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宝塚月組東京公演「グレート・ギャツビー」観劇 [┣宝塚観劇]

三井住友VISAカードミュージカル
「グレート・ギャツビーーF・スコット・フィッツジェラルド作“The Great Gatsby”よりー」


脚本・演出:小池修一郎
作曲・編曲:太田健、吉崎憲治、高橋恵、小澤時史
指揮:塩田明弘
振付:羽山紀代美、尚すみれ、桜木涼介、AYAKO、AKIHITO
装置:松井るみ
衣装:有村淳
照明:勝柴次朗
音響:大坪正仁
映像:石田肇
小道具:下農直幸
歌唱指導:やまぐちあきこ、KIKO
演出補:田渕大輔
演出助手:平松結有
舞台進行:香取克英
舞台美術製作:株式会社宝塚舞台
演奏:宝塚歌劇オーケストラ
制作:真加部隼
制作補:西尾雅彦
制作・著作:宝塚歌劇団
主催:阪急電鉄株式会社
特別協賛:VJAグループ
衣装提供:ONWARD、Akurarobe
ゴルフ指導協力:株式会社KMG チボリゴルフ


1991年以来、31年ぶりの大劇場公演。とはいえ、一本ものなので、2008年以来14年ぶりの「グレート・ギャツビー」でもある。宝塚ファン歴だけは長いので、両公演とも観劇している。
その間に、フィッツジェラルド作品を何度も読み、1991年の「華麗なるギャツビー」は、尺の関係で、本作を貫く「神の目」という視点を入れ込むことができなかったんだな…とは思った。とはいえ、2008年版は、別箱公演だったため、若干引き伸ばしに窮しているようにも見え、初演と再演の中間の尺が一番適切なんだろうな…と思うようになった。そう考えると、フィナーレが付く大劇場1本ものという尺は、ちょうどよい尺に思える。
ようやく、決定版「グレート・ギャツビー」を観ることになったのだな…と思うと感慨深い。


物語は、語り手であるニック・キャラウェイ(風間柚乃)が、ニューヨークの郊外、ロングアイランドの小さな一軒家に越してきたところからスタートする。ニックの家はウェストエッグ7番地、その隣の1番地から6番地までの地続きに大邸宅を構えているのが、謎の金持ち、ギャツビー。
ニックと一緒に荷物を持って現れるタクシーの運転手。演じているのは英真なおきお元気そうで安心した。この運転手をギャツビーの父親役と同じ生徒が演じるのは、初演以来。色々な意味で、この公演は初演に帰っていると感じたが、冒頭のこの場面は、印象的にそれを感じる。
ギャツビーの邸宅では、毎晩、誰が参加してもいいパーティー(乱痴気騒ぎ)が行われているが、出席者は、誰もギャツビーを知らなかった。勲章を貰ったとか、人を殺したとか、噂話に花を咲かせながら、禁酒法の時代なのに、シャンパンを手に酔っぱらっている人々。ジーグフェルドフォーリーズのスターも顔を見せる。
タキシードに身を包み、ニックも参加してみる。
すると、警官隊が乗り込んできて「合衆国憲法修正18条違反」で客たちを逮捕しようとする。
※2008年版の感想のところでも書いたが、原作にはこんな場面はない。そもそも、合衆国憲法修正18条違反では、客は逮捕できない。不特定多数のものに酒をふるまった罪で主催者であるギャツビーが逮捕されるかどうか…それも、酒を売ってはいないので、微妙なところだ。(ホームパーティーなどで、禁酒法発効前の日付の酒を飲むのは違法ではない。)
そこでギャツビー(月城かなと)がバーンっと登場して、このパーティーには警視総監(千海華蘭)も参加しているということを示し、居場所をなくした警官たちを邸の警備に回し、酒もふるまうという大人の対応を見せる。
マンハッタンのスピークイージー(もぐり酒場)でさらに飲もうとする客を見送り、庭続きの突堤に戻ったニックは、そこで対岸をいつまでも見つめているギャツビーの姿を見つける。
翌朝、突堤で再びギャツビーに会ったニックは、お隣さんとして自己紹介をする。ギャツビーの自己紹介は、どこか嘘っぽいものばかりだったが、なぜかニックは、彼を好きになる。対岸に思う人がいるのか、と尋ねるニックに、ギャツビーは、彼自身の深い思いを口にし、ニックを当惑させる。そしてニックが口にした、自分の知り合いも対岸に住んでいるという言葉にギャツビーは、浮き立つ。ニックは、ギャツビーが愛し続けたデイジー(海乃美月)の身内(いとこ)だった[exclamation]
こうして、ニックは本人も知らないうちにギャツビーの物語に取り込まれていく。
風間の「巻き込まれていく善良な一般人感」が圧倒的で、観客は安心してニックに自身を投影できる。これまで、座組の2番手が担当してきたニック役だったが、今回から3番手に昇格したばかりの風間が、冒頭のわずかな時間でここまでのニックを演じてくれると、こちらも安心して物語に没頭できる。


