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「かわりのない」観劇 [┣演劇]

「かわりのない」


作・演出:タカイアキフミ
美術・衣裳:山本貴愛
音楽:高位妃楊子
音響:谷井貞仁
照明:加藤直子
舞台監督:谷澤拓巳
演出助手:菅原紗貴子
ステージング:浅野康之
制作補佐:茉瑶
制作:笠原希
主催:合同会社TAAC


<出演>
春日井陽平(警察官)…荒井敦史
田代由希子(難病の息子を亡くした母)…異儀田夏葉
田代建太(由希子の夫)…清水優
根本岳(田代家の近所に住む事故死した大河の父)…納谷健
春日井里実(陽平の妻)…北村まりこ
橋爪史朗(内科医)…廣川三憲


シアタートップスで上演されていた「かわりのない」を観劇しました。


この芝居は、以前同じ作・演出家によって上演された舞台のリブート作品とのこと。上演後、前作に出演していた「悪い芝居」の山崎彬さんが登壇して演出家とのアフトクが行われ、さらに興味が増した。


そもそもは、拡張型心筋症の子供をアメリカで治療するために3億円を集めていた夫婦(本作の田代夫妻)だけの物語だった。あと20万弱で目標額に到達するというところで息子が急死、夫婦の関係性までおかしくなってしまう。夫は、妻との関係を修復しようと、募金を再開することを提案、いけないことだと知りながら、夫婦は、もう居ない息子のために募金活動を再開し、それが生きがいになっていく。


今回の舞台は、その夫婦のところに、シングルファーザーからネグレクトされている少年が訪ねてくるところから始まる「新たな物語」が追加されている。熱を出した少年を医者に連れて行った夫婦。自分たちの子ではないから保険証はない。しかし、3億円の募金を手にしている夫婦はお金に困っていない。一方、夫婦が駆け込んだ医者は、認知症の母親を抱え、コロナ禍以降の患者減少に悩んでいた。子供の具合が悪くなるたびに、良くなった時の喜びが大きく、夫婦は次第に薬を過剰投与することでわざと少年を体調不良にさせるようになっていく。医者も、薬の量が多いことを知りながら処方箋を書き続ける。そしてある日、投与された薬の影響で、ふらふらになった少年は階段から転げ落ちてー
そんな物語の進行役(語り部)であり、事件の取り調べを担当している警察官にもまた、「ものがたり」があってーという多重構造の物語。
舞台が進行するにつれて、事件の全容が明らかになっていくサスペンス的要素もあり、飽きさせずに見せる演出の手腕が見事だった。とはいえ、たしかに、山崎さんがアフトクで指摘しているように、この内容だと、抽象的な演出の手法を使うことが果たして正解だったか…というとなかなか難しい。
(シアタートップスという「袖のない劇場」を使ったために、このような演出にする必要が生まれたのかなと思うが、装置を増やす、という意味でなく、椅子を重ねたりばらけたりみたいな抽象表現を排して、シンプルに台詞劇として見せた方がよい内容の芝居だったとも思う。)


観劇後、それぞれの登場人物について、深く考え続けてしまった。
田代家のだんなさん、すごくやさしい人なのかなと思わせておいて、実はひどい人なんだなーとか。もし、倒れたのが自分の息子だったら、彼は、放置して逃げるような人ではない。キャッチボールするほど、大河くんを可愛がっておきながら、結局のところ、1ミリも愛してはいなかったんだな…と思うと切ない。
大河くんの父親は、大河くんを愛していたのに、「自分を捨てた嫁に似ている」からネグレクトしてしまう。葬儀のあとに刑事が訪ねて行った時、比較的冷静だったのは、悲しみの中に少しだけ、息子の顔を見なくていい…というホッとした思いがあったからかもしれない。
その命が、理不尽に奪われたと知った時、彼が感じた怒り=息子への愛を思い出したと思いたいけれど、あのまま大河くんが生きていたら、彼自身が息子を死なせてしまったかもしれない。
そして、子供が欲しい春日井の妻に対して協力的でない春日井は、突然蒸発した父親というトラウマを抱えていた。事件が解決した後、冒頭の春日井夫婦の物語に収束するが、ラストの春日井の台詞「里実と話したい、これからのこと」、実は私も、離婚切り出し[exclamation&question]って思ったんです。同じ感想を山崎さんが話してて、あれ、そういうこともあり[exclamation&question]となった。
里実さん、夫にべた惚れなのに…[あせあせ(飛び散る汗)]


ちょっとやばいお父さん役の納谷くん、今回も心に残るお芝居を見せてくれた。ブチ切れるとこがツボです。
異儀田さんの芝居もほんと好き。ゆうひさんと共演した方々、その後ファンになってしまうことが多いので、年々、観劇数が増えてしまいますね。


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