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歌舞伎「平家女護島」観劇 [┣演劇]

久しぶりに歌舞伎を観てまいりました[るんるん]


国立劇場十月歌舞伎公演
近松門左衛門=作 国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言
「平家女護島」三幕四場
         国立劇場美術係=美術


序幕 六波羅清盛館の場


独裁体制に入り、後白河法皇にすら敬意を払う気もない平清盛(中村芝翫)。
その独裁体制に危機感を抱いた家臣たちも巻き込んだ後白河法皇のクーデター事件、鹿ヶ谷の陰謀。もちろん、法皇を処分することはできないので、藤原成親が捕えられ、流罪の上、殺害された。そして、加担した成親の子・丹波少将成経、平判官康頼、そして俊寛僧都の三人は、鬼界ヶ島に流罪となった。
そもそも清盛は、俊寛に目をかけていたこともあり、裏切られた怒りで、俊寛の妻、東屋(片岡孝太郎)を捕えさせた。
ところが、縛られた東屋を見た途端、清盛の心に、よからぬ思いが芽生えた。自分の愛人になると瞬間の帰還もかなうかもしれないなどと言って口説きにかかる。
首を縦に振らない東屋にの前に、清盛の甥・能登守教経(中村橋之助)が現れる。教経は、東屋に自害する猶予を与える。そこへ、俊寛の郎等(家来)・有王丸(中村福之助)が現れる。かくなる上は清盛の首を…と血気にはやる有王丸を諫め、教経は、供養するように…と、東屋の首を渡すのだった。


今回の通し上演では、清盛と俊寛を芝翫が演じることが、ひとつの見せどころになっている。
といっても、早替わりなどではなく、そもそもこの二人の出番は、被らない。
流す側の清盛と、流される側の俊寛を同じ役者が演じる妙を楽しむ…ということだろう。一方で、夫に操を立て、清盛に身を任せることを拒絶して死ぬ東屋の立場は…と思わなくもないが、(同じ人じゃん…的な)そんなふうに考えちゃいけないんだろうな。


芝翫の清盛は、憎々しいだけでなく、ちょっとコミカルな動きもあって、楽しめた。
孝太郎の東屋は、気品があって、好演だったと思う。人妻役なら、美女設定でも、まあ、ありかな…と。
橋之助・福之助兄弟のやり取りは、ファンサービスの側面もあるのかな。有王丸、なかなか儲け役だな…と思った。


二幕目 鬼界ヶ島の場


鬼界ヶ島に流されて三年。俊寛(中村芝翫)は、すっかりボロボロの姿で、かろうじて庇で雨露をしのぐような庵にいる。
そこに、同じく流人の丹波少将成経(中村松江)と、平判官康頼(中村橋吾)が花道から現れる。成経は、島の娘・千鳥(坂東新悟)と恋仲になり、夫婦約束をしたことを語る。俊寛は、久々の嬉しい話に喜び、千鳥を娘ができたようだ…と愛おしむ。
と、そこに大きな船がやって来て、中から、上使・瀬尾太郎兼康(中村亀鶴)が出て、赦免状を読み上げる。赦免状には、中宮懐妊による大赦として、成経と康頼の2名を赦免するとあった。俊寛が、自分のことを聞くと、兼康は、清盛から俊寛だけは島に残せとの厳命があったと言われる。
そこにもう一人の上使・丹左衛門尉基康(中村橋之助)が登場、清盛の嫡男である小松内府重盛と、清盛の甥・能登守教経の温情により、俊寛は、備前国(現在の岡山県)まで戻ることを許されたと伝える。
三人は喜び、千鳥を連れて四人で乗船しようとするが、上使の瀬尾は、それを許さない。
あれこれ揉める中、瀬尾は、俊寛の妻が清盛の怒りを買って首を討たれたと伝える。(実際は、自害⇒教経によって首が落とされ、有王丸の手で供養されたのだが、そこを端折ったらしい。)
色々あって、三人の流人は一度船内に上がり、千鳥一人が残される。ここで、千鳥の恨み節。かなり長い時間、独り舞台となる。
死んでしまおうとする千鳥を見て、船内から俊寛が現れ、自分が残るから、千鳥を乗せてくれ、と瀬尾に頼む。しかし、頑なな瀬尾の態度に、とうとう俊寛は瀬尾の刀を奪って、斬りつける。
仲裁に入った基康に、俊寛は、自分は、上使殺害の罪によりここに残るので、千鳥を乗せてほしいと懇願し、瀬尾を討つ。それは、瀬尾を通し、東屋を殺した清盛への復讐の刃でもあった。
こうして島に残った俊寛だったが、友もなく、娘と呼んだ千鳥もなく、寂しさが募るばかり。船が遠ざかると高いところに登って、ずっと手を振り続けるのだった。