さて、いとこのデイジーがギャツビーの思い人だなんて、この時点では思いもしないニックは、転居の報告に、デイジーたちが住むイーストエッグの邸宅を訪れる。デイジーはニックを大歓迎、夫のトム(鳳月杏)と、友人たちも歓迎してくれるが、一般庶民のニックには、アメリカの貴族ともいうべきトムたちの生活は、レベチ過ぎて苦笑するしかないものだった。
デイジーは、親友でプロゴルファーのジョーダン・ベイカー(彩みちる)をニックに紹介し、生まれたばかりの娘、パメラを見せる。ニックがウェストエッグに住んでいると言うと、ジョーダンは、すぐにギャツビーの名を出す。ギャツビーのパーティは、話題のタネになっていたようだ。世間と没交渉の深窓に住むデイジーは、突然飛び出したギャツビーの名に、動揺する。
幸せのただ中にいるようなデイジーだったが、トムに架かってきた電話に神経を尖らせる。わけが分からないニックに、ジョーダンは、トムに愛人がいると告げる。


トムの愛人は、フラッパーガールのマートル(天紫珠李)。ガソリンスタンドの主、ウィルソン(光月るう)の妻で、「結婚相手を間違った」と思い、夫を適当にあしらいながら、その目を盗んでトムと逢瀬を重ねている。夫のウィルソンは、トムが乗る車を自分の手で整備し、別の買手に斡旋することを考えている。根っからの車好きなのだろう。一方のトムは、車をファッションの一部くらいにしか考えていない。ウィルソンが心から大切にしているものを、気まぐれに愛でるトムという図式は、そのまま、マートルを暗示しているようだ。
ウィルソンの言葉を無視して走り去るトムの青い車を見送りながら、「待つさ」と呟くウィルソンの姿に、彼のこれまで過ごしてきた人生が透けて見える。るうちゃん、さすがです[黒ハート]


翌朝、トムはジョーダンからの電話を受ける。ジョーダンは、デイジーから、ギャツビーとの関係を打ち明けられたのだった。5年前、ケンタッキー州ルイビルで第一次世界大戦に向かう出征兵士の壮行会が行われ、その時、兵士のギャツビーと、令嬢デイジーは出会い、恋に落ちた。
しかし、ギャツビーの出自に疑問を抱いたデイジーの母親によって、二人は引き裂かれた。家出に失敗、戦地への手紙も返事がなく、やがて、フットボールの試合でルイビルを訪れたトムの熱烈な求愛に負け、デイジーは結婚したのだった。
ジョーダンによると、デイジーは、ニックの隣人のギャツビーと、自分の知るギャツビーが同一人物かどうかを知りたがっているとのこと。一方、ニックをもぐり酒場“アイス・キャッスル”に呼び出したギャツビーは、もう一度デイジーに会う機会を作ってくれるように依頼する。こうして、ニックは、双方の希望を受けて、二人を再会させることになる。
ギャツビーの邸宅を訪れたデイジーは、彼の部屋を見るなり、ギャツビーの思いを正確に理解する。デイジーの写真が複数の写真立てに飾られ、真っ白なお城のような部屋…この人は、私のためにお金持ちになったのだ、と。
美しいシャツをギャツビーが宙に投げ、それを見て「あなた、本当にお金持ちになったのね」とデイジーが感動の叫び声を上げるシーンは、今回もしっかりと残っていた。絵面としても美しいのだが、宙を舞うシャツで「お金持ち」というのが、30年経ってもよくわからない。アメリカ人ってそうなのかな。


ギャツビーが、裏社会を利用してのし上がったのは、すべてデイジーを手に入れるためだった。
「あの時、身分と財産がないという理由で結婚できなかった。その悔しさから、大金持ちになった姿を見てほしかった」であれば、デイジーは理解できたのだろう。そういう理解をしていた時点でデイジーは楽しそうだった。若き日の恋の挫折が、ひとかどの者になるエネルギーになっていたのであれば、自分の涙も少しは報われる…みたいな思いは、私もなんとなく想像できる。
しかし、ギャツビーは、結婚し、娘を産んだデイジーをトムから奪い返したいと、真剣に考えていた。
そんなことはできない。過ぎた時間を取り戻すことはできない。否定するデイジーに、「過ぎた時間を取り戻すことはできなくても、やり直すことはできる」とギャツビーは、再会を迫る。
そして、ギャツビー邸のパーティーにジョーダンと参加する、とデイジーは約束する。


パーティーで踊るギャツビーとデイジーを見て、ギャツビーの裏稼業のパートナー、ウルフシェイム(輝月ゆうま)は、ギャツビーの危うさに気づき、ギャツビーとのこれまでの取引を解消し、ギャツビーの手下たちと直接取引をすることを決める。ずっと麻薬取引を拒否していたギャツビーに手を焼いていたのもあるが、素人の上流階級の人妻に手を出すことは、麻薬以上に危険だと判断したのだ。
このパーティーでは、ギャツビーが配下のラウル(夢奈瑠音)にタンゴを歌わせる場面が初演からあり、初演ではたーたん(香寿たつき)が見事な歌声を聴かせるのだが、夢奈のタンゴも素敵だった。
一方、トムは、ギャツビーに勝負を挑み、ジョーダンの提案で、ゴルフで決着をつけることが決まるのだった。
2番手格の役どころとなったトム役。その分、出番が増え、キャラクターを複雑にできるチャンスが広がっている。鳳月の演じるトムは、愛嬌があり、誰からも愛される鷹揚な性格の一方、人にバカにされることに慣れていないので、そういう事態の芽を感じると過剰反応する。その時、あ、意外とカッコ悪いな…と思う。そう思わせるところも含めて、鳳月の術中にハマってるな[あせあせ(飛び散る汗)]


ほぼほぼ、30年前と同じ展開だが、キャラクターでずいぶん雰囲気が変わるんだなと思いつつ2幕へ…


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