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静かな劇場 [┣生徒・演出家・劇団論]

3月1日、月組を観劇した。
この日は、イープラスの貸切公演。当選者本人が電子チケット「スマチケ」をダウンロード(分配不可)して観劇するため、全員が「申し込み枚数1枚」として抽選に参加し、当選して、ここにいる。隣の席は、当然、見知らぬ他人だ。友人知人が当たったという人もいるだろうが、席まで隣ということはあり得ない。
休憩時間、終演後の規制退場の順番を待つ時間、今まで体験したこともないほど、静かだった。


本当に感染防止を第一義的に考え、観客が喋らない世界を作りたいならば、チケットをすべて1枚単位で発売すればいい、と、言われていたが、本当にその通りだった。
かつては、一人観劇の時に、お隣の方から話しかけられ、話が弾んだこともあったが、このご時世で、わざわざそんなことをしようと思う人もいないだろうから、本当に静かになる。
「お客様同士の会話はおやめください」というアナウンスは、あいかわらずなされていたが、(そういえば、お連れ様とは言っていなかった。今回の貸切の販売方法は伝わっていたのかも…)静まり返った劇場にむなしく響くだけだった。


このブログでは、もう3~4回ほど書いているが、そういうチケット販売方法に踏み切っていないということは、宝塚歌劇団は、こういう静かな客席を目指しているわけではない、ということに、いい加減、みんな、気づいてほしい。
ああいうアナウンスがなされるのは、それが、宝塚歌劇団と東京宝塚劇場の「感染症対策」であるからだ。
5000人以下の「観客が上演中に発声をしない公演」は、対策を講じ、それを公表することで、キャパマックスの公演を行うことができる。
対策とは、たとえば、
「アルコール消毒液を用意する。入場者の体温を測る。開演前、休憩時間の換気を行う。座席と床の除菌を毎日行う。観客に対して“マスクの着用、飲食の禁止、観客同士の私語厳禁”を呼びかける」
みたいなもの。
対策は、主催者ができることを記載するので、「観客がしゃべっていない」状態を保全する必要はない。
ぶっちゃけ、呼びかければいい、だけ。


それでも、トラブルになるくらい呼びかけてくる理由は、別の観客からのクレームに対応しているのだと思う。
観客といっても、2000人いれば、色々な観客がいる。
毎日劇場通いをしている猛者もいれば、この日のために何ヶ月ぶりに東京に来て、感染の不安に怯えながら、それでも宝塚を観たくて、息を詰めるように舞台を見つめている人もいる。不安で不安で、それでも宝塚を観たい気持ちが勝って劇場に来てみれば、休憩時間に大きな声でしゃべっている人がいて、怖くてたまらない。ここに来たせいで、感染して、家族にうつしたら…と涙が止まらない人だっていると思う。
そういう人が、劇場スタッフに訴えてくるとしたら、それは対応せざるを得ないだろう。


なので、猛者の皆様も、猛者以外の観客に配慮してあげてほしいな…とは思う。


しかし、一方で、「なんで静かにできないんだろう」と、毎回ツイッターに書くのは、どうかと思う。
なぜなら、上記の「感染対策」が形骸化していることを宣伝しているようなものだからだ。
「公演を最後まで継続するために、お客様同士の会話はお控えください」という、アナウンスを行う側も、ちょっと感情的になっていると思うが、それを真に受けて、「こう言われているのに、みんなが喋っていた!」とツイッターで全世界に発信するのは、それこそが公演を最後まで継続することへの足枷になりかねない。
それは、本人的には、劇場のアナウンスを聞かないダメなファンがいるという告発であっても、世間的には、劇場が公表している感染対策が不完全であるという告発になっているから。それによって、公演が継続できなくなったら、「あの人たちが喋っていたから」って思うのかな、それでも。


私には、ちょっと、そういう正義は理解できないな。


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