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「青空」 [┣大空ゆうひ]

方南ぐみ企画公演
朗読劇「青空」


作・演出:樫田正剛


照明:石塚美和子
音響:井上直裕(at Sound)
映像制作:渡部宏明(プロフィット)
ヘア&メイク:荻野明美
舞台監督:深見信生、小野寺豊
宣伝美術:沼口公憲
台本印刷:シナリオプリント
キャスティング:小林すずめ、北田由利子、北田希利子、水島裕
制作:岩瀬ろみ、方南太郎、方南桃太郎、森下奈津紀


昨年も出演した方南ぐみプロデュースの朗読公演。
この日の出演は、竹中直人・高橋ひとみ・大空ゆうひ・小宮有紗の4名。
小宮さんが、主人公の少年・大和を演じ、高橋さんが飼い犬の麦役、竹中さんが野良猫の小太郎役、そして、ナレーションと、大和の父ほかたくさんの役をゆうひさんが演じる。
つまり、昨年、このポジションを担当する俳優次第で、全体の雰囲気が変わるんだろうな…と書いた竹中さんのポジションをゆうひさんが、担当するのだ[exclamation]え、なに、これ、すごくない[exclamation&question]


戦争中のお話だと聞いていたが、ゆうひさんのナレーションは、明治から始まる。
主人公の名字である「源平(げんぺい)」の成り立ちを説明するためには、明治維新により、四民平等となり、平民も名字を付けられることになったことから語らなけらばならない。なんでも好きな名字が付けられるということで、どうせなら…と、源氏と平氏両方を付けてしまったらしい。
そんなナイスなアイデアも、げんぺいの音から、代々「ぺーちゃん」が愛称になってしまう源平家の人々。そんなユーモラスなナレーションから話は始まる。


でも、あの戦争の時代の狂気を正しく伝えるためには、明治維新から物語を始めるというのが、とても正しいことなんじゃないか…と、ゆうひさんのナレーションを聴きながら思った。
突然、世の中が変わって、世界が開けて、日本は、いきなり近代化の大きな嵐の海に乗り出すことになる。
その中で、頑張って、一生懸命に頑張って、頑張り過ぎた日本人たちの姿が、やや滑稽に語られるのだが、その流れの中で、軍国主義が着実に浸透していることも描かれる。ユーモラスなナレーション、そして、軍人たちのハイテンションな語り口を、巧みに表現するゆうひさん。どんどん物語に引き込まれていく。
この冒頭の語りだけで、ものすごいエネルギーだった。


そして、主人公の大和少年(小宮)が登場する。
か…可愛い…[黒ハート]
超プリティボイスである。それよりなにより、私、ゆうひさんより顔の小さい人って、知らない…[あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)]
顔も可愛いし…客席の男性率、高いわけだ[exclamation×2]
ゆうひさんは、大和少年の父親も演じる。支那事変で活躍した従軍記者だった…と大和は思っている。そして、名誉の負傷によって休職していると。が、父はあまり当時のことを語らない。母は病弱で入院しており、ドラマには登場しない。
ゆうひさんの演じるお父さん。
男役だっただけあって、男性に聞こえる話しぶりが不自然でない。それでいて、宝塚時代の、存在しているだけでカッコいい男性像にはなっていない。先日のお茶会で、女優は、女性の役を演じることが多いけど、別に性別を選んで演じているわけではないので、男の役が来たら、普通に演じる。でも男役ではない。男役は宝塚だけのものだから。みたいなことを語ってくれたが、ああ、そういうことか、と思う。


一人っ子の大和は、当時の少年らしく軍国少年に育って行ったが、ある日、道端で一匹の子犬(高橋)に出会う。大和は、その犬を飼い、麦と名を付ける。ほわーんとした雰囲気の麦犬好きの高橋さんのセンスが冴える。
麦は大切に育てられる。そのうち、野良猫の小太郎(竹中)が麦の犬小屋に居つくようになり、源平家では、小太郎にも餌を与えてやるのだった。小太郎がここに居つくようになったのには理由がある。物資が不足しているため、野良猫が漁る残飯がなくなっていたのだ。
竹中さんは、強い声を使わずに、猫の自由な雰囲気を出して、楽しませてくれる。


