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少年社中「テンペスト」 [┣演劇]

少年社中25周年記念ファイナル 第42回公演
「テンペスト」


原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚色・演出:毛利亘宏


照明:斎藤真一郎
音楽:YODA Kenichi
衣裳:村瀬夏夜
舞台美術:秋山光洋(n10design)
舞台監督:横尾友広
音響:井上直裕(atSound)
振付:本山新之助
アクション指導:栗田政明(倉田プロモーション)
映像:森すみれ
ヘアメイク:林美由紀
演出助手:本藤起久子


原作者・シェイクスピアは、劇団の座付作家だった。新作の公演は、おそらく、上演時の劇団員に当てて配役されている。
不自然に劇中で登場しなくなるキャラクターは、初演当時一人二役で配役されていたのでは[exclamation&question]と言われているし、後年、演技経験の浅い少年が演じているはずのヒロイン役が複雑なキャラクターになったり、独白したり、エピローグを担ったりするのは、天才俳優が現れたか、大人になってもヒロインを演じられるような、日本で言うところの女形役者が育ったのか、それともこっそり禁断の女優が登場したか、研究者でなくても想像は止まらない。
シェイクスピア劇には、主人公やその相手役のようなメイン配役だけでなく、トリックスター、道化、脇筋の主役など、様々な役が配置され、劇団員のあっちにもこっちにも配慮しているな〜と感じることが多い。まさに、本作の作・演出の毛利さん[exclamation×2]
他の舞台では普通にダントツで主演している鈴木拡樹、矢崎広、鈴木勝吾の三枚を煌びやかに揃えて、劇団員の井俣太良主演の一作を作ってしまうのだから。 私が観た回は、そんな毛利さんが、日替わり配役の亡くなった劇作家の役を演じていたので、その「演劇への想い」を直に感じることもできた。
そして、「芝居」でも「劇」でも「舞台」でもなく「演劇」という言葉を使うから、どうしたって、「エンゲキ」というシリーズを作り続けていた【彼】を思い出してしまう。追い出された元主宰の演出家を再度受け入れて、その謝罪を信じよう、というのは、【彼】が戻ってきた時に、演劇界が【彼】にどう向き合うか、のひとつの答えのようにも思えた。
でも、ぶっちゃけ、私は、こんなパワハラ演出家(ギン=井俣太良)を受け入れることはできないし、どんな理由があったにせよ、現実社会で人を騙すために演技を使った【彼】を赦すのは、なかなかにハードルが高い。


にもかかわらず、ギンを受け入れるかどうかを、観客の(半ば強制的な)拍手に委ねた本公演は大きな問題がある。
鈴木拡樹に拍手を求められて、断れる演劇ファンがいるだろうか[exclamation&question]でもそれは、観客が鈴木拡樹を愛しているから、であって、パワハラ演出家を赦せたからではない。虎煌遊戯(ここうゆうぎ・作中の劇団名)がギンを受け入れ、彼と演劇をやっていこうとするのは勝手だし、その結果、よい芝居をやってくれるなら、私は観に行くかもしれない。でも、それは、話が閉ざされた世界の中で完結している場合だ。 現実にパワハラを見せつけられ、いまだに鉄拳制裁で役者を育てている演出家を「拍手で受け入れてください」と言われれば、私は拒否したい。
「テンペスト」の上演と現実の劇団の物語を結びつけ、綺羅星のようなスター俳優に見どころを与え、迫力の舞台を作り上げたことは素晴らしいけれど、赦せない思いを胸に、仕方なく拍手してしまったことは、長くトラウマになりそうな気がする。


鈴木拡樹は、堂々とした座長感を持っているのに、今回はトリックスターのエアリエル(本編では、ギンの送り込んだ俳優・ラン)。トリックスターらしい身の軽さと、口八丁手八丁の自由闊達さに加え、殺陣の迫力はお見事。
矢崎広は、「テンペスト」主役のプロスペロー(本編では、劇団2枚看板の一人、カグラ)。堂々としたプロスペロー役と生真面目で責任感が強く冒険できないカグラを見事に融合させてくる。少年社中でのぴろしは、彼のナイーブな面が透けて見えて好きだなぁ。
鈴木勝吾は、プロスペローに飼われている怪物・キャリバン(本編では、劇団2枚看板の一人、シュン)。いくらなんでも、二枚看板の一人をキャリバンにするだろうか[exclamation&question]と思うが、これが似合ってるから、毛利さんすごい。カグラのライバルは自分しかいないと自他ともに認めつつ、どこかで無理しているカグラを助けたいと願うシュンの優しさが沁みる。
萩谷慧悟は、かつてこの劇団のトップスターで、ギンが追われた頃に事故死した、伝説の天才俳優。冒頭から、劇場に住む幽霊のような存在として、観客の前に現れる。美しい。さすが伝説のトップスター。さらにダンスシーンが始まると、彼から目が離せなくなる。これって、以前、桐山照史にも感じたことなんだけど、やっぱ、あの事務所出身者って、目を引くダンスを踊れるよなぁ…(しみじみ)
本田礼生は、プロスペローの娘と恋に落ちる王子・ファーディナンド(本編では、劇団の若手俳優、ヒナタ)。空回りも含めて若さがキラキラしているヒナタ&ファーディナンドが眩しい。

井俣さんはじめ、少年社中の皆様方も適材適所、特に女性陣がみんな素敵[黒ハート]なだぎ武さんも、なぜか劇団員役が違和感なく、素敵でした[exclamation×2]


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