平家物語でも、能「俊寛」でも、一人だけ許されずに取り残される俊寛。しかし、一度、許され、千鳥という娘を哀れに思って身代りになる…というドラマを追加したことで、さらに盛り上げる。近松門左衛門ならではの展開になっている。


一番の見せ場なはずが…この場だけ、微妙に睡魔に襲われてしまった…なぜだ…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
赦免状のくだりの記憶がなくて、気がついたら、千鳥が泣いていた…[あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)]
でも、そこからの展開は、非常に面白かったです。千鳥役の新悟、細面で美しく、悲嘆にくれる姿が、似合っていた。


三幕目 敷名の浦磯辺の場


赦免船が備後国(現在の広島県)の敷名の浦に停泊している。ここで汐の変わり目を待つのだ。
そこへ俊寛を迎えに来た有王丸(中村福之助)が登場する。
成経(中村松江)と康頼(中村橋吾)が、千鳥(坂東新悟)を連れて有王丸に面会、俊寛が残った経緯を語る。有王丸は、ショックのあまり切腹しようとするが、二人が押しとどめる。
そんな中、清盛と後白河法皇を乗せた御座船がこの敷名の浦に間もなく到着するとの知らせが入る。丹左衛門(中村橋之助)は、流人の帰京を清盛に報告しようとするが、千鳥の乗船が知られては面倒なことになるやもしれぬ…と、急遽、千鳥を陸路で行かせようと考え、有王丸に千鳥を預ける。


同 御座船の場


豪華な御座船。清盛(中村芝翫)と後白河法皇(中村東蔵)が、並んで座っている。
赦免船が漕ぎ寄せられ、丹左衛門が、上使・瀬尾を殺した罪で俊寛を鬼界ヶ島に残したと、清盛に報告する。後白河法皇は驚き、なぜ、死罪にしなかったのだ、と、清盛は怒り狂う。
そして、そもそもの鹿ヶ谷の陰謀を思い出した清盛は、法皇を殺そうとする。
清盛が法皇を海に投げ込むと、それを見ていた千鳥が、海女の実力を発揮、法皇を救い出す。
有王丸は、御座船の船子をバッタバッタと倒していく。
そして、千鳥は法皇を有王丸に託す。
千鳥は、清盛に捕えられ、清盛は、父・俊寛の、そして母・東屋の仇と言い放つが、殺され、海に投げ込まれる。


その後、東屋(片岡孝太郎)と千鳥の霊が、清盛の前に現れ、清盛は熱病に浮かされる…


動きがあって面白い場面だった。
以前、歌舞伎座で観たのは、「俊寛」の場だけだったが、その前と後も面白い。さすが近松だと思った。
海女の千鳥という存在を出すことで、最終的には史実の通りとなる物語が、何倍も面白く感じられる。でも、千鳥はいてはならない存在だから…やはり、死んでしまうのね…[もうやだ~(悲しい顔)]


久しぶりの歌舞伎、ちょっと意識をなくしてしまったところもあったが、楽しく鑑賞できた。やっぱり、年に一度は歌舞伎を観なきゃ…だね。


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