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「BLOOD RELATIONS」観劇 [┣Studio Life]

The Other Life Vol.9
「BLOOD RELATIONS―血のつながり―」

作:シャロン・ポーロック
翻訳:吉原豊司
演出:倉田淳

美術・舞台監督:倉本徹
音響:竹下亮(OFFICE my on)
照明:日下靖順(ASG)
照明オペレーター:西田俊郎(ASG)
衣裳:竹原典子
衣装スタッフ:砂田悠香理、矢作多真美
ヘアメイク:川村和枝(p.bird)
演出助手:平河夏、宮本紗也加

久しぶりの“The Other Life”だったが、これが想像をはるかに上回るビッグヒットだった[exclamation×2]

物語は、「リッヅィー・ボーデン事件」という19世紀末に起きた殺人事件を題材にしている。
(配役は、観劇した順にFateDoomで記載。一人しか書いていないのはシングルキャスト
アメリカのボストンの旧家ボーデン家で当主夫妻が斬殺された事件で、逮捕された次女のリッヅィー・ボーデン(青木隆敏)は、裁判で無罪となった。その10年後、一人の女優(松本慎也久保優二)が、この題材に挑戦することになり、役作りのためか、事件の中心人物、リッヅィーに接近する。
「リッヅィー、あなたなの[exclamation&question]
をキーワードに、物語は展開する。

実際の事件は、

  1. 物的証拠が乏しかった[ひらめき]
  2. 当時、近辺に強盗事件が多発していた[人影]
  3. 両家のお嬢さんが両親を斧で斬殺するなんて[がく~(落胆した顔)]

という理由で、「無罪判決」となり、とはいえ、真犯人も見つからず、事件は迷宮入りとなった。

リッヅィー・ボーデン事件の起きた、ボーデン家では、当主のアンドリュー・ボーデン(藤原啓児倉本徹)と後妻のアビゲイル(石飛幸治)、長女のエンマ(大村浩司楢原秀佳)、次女のリッヅィーが暮らしていた。当時、リッヅィーは34歳、エンマは実母が亡くなってからリッヅィーの親代わりということだったから、既に40歳にはなっていたのではないだろうか。
19世紀末という時代背景を考えると、これはもう、オールドミス×2という悲惨な一家である。

男の子のいないボーデン家の今後について、アンドリューは色々と考えている。そこに、アビゲイルの弟、ハリー・ウィンゲート(緒方和也奥田努)が、商売の話を持ち掛けたり、財産の名義書き換えを提案したりしてくる。
アビゲイルはアンドリューより若いので、この先、アンドリューが死んだ場合、彼女を快く思っていない娘たちから家を追い出される可能性がある。一方、財産をアビゲイルに持って行かれると、リッヅィーたちは、この継母が死ぬまで、自分たちの思い通りにやっていけない。
とはいえ、キリキリしているのはリッヅィーだけで、姉のエンマは、「お父様は私たちの悪いようにはしない」と信じているし、継母とも表面上うまくやっている。年齢的にも、この家で、継母とうまくやる以外、道はない。
一方、リッヅィーは、父親から、結婚話を聞かされ、激怒している。三人の子供がいるやもめが相手。すでに34歳になっているリッヅィーなので、そういう縁談しか来ないわけだが、そもそもリッヅィーは結婚する気がまるでない。
10年後の世界で、“レズビアン”を公言する女優を家に泊め、二人が一緒にいる時は、姉のエンマは2階から降りてこないというあたり、二人の関係性、およびリッヅィーの性的志向を想像すると、彼女がどれだけ、追い込まれていたかが理解できる気がする。
継母のアビゲイルも、リッヅィーと同じような状況で結婚を決意、アンドリューに嫁いだのだから、自分もそれなりの生活を望むなら、父親の遺産など狙わずに、与えられた縁談に従えばいいと、超上から目線。今の時代なら、「ありえない[exclamation×2]」の一言だが、時は19世紀末…ヨーロッパじゃエリザベート皇后が放浪の旅を続けている時代なんだから、リッヅィーのかたくなな態度は、やはり、当時の田舎町では特異な存在だったと思われる。
現実のリッヅィー自身がレズビアンだったという確証はないが、この舞台では、それを暗喩するような形で、物語が進んでいく。それを観客側が受け入れた方が、ドラマへの理解は深まると思う。
アイルランド人のドクター・パトリックと親交を重ねるなど、既成概念にとらわれない、アウトローな部分があるのも、そうすることで、「まともな結婚の話」が来ないようにしているのかもしれない。

男でありさえすれば、結婚などしなくても、たとえホモセクシュアルだったとしても、親の遺産を普通に相続することが出来るのに。
裁判で無罪を勝ち取ったのは、「女は、一人前の存在ではない」とする地域社会へのリッヅィーの復讐だったのかもしれない。すべての状況証拠がリッヅィーを犯人だと示唆していても、一人前じゃない女が、こんな残虐な殺人をできるなんて、彼らには認められない。それを逆手に取ったというか。
それはリッヅィー・ボーデンにとって、はたして完全な勝利だったかどうか…

