SSブログ

ちょっとだけ古事記2 [┣宝塚作品関連本等の紹介]

前回書いてからだいぶ時間が経過してしまったが、「ちょっとだけ古事記」の続きです。前回記事は、こちら

前回は、火の迦具土の神(ひのかぐつちのかみ)を出産したことで陰部に火傷を負った伊耶那美の命(いざなみのみこと)が亡くなった話を、その後のエピソードを交えて書いた辺りで終わったと思う。
この火の迦具土の神は、『MAHOROBA』では、「燃ゆる島」の中でクマソたちに祀られている。
クマソはYAMATO(大和朝廷の前身的な意味合いなのかな?)に反抗している地方勢力だから、YAMATOの神は信仰していないはず。だから、火の迦具土の神は、YAMATOを追われた神という設定で、ここに登場するのかしら?などと考えながら、この場面を見ていた。

少し話が前後した。
三貴神が登場すると、古事記は、伊耶那岐の命(いざなぎのみこと)から三貴神へと代替りしていく。特に、天照大神(あまてらすおおみかみ)は、高天原(たかあまのはら)を治める最高神となる。
ここで、少し気になるのは、伊耶那岐の命・伊耶那美の命が、天の神から全権を委任されて降臨し、大八島(日本)を生んだという前段の話と、伊耶那岐の命の生んだ天照大神が天空(高天原)の支配者になるという物語が矛盾している点だろう。
伊耶那岐の命は、大八島では、一番えらいかもしれないが、天空には伊耶那岐の命を送り込んだ全能の神が存在しているのではないか?伊耶那岐の命が委任できる権利は、大八島の統治権だけではないのか?
その辺りも含めて、この段の物語はあっさりと割愛したいところだが、少しだけ書いておくと、伊耶那岐の命は、天照大神に高天原を治めさせると、自分は、淡海(近江)の多賀に鎮座してしまう。(=現多賀大社)
高天原を天照大神に、月読の命(つくよみのみこと)には、夜の食国(よるのおすくに)、つまり夜の世界を、そして建早須佐之男の命(たけはやすさのおのみこと)には、海原を治めよ、というのが伊耶那岐の命の命令だった。
えーと、大八島は、誰が治めるんですか?
伊耶那岐の命は、もしかしたら、大八島のことを思うと、その国を生んだ愛する人(伊耶那美の命)を思い出すから、忘れようとしたのだろうか?
建早須佐之男の命が神々から追われ、地上に到着し、櫛名田比売(くしなだひめ)を助けるために、八俣の大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した話は、「スサノオ」でも語られたので、繰り返すのはよそう。が、この時、大蛇の一本の尾から、太刀が現れる。後に建早須佐之男の命はこれを、天照大神に献上し、それが『MAHOROBA』にも登場する草薙の剣となる。
大国主の命は、櫛名田比売を妻とした建早須佐之男の命の六世の孫である。建早須佐之男の命は、父・伊耶那岐の命の命令に従わず、乱暴が過ぎたので、高天原を追放されて地上に暮すことになり、神々を次々に生んでいった。
そして彼らの子孫である大国主の命が、80人もの兄弟たちを退けて、この国を治めることになった。大八島を生んだ父から疎まれ、姉である天照大神や八百万の神々に追放された、建早須佐之男の命の子孫が普通に大八島を統治する…これも不思議な話である。
さて、長い時が過ぎた後、突然天照大神は、大八島の統治に乗り出す。
豊葦原の千秋の長五百秋の瑞穂の国(とよあしはらのちあきのながいおあきのみずほのくに=大八島)は、我が御子、正勝吾勝々早日天の忍穂耳の命(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)の治める国である」と突然宣言したものの、既に、大八島は、大国主の子孫である「国つ神」たちの統治下にあった。
ここで、高天原の神と国つ神の間に、おそらく戦争のようなものがあったのだろうが、その辺りはうまくぼかされていて、有名な「国譲り」が行われる。以来、大国主は、出雲大社に祀られ、この国は天照大神の子孫によって治められることとなった。
最初に来ることになっていた、天の忍穂耳の命は、すったもんだの間に、自分より相応しい子供をもうけていたので、その子供、つまり天照大神にとって孫である、天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇々芸の命(あめにきしくにきしあまつひたかひこほのににぎのみこと)が豊葦原の水穂の国に使わされることになった。
その時、分岐点の地に一人の神が現れた。
天照大神は、天の宇受売の神(あめのうずめのかみ)を召して、先にその神に対峙させた。すると、その神は、自分は国つ神で名を猿田毘古の神(さるたびこのかみ)、そして天つ神の御子が天降られると聞いて先導するためにお迎えに来たと伝える。
猿田毘古の神は、先に鎮圧された国つ神の一族ではなく、海人(あま)族という別の勢力の神であり、この場面は、彼らが天つ神に服属したことを表現する場面とも言われているらしい。
日本書紀によると、その時、天の宇受売の神は胸と下半身をむき出しにした状態で猿田毘古の前に現れたとか。その上、多くの猿田彦神社では、天の宇受売を彼の妻として祀っているので、この時に二人の神は結ばれ、その子孫がサルメとサダルになったのだと考えていいのだろうと思う。
天照大神は、邇々芸の命に八尺の勾玉(やさかのまがたま)、鏡、草薙の剣を託し、この3つを私だと思って祀るようにと命じる。なお、邇々芸の命とともに降臨した五人の神々(伴の緒)のうち、天の児屋の命(あめのこやねのみこと)は、中臣の連の祖先だと書かれている。鎌足の祖先ということですね。天の宇受売の神は、猿女の君(さるめのきみ)らの祖先。サルメ一族については、「花のいそぎ」にも登場する巫女の系譜。伊斯許理度売の命(いしこりどめのみこと)は、作鏡の連(かがみつくりのむらじ)の祖先とあるが、これは、「あかねさす紫の花」に登場する額田女王の父や銀麻呂たちの一族の祖先であろうか?
こうして、邇々芸の命は、天の浮橋にすっくと立った後、筑紫の日向の高千穂の峰「久士布流多気(くしるふたけ)」に天降る。「ここは、対岸に韓の国が見え、朝日がただちにさす国、夕日の照る国、たいそうよい土地である」と、邇々芸の命は喜んだようだ。突然、対岸の朝鮮半島(韓の国)が登場するので、それが彼のふるさと、つまり高天原=韓国という説もよく聞かれる。
そして、先導してつかえてくれた猿田毘古の大神に感謝し、天の宇受売の命に、猿田毘古を送るように命じ、その名をいただいてお仕えするようにと指示する。天の宇受売の命の子孫が猿女(サルメ)と呼ばれるようになったのは、ここから来ている。

ちなみにサダルの名は、古事記には登場しない。

参考文献(↓)

神と歌の物語―新訳古事記

神と歌の物語―新訳古事記

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2005/10
  • メディア: 単行本

【去年の今日】
次の日ケロリの本の話。これ、本当によくできていて、何度読んでも癒されます。大好き!
で、おととしの今日は、10万ヒットだったみたい。それがもうすぐ70万ヒットだなんて…すごいことだなー。10万だって到達したときは、驚きだったのに…


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0