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「ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~」観劇 [┣演劇]

「ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~」


原作:マート・クローリー
演出・上演台本:白井晃


翻訳:北丸雄二
美術:松井るみ
照明:高見和義
音響:井上正弘
衣装:前田文子
アクション:渥美博
振付:原田薫
ヘアメイク:大宝みゆき
演出助手:加藤由紀子
舞台監督:小笠原幹夫
制作:笠原健一、原佳乃子、華野奈依
アシスタント・プロデューサー:野田菜々子、保村幸子
プロデューサー:可児理華、佐藤竜福、小林裕、近藤富英
エグゼクティブ・プロデューサー:松村吉洋
企画・制作:ミックスゾーン
製作:ミックスゾーン、テレビ朝日、サンライズプロモーション東京


3月27日に国際フォーラムで終わった私の観劇生活が、再び始まりました。
あの時舞台にいた太田基裕が、今日も舞台にいて、まあファンだから当たり前か(笑)


というわけで、シアターコクーンに行ってまいりました。
2月の「泣くロミオと怒るジュリエット」以来。
コクーンでも、靴裏の消毒、手指の消毒、チケット半券に名前と電話番号を記入し、自分でもぎる…等々の対策がされていた。
物販もソーシャルディスタンスを保った状態で、キューラインがしっかりと作られていた。
そして、開演直前まで、客席の扉は全開状態。どころか、舞台後方の搬入用の扉も全開。向こう側の駐車場が丸見え。これはすごい、コクーンの本気を見た[exclamation×2]でも、停まっている車からは、NYが感じられなかった…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
(舞台後方の搬入扉を開放するのは、大昔に「メディア」という蜷川幸雄演出のギリシャ悲劇を観た時に経験しているので、驚きはなかったが、こういう形で対策している、という本気度の表明としては、うまいやり方だと思った。)


NYのマイケル(安田顕)の高級アパートの一室でのワンシチュエーションドラマ。2時間休憩なしの人間ドラマだった。
ここで、ゲイの仲間たちによる、友人ハロルド(鈴木浩介)のバースデーパーティーが準備されている。そこへ、1本の電話。マイケルの学生時代の友人、アランがNYに来ていて、取り乱した電話を架けてきたという。
大学時代までは、ストレート(※この作品は50年前に発表されたものなので、用語等は現代では使われていないものも使用されている)を標榜していたマイケルなので、アランがここにやって来て、ゲイパーティーを見たら…と思うと、どうしていいかわからない。
マイケルと、恋人のドナルド(馬場徹)は、アランの存在をめぐって軽く痴話げんかを始める。
そうこうするうちに、続々と客人が現れる。完全にオネエキャラのエモリー(浅利陽介)、まじめな風貌のハンク(川久保拓司)、ちょっとチャラめのラリー(太田基裕)。それぞれプレゼントを持ち寄り、くつろぎ始めるが、ラリーがドナルドと挨拶したところで、ハンクの機嫌が悪くなる。わらわら現れたけど、どうやら、ハンクとラリーがカップルらしい。そして、ラリーとドナルドは、いわくありげ。
再びアランから電話があり、やっぱり今日ではなく、明日外で会いたいということで、マイケルは安心する。マイケルは地味なセーターを脱ぎ、華やかな紫のセーターに着替え、安心してパーティーに気持ちを向ける。しかしー
やっぱりやってきたアラン(大谷亮平)、遅刻してきたバーナード(渡部豪太)、エモリーからハロルドへのプレゼントのカウボーイ(富田健太郎)、さらに遅れてきた本日の主役、ハロルド(鈴木浩介)…彼らが一堂に会した時、アランがゲイへの差別的な発言を繰り返したため、マイケルの堪忍袋の緒が切れて、最悪のゲームが始まる。


非常に面白い脚本を、演出の白井晃が丁寧に登場人物一人一人を動かして、素晴らしい心理劇に仕上げた。
マイケルとドナルドの関係は、マイケルの精神の不安定さゆえに、ドナルドが距離を置きがちになってはいるが、それでも、見捨てることなどできない…そんな優しい空気がある。
ハンクとラリーの関係は、結婚のような貞操を求めるハンクに対して、自由な性交渉を求めるラリー(ドナルドとも一夜限りのセフレで名前も知らなかった)…と、どこまでも平行線。そんな平行線を解消するためにハンクが出した妥協案が、3Pって…[爆弾]たとえ+1になっても、君のセックスの現場には居たいと真顔で言うハンクと、セックスする相手が何百人いようと、一度のセックスは一対一以外ありえないと主張するラリー…とりあえず、二人ともすごく真面目なのはわかった。方向性が違うだけで。この二人は、ゲームがキッカケで、問題は解決していないものの、互いの愛情を確かめあうことはできたようだ。
さて、そうするとエモリーは誰と付き合っているのか…どうやら、バーナードとは付かず離れずに関係のようだ。二人は、黒人であるバーナードを使役するご主人様エモリーという設定で、一緒に料理を作ったり、仲良くしている。エモリーは、ハロルドにも男娼のカウボーイをプレゼントしたり…と、世話焼きだから、特定の相手はいないのかもしれないが。


