいるかもしれない状況下で寝食を共にし、失敗に終わったミュージカルを改訂し、再上演しようとしている出演者・スタッフ、そして頼まれもしないのに、演出に口出しをする警部補。
ありえない緊迫した状況の中、それでもミュージカルが確実に手直しされていく場に立ち会える幸せ…ミュージカルファンとして、ミステリーファンとして、この設定はおいしすぎでした。

1959年、ブロードウェイの公演を目指して、ボストンのコロニアル劇場で、新作ミュージカル「ロビン・フッド」は、トライアル公演の幕を開ける。
その舞台といったら、評論家のダリル・グラディ氏(広瀬彰勇)によれば、“「オクラホマ」の出来の悪いパクリ作品、しかも主役のジェシカ・クランショウ(浅野実奈子)は、歌も芝居もダンスも全て駄目、こんなにもマイナス面で3拍子揃った女優は見たことがない”というレベルらしい。
しかも、セリフもろくに入っていない。アンダーのニキ(女教師役で出演もしている)が、舞台上でセリフをプロンプしてやっている。そんな気の抜けた初日のカーテンコール終了後にジェシカが倒れた。

その日の公演評は酷いもので、概ねグラディ氏のような批評が多かった。
この窮状を脱出して、この作品でブロードウェイへの道を切り開くには…プロデューサーのカルメン(鳳蘭)、作曲家のアーロン(鈴木綜馬)、作詞家のジョージア(マルシア)は頭を痛めている。
そんな中、ジェシカの死が告げられる。しかも、それは、病死ではなく殺人だという。
現れた殺人課の刑事、チョーフィー警部補(東山紀之)が、ここにいる全員が容疑者なので、全員この劇場から出ないようにと申し渡す。
そして彼らは身柄を拘束されたまま、作品を手直しして、再上演する道を歩み出す。
が、チョーフィーの興味は犯人探しより、どうやら、ミュージカルの再構築の方らしい。そして、そんなチョーフィーは、海千山千の出演者たちの中に、天使のような心の美しい女優を見つける。彼女、ニキ・ハリス(大和悠河)も容疑者の一人だというのに、チョーフィーは彼女への恋心で胸がいっぱいになっている。はたして、これで犯人を捕まえることができるのか?

心配している間に、カルメンの夫で剛腕プロデューサーのシドニー(芋洗坂係長)が殺される。
そして、舞台監督のジョニーも…

元女優の作詞家、ジョージアを主演に据えての改作は、チョーフィーのあくなき追求によって、驚くべき進化を遂げる。
再演の初日を控え、果たして犯人は捕まるのか…能天気なチョーフィーは、ニキとの婚約を発表してしまうが…

結末は、下記「犯人はオマエだ!」に出てきますので、必ず自己責任で確認してくださいね。バレても責任は取れません。

その前に出演者について。

東山紀之(チョーフィー)…ダサい、ミュージカルおたくの警部補をすごく自然に演じていて、これは意外に彼の代表作の一つになるかも?と思った。かっこいい人がかっこ悪いことを厭わずにやるのが、かっこいいんだなぁ。

マルシア(ジョージア)…作詞家のはずが、主演女優になる異常さを、異常と感じさせない実力。ダンスもすごく自然になってきた。胸元のメイクがとても素晴らしかったです。

大澄賢也(ボビー)…悪い人そうに見えて、実はすごーくいい人というのが、ほんと、ニクイくらい嵌まっていた。歌もダンスもさすが。

鈴木綜馬(アーロン)…ソロの歌声がとてつもなく甘くて、素敵でした。ジョージアへの愛が切ないくらいに感じられた。

岡千絵(バンビ)…インディアンのダンスが最高!スタイルもいい。また両親との確執を滲ませて、芝居も見せた。

芋洗坂係長(シドニー)…一幕のラストで殺されてしまうのだが、存在感はすごかった。そして、フィナーレでヒガシとデュエットダンスを踊るのだが、ピッタリと息の合ったダンスに驚いた。やるじゃん!

鳳蘭(カルメン)…存在感、歌唱力、スタイル、どれも素晴らしい。最近、出る作品、みんな素晴らしくて…。私の中では、ただいま、鳳、初風諄、寿ひずるの三人の出演作は、絶対外せない状態となっている。みんな精力的で困るわ…。

大和悠河(ニキ)…稀にみる心の綺麗な女優という設定。チョーフィーと恋仲になるが、その一人だけ怪しくなさすぎるところが逆に怪しい…と思わせてしまう…のは、作戦だったの?
まず、声が不思議な裏声。歌声だけじゃなくて、セリフまで。女優・大和悠河はこの声で行くのか?
これまで、宝塚を退団して女優になった人は数々いるが、ここまで女優姿が不自然な人も珍しい。
歌も、たぶん男役よりは自然に歌える分、マシになっているはずなのだが、下手でも朗々と歌っていた男役時代と違って、自信なさげな小さな声。ダンスが一番、在団中に近かったが、それはそれで、スカートはいてるんだから…とちょっと目を白黒してしまった。
彼女をヒロイン役にしたことで、この作品のレベル自体が下がってしまったように感じるのは、非常に残念なことだ。
大和悠河は、こんなものじゃない、と私は信じているので、もっと体当たりで、どっかーんと心で女を演じてもらいたい。
ところで、ニキ・ハリスさんって、宝塚の公演で振付とかしてくださった先生と同姓同名ですね。

***以下「犯人はオマエだ!」***危険地帯***

「犯人はこの中にいる」ということで、物語は進んでいくのだが、厳密に言えば、ちょっとズルだったかもね。でも、この程度のズルは、「そして誰もいなくなった殺人事件」の愛読者である私には、嬉しいズルなのだ。
犯人は思ってもみない人物。
しかも、シドニー殺害だけは、犯人も動機も全然別。

なるほどぉ…と思った。
(3月7日に追記予定)


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