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「ジョン王」観劇 [┣演劇]

彩の国シェイクスピア・シリーズ
「ジョン王」


上演台本・演出・彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督:吉田鋼太郎


作:W・シェイクスピア
翻訳:松岡和子


美術:秋山光洋
照明:原田保
音響:角張正雄
衣裳:宮本宣子
ヘアメイク:大和田一美
擬闘:栗原直樹
音楽:サミエル
演出助手:井上尊晶、菅野将機
舞台監督:倉科史典
技術監督:小林清隆


振付(「月の祭り」):中村京蔵


彩の国シェイクスピア・シリーズはシェイクスピア作品全37作上演を目指したシリーズで、本作は、その36作目に当たる。コロナ禍で一度上演中止となり、その後、第37作「終わりよけれすべてよし」が上演終了してしまったので、実質、最後の上演作となる。
で、私にとっては、これがシリーズの初観劇だったりする。(笑)
もちろん、このシリーズのいくつかの作品はWOWOWなどで観ていたり、そもそもシェイクスピア劇は、他の舞台でたくさん観てはいるのだけど。


シアターコクーンの搬入口は、舞台の真後ろにあって、東急百貨店の駐車場に繋がっている。そこは、業務用車両専用ではなく、一般車両も駐車できる場所らしく、演出でここを開放していると、たまに向こう側を一般客が歩いていたりする。
この公演も、開演前から舞台奥の搬入口を開放している。こういう演出、蜷川(幸雄)さんがよくやっていたな~などと、思い出すうち開演時間になり、駐車場側から、一人の若者が劇場に入ってくる。パーカーのフードを被りマスクをしたラッパーのような風情の男性ー小栗旬だった。彼は、ストレンジャーとして、この作品世界に入って来た、ということなのだろう。
「ジョン王」の世界は、12世紀のイングランドを舞台にしている。当時のイギリスはフランスとの戦争が続き、国内でも権力争いが絶えない。獅子心王リチャードの死後、上の弟であるジェフリー(故人)の子・アーサーが後継者となるべきところ、まだ年が若いことを理由に、下の弟であるジョンが即位することになった。これは、リチャードら三兄弟の母である皇太后エリナー(中村京蔵)と亡くなったジェフリー王子の妻・コンスタンス(玉置玲央)が不仲だったことも原因らしい。コンスタンスはフランス王(吉田鋼太郎)に助けを求め、フランス王がイギリスの王位継承に口を出したことで、両国は一触即発の状態に。
小栗旬は、リチャード王が人妻との間に作った「私生児」という役どころ。口が達者で、突然現れたにも関わらずエリナーに気に入られ、リチャードの子と認められて「親族」としてジョン王の配下となる。
イギリス軍とフランス軍が乗り込んだ町、アンジェ。市民たちは、町で戦争をされてはたまらない、と城壁を閉じ、講和を提案する。なぜかイギリス軍に同道している、ジョンの姪(三兄弟の姉妹がスペイン王と結婚してできた娘)であるブランシュ(植本純米)とフランス王太子ルイ(白石隼也)の結婚による講和を。
こうして両者は和睦を果たしたが、それも一瞬、再び戦争が始まる。思うにまかせぬ状況の中、ジョン王は、アーサーを殺してしまえと、腹心のヒューバート(高橋努)に命じるが、ヒューバートは実行できない。が、結局アーサーは、逃げようとして塔から飛び降りて死んでしまう。それを知った貴族たちは離反してフランスへ逃げ、アーサーの母・コンスタンスは発狂し、ジョン王も発病して死ぬ。
私生児は、すべてが終わった舞台上に「異物」のように立ち続ける。カーテンコールの間も。
カーテンコールが終わっても。
そこへ、現代の兵士(高橋努)が登場し、私生児に自動小銃を向ける。
私生児は、銃を向けられたまま、作品中に身に着けた甲冑などを外し、元の「闖入者」の格好になって、搬入口から悠々と出ていく。


劇中、出演者によって、フォークソングなど70年代くらいの日本の歌が歌われて、懐かしさや当時の世相などが頭に浮かんだ。そういう歌も含めて、「反戦」というテーマがストレートに伝わってくる。演出・吉田鋼太郎は、2022年の「ジョン王」にストレートに反戦を盛り込んだと語っている。それは、コロナ前の着想とはだいぶ変化したことだったと。ウクライナ侵攻のあった2022年ならではの演出なのだろう。
また、なんの脈絡もなく、しかし出演者に当てないように綿密に上から落ちてくる等身大の人形や肉塊。そのたびにハッとする。シェイクスピアの台詞に気を取られ、ついつい忘れてしまうが、戦時下なのだ…とそのたびに思い出す。これほどのノイズは見たことがない。
このノイズが、吉田「ジョン王」のすべてだったような気がする。
吉原光夫のジョン王は、ぴったり配役。歌も含め素晴らしかった。女性役の3名の好演も忘れられない。(京蔵さんと純米さんは、出番が少なすぎたけど…)あとは、高橋努がよかった。小栗旬は、狂言回し的なポジションで、一座の人気俳優がこのポジションを担っていたのかな…などとシェイクスピアが上演した当時の事情を想像してみたりした。


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