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「どうぶつ会議」観劇 [┣大空ゆうひ]

ケストナー生誕120周年記念
井上ひさしメモリアル10
こまつ座 第125回公演
「どうぶつ会議」


作:井上ひさし
演出:田中麻衣子
音楽・歌唱指導:国広和毅
美術・どうぶつ造型デザイン:香坂奈奈
照明:齋藤茂男
音響:尾崎弘征
衣裳:西原梨恵
ヘアメイク:柴崎尚子
どうぶつ所作相談役:金井ケイスケ
宣伝美術:森本千絵
演出助手:五戸真理枝
舞台監督:山口英峰


制作統括:井上麻矢
制作:若林潤、遠山ちあき、嶋拓哉


「どうぶつ会議」、原作は、ドイツの児童文学者、エーリッヒ・ケストナー。
宝塚ファン的には、星組公演「ベルリン、我が愛」で礼真琴さんが演じていた、あのケストナーです。


この舞台版「どうぶつ会議」は、劇団四季の子どもミュージカルのために井上ひさしが書いて1971年に初演されて以来上演されていなかったものを、国広和毅の音楽で再生した。


1970年代に、井上ひさしはなぜ「どうぶつ会議」を書いたのか。
アフタートークで、主演の栗原類がその謎を解いてくれた。当時、井上の子供たち(現・座長の井上麻矢さんを含む)が、ちょうど小学生だったのだ。この当時、井上は、「十一ぴきのネコ」など動物の出てくる戯曲を多く書いていた。それは、自分の子供を含む、世の子供たちに宛てて書かれたのではないか…そんな風に、栗原は推理していた。おおー、すごい、そこまで観察していたとは[exclamation×2]
ちなみに、大空ゆうひ演じる兄ライオンのアロイスと栗原演じる弟ライオンは「実の兄弟ではない」というのが栗原設定だそうで…これを聞いて、「え、私、実の兄弟だと思ってた…」と茫然とするゆうひさん、可愛かったです[揺れるハート]


舞台は、栗原らが演じるサーカスのどうぶつたちが、人間の子供たちを人質に劇場に籠城するところから、スタートする。彼らが、人質にするのは、その日の客席にいる人々。つまり、私達である。初日は、子供らしき姿がどこにも見えなくて、「ごめんよ、大きいお友達で…」と心底思った。
どうぶつたちが手にしているのは、カラフルなおもちゃのラッパ。音楽劇なので、2階部分に伴奏メンバーがいるのだが、音を重ねず、シンプルな伴奏に徹している。そして伴奏メンバーも場面によっては出演し、出演者も場面によって演奏する、そういう自由さが、人間がどうぶつを演じるというボーダーレス感に合っていた。


舞台を観に行ったら、人質になってしまった…というショッキングなオープニングで客席を掴んでから、そもそもの始まりが語られる。
ライオン(栗原類)、サル(田中利花)、カンガルー(李千鶴)、ヒョウ(木戸大聖)、トラ(中山義紘)は、国立劇場近くのテントでサーカスに出ているどうぶつたち。団長(立川三貴)は、せこくて、生活環境は最悪だが、ピエロのおじさん(谷村美紀)が親切に世話をしてくれるのがせめてもの慰め…という毎日。
どうぶつたちは、愚痴が止まらない。人間たちはどうして、こんなにバカなんだろう…と思うと、言葉が次々に湧いてくる。兄ライオンのアロイス(大空ゆうひ)に伝えたい…と、ライオンは考える。アロイスは、世界どうぶつ組合の理事なのだ。すると、どこからか、ネコ(池谷のぶえ)がやって来て、手紙を書けば鳩便で届けてあげると言う。ライオンは、兄への手紙をネコに託す。
アフリカでは、ライオンのアロイス、ゾウのオスカール(上山竜治)、モンキーズ(長本批呂士・横山友香)が世界中のどうぶつからの手紙を読んでいた。どの手紙にも、人間が酷い、人間の子供たちが可哀想だと書かれている。
アロイスは、人間たちの反省を促すために、世界どうぶつ会議を提案する。
そして、世界中のどうぶつがアフリカに向かったー