では、出演者へひとこと感想

<リッヅィー・ボーデン>
青木隆敏…シングルキャストでの主演、劇団内での青木の立ち位置的に、私なんかは奇跡の主演だとか思ってしまったが、ホントによかった[黒ハート]青木らしい毒のある作り方で、倉田さんはこれを狙ってたのかな、という気もする。独特の声質も、口跡も、すべてが似合っていた。そして、美しかった[ぴかぴか(新しい)]ラストのセリフも睨みが効いていて、外連味があった。そういえば、大昔、すっぴんの青木くんにイベントでサインしてもらった時、海老蔵に似てるって思ったんだよなぁ…[わーい(嬉しい顔)]

<女優>
松本慎也…久保とのWキャストでなければ、主演は「女優」役のものだったかもしれない。なぜなら、両親殺害に至るまでの丁寧な心理描写を実際に演じるのは、女優役の方だからだ。ヘアメイクが今回本気出してたせいか、松本の美女っぷりがハンパなかった。数々主演している松本のヒロインっぷり、そしてやっぱり、地に足のついた演技力にはひれ伏すしかない。
久保優二…デビュー以来、久保はすごい[exclamation×2]と言い続けてきたが、さすがに松本との差は歴然だった。台詞も多くて、思いのほか噛んでたし。でも美しさは尋常じゃなかった[ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)]

<エンマ・ボーデン>
大村浩司…意外とシリアスな作品に似合う人だなと思う。決して突出しない地味な女性。でも、頑固で、孤独な、田舎のオールドミス…見事に体現していたと思う。
楢原秀佳楢原のエンマは、品がある。たぶん、この田舎町には、このエンマに似合う男性がいなかったのだろう。だから、独身を通し、姿勢を正して生きているのだろう、と思った。継母に対して妹と同じ態度を取らなかったのも、彼女と同じ土俵に立つことを、エンマの静かなプライドが許さなかったのでは[exclamation&question]という気がした。「Lilies」の伯爵夫人に次ぐスマッシュヒットだったように思う。

<ハリー・ウィンゲート>
緒方和也…すごい調子のいい男で、一から百まで嘘のように聞こえる。こういう役やらせた時のリアリティーはすごい[ひらめき]
奥田努…誠実なように見えて、どこかでキレそうな雰囲気も湛えていて、こういう男はホントに怖いと思う。そこにガーッと怒りを向けられるリッヅィーの狂気すら、ハリーのキャラから伝わってくる。その一方で、同期の青木をすごーく支えてる感じも静かに伝わってきた。

<ドクター・パトリック・弁護士>
山本芳樹かるいなぁ~[あせあせ(飛び散る汗)]Fate版は、リッヅィーがこれでもか[exclamation]と、男に失望していくのが、よくわかるキャスティングになっている。
曽世海司一見、誠実なように見えて、その実…という雰囲気がぷんぷん匂ってくる。でも、Doom版のリッヅィーは、そもそも最初から男に期待していない雰囲気もあるのだが。

<アビゲイル・ボーデン>
石飛幸治「牛のような」と言われるのが、ピッタリ。したたかであり、その立場なりの知恵も働く。リッヅィーの狂気を甘く見ていたのが失敗だったか。素晴らしい怪演でした[黒ハート]

<アンドリュー・ボーデン>
藤原啓児…メイクがすごく似合っていて、アメリカ人にしか見えなかった[ひらめき]優しい父親であろうとする一面もあるものの、リッヅィーを理解することはなかったし、女性が家を継ぐなんてことは、1ミリたりとも脳内になかった人。父権主義の権化。そういう部分が、すごく伝わってきた。
倉本徹やさしいお父さん。でも、女性を一人前に扱うことは発想にないので、血は繋がってなくてもハリーの計画に乘ってしまったのね…と思う。誰のことも見捨てないやさしさを感じるけど、同時に愚かさも感じた。

演技面では、ほんとに満足度高かったです。

ちなみに脚本では、ちょっと気になる点が。

  • 重大事って「じゅうだいごと」って読むかな[exclamation&question]
  • 「一発食わせる」って言うかな[exclamation&question]「一杯食わせる」か、「一発食らわす」じゃない[exclamation&question]
  • 「そうするよりほか、仕方ない」も、なんか違う気が…[あせあせ(飛び散る汗)]たぶん、過去形で使う表現な気がする…[爆弾]
  • メリーゴーランドの話をするところで、「上がったり下がったり」と言ってたけど、馬が上がったり下がったりするのは、「カルーセル」だと思う[むかっ(怒り)]
  • 「閻魔様に舌抜かれた」って、舞台はアメリカでは[exclamation&question]

“今日は何の日”
【10月3日】
土佐藩が大政奉還の建白書を将軍・徳川慶喜に提出(1867=慶応3年)。
(←旧暦。新暦では、10月29日となる。)
いよいよ、長かった江戸時代の終わる時が近づいています。


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