ゲイの様々な属性(アフリカ系、カトリック、ユダヤ人、結婚していたがある日ゲイだと気づく等々)が提示され、ごく当たり前に、彼らが生きていて、しかも、どこに居ても、とても生きにくい人生を送っているのだ…ということが丁寧に語られる。
学生時代、アランは同室のジャスティンと性行為を行ったことがあるらしいが、それでもゲイじゃないと言い張れる(そういうことがあっても、酔っ払っていたとかよく覚えていないと言えば、なかったことになるらしい…)のは、書かれた時代(なんと50年以上前)のせいかな[exclamation&question]
昔、ゲイは病気の一種で、治るものだと思われていたらしいから。


役者感想。
安田顕(マイケル)…ステレオタイプのゲイに寄せない、真摯な役作り。この作品では、代名詞がとても多く出てくるのだが、ゲイの代名詞は、(現在は違うかもしれないが)HeとSheの二種類があって、それは言われる当人の好みに合わせているようだが、マイケルはSheを選ぶようなキャラ。でも、女っぽく作っていない。それは、マイケルの中にゲイ=悪という観念があって、オープンリーゲイのはずなのに、まだ隠そうとする部分があるから。その絶妙なところを攻めている。また、天真爛漫(借金を踏み倒しても平気)を装いながら、ものすごくデリケートで、大学時代のあれこれを昨日のことのように言いたてる粘着性を持っていて、たぶん、自分で自分を持て余している。紫のセーターを着ても、ゲイゲイしい感じではないが、後半、どんどんゲイテイストが増してくるのは、演技力以外の何ものでもなかった。舞台で観るのは初めてだが、好きな俳優なので、ますます興味が湧いた[黒ハート]
馬場徹(ドナルド)…え、PureBoysの馬場くんだよね[exclamation&question]と二度見。結成当時、友人がPureBoysファンだったので、何度も見に行ったわ(笑)マッチョな体形で、黙って立っていても、目を引く。イケメン同士、目と目を見交わすラリーとのイミシンな場面は、眼福[揺れるハート]パーティー前のシャワーシーン(全裸)、1階席・2階席どちらからも局所が見えないように(すりガラスの非透明度がそこだけアップ)なっているのは、セットの巧みさだな~と思う。パーティーが終わった後、マイケルを看護するドナルドの慈愛に感動。ありがとう、君がいるだけで、よい幕切れになったよ[ぴかぴか(新しい)]
川久保拓司(ハンク)…おちゃらけた姿しか見たことない川久保が、ハンサムな顔と長身を生かして、生真面目な数学教師を演じているのを見て、「これこれ、こういうのが見たかった[exclamation]と膝を打った。太田との並びは、美男×美男で見た目もうっとりできる。ハンクは、ストレートとして長年生きてきて、結婚もし、子供も二人いる。ある日、NYに行く列車の中で突然、自分の中に湧き上がった感情。彼はグランドセントラル駅に着くと、そこのトイレで初めて男性との行為を経験し、その2ヶ月後にラリーと出会った。ゲイとして生きていくとの決意は固い。が、彼がラリーに求めているのは(彼が長年それが正だと信じてきた)結婚と同じ価値観で、多くのゲイは、その不自由さを嫌う。しかも、ハンクはとても真面目で、とてもラリーを愛している。真顔で3Pを持ち出すハンクの姿勢は、第三者的には笑ってしまうが、川久保は真剣そのもの。くそ真面目なハンサムくん、ええやん[ひらめき]と思った。ゲームでの告白がかっこよかったです[黒ハート]
富田健太郎(カウボーイ)…デリバリーの男娼なんだけど、すごく天然な田舎者といった雰囲気で、これから何をするのかわかってる[exclamation&question]と不安になる。が、最後にハロルドと消えていく場面のセリフで、実は、手練れなのではないか、と思ったりした。そんなプロのピュア感が伝わった。また、全然知り合いでもないパーティーでの居方が自然で、芝居の流れを壊さないのもよかった。
浅利陽介(エモリー)…空気の読めないオネエキャラ。絶対にゲイだと思われたくないというマイケルの意向があるにもかかわらず、オネエ言葉がやめられないし、仲間を彼女(She)と呼ぶし、ちょっとバレたと思ったら、すぐにバリバリ本性を表すし、ゴーイングマイウェイすぎて、笑うしかない。でも彼(彼女)なりのやさしさが伝わりすぎるほど伝わるから、仲間が離れないんだな~と思う。浅利個性派俳優の名に恥じず、縦横無尽にオネエしていた。ある意味、パーティーの主役だった[かわいい]
