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ASC公演「ジュリアス・シーザー」観劇 [┣演劇]

ASCというのは、アカデミック・シェイクスピア・カンパニーのことで、今年10周年になるシェイクスピアを主に公演している劇団らしい。
「烏賊ホテル」を見た時、チラシが入っていたので、あの「暁のローマ」が他の舞台ではどう上演されるのか、気になって観てみることにした。「烏賊ホテル」で一緒だったEGIちゃんは、忙しくて無理だったらしい。報告したら羨ましがられた。
「烏賊ホテル」にチラシが入っていた理由は、演出の菊地一浩さんが、ここでブルータスを演じるという関係らしい。

アカデミック・シェイクスピア・カンパニー(ASC)第33回公演
創立10周年記念公演シリーズ第3弾
「ジュリアス・シーザー」~雄(おとこ)たちのローマ史劇、再び極まる。~

スタッフ表がないので、配役一覧を。
ジュリアス・シーザー(瀬川新一
ブルータス(菊地一浩
キャシアス(彩乃木崇之
アントニー(戸谷昌弘
オクテーヴィアス&キャスカ(鈴木浩史
ポーシャ(村瀬千佳子
女性(コロス?)(野口真由子、日野聡子
ルーシャス(勝木雅子

で、ASCの劇団代表の彩乃木さんがキャシアス役、副代表の菊地さんがブルータス役、ということで、やはり彼らを主役に構成するのが正しい作劇だろう、という気がした。
ただ、ブルータス&キャシアスが主役だと、アントニーは悪役になるわけだが、この芝居では、決して悪ではなかった。むしろ、宝塚よりいい役に描かれていた。シェイクスピアの脚本は、演じ方ひとつでどうとでも変化する、そのことを改めて感じた。

このカンパニーを観るのは初めてなので、これはこの公演に限らないのかもしれないが、コロスみたいな女性二人が、BGMやセリフの増幅(役者と同じセリフを言うことで音量アップ=強調)を担当。他にも声だけ登場の女性が男性のセリフを言ったり、なかなか楽しめた。
出演者は、みな早口のセリフの口跡がよく人物像も鮮やかに浮かび上がった。えーと、その中で、シーザー役の方だけが、なんだかもごもごとセリフを言っていたのだが、これには深いワケがあるのだろうか?
そのせいか、シーザーには存在感が薄く、逆に彼をどうとらえるか、についてのさまざまな立場からの意見がどれもニュートラルに受け止められた。シーザーが強烈だと、彼の意見に賛成か、反対か、で、ブルータスにつくか、アントニーにつくか、が分かれてしまう。それはシェイクスピアの本意ではないだろう。
ブルータスの失敗を見ると、大衆を動かすものがなんなのか、よく分かる。
ブルータスは、自分たちの反逆が理にかなったものだ、と訴えた。その証拠は、文書にして元老院に保管されていると。
大衆が読むわけない…。
一方、アントニーは、ブルータスらの狼藉の証拠であるマントを見せ、無惨なシーザーの遺体を見せ、そして、遺言状を読んで聞かせた
大衆は自分で率先して何かを調べたりはしない。自分の目の前に展開されるもの、聞かされるもの、それがすべてなのだ。アントニーは、そこにつけこんだ。ブルータスが暗殺の動機をひとことでは言えないが、ちゃんと話せば、絶対にわかってもらえる、と言って後回しにした時、アントニーは、そんなブルータスの頑固なまでの誠実さに、自分の勝機を見出したのだと思う。
ブルータスは決して端的に暗殺の経緯を語ったりはしない。大衆の喜ぶ単純な構図でこの事件を語れば、勝てる、と。そんなアントニー、決して悪人には見えなかった。彼は人を見る目がある。そして陽気で、実行力があり、誰よりもシーザーを愛していた。だから、鈍重な男(レピュドス)には、冷たい。そして、ブルータスとキャシアスが一蓮托生のようでいて、二人の暗殺の動機が違っていたことにも気づいている。
キャシアスは、たいした男ではなかったシーザーが終身独裁官になり、自分の上に立っていることに我慢がならない、だから理由をつけて暗殺した。だから、ブルータスが高潔だ、とアントニーは最後に言う。
全部が繋がっているのだ。
ブルータスは高潔で思慮深かった。キャシアスは傲慢で喧嘩っ早い。アントニーは陽気で人を見る目がある。オクテーヴィアスはおっちょこちょいだが帝王の傲慢さの萌芽は出てきている。この4人だからこそのこの舞台だと思った。
このバランスがシェイクスピアの本当の姿だったような気がする。

次回公演は5/30~6/5、同じ銀座みゆき館劇場で「オセロー」とのこと。
こちらも「白昼の稲妻」の悪夢を吹き飛ばしに、観に行こうかな?

【去年の今日】
19日に観劇した「セパレート・テーブルズ」(久世星佳主演)の感想を。
ま、それはともかくとして、12/21は、スコット・フィッツジェラルドの命日。おととしは、亡くなった時間にスニッカーズをかじっていた。去年は、帰る時に「はっ」と気づいた。今年は…忘れていた。ええ、観劇中、ずっとカシウスさまのことを考えていました…。これって心変わりかしら?


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