ナレーションは、ところどころに、当時の戦況や、人々の暮らしぶりを挟んでいく。大和は軍国少年だったが、軍事教練を担当する退役軍人から、父親が支那事変の際、死にたくなくて自分の足を撃って、けが人として帰国したと聞かされ、ショックを受ける。
そして、隣組という、相互監視体制が形成され、家庭内の金属を供出する事態となっていく。
その時、万年筆を隠そうとした父親の姿に、大和は心底落胆する。


ある日、父親は、犬猫の供出情報を新聞社時代の知り合いから聞き、麦と小太郎を逃がそうとする。
大和は、お国のため、軍用犬になるのに、逃がそうとするなんて、どこまでお父さんは非国民なんだ!と思うが、最後に麦と出掛けた散歩の先で、恐るべき事実を聞いてしまう。軍用犬ではなく、犬を殺して兵隊さんたちの毛皮や食料にするのだという。
麦が殺される、と知って、大和は逃げ出した。
そして、山の上の小屋で一人と2匹は暮らし始めるのだった。


ここに、脱走兵という闖入者が現れる。この松原青年もゆうひさんが演じる。
松原の役割はふたつあって、ひとつは、まだ子供の大和に生きていく術を教えること。東京大空襲の時、松原は、大和の父親を捜しに行くと言って下山してしまうのだが、その後、大和が一人で生き延びたのは、松原が教えた生活の知恵が大きかったと思うし、そもそも、犬猫の供出が始まってから終戦までの長い時間、子供と犬猫だけで暮らしていくというのは、リアリティがなさすぎる。
そして、もうひとつは、大和の父親が本当は、非国民ではなかったと、伝えることだ。
彼は、支那事変の時、真実を伝えようとした新聞記者が一人いて、電話で日本に記事を伝えている時、軍人に足を撃たれたということを聞いた、と教えてくれる。それが、ぺーさんと呼ばれていた記者だと。でも、新聞社は、その記者を長期間休職させた挙句、クビにしてしまった。それ以降、新聞は真実を伝える報道をやめてしまった…そんなことを松原が教えてくれる。これで、大和は父親への尊敬心を取り戻す。


父親は、慈愛に満ち、でも、戦時下の風潮にはついて行けず、かといって、これ以上戦う手段も持たず…ちょっと情けないおじさんの雰囲気がよく出ていて、松原さんは、若者らしいぶっきらぼうなところもありつつ、大和を弟のように可愛がって兄貴ぶっているところも感じられ、動物の言葉がわかると嘯いているわりに、全然とんちんかんなところがあったり、存在そのものが可愛い。
ちょい役の軍人とかは、偉そうだったり、めっちゃ意地悪そうだったり、感じ悪いことこの上ない。
ゆうひさん、本当に楽しませてくれています。


そして、とある空襲の夜、山を下りて麓の村で盗みをはたらいていた大和が、大人に見つかってぼっこぼこにされ、骨を折って発熱したところから不安な展開となるが、最後は、ハッピーにおさまる。
あの戦争中の物語を、その悲惨さは十分に伝えながらも、最後にホッとさせるところは、うまい作劇だなと思う。
そうじゃないと、つらいだけだもんね。これは、昨年観た「逢いたくて…」もまた、同じ構成だったんだな…と分かった。
これがわかると、方南ぐみの朗読が、より楽しく感じられると思う。


コメディリリーフとして、動物たちに徹した、ベテランの高橋さん、竹中さん、素晴らしかったです[黒ハート]
子供から少年まで、少しずつ成長し逞しくなる大和を、少年らしい声質で演じ抜いた小宮さん、すごかった[黒ハート]
そして、ゆうひさん、変幻自在で、しかも、あれだけの膨大なナレーションとセリフを、最後まで集中切らさずに演じ切る体力と精神力と、もちろん演技力。もう、これは素晴らしいものを聴かせてもらいました[黒ハート]


色々な面を聴かせてくれるゆうひさん@方南ぐみ。まだ呼んでくれたら嬉しいな、と思ってます。


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