太田基裕(ラリー)…美しいだけでなく、ほのかな色気が際立つ。ファッションフォトグラファーなので、衣装のセンスもいい。パツパツじゃないのに体のラインが出る服装をしているところが、趣味と実益兼ねてて、いかなる時もチャンスを逃さないラリーを感じる。そもそもヒップラインが絶妙だし。(それはいつもです[わーい(嬉しい顔)]音楽に合わせてゆる~く踊るところのダンスのセンスもいいし、ドナルドと交わす視線と会話の美しさは、一瞬が何時間にも感じられた。ハンクとのゲーム内での告白合戦は破壊力がすごい。ごちそうさまでした[るんるん]ファンとして、太田の芝居を満喫できた。手堅い演技を観ることができて、満足です。
渡部豪太(バーナード)…いつもの、ちょっと長めの髪を後ろで結わえているスタイルで登場。彼が「黒人だから…」というセリフを言うのが、物語のかなり後半で、それまで、バーナードの人種について考えたこともなかった。そういえば、日本で翻訳ものの芝居を見ている時、その人の人種について考えたことはない。全員が白人だと思って疑わないというのではなく、なんかすっぽり抜けていて、見た目通りの人種で、名前がアメリカ人、くらいのイメージなのだ。最初から分かるようになっていたら、物語は変わって見えただろうか[exclamation&question]だからって、黒塗りしてほしいわけじゃないんだけど。実際のところ、黒人だったのか[exclamation]の衝撃が強すぎて、それ以外の渡部のイメージが全部消えてしまっている。なにが正解か、というのは難しいな。
大谷亮平(アラン)…これドラマだったら放送禁止だよね、的なセリフが山のように出てくる。50年前の価値観や、ゲイがどれくらい世間に存在するかの認識はこんな感じだったんだな、とあらためて感じた。イケメンでタキシードがよく似合い、どこから見ても非の打ち所がない。こんなステキな人が、今の時代からすると偏見まみれの言葉を吐くと、イケメン度が下がって見える。これが今の時代の価値観なんだな~と思いつつ、50年前は、それが「世間」だったんだろうな…とも思った。散々みっともない姿を晒したこのイケメンが、ゲームの中で、(電話先の)妻に「愛している」って言う時、イケメン度が爆上がりする。その爆上がり分は、大谷の実力なんだと思った。(出張中なので)ホテルに着いたら、即全身にシャワー浴びて消毒するだろうけどね。
鈴木浩介(ハロルド)…ユダヤ人のゲイというのは、とても大変なことらしい。それがカトリックのゲイ(マイケル)とどちらがどう大変なのか、日本社会で生きている私には理解が難しい。(ユダヤ教の正統派と呼ばれる戒律を重視する一派によるゲイへの攻撃は時に流血騒ぎになるが、ユダヤ人国家であるイスラエルは、同性愛を認めている)その大変さをわかって、それでも、ゲイとして生きているハロルドの、今日は32歳の誕生日。なのに、パーティーに遅刻してきたのには、彼なりの悩みがあるからだ。まず、ユダヤ人のゲイであること、そして、見た目がイケてないこと。(そういえば、今回のメンツはイケメン天国だった!)その抱え込んだものをオープンにして、仲間に表明しては、助けてもらっているハロルドと、天真爛漫を装うマイケルとのキャラの違いが面白いと感じた。隠れた苦しみを表明できるパートナーがいるから、マイケルは、ああなのかもしれない、とも思えるし、どちらが幸せとは一概に言えないな、と思う。鈴木だってことに、プログラムを見るまで気づかなかった(迂闊とも言う)ので、もうそれだけで大成功です[exclamation×2]


マイケルが、アランをゲイなのに隠している…と暴こうとする様は、腐女子が、仲の良い男子をゲイだと決めつけるのに似ていて、そんなマイケルを見て、反省したりもした。いい役者を使い切った、いい舞台だった。
もう一度、観たい、と思える良き舞台[黒ハート]


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