井上ひさしにとっては、まだ若書きと言える時代の作品のようで、ケストナーの原作を骨子以外はほとんど変えてしまっているが、かなり綻びも多い。ケストナーそのままの形で上演することは、難しかったんだろうな…と思いつつも、井上ひさし亡き後、簡単に変更もできず、そのまま上演することになったスタッフ陣も大変だったろうな~と、同情。
誰でも気づく、単純なミスは、サーカスにいるどうぶつたち、カンガルー以外はアフリカ出身と言っているが、トラはアフリカ大陸に存在しないこと、そして、ストーリー的に代表としてアフリカに行っているはずのサルが、冒頭のシーンで日本にいる…としてしまったこと。
たいしたことじゃない…という意見もあるだろうが、子供って大人よりこういうことに気づきやすいんですよ。だから、子供向け作品って、本当は気が抜けないのだ。
ただ、なんだろう、そんな綻びをものともしないエネルギーがこの作品にはあって、それは、演出の田中さんも、プログラム代わりのタブロイドでおっしゃっている通り、「怒り」のエネルギーなんだと思う。その強いメッセージ性が、初演から半世紀経っても褪せない、この作品の魅力になっているようだ。
どうぶつたちが、「人間の子供が可哀想」と言うのは、子供にもわかりやすいように…という配慮かもしれなくて、本当は、当のどうぶつたちの方が、めちゃくちゃひどい目に遭っている。それは今も変わらない。作品の中でも、人間の大人に改心させたくて、色々な作戦を決行したどうぶつたちが、斃れていく…という気の毒な場面が登場するが、無駄に殺し合わないどうぶつと、存在そのものが他のどうぶつの命を奪いかねない人間との対比がくっきりと表れている。
このシーン、楽しい舞台の真ん中に、笑い話のように残酷な挿話が登場するため、イヤ、受け付けない…という意見もあるかもしれないが、その残酷さこそ、どうぶつの予想をはるかに超える人間という存在なのだと、どんよりはしちゃうけど、子供相手でも容赦しないハッキリした井上の主張だと感じた。
そのわりに最後は、予定調和的大団円となってしまうのだが、それは、井上自身が、最後まで捨てきれなかった「人間が変わることへの希望」なのかもしれないな~と、そんなことを感じるステージだった。


そんな「どうぶつ会議」、何が最もすごかったか…というと、俳優がどうぶつに扮する、その衣裳と呼んでよいか分からない大胆なデザイン。特にゆうひさんは、昨年末に足を負傷していたため、前足という形で杖にもなるものを用意してくれた。キリンにも同じようなデザインを配し、アロイスだけが浮くことのないよう、しっかり配慮もされていた。
また、杖を得たゆうひさんが、それによって、ものすごいハイスピードで移動する楽しさを覚えたらしく、むしろ怪我した方がアクティブ[exclamation&question]みたいな状態になっていた。しかも、日々、扱いが上手くなっていく。『ゆうひは、杖を手に入れた』というべきか。あまりにびゅんびゅん動き回るので、危なくないのか[exclamation&question]と、杖を注視してみると、前足という体になっているので、まず、地面に付く部分が幅広=安定性がある。しかも、底の一部分にラバーで滑り止めが施されている。素晴らしい細工である。安全すぎて、もはや、遊び道具である。こんなもの、脳内5歳児の女優に渡したらいかん…[爆弾]
そんなゆうひさんは、サングラスをかけて、にゃーにゃ―言う場面でも、実に楽しそうでした[わーい(嬉しい顔)]
そしてアロイスは雄ライオン。「グッド・バイ」以来、ゆうひさんは、宝塚的男役としてではなく、男性の役を普通に演じるようになり、本人は女優であるけれど、演じる対象は人間の女性に限ったわけじゃないのよね、と、その多様性を頼もしく思う。どんな役であっても、大空ゆうひが演じる限り、魅力的で特別な存在になる。今後も楽しみ[黒ハート]


最初から最後までがっつり出演するサーカス5人組。ミュージカルの世界で長年活躍してきた田中利花のソウルフルな歌声、哲学者みたいな栗原類のちょっと情けないライオンの存在感、カンガルー・李千鶴とトラ・中山義紘の安定感、ヒョウ・木戸大聖とピエロ・谷村美紀のフレッシュな魅力。すごくいいチームワークを感じた。
そこへ現れるネコ・池谷のぶえの、歌よし芝居よし、しかもキュートな魅力が控えめに言ってもサイコーにサイコーである。(ファンです、すみません[あせあせ(飛び散る汗)]
世界どうぶつ組合では、ゾウのオスカールを演じる上山竜治が、よくもまあ、ゾウの役を演じてくれました[exclamation×2]と伏して拝みたくなるくらいの存在感を示している。一応音楽劇なので、この方が居てくれることはすごく重要。モンキーズ(長本批呂士・横山友香)も可愛いし、歌声がいい。敵役の人間たち(立川三貴・片岡正二郎・高田賢一・前田一世)は、一癖も二癖もある人物を余裕で演じるだけでなく、時にどうぶつにも扮するなど変幻自在だった。
つまり、キャスティングがすごくよかった。
色々なバックボーンがあり、年齢も経験も様々。芝居の上手さだって同じレベルじゃない。でも、そこが良かった。
世界中のどうぶつが集まる…というテーマゆえに、こういう出演者であることが、不可欠だったんじゃないかな~と思う。本当に楽しい公演だった。


歌わされなければ[爆弾]


えー…この作品では、「動物憲章の唄」という、難しくて音域のやたら高い歌を、練習含めたら3回、最後は3番まで客席に歌わせるというサディスティックな作品だったりする。いやー、この歌がね、マジ難しいのよ[爆弾][爆弾][爆弾]
私は、3回目の観劇でようやく音が取れました[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
それってどうなの[exclamation&question]
難しいから、音痴な人も、そうでない人も、同じように音を外すから大丈夫的な意味で作られたの[exclamation&question]
あの歌を頑張った自分を心から褒めたいです[わーい(嬉しい顔)]


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